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『甘いモノ、お好きでしょう?』
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三時にバイトを終え店を出た私は、ふと足を止めて考えてしまった。
いつも通り真っ直ぐ家路につこうか。それとも、たまにはどこかへ寄ってショッピングなどして、気分転換をしようか。
朋絵が同じ時間にバイトが終わるのなら、カフェでお茶という選択肢もあったのだけど……。それは無いかな。
今日の彼女のシフトは五時までで、待つには時間が長すぎる。いや、今日に限ってはそれで幸い、ということにしとかなきゃ。
カフェでお茶なんて、午前中朋絵が言ってた様に、私が遭遇した事云々を説明したり告白させられる破目になるもの。話すのが嫌という訳ではないものの、まだ自分でも頭の中を整理出来ていない話をするのは、少し抵抗があるし……。
(許せ、朋絵っ)
逃げたー! と、騒ぐ朋絵の姿を想像しながら、私はそそくさと店を後にする。
向かうは駅。
やっぱり今日は、どこかへ寄ってから家に帰ろう。
朝、偶然乗り遅れたバスが事故を起こした事を思う。今日はそういう日なのかもしれない。いつもと違う行動をした方がいいですよ、ってカミサマが教えてくれてる日――。
***
駅へ向かう道は、いつもと変わらない人通りだった。道路も朝の騒然とした様子をすっかり消して、何もなかったみたいに通常。土曜日の少し混雑した午後の姿。
ただ、時折歩く人たちが道を指さしたり、そちらに目を向け何か話してるのを見ると、そこは数時間前大きな事故があった場所なんだと再認識させられる。
お昼の休憩時間に事務所で見たテレビでは、この場所が何度も映され、目撃者のインタビューやCGを使った事故の推測等がひっきりなしに放映されてたっけ。
朋絵は、私に気を遣ったのか途中でテレビを消してしまった。事故の犠牲者が車内でどの位置関係だったかを検証していた時だ。
数人出てしまった死者は、みんな右側後部座席に乗車していた。そこは、私がいつも好んで座る場所でもあった。
運が良かった、と大きな声で笑う気には、とてもなれない。亡くなった人の冥福を祈るのも、今はなんだか少しだけ申し訳ない気分で。
ふと、すれ違った人が俯きがちで真白な花束を抱えるのを見たら、私も同じように俯いてしまう。反対車線に止まっているテレビ局のロケ車からも、逃げるように足を速めた。
とにかく、駅前の雑踏に紛れてしまいたかった。
駅ナカの、話題のお菓子を買って帰ろうかな。数駅先の大きな駅ビルで新しい洋服を見るのもいいし、大好きな雑貨屋を覗いた後に一人カフェもイイ感じだ。
気を紛らわす意味も込めて、私は頭の中で色々今後の予定を巡らせてみる。効果はあったみたいで、足取りはちょっと軽くなった。
でも、歩きながらカバンからパスケースを取り出した時だ。「……え?」人波の隙間に、見逃せない人物を発見したのは。
「……結城さん?」
何故か足が止まった。軽かった脚が急に重くなる。
行き交う人に視界を何度も遮られる中、柱に隠れるようにして立っているのは、確かに結城さんだ。あの長身、間違いない。
(なんでここに……)
ここで彼が柱の陰からジッと私を見ていたら、私は悲鳴を上げながら逃げ出していただろう。
そうしなかったのは、結城さんがストーカーチックにこちらを見ていなかったから。
つまり、結城さんは私に全く気付いておらず、その目はむしろ違う方へ向けられていたのだ。
(なにしてるのかな?)
結城さんの真剣な目つきが気になり、私は人ごみでチカチカする視界の向こうを必死で探っていた。
結城さんは誰かと話している。長身が柱に向かって語りかけている様に見えるのは、柱に寄り添うようにして立っている人物がそこにいるからだ。
ずっと何かを話している結城さんは、どうやら相手を説得してるみたいだった。真っ直ぐその人を見る瞳が、すごく重い雰囲気で。
ザワザワとうるさい周りの音が、私の中で一瞬消えた。代わりに一瞬、自分の心臓の音が大きくドクンと響く。
「誰……? あのひと」
とか呟いた自分が意外。彼氏の浮気現場を見た人って、まさかこんな気分なんだろうか?
(……そんな馬鹿な。なんで私が結城さんにそんな事思うわけ? おかしいでしょ。大体彼氏でもなんでもないしっ!)
結城さんと話している人は、小柄な女性だった。
薄いピンクの生地に赤い水玉のワンピース。ストレートのロング、色白の綺麗な横顔。……そして、悲しそうな顔。
結城さんは彼女に語る。やがて彼女が小さく頷くと、結城さんも頷いて。笑った。
優しい微笑み。
彼女のさらさらとしたストレート髪を撫でる手。
……もう、見てられない。
見てはいけないものを見てしまった、何とも言えない後味の悪さに、私は二人から目を逸らしていた。
誰だろう。
どういう関係なんだろう。
何を話してるんだろう。
短い時間で頭の中は疑問でいっぱいに。プチ混乱。
別に、結城さんが気になって……という訳じゃない。知ってる人の興味深いシーンを見てしまったからだ。それだけだ、それだけ。
ドキドキしながら、私はずらしていた視線をまた元の場所に戻した。
なんかとても雰囲気良さそうに見えた二人だったから、つい遠慮したけど……。こういう時も、私の“怖いモノ見たさ”は働くらしい。
ん? 怖いもの見たさって……何が?
「あれ?」
戻した視線の先に、想像していた姿はなかった。
柱の所には誰もいない。私の前には、行き交う人だけ。立ち止まって話をしている人はあちこちにいたけど、その誰も結城さんとさっきの女性ではなかった。
いつの間に、二人はいなくなってしまっていたのだ。
「いない……」
えーと……この場合、何というべき?
私はひとり苦笑しながら首を傾げる。
ドラマのおいしいシーンを見逃したような……。逆に損した気分になるシーンを見ないで結果良かったような……。複雑、なんですけど。やっぱり自分の気持ちがよく分からない!
あっという間の出来事だったので、なんだか夢でも見ている気分だった。そもそも結城さんとこの駅で会うなんてのも、凄い偶然なのだ。夢と言われたら信じてしまいそうだ。
うーん。それにしても、今日は本当に偶然という二文字がキーワードの様。はてさて、次に来る偶然は?
なんて茶化していたら。
「これは花音さん。珍しいですね、ここでお会いするとは」
「っう、ぉあ!?」
良く知ってる声、口調。結城さんだ。一瞬見失った人は、背後に現れた。
突然耳元でぼそりと囁かれ、私は「一体どこから出したんだ?」と言われかねない変声を出してしまった。辺りの数人がこちらを見て、明らかに笑っている。それに対し「いや、その……これは……」と、私は一人意味無く言い訳をしようとしていた。焦るとますます行動がおかしくなってしまう……。ちょっと恥ずかしい。
「これからどちらへお出かけなんですか?」
「え。どうして」
そうためらいもなく聞かれ、結城さんへ聞き返す私。……すぐに後悔した。
「真っ直ぐ帰らずに駅にいるからですよ。だって花音さん、いつも笑えそうなくらい帰宅ルート同じじゃないですか」
「……笑えそうなって。笑ってますよね、実際」
突然現れて、失礼だ。
クスクス笑いを全く隠さない結城さんに「ふんっ」と背を向けて、歩き辛い人ごみをそそくさ進む。
結城さんは、そんな捨て台詞の私を長い脚でスイスイと追いかけてきた。
「花音さん。そのお出かけ、私もご一緒してもよろしいですか?」
「は? 結城さん、他に何か用事があるんじゃないですか? それこそ、誰かとお出かけとかっ」
(そうそう。さっきの女の人はどうしたっ?)
見てしまった事は、あえて伏せておく。
あんな意味有り気な雰囲気を出しておきながら、アッチは放って置いてコッチ……というのは、どう考えてもおかしい。たまたま見かけたからからかいに来たというのなら、とんだ有難迷惑だっ。
「そんなものありませんよ? 仕事も、つい先程終わりましたし……」
「へぇー。……それはそれはお疲れ様です!」
人込みでもたもた、あわあわしてる私と大違いで、彼の動きはしなやかで優雅だ。
必死に引き離そうとしてるのに距離は変わらず、横で飄々としてる結城さんに私はなんだか腹が立ってきた。
(あんなの、仕事なワケないじゃんっ!)
結城さんの仕事は知らないけど、あの女性は明らかに仕事絡みとは思えない。
つい先程っていつさ! と、心の中で言いながら、無言で歩く。ひたすら歩く。
この感じ……。嘘を吐かれたみたいで、妙に居心地が悪いって……なんなんだろう。
いや、だけど。でも。
結城さんにだって、隠したいプライベートはあるはずでしょう? もしこの人がそれを嘘で隠したとしても、私がモヤモヤする必要は無いでしょうがっ。
「それで、どこへ行くんですか? 花音さんの行く所は大体想像つきますけど」
「まさか。どんな想像ですかソレ……」
「雑貨屋かコーヒーショップ。貴女は一人で洋服を見に行きたい願望はあるものの、ショップ店員に話しかけられるのが苦で足は遠のきがちです。
その点、雑貨屋とコーヒーショップはのんびりじっくり自分の世界を楽しめますからね。独りに慣れ親しんだ花音さんにはもってこいの場所、という訳です」
「……」
(モヤモヤ、というよりイライラッとくるじゃないの! 私のプライベートはどこに行ったんだ!)
想像が生々しい。どこで見てきたんだという位、私のパターンを知っている。ここまで来ると結城さんの何でも知ってる感が少し怖い気がした。この人、どうやって他人の情報を仕入れてくるの?
「今日のところは、まず雑貨屋という感じじゃあないですか? そこでしばらく時間を置けば、好きなものも見られるし、無理矢理くっついてきたうるさい隣人も追い払える。……男性はああいう場所が苦手ですしね、大抵」
「……」
「私が居辛くなると踏みましたか。中々考えますねぇ」
「分かってるなら遠慮したらどうですか」
怒る気力も無くなって、私の言葉は溜息まじりになっていた。そこまで分かっているのなら、私の今日の気分もいっそ悟って欲しいものだ。
いつもなら帰る所を寄り道する気分。
独りで気分転換したい行動の意味。
何でも知ってる感をチラつかせるなら、ここで力を発揮してくれてもいいのに。
「私なら、雑貨屋のウィンドウショッピングに付き合うなんて事はもう慣れていますので……大丈夫ですよ? 心おきなく楽しんでください」
「そーじゃなくてっ!」
「“そうじゃなくて”?」
「だから……っ」
もぅ! もうもうもうっっ!
(なんなのよ! 本当さっきから!)
――駅の人込みは苦手だ。人の波は不規則で、自分の行きたい方向をすぐ遮られたりするから。それに、街中を行く人達より先を急ぐ人が多いせいか、構内の空気は数秒濃縮されてる気がして目まぐるしく息苦しい。考えも上手くまとまらなくなってくる。
だから“コレ”はそのせい。
自分の考えを見透かされた事に動揺するより、結城さんの発言に動揺してるとか。可笑しすぎるもん。苦手な人ごみにもまれて、私の頭はオーバーヒート気味なんだ。
「何か怒ってませんか? 花音さん」
「いいえ? “ません”が?」
足に力が入って、靴音が乱暴に聞こえる。苛々してる気持ちを口調では誤魔化しても、こういう細かなところで出してしまえば台無しだ。
「やっぱり怒ってるじゃないですか。口調も歩調も」
「……」
しまった。
歩調だけだとばかり思ってたのに、口調もどうにも出来てないらしかった……。
「別にそんな事無いです。普通です。いつも通りですっ」
「へぇ……。私はてっきり、勝手についてきて何様なんだ! くらい思われてるかと」
「……」
「では、逆に少し自惚れる事にしましょう。花音さんの今のそれって……、つまりはヤキモチってコトですよね?」
「は?」
はい? ヤキモチ?
ちょっとちょっと。話をよーく聞いてほしい。まったくもって何故そうなっちゃう?
「どこからそんな話が! それになんで私がヤキモチなんて!」
「だって花音さんの怒り方、すごく可愛らしかったものですから」
「へっ!? かわ……っ!? や、やめてください変な事言うのっ」
「ホラ、そういうのですよ。コロコロ変わる表情も……本当、可愛いですねぇ」
可愛いという言葉を抵抗なく使うのは大体女性、と相場が決まってる。男性が躊躇無く使うなんて、何か裏がある時。
と、私は考えることにした。結城さんという人間の存在を知ったからだ。
案の定、結城さんは裏に何か隠してるっぽい。ニコニコ笑う姿が怪しげに見えてならない。
……そう思うのは、警戒心強過ぎ? いやいや。彼相手にそれはないだろう。
「ヤキモチって。そういう風に見えるなんて、結城さん変ですよ。私は……ただイライラしてるだけですから」
「イライラ? 何に?」
「何にって……」
そういえば。なんだろう?
考えてみる私。結城さんはそんな私を首を傾げながら見ていた。刺さりそうな視線を感じて、歩きながら思わず目を逸らす。
(見過ぎでしょ! やりづらいなぁ。もうここは思考に徹して無視しとこう……。えっと、イライラの元は?)
“雑貨屋に付き合うのは慣れてる”っていうことに、疑問が沸いています、ってコト……?
一体誰に付き合って行ってるんですか?
さっきの女性? それとも別の?
やっぱり結城さんってモテるんですね!
「…………」
――ヤ、ヤキモチみたいじゃんっ!
「いやっ、これは違います!」
突然発した私の言葉に、数人が振り向いたり二度見したりした。……まあ、無理もないか。駅の人込みで叫んだら。
一方の結城さんは、無言だったけど顔を逸らし思い切り肩を震わせている。笑われてるのは一目瞭然だった。その様子で、私の考えてる事が結城さんには全部お見通しなのだと分かってしまう。
わー……。逃げたい気分なんですけど。
「とにかく! 私は今日気分転換をして帰りたい日なんです。独りで物思いに耽りたい日なんです!」
足早に、というか最早駆け足に近い状態で、私は改札口を目指した。目的地は人が多いせいでやけに遠く感じる。
「だから……」
すぐ真後ろに長身の存在を感じながら、それでもそれから一歩でも離れたくて、歩幅を意識して大きくした時だった。
身体が、グイッと後ろに引っ張られた。手首に圧力。すこし痛い位の刺激に驚く。
「それなら尚更、」
結城さんはニッコリと笑う。私の手首を掴む力とは真逆な柔和な笑顔が、かえって怖い気がした。
「私は花音さんにお付き合いしなければね」
「え……。なんでですか」
「独りになるなんて許せませんから。特に今日は」
「は? ……えっ!? ちょ、結城さん! どこ行くんですかっ」
――嘘の笑顔だ。
彼の張り付いた様な微笑みを見て、咄嗟にそう感じた。
私の手を掴んだままの結城さんは、そのまま回れ右をしてズンズン歩き出す。引きずられる勢いで私は来た道を戻るはめになった。
でも、「嫌だ」とその手を振り払えない。もちろん、力で勝てないからという理由もあるけれど、それ以上に気になる事があったからだ。
全く分からない、前を行く結城さんの表情。何故こんな事をするのか読めない心理。結城さんは私の事をなんでも知ってるみたいなのに、私は彼の事を何一つ知らない。……また悪い癖が出てるようだった。
『怖いモノ見たさ』
『ちょっとした好奇心』
気になる。気になる。
気になって仕方がない。
結城さんの背中と斜め後ろから見上げる彼のシャープな顎のラインを盗み見ながら、私は速いスピードで景色が変わっていくのに驚いていた。
結城さんは人込みを歩くのが凄く上手い。まるで、周りの人が結城さんの為に道を開けているんじゃないかと錯覚する程スムーズに前へ進む。
(すごい。ちょっとした特技だよね、コレ)
……そんな小さなくだらない事でも、知りたい欲求が満たされ喜んでる自分がいた。なんか意外。
あれ?
もしかして、今一番気にすべきコトっていうのは、自分のこの感情なのかもしれない――?
いつも通り真っ直ぐ家路につこうか。それとも、たまにはどこかへ寄ってショッピングなどして、気分転換をしようか。
朋絵が同じ時間にバイトが終わるのなら、カフェでお茶という選択肢もあったのだけど……。それは無いかな。
今日の彼女のシフトは五時までで、待つには時間が長すぎる。いや、今日に限ってはそれで幸い、ということにしとかなきゃ。
カフェでお茶なんて、午前中朋絵が言ってた様に、私が遭遇した事云々を説明したり告白させられる破目になるもの。話すのが嫌という訳ではないものの、まだ自分でも頭の中を整理出来ていない話をするのは、少し抵抗があるし……。
(許せ、朋絵っ)
逃げたー! と、騒ぐ朋絵の姿を想像しながら、私はそそくさと店を後にする。
向かうは駅。
やっぱり今日は、どこかへ寄ってから家に帰ろう。
朝、偶然乗り遅れたバスが事故を起こした事を思う。今日はそういう日なのかもしれない。いつもと違う行動をした方がいいですよ、ってカミサマが教えてくれてる日――。
***
駅へ向かう道は、いつもと変わらない人通りだった。道路も朝の騒然とした様子をすっかり消して、何もなかったみたいに通常。土曜日の少し混雑した午後の姿。
ただ、時折歩く人たちが道を指さしたり、そちらに目を向け何か話してるのを見ると、そこは数時間前大きな事故があった場所なんだと再認識させられる。
お昼の休憩時間に事務所で見たテレビでは、この場所が何度も映され、目撃者のインタビューやCGを使った事故の推測等がひっきりなしに放映されてたっけ。
朋絵は、私に気を遣ったのか途中でテレビを消してしまった。事故の犠牲者が車内でどの位置関係だったかを検証していた時だ。
数人出てしまった死者は、みんな右側後部座席に乗車していた。そこは、私がいつも好んで座る場所でもあった。
運が良かった、と大きな声で笑う気には、とてもなれない。亡くなった人の冥福を祈るのも、今はなんだか少しだけ申し訳ない気分で。
ふと、すれ違った人が俯きがちで真白な花束を抱えるのを見たら、私も同じように俯いてしまう。反対車線に止まっているテレビ局のロケ車からも、逃げるように足を速めた。
とにかく、駅前の雑踏に紛れてしまいたかった。
駅ナカの、話題のお菓子を買って帰ろうかな。数駅先の大きな駅ビルで新しい洋服を見るのもいいし、大好きな雑貨屋を覗いた後に一人カフェもイイ感じだ。
気を紛らわす意味も込めて、私は頭の中で色々今後の予定を巡らせてみる。効果はあったみたいで、足取りはちょっと軽くなった。
でも、歩きながらカバンからパスケースを取り出した時だ。「……え?」人波の隙間に、見逃せない人物を発見したのは。
「……結城さん?」
何故か足が止まった。軽かった脚が急に重くなる。
行き交う人に視界を何度も遮られる中、柱に隠れるようにして立っているのは、確かに結城さんだ。あの長身、間違いない。
(なんでここに……)
ここで彼が柱の陰からジッと私を見ていたら、私は悲鳴を上げながら逃げ出していただろう。
そうしなかったのは、結城さんがストーカーチックにこちらを見ていなかったから。
つまり、結城さんは私に全く気付いておらず、その目はむしろ違う方へ向けられていたのだ。
(なにしてるのかな?)
結城さんの真剣な目つきが気になり、私は人ごみでチカチカする視界の向こうを必死で探っていた。
結城さんは誰かと話している。長身が柱に向かって語りかけている様に見えるのは、柱に寄り添うようにして立っている人物がそこにいるからだ。
ずっと何かを話している結城さんは、どうやら相手を説得してるみたいだった。真っ直ぐその人を見る瞳が、すごく重い雰囲気で。
ザワザワとうるさい周りの音が、私の中で一瞬消えた。代わりに一瞬、自分の心臓の音が大きくドクンと響く。
「誰……? あのひと」
とか呟いた自分が意外。彼氏の浮気現場を見た人って、まさかこんな気分なんだろうか?
(……そんな馬鹿な。なんで私が結城さんにそんな事思うわけ? おかしいでしょ。大体彼氏でもなんでもないしっ!)
結城さんと話している人は、小柄な女性だった。
薄いピンクの生地に赤い水玉のワンピース。ストレートのロング、色白の綺麗な横顔。……そして、悲しそうな顔。
結城さんは彼女に語る。やがて彼女が小さく頷くと、結城さんも頷いて。笑った。
優しい微笑み。
彼女のさらさらとしたストレート髪を撫でる手。
……もう、見てられない。
見てはいけないものを見てしまった、何とも言えない後味の悪さに、私は二人から目を逸らしていた。
誰だろう。
どういう関係なんだろう。
何を話してるんだろう。
短い時間で頭の中は疑問でいっぱいに。プチ混乱。
別に、結城さんが気になって……という訳じゃない。知ってる人の興味深いシーンを見てしまったからだ。それだけだ、それだけ。
ドキドキしながら、私はずらしていた視線をまた元の場所に戻した。
なんかとても雰囲気良さそうに見えた二人だったから、つい遠慮したけど……。こういう時も、私の“怖いモノ見たさ”は働くらしい。
ん? 怖いもの見たさって……何が?
「あれ?」
戻した視線の先に、想像していた姿はなかった。
柱の所には誰もいない。私の前には、行き交う人だけ。立ち止まって話をしている人はあちこちにいたけど、その誰も結城さんとさっきの女性ではなかった。
いつの間に、二人はいなくなってしまっていたのだ。
「いない……」
えーと……この場合、何というべき?
私はひとり苦笑しながら首を傾げる。
ドラマのおいしいシーンを見逃したような……。逆に損した気分になるシーンを見ないで結果良かったような……。複雑、なんですけど。やっぱり自分の気持ちがよく分からない!
あっという間の出来事だったので、なんだか夢でも見ている気分だった。そもそも結城さんとこの駅で会うなんてのも、凄い偶然なのだ。夢と言われたら信じてしまいそうだ。
うーん。それにしても、今日は本当に偶然という二文字がキーワードの様。はてさて、次に来る偶然は?
なんて茶化していたら。
「これは花音さん。珍しいですね、ここでお会いするとは」
「っう、ぉあ!?」
良く知ってる声、口調。結城さんだ。一瞬見失った人は、背後に現れた。
突然耳元でぼそりと囁かれ、私は「一体どこから出したんだ?」と言われかねない変声を出してしまった。辺りの数人がこちらを見て、明らかに笑っている。それに対し「いや、その……これは……」と、私は一人意味無く言い訳をしようとしていた。焦るとますます行動がおかしくなってしまう……。ちょっと恥ずかしい。
「これからどちらへお出かけなんですか?」
「え。どうして」
そうためらいもなく聞かれ、結城さんへ聞き返す私。……すぐに後悔した。
「真っ直ぐ帰らずに駅にいるからですよ。だって花音さん、いつも笑えそうなくらい帰宅ルート同じじゃないですか」
「……笑えそうなって。笑ってますよね、実際」
突然現れて、失礼だ。
クスクス笑いを全く隠さない結城さんに「ふんっ」と背を向けて、歩き辛い人ごみをそそくさ進む。
結城さんは、そんな捨て台詞の私を長い脚でスイスイと追いかけてきた。
「花音さん。そのお出かけ、私もご一緒してもよろしいですか?」
「は? 結城さん、他に何か用事があるんじゃないですか? それこそ、誰かとお出かけとかっ」
(そうそう。さっきの女の人はどうしたっ?)
見てしまった事は、あえて伏せておく。
あんな意味有り気な雰囲気を出しておきながら、アッチは放って置いてコッチ……というのは、どう考えてもおかしい。たまたま見かけたからからかいに来たというのなら、とんだ有難迷惑だっ。
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つい先程っていつさ! と、心の中で言いながら、無言で歩く。ひたすら歩く。
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いや、だけど。でも。
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「それで、どこへ行くんですか? 花音さんの行く所は大体想像つきますけど」
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「雑貨屋かコーヒーショップ。貴女は一人で洋服を見に行きたい願望はあるものの、ショップ店員に話しかけられるのが苦で足は遠のきがちです。
その点、雑貨屋とコーヒーショップはのんびりじっくり自分の世界を楽しめますからね。独りに慣れ親しんだ花音さんにはもってこいの場所、という訳です」
「……」
(モヤモヤ、というよりイライラッとくるじゃないの! 私のプライベートはどこに行ったんだ!)
想像が生々しい。どこで見てきたんだという位、私のパターンを知っている。ここまで来ると結城さんの何でも知ってる感が少し怖い気がした。この人、どうやって他人の情報を仕入れてくるの?
「今日のところは、まず雑貨屋という感じじゃあないですか? そこでしばらく時間を置けば、好きなものも見られるし、無理矢理くっついてきたうるさい隣人も追い払える。……男性はああいう場所が苦手ですしね、大抵」
「……」
「私が居辛くなると踏みましたか。中々考えますねぇ」
「分かってるなら遠慮したらどうですか」
怒る気力も無くなって、私の言葉は溜息まじりになっていた。そこまで分かっているのなら、私の今日の気分もいっそ悟って欲しいものだ。
いつもなら帰る所を寄り道する気分。
独りで気分転換したい行動の意味。
何でも知ってる感をチラつかせるなら、ここで力を発揮してくれてもいいのに。
「私なら、雑貨屋のウィンドウショッピングに付き合うなんて事はもう慣れていますので……大丈夫ですよ? 心おきなく楽しんでください」
「そーじゃなくてっ!」
「“そうじゃなくて”?」
「だから……っ」
もぅ! もうもうもうっっ!
(なんなのよ! 本当さっきから!)
――駅の人込みは苦手だ。人の波は不規則で、自分の行きたい方向をすぐ遮られたりするから。それに、街中を行く人達より先を急ぐ人が多いせいか、構内の空気は数秒濃縮されてる気がして目まぐるしく息苦しい。考えも上手くまとまらなくなってくる。
だから“コレ”はそのせい。
自分の考えを見透かされた事に動揺するより、結城さんの発言に動揺してるとか。可笑しすぎるもん。苦手な人ごみにもまれて、私の頭はオーバーヒート気味なんだ。
「何か怒ってませんか? 花音さん」
「いいえ? “ません”が?」
足に力が入って、靴音が乱暴に聞こえる。苛々してる気持ちを口調では誤魔化しても、こういう細かなところで出してしまえば台無しだ。
「やっぱり怒ってるじゃないですか。口調も歩調も」
「……」
しまった。
歩調だけだとばかり思ってたのに、口調もどうにも出来てないらしかった……。
「別にそんな事無いです。普通です。いつも通りですっ」
「へぇ……。私はてっきり、勝手についてきて何様なんだ! くらい思われてるかと」
「……」
「では、逆に少し自惚れる事にしましょう。花音さんの今のそれって……、つまりはヤキモチってコトですよね?」
「は?」
はい? ヤキモチ?
ちょっとちょっと。話をよーく聞いてほしい。まったくもって何故そうなっちゃう?
「どこからそんな話が! それになんで私がヤキモチなんて!」
「だって花音さんの怒り方、すごく可愛らしかったものですから」
「へっ!? かわ……っ!? や、やめてください変な事言うのっ」
「ホラ、そういうのですよ。コロコロ変わる表情も……本当、可愛いですねぇ」
可愛いという言葉を抵抗なく使うのは大体女性、と相場が決まってる。男性が躊躇無く使うなんて、何か裏がある時。
と、私は考えることにした。結城さんという人間の存在を知ったからだ。
案の定、結城さんは裏に何か隠してるっぽい。ニコニコ笑う姿が怪しげに見えてならない。
……そう思うのは、警戒心強過ぎ? いやいや。彼相手にそれはないだろう。
「ヤキモチって。そういう風に見えるなんて、結城さん変ですよ。私は……ただイライラしてるだけですから」
「イライラ? 何に?」
「何にって……」
そういえば。なんだろう?
考えてみる私。結城さんはそんな私を首を傾げながら見ていた。刺さりそうな視線を感じて、歩きながら思わず目を逸らす。
(見過ぎでしょ! やりづらいなぁ。もうここは思考に徹して無視しとこう……。えっと、イライラの元は?)
“雑貨屋に付き合うのは慣れてる”っていうことに、疑問が沸いています、ってコト……?
一体誰に付き合って行ってるんですか?
さっきの女性? それとも別の?
やっぱり結城さんってモテるんですね!
「…………」
――ヤ、ヤキモチみたいじゃんっ!
「いやっ、これは違います!」
突然発した私の言葉に、数人が振り向いたり二度見したりした。……まあ、無理もないか。駅の人込みで叫んだら。
一方の結城さんは、無言だったけど顔を逸らし思い切り肩を震わせている。笑われてるのは一目瞭然だった。その様子で、私の考えてる事が結城さんには全部お見通しなのだと分かってしまう。
わー……。逃げたい気分なんですけど。
「とにかく! 私は今日気分転換をして帰りたい日なんです。独りで物思いに耽りたい日なんです!」
足早に、というか最早駆け足に近い状態で、私は改札口を目指した。目的地は人が多いせいでやけに遠く感じる。
「だから……」
すぐ真後ろに長身の存在を感じながら、それでもそれから一歩でも離れたくて、歩幅を意識して大きくした時だった。
身体が、グイッと後ろに引っ張られた。手首に圧力。すこし痛い位の刺激に驚く。
「それなら尚更、」
結城さんはニッコリと笑う。私の手首を掴む力とは真逆な柔和な笑顔が、かえって怖い気がした。
「私は花音さんにお付き合いしなければね」
「え……。なんでですか」
「独りになるなんて許せませんから。特に今日は」
「は? ……えっ!? ちょ、結城さん! どこ行くんですかっ」
――嘘の笑顔だ。
彼の張り付いた様な微笑みを見て、咄嗟にそう感じた。
私の手を掴んだままの結城さんは、そのまま回れ右をしてズンズン歩き出す。引きずられる勢いで私は来た道を戻るはめになった。
でも、「嫌だ」とその手を振り払えない。もちろん、力で勝てないからという理由もあるけれど、それ以上に気になる事があったからだ。
全く分からない、前を行く結城さんの表情。何故こんな事をするのか読めない心理。結城さんは私の事をなんでも知ってるみたいなのに、私は彼の事を何一つ知らない。……また悪い癖が出てるようだった。
『怖いモノ見たさ』
『ちょっとした好奇心』
気になる。気になる。
気になって仕方がない。
結城さんの背中と斜め後ろから見上げる彼のシャープな顎のラインを盗み見ながら、私は速いスピードで景色が変わっていくのに驚いていた。
結城さんは人込みを歩くのが凄く上手い。まるで、周りの人が結城さんの為に道を開けているんじゃないかと錯覚する程スムーズに前へ進む。
(すごい。ちょっとした特技だよね、コレ)
……そんな小さなくだらない事でも、知りたい欲求が満たされ喜んでる自分がいた。なんか意外。
あれ?
もしかして、今一番気にすべきコトっていうのは、自分のこの感情なのかもしれない――?
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◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
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