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恋の終わりと恋の始まり

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私はキャロル・ザンクトゥーリウム。公爵令嬢。私には幼い頃からの婚約者がいる。アルバート・セアリアス。侯爵令息。私は彼に恋してる。でも、最近は諦めもついた。私がどれだけ恋い焦がれても、これは政略結婚。私の思いが実ることはない。

こっちを向いて欲しくて、彼に話しかける。耳障りだと怒鳴られる。一緒に居たくて、彼の隣に座る。乱暴に突き飛ばされる。でももう慣れた。辛いことなんて何もない。

でも、やっぱりこっちを向いて欲しい。でも、やっぱり一緒に居たい。嫌われたくなんてなかった。でも嫌われた。なんでかな。

心が折れた音がした。貴方のことが好きだった。

貴方と一緒に出かけたい。貴方はずっと読書に集中。貴方と一緒にお茶がしたい。貴方はずっと論文に集中。優しさの一欠片すら貰えない私に、価値はある?

でも、貴方じゃなきゃ意味がない。でも、貴方じゃなきゃダメみたい。ふと、優しい声が聞こえた。なんで今更そんなこと言うの。

私のことが嫌いなくせに、ふとした時に飛び切り優しく愛を囁く。なんて無責任な男。こんな男、嫌いになれれば楽なのに。

…それでも、貴方を愛してる。

だから、貴方がドラゴン討伐に駆り出されたから、私は先回りしてドラゴンの元へ行くの。

「それがお前が俺に自分を差し出す理由か」

「そうよ。さあ、パクリと食べて。その代わりこの国を離れて」

「嫌だ」

「…っ」

「お前も連れて行く」

「…え」

「お前はこれから俺の花嫁だ。俺にこの国を出ろというなら、お前もこの国を離れて俺と来い」

「…わかった」

「そうか。それと、アルバートとかいう奴に向けていた思いを全部俺に寄越せ」

「それは…」

「出来ないなら俺はここを動かない。人間の騎士団を潰すなど造作もない」

「………。わかった」

「なら、時間をくれてやる。別れの挨拶を済ませて来い」

私は家族とアルとアルの家族に、私がドラゴンの花嫁になるかわりにドラゴンが国から離れることになったと伝えて、別れを済ませた。なぜかアルは茫然としていた。結局一言も喋れなかった。王家は私をドラゴンから国を守る聖女として祀り上げた。ドラゴンはなぜか人の形をとった。しかもアルの。

「…好きよ、アル」

「俺も好きだ、キャロル」

ああ、なんて悪趣味なドラゴンかしら。でも、心から愛しているわ。だって“このアル”は応えてくれるもの。
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