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執事長
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「そう。リスは本当に良い方向に変わったのね、信じられないけれど…」
「はい、奥様。あれは演技には見えませんでした」
「シプレがそういうのならば間違いはあるまい。あれだけわがままで傲慢だった子が、記憶を失ったからといってそこまで変わるとは…私達の教育に問題があったということだろうか…」
執事長であるシプレに、最近のリスの様子を報告されるリスの両親、エラーブルとオリヴィエ。リスの変化は好ましく思いつつも、あまりの変わりようにこれまでの十八年間の記憶は足枷でしかなかったのかと落ち込む。そもそもエラーブルとオリヴィエはロゼッタばかりを可愛がってあまりリスと関わって来なかったので関係ないし、実際には前世の記憶に性格が引き摺られているだけなのだがあいにくそれを指摘できる者はいない。
「シプレ、これからもリスについての報告をよろしくお願いするよ」
「はい、旦那様」
そうしてシプレはエラーブルの部屋から出る。そして忙しい時間の合間を縫ってリスのことを観察する。シプレは、リスが記憶喪失になったということについては信じているものの、リスへの警戒心はまだ解いていない。今は記憶喪失の影響で大人しくしているようだが、そのうちまた前のようにわがままで傲慢な振る舞いをするのではないかと疑っている。
「あ。執事長さん、おはよう」
「おはようございます、リスお嬢様」
シプレは執事長らしく、キビキビとした動きでリスにお辞儀をする。
「えっと、名前を教えてくれる?」
「シプレと申します」
名前を聞かれて内心驚くシプレ。以前のリスなら使用人の名前など気にしなかっただろうと思う。
「シプレさんね!シプレさんは甘いものは好き?」
「はい。好きですが…それがなにか?」
ちなみにシプレの大好物はパンケーキである。
「いやー、バジルさんと一緒にラヴァンドにあげるクッキーを焼いたんだけど、結構余っちゃって。ソールの分もラッピングして、ロゼッタとオレガノさんとバジルさんとオルタンシアちゃんにもあげたし、自分でも味見程度に食べたんだけど、まだ一人分余ってるんだよね。よかったらもらってよ」
「…リスお嬢様は本当に変わられましたね」
「え?」
「ありがとうございます、いただきます」
「こちらこそもらってくれてありがとう!」
それじゃあまたね、とシプレの横を通り過ぎるリス。そんなリスを優しく見守り側に控えていたオレガノは、執事長に得意げな眼差しを向けた後リスの後を追う。
シプレはそんな二人の様子を見て、ようやく記憶喪失になったというリスへの警戒心を解いたのであった。
「はい、奥様。あれは演技には見えませんでした」
「シプレがそういうのならば間違いはあるまい。あれだけわがままで傲慢だった子が、記憶を失ったからといってそこまで変わるとは…私達の教育に問題があったということだろうか…」
執事長であるシプレに、最近のリスの様子を報告されるリスの両親、エラーブルとオリヴィエ。リスの変化は好ましく思いつつも、あまりの変わりようにこれまでの十八年間の記憶は足枷でしかなかったのかと落ち込む。そもそもエラーブルとオリヴィエはロゼッタばかりを可愛がってあまりリスと関わって来なかったので関係ないし、実際には前世の記憶に性格が引き摺られているだけなのだがあいにくそれを指摘できる者はいない。
「シプレ、これからもリスについての報告をよろしくお願いするよ」
「はい、旦那様」
そうしてシプレはエラーブルの部屋から出る。そして忙しい時間の合間を縫ってリスのことを観察する。シプレは、リスが記憶喪失になったということについては信じているものの、リスへの警戒心はまだ解いていない。今は記憶喪失の影響で大人しくしているようだが、そのうちまた前のようにわがままで傲慢な振る舞いをするのではないかと疑っている。
「あ。執事長さん、おはよう」
「おはようございます、リスお嬢様」
シプレは執事長らしく、キビキビとした動きでリスにお辞儀をする。
「えっと、名前を教えてくれる?」
「シプレと申します」
名前を聞かれて内心驚くシプレ。以前のリスなら使用人の名前など気にしなかっただろうと思う。
「シプレさんね!シプレさんは甘いものは好き?」
「はい。好きですが…それがなにか?」
ちなみにシプレの大好物はパンケーキである。
「いやー、バジルさんと一緒にラヴァンドにあげるクッキーを焼いたんだけど、結構余っちゃって。ソールの分もラッピングして、ロゼッタとオレガノさんとバジルさんとオルタンシアちゃんにもあげたし、自分でも味見程度に食べたんだけど、まだ一人分余ってるんだよね。よかったらもらってよ」
「…リスお嬢様は本当に変わられましたね」
「え?」
「ありがとうございます、いただきます」
「こちらこそもらってくれてありがとう!」
それじゃあまたね、とシプレの横を通り過ぎるリス。そんなリスを優しく見守り側に控えていたオレガノは、執事長に得意げな眼差しを向けた後リスの後を追う。
シプレはそんな二人の様子を見て、ようやく記憶喪失になったというリスへの警戒心を解いたのであった。
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