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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第102話 訪れた未来
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あの人が居なくなってから15年…
私たちの街を作った人が居なくなって15年…
オレ達のリーダーが居なくなって15年…
それぞれにとっての大賢者が居なくってから15年の月日が流れていた。
わずか15年の間に多くの事が起こっていた。
多分、その中でも一際大きな事と言えば2つだろう。
一つは、大賢者が作ったこの街が隣国に支配された事。
そして…2つ目は…。
「はっはっはっはっ!だいぶ剣筋が良くなってきたな!!
あの人の子どもだから魔法適正の方が高いと思い込んでいたが、母親似なのかトリッキーな剣技が本当に得意になってきたな!!」
勇者ちゃんことエステレラと共に剣のトレーニングをしている黒髪に綺麗な緑色の瞳の少女。
勇者エステレラは彼女をさらりとこう呼んでいた。
【あの人の子ども】と。
そう、私は…、【大賢者の子ども】だ。
「会った事もない父親の話なんかしないでよエステレラさん。アイツは…私達の故郷が奪われる事になった元凶なんだから…。」
「いけないなぁ…そう言う事言うのはいけないぞ!リィン!こんな事聞いたら賢ちゃんが悲しむぞ!!」
「賢ちゃんて…。貴女は私の父と本当に仲が良かったんですねっ!!なんだか無性に腹が立ちます!!」
エステレラさんもこの15年で相当な強さを手に入れてる筈、本気で相手してもらえてないのはわかってるけど…、こう簡単にいなされてかつ見たこともない父親の話をされるのは何かこう…腹が立つ…。
腹が立つのでさっきからそれはもう大振りでブンブンと剣を振り回してしまう。
「まったく…同じ双子でもこうも差が出るものだとはな!
実に面白い!興味深い!妹のリイヴェルは魔法適性が強い上に魔王側に懐いた所も私たちと正反対で面白い!
ほら、リィン!昔みたいにおねぇさまと呼んでも良いんだぞ!!ほらっ!ほらっ!!」
「あぁ!もうっ!ウッッザイですよエステレラさん!!」
私は上空へジャンプして飛び上がり、ありったけの魔力で剣を塔のような大きさの大剣に変形させ、勢いよく投げつけた。
「おぉ~!教わった訳でもないだろうに父親も時々使ってた技だな!!ハハハハハ!」
油断してるところで剣を大量のダガーサイズに再度変形させて降り注がせる。
「ハハハハ!油断してたがこれでやられる勇者ちゃんではないのだ!!ソイヤッ!!!」
それを、剣を天高く掲げて光らせた後、たった一振りで全て消滅させて見せた。
勇者の名はやはり伊達ではない。悔しいが…。
「ふふん!今日も私の勝ちだな!精進したまえ!」
「ほんっとムカつく…。マジ強過ぎんだろこのハイテンション勇者…。」
「だが、リィンがまだまだ弱過ぎる!と言う訳ではないんだぞ?ただ、私達に追いつくにはまだ時間が足りてないと言うことだ!」
「だけど!他のロイヤルナイツの人たちは、今の私と変わらないくらいの年齢でとんでもない強さを誇っていた…。そうでしょ?」
エステレラさんは私の頭をポンポン叩くつもりなのだろうがばっしんばっしん叩きながら
「あれも本当に自分たちの強さかは怪しいもんだ!私もな!ワイズマンがくれたアーティファクトが肉体と魂を作り替えた可能性も否定できないからな!
リィンのそれも、あの人が残した形見のようなものだ。
ちゃんと受け入れて力を使えば、それはもう凄い力をくれる筈だ!」
「受け入れられるかよ…。会ったこともない父親の力なんて…。」
お母さんから聞いた話では、初めての夫婦喧嘩をしたその日にそのまま姿を消して帰ってきてないと聞く。
その上、お母さんに刻まれた奴隷紋が消えたことや、それでも皆の記憶から消えてない事から死んだんじゃないかって言われてる。
そんな最悪の最後でお母さんを泣かせた男のことなんか…。
「本当にリイヴェルとは正反対だな…。あの子はむしろ父親の残した力を自ら研究して使いこなそうと必死だが…。」
「だから比べんなっつーの…。私は私。リイヴェルはリイヴェルだし…。そういえばエステレラさん、うちの妹の方は今どこで何してんの?」
「リイヴェルは魔王ちゃんと一緒に、北の大地でワイズマンが残したアクセサリーの力を使う為に修行してると聞いてるぞ!」
ふぅん…。
まぁ、どうでもいっか…。
実は双子の妹のリイヴェルとは互いに旅に出て以降ろくに顔を合わせて無い。
父さんに対するこの正反対の考えで大喧嘩したのも理由の一つである。
ただ今となってはそれが私と妹のリイヴェルとの決定的な差になっている。
私は父の残したヴァリアブルソードを変形させたり増やしたりする程度にしか使えない。
だけど妹のリイヴェルは父の残した焔皇の力をも引き出せるまでになってるとかなんとか…。
「さて、そんな事よりもだ!
例の噂についてはリィンも聞いたんだろう?どうするんだ?」
「また、根も歯もない噂でしょう?隣国の領地になった西の都にワイズマンのような力を使う男が現れただなんて…。」
「うーん…。まぁ今回も自分をワイズマンと信じたいだけのイキってるただの魔法使いの類だとは思うのだが…。
ただ、私個人としても、かつて彼と共に戦ったロイヤルナイツの仲間としても、確認しないと落ち着かなくてな!」
などと言ってるけど、実はこの手の噂は父が行方不明になって以降何度も起こっている。
それほど父は偉大な人だったのだろうと思う。
悔しいけど。
ただ、その噂を聞きつけてこの大陸のあらゆる場所に出向き事の真相を確かめる度に出会すのは、自称ワイズマンのしょぼくれた魔術師ばかり…。
いい加減飽きた感の方が強い。
ただ、死んだかもしれない父がもしかしたら生きているかもしれない。
誰もがそう思うからこそ、確かめずにはいられず、父に関わった人間皆がさまざまな地で情報を集め父を探し続けていた。
「エステレラさん、どうせまた行くだけ時間の無駄だって…。その上どうせ待ってれば結果だけ私たちの耳に入ってくるんだし…。」
「そうは言うがリィン。お前だって生きてるのを疑ってるわけじゃないだろう?
数ヶ月前、君たちが旅に出るきっかけになったあの日…。
君たちだけは確かに見たんだろう?
私たちが知る彼のようなとんでもない力を使う魔導士を…。」
「うん…、見た。
私たち2人が隣国の聖豪騎士団にワイズマンの血を継ぐ危険人物だからと殺されそうになった時、その人は現れた。」
そう、あれはほんの数ヶ月前…。
私達2人がセントラルと呼ばれるようになったこの大陸の中央皇国城下町で買い物をしていた時のことだった。
金髪の如何にも真面目そうな大人の男に急に声をかけられた。
「君たち2人に問いたい事がある。ワイズマンと言う男の事は知ってると思うが、その髪の色に瞳の色…。
もしや君達は彼の娘ではないか?」
父から継いだ黒髪に叔母である皇女殿下と同じ青い瞳と母と同じ緑色の瞳のオッドアイの私達。
二卵性の双子の私たちだけど、まるで鏡写のように反転したオッドアイ。
私リィンは左目が青、妹のリイヴェルは右目が青と言う特徴を持っていた。
その特徴を事前に知っていれば、ただでさえ珍しいオッドアイである以上誰もが気づくだろう。
なので私たち2人はまた父のファンか何かだろうと言う軽い気持ちでその通りだと答えた。
それがいけなかった。
「そうか…。やはり君たちが…。特徴は知っていたが探すのには実に苦労したよ。
だが、実に目立つその瞳のおかげで噂を追うのだけは楽だったがな。」
「父のファンの方ですか!?よろしければ私たちが生まれる前の父の武勇伝をたくさん聞かせてください!是非是非!」
妹のリイヴェルは目の前の男の手をなんの疑いもなく取り、ぶんぶんと握手している…。
「リイヴェル。その手を離さ…いえ、むしろ強く握ってなさい。
この男の目、どう見ても好奇の目じゃない。殺気を孕んでる…。」
「懸命な判断だな。えーと…聞いてた特徴によれば短髪の方が姉の方だったか?」
「そうね。その通りよお兄さん。で、アンタ何者?」
手を強く握られたまま金髪の男が答える。
「そうだな。どうせなら名乗っておこう。
私は聖業騎士団が団長…。名をカイザと言う。
まぁ覚えておかなくても構わない。
私の目的はどうせ察してるだろう?」
私は身構えてズボンのベルトフックにつけているヴァリアブルソードに変化するペンダントトップに手を伸ばそうとする。
だが…。
「っ!!おねぇちゃん後ろ!!」
目の前の敵に集中しすぎて油断してた。
後ろにいた別の男にペンダントトップを握った直後に手を捻られ、ペンダントトップを落としてしまった。
唯一の武器が手元から離れてはろくに戦えない…。
この状況はだいぶまずい…。
「妹さんの方もその手を離す事だ。
お姉さんの首が目の前で飛ぶことになるぞ?
まぁ、どちらにせよ殺すつもりなのに変わりはないが…。」
もう1人の男が私の首筋にナイフを当てながらそう言うと、リイヴェルはカイザの手を離し、見えないように胸元に隠してる焔皇のネックレスの力を発現させようとする。
「させませんよ。」
カイザはヒュンッと短剣をふり、ネックレスを下げていた革紐を切り落とす。
「さて、殺すにしても人目につく場所で流血沙汰は流石にまずいですね。一度眠らせて森にでも運び込みますか…。」
武器を奪われた私たちは、互いの身を案じ何も抵抗できないまま催眠魔法で眠らされてしまった…。
どれほど時間が経ったかわからないまま目を覚ますと私達2人はそれぞれ別々に木に縛り付けられていた。
「ようやく目を覚ましていただけましたか。
どうせ殺すなら互いに痛めつけて絶望する様を見せつけながらと思いましてね。ずっと待ってたんですよ。」
目の前には複数の男に長剣を向けられた妹の姿。
私の首元にも剣が突きつけられている。
「サイッテーな趣味ねアンタ…。良い顔してるからてっきり優しい素敵なお兄さんだと思ってたのに…幻滅したわ…。」
「仲間内では優しい人だとよく言われますよ?まぁ…敵に対しては情け容赦はしませんが…。」
「敵…ね。ろくに顔すら見たことない父親のせいで痛ぶられながら殺されるなんて、本当に最低の気分だわ…。クソが…。」
お互い眠ってるうちに慰み者にされてないだけまだマシか…と思いつつ、これからどんな殺され方をされるのかと考えてしまうと正直震えが止まらない。
殺されるならせめて苦しまずに一太刀でとかも考えてしまう。
「命乞いをするならしても構いませんよ?まぁもっとも、この場所周辺にループ系の転移結界を張ってあるので、誰1人とここに辿り着く前に別の出口に向かってしまうでしょうし、あなた方の声も外には聞こえないでしょうけどね。
なんなら…その会ったことすらない父親に助けを求めても良いんですよ?
ま、死んだ人間が助けになどくるはずもないでしょうがね…。」
「お父さんは死んでません…。お母さんのことを心から愛してるお父さんなら…お母さんを悲しませたまま死ぬなんてこと絶対にありません!」
「やめてよリイヴェル。なんか虚しくなるから。
大体、あいつが生きてるわけないでしょう…?
本当に生きてたら絶対に15年も母さんをほっとくわけないだろうし、きっと私たちがこうやって攫われる前に助け出してくれてる。みんなが語る通りの人ならそう言う人のはずだもの…。」
ピンチの時こそヒーローが…なんていうけど、そんな都合良くヒーローなんか現れることはない。
現れるなら、そもそも西の都が隣国に奪われる前にとっくに現れてる筈だろう。
もう、諦めよう。虚しいだけだ。
「ふぅ…さて、ではどっちから剣を突き刺していきましょうかねぇ?
樽に剣を突き刺して人形が飛んだら負け~みたいな感じで、姉と妹交互に剣を突き刺して、先に殺した方が負けみたいな遊びを考えていたんですが…。」
「ほんと…、良い顔して考えが最低ねアンタ…。
きっとロクな死に方しないんじゃない?」
そう言うと、カイザは私の腹に短剣を突き刺した。
「うぐぅぅうっ!!ああぁぁぁっ!!」
「口の悪い姉の方からにしますか。次、貴方達、妹の番ですよ。」
「やめ…、やめ…ろぉ…!」
私が苦しむ姿を先に見て、涙を浮かべた妹の腹に同じく短剣が突き刺される。
本当にこいつらは私達のことをゲームのようにして殺すつもりのようだった。
「いだぃぃいいっ!痛いよぉっ!お姉ちゃん!」
「さて、では2本目はどこに刺しましょうか。流血量や急所を避けて刺さないと…すぐに死んじゃいますからね。」
そして私に2本目の剣が突き刺されようとしたその時、その人は現れた。
「喰らえ。暴食の琰(ほのお)。」
とても低いそれはもうダンディな声と共に私達の周りを、一気に巨大な炎が包み込む。
炎は一気に私達の周りの男どもを包み込むと一瞬で消え去った。
が、炎が消えたその後には誰も火傷ひとつ負ってなかった。
「なんだ…?ハッタリか?驚かせてくれる…。いや…まて…。なんだこれは…。
剣が…一本も手元にない…?先程突き刺した剣も…。
いや、それ以上になぜこの空間に侵入できている…!?」
「殺意ある物をこの炎で喰らっただけだ。
ついでにその殺意もな。だからテメェの部下は殺意を失ってそこで呆けてるってぇわけだ。
だってぇのに…テメェは戦意も殺意も失ってねぇみてぇだな。
いや、殺意は最初からねぇのか。テメェ…痛ぶるのを娯楽のように楽しんでやがったな?」
黒いハットを深々とかぶってる上に茶色いレンズの眼鏡をかけていて顔は良く見えてないが、声も雰囲気もダンディなイケボの白髪のお兄さんが私たちを助けてくれた。
「チッ…。何者かは知らないが…せっかくのゲームを…邪魔しないでもらおうか!!」
「ケッ、イキのいい雑魚キャラだな。」
赤いコートをバサッとはためかせながら、ダンディイケボ白髪お兄さんがカイザから距離をとる。
「おい、嬢ちゃん達。さっき街で拾っといたオメェらのこれ。ちっと借りんぞ。」
そう言うと、ダンディイケボ白髪お兄さんはヴァリアブルソードと焔皇のネックレスの力を発現させ、肉切り包丁のような形の大剣を作り出し白い炎を纏わせる。
「ま、こんなもんか。」
「ほう…それを使える人間が居るとは驚いたな…。だが…!」
カイザが手のひらに魔力を集中させ黒い魔剣を生成していく。
「その程度の魔法なら私も使えるんですよ!」
「ほう、そうか。」
カイザが生成した魔剣を振り下ろし、ダンディ(以下略 に斬りかかった。
「なんだ?こんなもんか?」
魔剣はあっけなくダンディ(以下略 の剣で叩き切られてしまった。
「ケッ。呆気ねぇ…。さぁ、選べ。
道を開けるか。くたばるか。」
「貴様‥まさか…ワイズマンなのか…?だが、やつは我らが王が殺したはず…。いや、そもそも奴が死ぬ瞬間を私は見ている…!生きてるはずがないのだ…!」
「あぁっ?ワイズマン?
あぁ、あの噂の厨二病野郎か…。
あんな若造の雑魚キャラと一緒にすんじゃねぇよ。
そもそも俺のがアイツより遥かに強ぇ。なんせ生きてきた時間が違うからな。」
そう言うと、ダンディ(以下略 は剣の腹をカイザに叩きつけ派手に岩山に叩きつけて気絶させた。
「本当に呆気ねぇな。オラよ嬢ちゃんども。
こいつは返しとくぜ?ネックレスの方の革紐はオマケだ。」
そう言って白髪のお兄さんは私達のネックレスをそれぞれに投げて渡してきた。
「あ、あの!!お兄さんは…本当にお父さんじゃないんですか…?」
「あぁ、違うな。俺にオメェらみてぇな娘なんざいねぇよ。つぅか、そのワイズマンとか言う厨二病となんで俺を間違うのかが訳がわからねぇ…。」
「だ、だって…私達の…いや、お父さんが作ったこのネックレスを使えてたし!それに!私達のピンチに…かけつけてくれたから…。」
「はぁ…。そんだけの理由でテメェらみてぇなガキのパパと間違われてたまるかよ。
俺はたまたま街を歩いてたらこいつらに攫われるテメェらを見かけて、ここに来たってだけだ。
そのネックレスの力を使えた理由についちゃ、俺が使ってるアーティファクトに近い性質があったから。
そんぐれぇの理由だ。大したこたぁねぇ。」
そう言うと、白髪のお兄さんは赤いコートをはためかせながら私達の元から去っていった。
「ま、待ってよ!本当にお父さんじゃないなら、アンタは一体…!」
走って追いかけようとした瞬間、お兄さんは転移魔法で何処かへと消えてしまった。
そして、その時に私とリイヴェルは【あれはお父さんなのかどうか】と言う話で意見のすれ違いから大喧嘩して、それぞれ別々に旅に出て今に至ると言うわけだ。
「あの人がお父さんだとは私は思わない。
伝え聞くお父さんの話と比べると性格が違いすぎる気がするし…。」
「だが、確証がない以上気にもなるし、なんならもう一度その人を探し出して私たちに確認してもらいたい!
みたいなところなんじゃないの?」
「悔しいけどその通りよ…。じゃないとなんかこう…落ち着かないと言うか、心のモヤモヤが晴れないと言うか…。
てかそうだ…。今回の噂の人ってどんなやつ!?
めちゃくちゃダンディなイケボで、黒いハットに茶色いレンズの眼鏡、赤いコートに白いシャツとジーパンに茶色い靴、そんで白髪のお兄さんだったりしないの!?」
「うーーーーん…、特徴がどれも一致してないなぁ…。
今回もやっぱ偽物かも知れないな…。ま、行くだけ行ってみないかい?今回は私も同行するから!」
「まあ…ダメで元々よね…。とは言え、敵の領地に乗り込むのもどうなんだろう…。」
隣国は西の都を支配したものの、それ以上は特に侵略も戦争も行なってきていない。
だが、国境には警備兵が常に待機しており、迂闊に国境間の行き来は出来ない。
さて、どう乗り込んだものか…。
「どうせ、遅かれ早かれ取り返しに行くんだ。
真っ向から侵入してやれば良いさ。だからこそ私と行くんだから。」
「ゔぇぇぇ…エステレラさん本気…?
嫌だよ私…足手纏いだからって見捨てられて今度こそ殺されるとか…。」
「ハハハハハ!その時こそまたワイズマンかも知れない人が現れて助けてくれるさー!」
「むしろ、私を連れてくのってそれが狙いでしょ!?ちょっとエステレラさん!?」
かくして、私たちはかつて父の築いた西の都に向けて出発するのだった。
私たちの街を作った人が居なくなって15年…
オレ達のリーダーが居なくなって15年…
それぞれにとっての大賢者が居なくってから15年の月日が流れていた。
わずか15年の間に多くの事が起こっていた。
多分、その中でも一際大きな事と言えば2つだろう。
一つは、大賢者が作ったこの街が隣国に支配された事。
そして…2つ目は…。
「はっはっはっはっ!だいぶ剣筋が良くなってきたな!!
あの人の子どもだから魔法適正の方が高いと思い込んでいたが、母親似なのかトリッキーな剣技が本当に得意になってきたな!!」
勇者ちゃんことエステレラと共に剣のトレーニングをしている黒髪に綺麗な緑色の瞳の少女。
勇者エステレラは彼女をさらりとこう呼んでいた。
【あの人の子ども】と。
そう、私は…、【大賢者の子ども】だ。
「会った事もない父親の話なんかしないでよエステレラさん。アイツは…私達の故郷が奪われる事になった元凶なんだから…。」
「いけないなぁ…そう言う事言うのはいけないぞ!リィン!こんな事聞いたら賢ちゃんが悲しむぞ!!」
「賢ちゃんて…。貴女は私の父と本当に仲が良かったんですねっ!!なんだか無性に腹が立ちます!!」
エステレラさんもこの15年で相当な強さを手に入れてる筈、本気で相手してもらえてないのはわかってるけど…、こう簡単にいなされてかつ見たこともない父親の話をされるのは何かこう…腹が立つ…。
腹が立つのでさっきからそれはもう大振りでブンブンと剣を振り回してしまう。
「まったく…同じ双子でもこうも差が出るものだとはな!
実に面白い!興味深い!妹のリイヴェルは魔法適性が強い上に魔王側に懐いた所も私たちと正反対で面白い!
ほら、リィン!昔みたいにおねぇさまと呼んでも良いんだぞ!!ほらっ!ほらっ!!」
「あぁ!もうっ!ウッッザイですよエステレラさん!!」
私は上空へジャンプして飛び上がり、ありったけの魔力で剣を塔のような大きさの大剣に変形させ、勢いよく投げつけた。
「おぉ~!教わった訳でもないだろうに父親も時々使ってた技だな!!ハハハハハ!」
油断してるところで剣を大量のダガーサイズに再度変形させて降り注がせる。
「ハハハハ!油断してたがこれでやられる勇者ちゃんではないのだ!!ソイヤッ!!!」
それを、剣を天高く掲げて光らせた後、たった一振りで全て消滅させて見せた。
勇者の名はやはり伊達ではない。悔しいが…。
「ふふん!今日も私の勝ちだな!精進したまえ!」
「ほんっとムカつく…。マジ強過ぎんだろこのハイテンション勇者…。」
「だが、リィンがまだまだ弱過ぎる!と言う訳ではないんだぞ?ただ、私達に追いつくにはまだ時間が足りてないと言うことだ!」
「だけど!他のロイヤルナイツの人たちは、今の私と変わらないくらいの年齢でとんでもない強さを誇っていた…。そうでしょ?」
エステレラさんは私の頭をポンポン叩くつもりなのだろうがばっしんばっしん叩きながら
「あれも本当に自分たちの強さかは怪しいもんだ!私もな!ワイズマンがくれたアーティファクトが肉体と魂を作り替えた可能性も否定できないからな!
リィンのそれも、あの人が残した形見のようなものだ。
ちゃんと受け入れて力を使えば、それはもう凄い力をくれる筈だ!」
「受け入れられるかよ…。会ったこともない父親の力なんて…。」
お母さんから聞いた話では、初めての夫婦喧嘩をしたその日にそのまま姿を消して帰ってきてないと聞く。
その上、お母さんに刻まれた奴隷紋が消えたことや、それでも皆の記憶から消えてない事から死んだんじゃないかって言われてる。
そんな最悪の最後でお母さんを泣かせた男のことなんか…。
「本当にリイヴェルとは正反対だな…。あの子はむしろ父親の残した力を自ら研究して使いこなそうと必死だが…。」
「だから比べんなっつーの…。私は私。リイヴェルはリイヴェルだし…。そういえばエステレラさん、うちの妹の方は今どこで何してんの?」
「リイヴェルは魔王ちゃんと一緒に、北の大地でワイズマンが残したアクセサリーの力を使う為に修行してると聞いてるぞ!」
ふぅん…。
まぁ、どうでもいっか…。
実は双子の妹のリイヴェルとは互いに旅に出て以降ろくに顔を合わせて無い。
父さんに対するこの正反対の考えで大喧嘩したのも理由の一つである。
ただ今となってはそれが私と妹のリイヴェルとの決定的な差になっている。
私は父の残したヴァリアブルソードを変形させたり増やしたりする程度にしか使えない。
だけど妹のリイヴェルは父の残した焔皇の力をも引き出せるまでになってるとかなんとか…。
「さて、そんな事よりもだ!
例の噂についてはリィンも聞いたんだろう?どうするんだ?」
「また、根も歯もない噂でしょう?隣国の領地になった西の都にワイズマンのような力を使う男が現れただなんて…。」
「うーん…。まぁ今回も自分をワイズマンと信じたいだけのイキってるただの魔法使いの類だとは思うのだが…。
ただ、私個人としても、かつて彼と共に戦ったロイヤルナイツの仲間としても、確認しないと落ち着かなくてな!」
などと言ってるけど、実はこの手の噂は父が行方不明になって以降何度も起こっている。
それほど父は偉大な人だったのだろうと思う。
悔しいけど。
ただ、その噂を聞きつけてこの大陸のあらゆる場所に出向き事の真相を確かめる度に出会すのは、自称ワイズマンのしょぼくれた魔術師ばかり…。
いい加減飽きた感の方が強い。
ただ、死んだかもしれない父がもしかしたら生きているかもしれない。
誰もがそう思うからこそ、確かめずにはいられず、父に関わった人間皆がさまざまな地で情報を集め父を探し続けていた。
「エステレラさん、どうせまた行くだけ時間の無駄だって…。その上どうせ待ってれば結果だけ私たちの耳に入ってくるんだし…。」
「そうは言うがリィン。お前だって生きてるのを疑ってるわけじゃないだろう?
数ヶ月前、君たちが旅に出るきっかけになったあの日…。
君たちだけは確かに見たんだろう?
私たちが知る彼のようなとんでもない力を使う魔導士を…。」
「うん…、見た。
私たち2人が隣国の聖豪騎士団にワイズマンの血を継ぐ危険人物だからと殺されそうになった時、その人は現れた。」
そう、あれはほんの数ヶ月前…。
私達2人がセントラルと呼ばれるようになったこの大陸の中央皇国城下町で買い物をしていた時のことだった。
金髪の如何にも真面目そうな大人の男に急に声をかけられた。
「君たち2人に問いたい事がある。ワイズマンと言う男の事は知ってると思うが、その髪の色に瞳の色…。
もしや君達は彼の娘ではないか?」
父から継いだ黒髪に叔母である皇女殿下と同じ青い瞳と母と同じ緑色の瞳のオッドアイの私達。
二卵性の双子の私たちだけど、まるで鏡写のように反転したオッドアイ。
私リィンは左目が青、妹のリイヴェルは右目が青と言う特徴を持っていた。
その特徴を事前に知っていれば、ただでさえ珍しいオッドアイである以上誰もが気づくだろう。
なので私たち2人はまた父のファンか何かだろうと言う軽い気持ちでその通りだと答えた。
それがいけなかった。
「そうか…。やはり君たちが…。特徴は知っていたが探すのには実に苦労したよ。
だが、実に目立つその瞳のおかげで噂を追うのだけは楽だったがな。」
「父のファンの方ですか!?よろしければ私たちが生まれる前の父の武勇伝をたくさん聞かせてください!是非是非!」
妹のリイヴェルは目の前の男の手をなんの疑いもなく取り、ぶんぶんと握手している…。
「リイヴェル。その手を離さ…いえ、むしろ強く握ってなさい。
この男の目、どう見ても好奇の目じゃない。殺気を孕んでる…。」
「懸命な判断だな。えーと…聞いてた特徴によれば短髪の方が姉の方だったか?」
「そうね。その通りよお兄さん。で、アンタ何者?」
手を強く握られたまま金髪の男が答える。
「そうだな。どうせなら名乗っておこう。
私は聖業騎士団が団長…。名をカイザと言う。
まぁ覚えておかなくても構わない。
私の目的はどうせ察してるだろう?」
私は身構えてズボンのベルトフックにつけているヴァリアブルソードに変化するペンダントトップに手を伸ばそうとする。
だが…。
「っ!!おねぇちゃん後ろ!!」
目の前の敵に集中しすぎて油断してた。
後ろにいた別の男にペンダントトップを握った直後に手を捻られ、ペンダントトップを落としてしまった。
唯一の武器が手元から離れてはろくに戦えない…。
この状況はだいぶまずい…。
「妹さんの方もその手を離す事だ。
お姉さんの首が目の前で飛ぶことになるぞ?
まぁ、どちらにせよ殺すつもりなのに変わりはないが…。」
もう1人の男が私の首筋にナイフを当てながらそう言うと、リイヴェルはカイザの手を離し、見えないように胸元に隠してる焔皇のネックレスの力を発現させようとする。
「させませんよ。」
カイザはヒュンッと短剣をふり、ネックレスを下げていた革紐を切り落とす。
「さて、殺すにしても人目につく場所で流血沙汰は流石にまずいですね。一度眠らせて森にでも運び込みますか…。」
武器を奪われた私たちは、互いの身を案じ何も抵抗できないまま催眠魔法で眠らされてしまった…。
どれほど時間が経ったかわからないまま目を覚ますと私達2人はそれぞれ別々に木に縛り付けられていた。
「ようやく目を覚ましていただけましたか。
どうせ殺すなら互いに痛めつけて絶望する様を見せつけながらと思いましてね。ずっと待ってたんですよ。」
目の前には複数の男に長剣を向けられた妹の姿。
私の首元にも剣が突きつけられている。
「サイッテーな趣味ねアンタ…。良い顔してるからてっきり優しい素敵なお兄さんだと思ってたのに…幻滅したわ…。」
「仲間内では優しい人だとよく言われますよ?まぁ…敵に対しては情け容赦はしませんが…。」
「敵…ね。ろくに顔すら見たことない父親のせいで痛ぶられながら殺されるなんて、本当に最低の気分だわ…。クソが…。」
お互い眠ってるうちに慰み者にされてないだけまだマシか…と思いつつ、これからどんな殺され方をされるのかと考えてしまうと正直震えが止まらない。
殺されるならせめて苦しまずに一太刀でとかも考えてしまう。
「命乞いをするならしても構いませんよ?まぁもっとも、この場所周辺にループ系の転移結界を張ってあるので、誰1人とここに辿り着く前に別の出口に向かってしまうでしょうし、あなた方の声も外には聞こえないでしょうけどね。
なんなら…その会ったことすらない父親に助けを求めても良いんですよ?
ま、死んだ人間が助けになどくるはずもないでしょうがね…。」
「お父さんは死んでません…。お母さんのことを心から愛してるお父さんなら…お母さんを悲しませたまま死ぬなんてこと絶対にありません!」
「やめてよリイヴェル。なんか虚しくなるから。
大体、あいつが生きてるわけないでしょう…?
本当に生きてたら絶対に15年も母さんをほっとくわけないだろうし、きっと私たちがこうやって攫われる前に助け出してくれてる。みんなが語る通りの人ならそう言う人のはずだもの…。」
ピンチの時こそヒーローが…なんていうけど、そんな都合良くヒーローなんか現れることはない。
現れるなら、そもそも西の都が隣国に奪われる前にとっくに現れてる筈だろう。
もう、諦めよう。虚しいだけだ。
「ふぅ…さて、ではどっちから剣を突き刺していきましょうかねぇ?
樽に剣を突き刺して人形が飛んだら負け~みたいな感じで、姉と妹交互に剣を突き刺して、先に殺した方が負けみたいな遊びを考えていたんですが…。」
「ほんと…、良い顔して考えが最低ねアンタ…。
きっとロクな死に方しないんじゃない?」
そう言うと、カイザは私の腹に短剣を突き刺した。
「うぐぅぅうっ!!ああぁぁぁっ!!」
「口の悪い姉の方からにしますか。次、貴方達、妹の番ですよ。」
「やめ…、やめ…ろぉ…!」
私が苦しむ姿を先に見て、涙を浮かべた妹の腹に同じく短剣が突き刺される。
本当にこいつらは私達のことをゲームのようにして殺すつもりのようだった。
「いだぃぃいいっ!痛いよぉっ!お姉ちゃん!」
「さて、では2本目はどこに刺しましょうか。流血量や急所を避けて刺さないと…すぐに死んじゃいますからね。」
そして私に2本目の剣が突き刺されようとしたその時、その人は現れた。
「喰らえ。暴食の琰(ほのお)。」
とても低いそれはもうダンディな声と共に私達の周りを、一気に巨大な炎が包み込む。
炎は一気に私達の周りの男どもを包み込むと一瞬で消え去った。
が、炎が消えたその後には誰も火傷ひとつ負ってなかった。
「なんだ…?ハッタリか?驚かせてくれる…。いや…まて…。なんだこれは…。
剣が…一本も手元にない…?先程突き刺した剣も…。
いや、それ以上になぜこの空間に侵入できている…!?」
「殺意ある物をこの炎で喰らっただけだ。
ついでにその殺意もな。だからテメェの部下は殺意を失ってそこで呆けてるってぇわけだ。
だってぇのに…テメェは戦意も殺意も失ってねぇみてぇだな。
いや、殺意は最初からねぇのか。テメェ…痛ぶるのを娯楽のように楽しんでやがったな?」
黒いハットを深々とかぶってる上に茶色いレンズの眼鏡をかけていて顔は良く見えてないが、声も雰囲気もダンディなイケボの白髪のお兄さんが私たちを助けてくれた。
「チッ…。何者かは知らないが…せっかくのゲームを…邪魔しないでもらおうか!!」
「ケッ、イキのいい雑魚キャラだな。」
赤いコートをバサッとはためかせながら、ダンディイケボ白髪お兄さんがカイザから距離をとる。
「おい、嬢ちゃん達。さっき街で拾っといたオメェらのこれ。ちっと借りんぞ。」
そう言うと、ダンディイケボ白髪お兄さんはヴァリアブルソードと焔皇のネックレスの力を発現させ、肉切り包丁のような形の大剣を作り出し白い炎を纏わせる。
「ま、こんなもんか。」
「ほう…それを使える人間が居るとは驚いたな…。だが…!」
カイザが手のひらに魔力を集中させ黒い魔剣を生成していく。
「その程度の魔法なら私も使えるんですよ!」
「ほう、そうか。」
カイザが生成した魔剣を振り下ろし、ダンディ(以下略 に斬りかかった。
「なんだ?こんなもんか?」
魔剣はあっけなくダンディ(以下略 の剣で叩き切られてしまった。
「ケッ。呆気ねぇ…。さぁ、選べ。
道を開けるか。くたばるか。」
「貴様‥まさか…ワイズマンなのか…?だが、やつは我らが王が殺したはず…。いや、そもそも奴が死ぬ瞬間を私は見ている…!生きてるはずがないのだ…!」
「あぁっ?ワイズマン?
あぁ、あの噂の厨二病野郎か…。
あんな若造の雑魚キャラと一緒にすんじゃねぇよ。
そもそも俺のがアイツより遥かに強ぇ。なんせ生きてきた時間が違うからな。」
そう言うと、ダンディ(以下略 は剣の腹をカイザに叩きつけ派手に岩山に叩きつけて気絶させた。
「本当に呆気ねぇな。オラよ嬢ちゃんども。
こいつは返しとくぜ?ネックレスの方の革紐はオマケだ。」
そう言って白髪のお兄さんは私達のネックレスをそれぞれに投げて渡してきた。
「あ、あの!!お兄さんは…本当にお父さんじゃないんですか…?」
「あぁ、違うな。俺にオメェらみてぇな娘なんざいねぇよ。つぅか、そのワイズマンとか言う厨二病となんで俺を間違うのかが訳がわからねぇ…。」
「だ、だって…私達の…いや、お父さんが作ったこのネックレスを使えてたし!それに!私達のピンチに…かけつけてくれたから…。」
「はぁ…。そんだけの理由でテメェらみてぇなガキのパパと間違われてたまるかよ。
俺はたまたま街を歩いてたらこいつらに攫われるテメェらを見かけて、ここに来たってだけだ。
そのネックレスの力を使えた理由についちゃ、俺が使ってるアーティファクトに近い性質があったから。
そんぐれぇの理由だ。大したこたぁねぇ。」
そう言うと、白髪のお兄さんは赤いコートをはためかせながら私達の元から去っていった。
「ま、待ってよ!本当にお父さんじゃないなら、アンタは一体…!」
走って追いかけようとした瞬間、お兄さんは転移魔法で何処かへと消えてしまった。
そして、その時に私とリイヴェルは【あれはお父さんなのかどうか】と言う話で意見のすれ違いから大喧嘩して、それぞれ別々に旅に出て今に至ると言うわけだ。
「あの人がお父さんだとは私は思わない。
伝え聞くお父さんの話と比べると性格が違いすぎる気がするし…。」
「だが、確証がない以上気にもなるし、なんならもう一度その人を探し出して私たちに確認してもらいたい!
みたいなところなんじゃないの?」
「悔しいけどその通りよ…。じゃないとなんかこう…落ち着かないと言うか、心のモヤモヤが晴れないと言うか…。
てかそうだ…。今回の噂の人ってどんなやつ!?
めちゃくちゃダンディなイケボで、黒いハットに茶色いレンズの眼鏡、赤いコートに白いシャツとジーパンに茶色い靴、そんで白髪のお兄さんだったりしないの!?」
「うーーーーん…、特徴がどれも一致してないなぁ…。
今回もやっぱ偽物かも知れないな…。ま、行くだけ行ってみないかい?今回は私も同行するから!」
「まあ…ダメで元々よね…。とは言え、敵の領地に乗り込むのもどうなんだろう…。」
隣国は西の都を支配したものの、それ以上は特に侵略も戦争も行なってきていない。
だが、国境には警備兵が常に待機しており、迂闊に国境間の行き来は出来ない。
さて、どう乗り込んだものか…。
「どうせ、遅かれ早かれ取り返しに行くんだ。
真っ向から侵入してやれば良いさ。だからこそ私と行くんだから。」
「ゔぇぇぇ…エステレラさん本気…?
嫌だよ私…足手纏いだからって見捨てられて今度こそ殺されるとか…。」
「ハハハハハ!その時こそまたワイズマンかも知れない人が現れて助けてくれるさー!」
「むしろ、私を連れてくのってそれが狙いでしょ!?ちょっとエステレラさん!?」
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