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庭師の困惑

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暗殺者を追い返した次の日のティータイム。リスはラヴァンドとロゼッタ、ソールに妖精について調べたいと相談を持ちかけた。

「妖精について?なんでまた」

「いやぁ、ある人が妖精さんが待ってるって言ってて…」

「ある人?」

「昨日、私の部屋に暗殺者が入ってきたんです。お姉様がいなかったらどうなっていたことか…」

「なに!?リス、ありがとう。ロゼッタ、怪我はないな?」

ロゼッタに傷はないか確かめるソール。ロゼッタはなすがままである。

「ふむ。どうしても行きたいなら僕が連れて行ってやってもいいが」

「本当に?ありがとう、ラヴァンド」

「気にするな。お前を甘やかすのは僕の趣味だ」

「だが、いつ行く?」

「さっそく明後日はどうでしょうか?」

「私はいいけど、ラヴァンドとソールは?」

「かまわんぞ」

「俺も大丈夫だ」

「じゃあ、さっそく明後日みんなで中央図書館ですね!」

こうして中央図書館行きが決まった。リスは安心して、ふと庭に目をやる。すると、庭の陰、見え辛い場所で庭師の見習いであろう少女が泣いているのを見つけた。駆け寄るリスと、そんなリスについてくるラヴァンド、ロゼッタ、ソール。

「こんにちは」

「!リス様…」

庭師の見習いの少女は涙を流したまま頭を下げる。リスはそんな彼女の頭を撫でてやる。庭師の見習いの少女は予想外の展開に目を丸くした。

「え…」

「なにがあったか、話せる?」

庭師の見習いの少女に優しく微笑みかけて話を促す。彼女はぽつりぽつりと話し始めた。

「私、オルタンシアっていいます。父が幼い頃に亡くなって、母と二人きりなんです。私は家計を支えるために庭師の見習いになってこのお屋敷で雇ってもらえることになりました。おかげさまで毎日ご飯が食べられます、不満はありません。ただ…母が病にかかって…私のお給料じゃ治療費が足りなくて…治せる病気なのに、母を救えないんです…」

「そっかぁ…ちょっと待ってね」

リスはオルタンシアの身の上話を聞くと、すぐにオレガノに頼んで自分の部屋から、貰うだけ貰ったものの使い道のないお小遣いを貯金したものを持ってきてもらった。

「治療費って総額いくらかかるの?」

「えっと…多分金貨五枚ほど…」

「金貨五枚だね。はい、これ」

「え?…え、ダメです、受け取れません!」

「いいの。これは施しではなくて投資だから」

「え?」

「優秀な貴女にそれだけ期待しているの。これからもよろしくね」

「…リスお嬢様。ありがとうございます!このご恩は絶対にお返ししてみせます!」

元々庭師の見習いという仕事柄、あまりリスの悪口を書いたことのなかったオルタンシアは素直にリスからの投資を受け取り、母の治療費に当てた。母はすぐに元気になったらしい。それ以降、オルタンシアはますます庭師の見習いとして努力するようになった。それに労いの言葉を貰うと、必ずこう答えるようになった。

「心優しいリスお嬢様に救われたので、そのご恩をお返しするために努力するのは当然のことです」
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