107 / 137
ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第78話 近付く足音
しおりを挟む
お昼まで暇だなーと思い、ひさびさに革紐を使ったブレスレットを編み編みしていた。
その間、盗賊ちゃんはじーっと俺の作業をワクワクしながら見ていた。
かわゆい。
めたくそかわゆい。
「手が早いなぁ。そのスタイルのものは作り慣れてるからか?」
「そうだね。実際すごく作りやすいしね~。
革紐はこうやって四つ編みで編んでるだけだし、その間に石を通してるだけだから見た目よりは意外と簡単に編めるんだよ。」
「でもやっぱ、色使いのセンスが良いよなぁ~。
ご主人様が作ってくれたものは全部お気に入りだ。
なんていうか…愛されてるってすごく感じるから。これは…色合い的にオレ用?」
「ん、そうだよー。サイズ調整するから腕出して~?」
はぁ~いっと言って可愛く細い腕を出してきたので、腕に合わせて長さを調節し完成させる。
「わぁ~いっ♪かわいいなぁ~!ありがとなご主人様♪大切にするねっ♪」
「サイズ合わなくなったりしたらまた作り直すから気楽に言えよ~?盗賊ちゃんは成長期だろうしすぐに大きくなるだろうしね。」
こうやって好きな人に作るのってまた楽しいなぁ~…。
この喜ぶ顔がまた可愛くて癒される…。
はぁ…かわゆ…。
「なぁご主人様、今日はどこかでかけるのか~?」
「うんにゃ、あんまり考えてはなかったな。
天気も良いし目的もなくフラフラ歩きまわるのも息抜きにはなりそうだよね。」
「どっか行くなら付き合うぞっ!」
「こういうイチャイチャするのも嫌いじゃ無いけどね~てや~っ」
むぎゅーっと盗賊ちゃんを抱きしめる。
やぁんっ♪と可愛く身悶えるのもまたかわいい…。
「ご主人様…、我慢できなくなったらそれ以上のことしても…良いんだぞ?」
「例えば?」
「脱がせたり…触ったり…?」
とろんとした目でおねだりモードになって来ている…。
これ以上はお互いのためにも良くないな…。
「どうしてもってなったら、考えておくよ…。
ごめんごめん、やりすぎたね。」
「むぅ…。オレは良いのにぃ…。ご主人様がオレのこと大切に思ってくれてるのもわかるけど、オレはご主人様になら割と何されても許せるし嬉しいぞ?」
「一緒にお風呂入るだけでもあんなにドキドキしたからな…。それ以上はもっと心の準備をさせてくれ…。
なんというか…改めてじっくり裸を見て肌に触れて、キスまでしたら…流石に俺もドキドキした。
正直、子どもだと思ってたけどじっくり見るとちゃんと大人になって来ているというか…。
何いってんだ俺…。」
「んふふ~♪これからは毎日堪能させてあげるからなっ?んーっ♪」
ぎゅーっと抱きつかれ軽くキスをされる。
しかし、アレだな。
なんかさっきから2人ほど気配を感じる…。
『はわぁ…。だいけんじゃととーぞく…。すごくラブラブなの…。』
『2人はいつもあんな感じなのよ?微笑ましいわよね~♪あ、気付かれた!もすこし、神気抑えるわよ!』
「おい、2人とも。常に居るのはわかっていたけどぶっちゃけどの辺から見てた?」
「うおぅっ!?龍皇さんに蛟さんっ!?居たのかよ!?あ、守護神みたいなものだから常に居るのか…。」
俺らのツッコミに顔を見合わせる2人。
『きのうのおふろあたりから見てた。』
『んふふ~♪ほーーんと、ラブラブで可愛らしいったらありゃしないんだから♪』
「実体化してなくてもこうやって近くで見られてると思うとたしかに恥ずかしい物はあるな…。」
『だって、居るの意識させたら見せつけてもらえないじゃない?2人のラブラブ具合見るの好きだもの。』
龍ちゃんが実体化して俺の隣に座ってくる。
「まぁ、私もようやくあなたに触れられる肉体を得たんだからもっとあなたに触れたり話したりしても良いんだろうけどね。
本当は私もあなたとラブラブしたいわよ…。ただ、神として人を愛する貴方の邪魔は流石にしたくないの。
逆に、貴方が天命を全うすれば私は嫌でも貴方の側に居れるしね。」
「そっか…寿命…。そう言えば、ご主人様の世界の人間は一般的に何歳まで生きるもんなんだ?」
「平均して80歳かな。早くても60までは生きると思うけども…。」
この世界の人間は成人年齢が早い。
そういうところから考えると、案外短いのかもだな…。
「そっか…。こっちの人間は今までなら長くても60歳だな。一般的には50歳も生きてればもう立派な年寄りだ。
ただ、それは歯科治療の技術や食料的な問題が大きかったっていうのが最近わかってきて、今は80歳くらいまで生きれるようになりつつあるって結果にはなってる。」
「こっちも数百年前までは似たような感じだな。
歯を削ったり引っこ抜いたり、穴を埋めるための技術と、麻酔に関する技術が発展して行ったのと、食材を調理する道具の進化によって様々な栄養価のある食事ができるようになったことから、人の寿命は伸びたと言われてるな。
あとは筋肉を鍛えるためのトレーニング施設や器具が増えたりした事で、肉体を衰えさせなければそれだけ長生きできるようになったって感じかな?」
と言うか80まで生きるようになったなら成人年齢を引き上げ始めても良いんじゃないのかな…。しかし、ついつい色々と考えてはしまうな…。
この子にとってはやっぱり俺はおじさんな年齢だろうし、結局俺の方が早く死ぬかもしれないって言う恐怖は埋められないだろう。
もしかしたら同じタイミングで死ねるなら…なんて一瞬考えたのかもしれない。
そうだな…。結婚とか考えると、無駄にそう言うことまで考えてしまうものだな…。
好きな人と少しでも長く一緒に…。
それが叶えばどれだけ幸せなことか…。
「もう一つ、貴方の愛しい人は気になってる事があるんじゃない?
死んだら、この人はどこへ行ってしまうのだろう…って。
この世界の人たちは、死後は天上界へと至る。
その後何かしらのタイミングで記憶をリセットされ再び地上へ転生する。
だけど、この世界の住人ではない彼はどうなのか?
異世界からこの世界に転生した人間もいるけど、その魂は結局どこに居てどこからやってきたのか…。
そう言う事考えたら不安になっちゃったんだよね?」
「あぁ…。前のボスに会えた時は正直安心した。
死んでも会える可能性があるんだって思ったらさ…。だけど…ご主人様は…この世界の人間じゃない。
もしも、ご主人様が先に死んで…、そのあとオレが死んで…、天上界をいくら探しても会えなかったらって考えたら…!」
ブワッと大粒の涙を流して泣き出す盗賊ちゃん。
こんなに愛してもらえてる事は素直に嬉しいものだけど…、俺の考えすぎるクセが移り始めてるのかもだな…。
「大丈夫。大丈夫だよ。死んだ瞬間俺の世界に引き戻されそうになっても、この世界の神様やら天使長さんにお願いすりゃまぁなんとかなるだろう。もう、自分の世界に帰る気もないしね。
大丈夫。俺はずっと君のそばにいるよ。
安心して?」
なでなでと可愛らしい頭を撫でてやる。
ほんと、こんなにも深く愛してもらえるなんてな。
とても心地良いものだな。
「それにしても、今回起こった事件。
色々と気がかりな点があるよね~。
魔物の力を込めた石で、人間を変質させる…か。
色々と恐ろしい話だね。」
「その力を配り歩いてる売人のような奴がいるってのが一番怖い話だな。
この街に潜んでるって言うなら早めに元を断たないと…。」
すると突然、雷でも落ちたようなズゥゥゥウンッ!!と言う音と衝撃が城に響いた。
「な、なんだ!?研究室あたりの方か?
まさか、俺が預けておいたライトニングクォーツが暴走したのか!?アレは俺以外には力を発現させる事すら叶わないはずだが…。」
「とりあえず急ごうご主人様!まさかとは思うけど、昨日のやつみたいなのがご主人様を狙って城に攻め込んできたのかもしれない…!
ほら、何かしらの業者に紛れて城に侵入して…てのは盗賊でもよくやる手口だし…。」
俺たちは音のした研究室の方へと急ぎ向かう。
案の定、研究室からはもうもうと煙が立ち込めていた。
先に現場に到着していた戦士ちゃん、妹ちゃん、勇者ちゃんが研究室のみんなを避難させてくれていたようだ。
「大賢者様!よくぞご無事で…。
なんとか此方だけは守り通せました。お返し致します。」
「ライトニングクォーツ…、てことはこの状況は俺のこれを使おうとして起こったやつではないと言う事か…。」
「はい…。貴方達が名付けた俗称で言うならば…オーガノイドに侵入されました…。
オーガノイドは貴方のアクセサリーに関する研究資料を盗んでついさっき逃亡を…。
いま、ドラゴスケイルの皆様がその自慢の足で追ってくれています…。」
「もしかして君…怪我してるのか?その状態でよく、守ってくれた。
あとは任せて。ゆっくり休んでいて。」
俺は盗賊ちゃんに彼女の治療をお願いし、俺たちの城に侵入したオーガノイドを勇者ちゃん達と一緒に追うことにした。
「まさか、昨日の今日で城にまで侵入されるなんてな…。敵の目的は俺自身ではなく、俺の力って事なのか…?」
「大賢者の作り出した技術や技を盗もうとする賊…か。これは結構厄介な奴が敵として現れ始めてる気がするぞ!」
\アイヨー!アイヨー!/
『テキヲジョウモンノハシデアシドメスルコトニセイコウ シキュウオウエンモトム』
「よし、でかしたぜオッサンズ!
勇者ちゃん、行くよ!敵は城門の橋だ!」
「わかった!おっさん達がやられる前に急ごう!」
だが、俺は走ると息切れしかねん。
なので、とりあえず変身しておく事にした。
「おぉ!旦那様!早くて助かったぜ!なんとか城門に設置しておいた賊用のトラップで足止めは出来たんだが…。このまま押さえつけとくのは無理そうなんでな。あとは頼むぜ!」
俺達はオッサンズを後ろに下がらせ剣を構える。
「おまたせ賢者。私たちも加勢するよ!」
「はわわっ!敵さんのあの姿…、賢者様が初めてライトニングクォーツの力を使った時にも似ています…。まさか…雷虎の力を纏った鬼人…?」
「雷虎…。なるほど、確かにあの腕とか足はどことなく虎とかの獣に近い見た目だな…。
来るぞみんな!構えて!」
敵が自分を捉えていたワイヤートラップを雷で焼き切り、こっちへ飛んでもない速度で迫ってくる。
「自分と似たような力を敵に回すと、自分の恐ろしさがよくわかるな…!なんつー速さだよ!」
「私たちみたいに心眼のスキルが開眼してなかったら…。」
「まず、この速度に対して攻撃をするのは不可能だな!!ハアァァッ!!」
俺はかわすので精一杯だった敵の動きを2人は見事に見切り、斬撃を加えていく。
勇者ちゃんは勿論だが、戦士ちゃんは確実にその戦闘センスを大幅に磨き上げつつあった。
そして、2人の背後から炎の魔法で加速させた雷を纏った拳を敵めがけて乱打で叩き込む妹ちゃん。
いつの間にそんな技を…。
皆の攻撃は結構効いているようだ。
「よし、久々にこいつ、使ってみるか!」
サソリのアクセのついた水晶を発動させ足にアンクレットを展開させる。
雷の力を一点に集中させ、強力な飛び蹴りをお見舞いしようと飛び上がる。
「喰らいな!雷蛇ァァァァアキイィィィイック!!」
だが、俺の蹴りは敵には届かなかった。
当たる直前で黒いフードを被った何者かが俺の足を受け止めた上に、蹴りの力を相殺して無効化したのだ。
俺はすぐさまその何者かから距離を取る。
「ふう…。危ない危ない。せっかく盗んだ研究資料が奪い返される所でした。
行きますよ。実験的に貴方に託した石まで破壊されては困りますからね。
大賢者様。またお会いしましょう。
次にお会いする時は私たちが作り出した最高傑作でお相手させていただきますので。
貴方の作り出した力の資料、是非とも参考にさせていただきますよ。では、御機嫌よう。」
「待て!」
オーガノイドとその何者かは俺たちの前から転移門のような魔法で姿を消した。
「くそ…逃したか…。そして敵の目的は…やはり俺の作り出した力…って事なのか…?」
「これは…まずい事になってきたかもだ。
大賢者の力は、それこそ国家防衛の要とも言えるレベルの力だし戦争に用いれば国一つ簡単に掌握できるレベルだ。
完全コピーとまでは行かないだろうが、似たようなものを作り出せたとしたら…。まずい事になりそうだな…。」
俺は変身を解除する。
しかし…、敵が雷帝のような力を手に入れてきたら…確かに色々とやばそうだな。
今ならまだ勝てる見込みはあるだろう。
だが、相手がもし俺と完全に同等なレベルの力を行使できるようになったら…?
考えただけでゾッとする…。
堕天使がかつて行ったような事が、別の人間の手で行われる恐れがあるって事だ。
そんなことは…絶対にさせるわけにはいかない!
「ひとまず、魔女さんとギルマスちゃんに報告しよう。全く…休む暇くらいくれよってんだ。」
新たな敵の足音は、一歩一歩確実に近づき始めていたのであった。
その間、盗賊ちゃんはじーっと俺の作業をワクワクしながら見ていた。
かわゆい。
めたくそかわゆい。
「手が早いなぁ。そのスタイルのものは作り慣れてるからか?」
「そうだね。実際すごく作りやすいしね~。
革紐はこうやって四つ編みで編んでるだけだし、その間に石を通してるだけだから見た目よりは意外と簡単に編めるんだよ。」
「でもやっぱ、色使いのセンスが良いよなぁ~。
ご主人様が作ってくれたものは全部お気に入りだ。
なんていうか…愛されてるってすごく感じるから。これは…色合い的にオレ用?」
「ん、そうだよー。サイズ調整するから腕出して~?」
はぁ~いっと言って可愛く細い腕を出してきたので、腕に合わせて長さを調節し完成させる。
「わぁ~いっ♪かわいいなぁ~!ありがとなご主人様♪大切にするねっ♪」
「サイズ合わなくなったりしたらまた作り直すから気楽に言えよ~?盗賊ちゃんは成長期だろうしすぐに大きくなるだろうしね。」
こうやって好きな人に作るのってまた楽しいなぁ~…。
この喜ぶ顔がまた可愛くて癒される…。
はぁ…かわゆ…。
「なぁご主人様、今日はどこかでかけるのか~?」
「うんにゃ、あんまり考えてはなかったな。
天気も良いし目的もなくフラフラ歩きまわるのも息抜きにはなりそうだよね。」
「どっか行くなら付き合うぞっ!」
「こういうイチャイチャするのも嫌いじゃ無いけどね~てや~っ」
むぎゅーっと盗賊ちゃんを抱きしめる。
やぁんっ♪と可愛く身悶えるのもまたかわいい…。
「ご主人様…、我慢できなくなったらそれ以上のことしても…良いんだぞ?」
「例えば?」
「脱がせたり…触ったり…?」
とろんとした目でおねだりモードになって来ている…。
これ以上はお互いのためにも良くないな…。
「どうしてもってなったら、考えておくよ…。
ごめんごめん、やりすぎたね。」
「むぅ…。オレは良いのにぃ…。ご主人様がオレのこと大切に思ってくれてるのもわかるけど、オレはご主人様になら割と何されても許せるし嬉しいぞ?」
「一緒にお風呂入るだけでもあんなにドキドキしたからな…。それ以上はもっと心の準備をさせてくれ…。
なんというか…改めてじっくり裸を見て肌に触れて、キスまでしたら…流石に俺もドキドキした。
正直、子どもだと思ってたけどじっくり見るとちゃんと大人になって来ているというか…。
何いってんだ俺…。」
「んふふ~♪これからは毎日堪能させてあげるからなっ?んーっ♪」
ぎゅーっと抱きつかれ軽くキスをされる。
しかし、アレだな。
なんかさっきから2人ほど気配を感じる…。
『はわぁ…。だいけんじゃととーぞく…。すごくラブラブなの…。』
『2人はいつもあんな感じなのよ?微笑ましいわよね~♪あ、気付かれた!もすこし、神気抑えるわよ!』
「おい、2人とも。常に居るのはわかっていたけどぶっちゃけどの辺から見てた?」
「うおぅっ!?龍皇さんに蛟さんっ!?居たのかよ!?あ、守護神みたいなものだから常に居るのか…。」
俺らのツッコミに顔を見合わせる2人。
『きのうのおふろあたりから見てた。』
『んふふ~♪ほーーんと、ラブラブで可愛らしいったらありゃしないんだから♪』
「実体化してなくてもこうやって近くで見られてると思うとたしかに恥ずかしい物はあるな…。」
『だって、居るの意識させたら見せつけてもらえないじゃない?2人のラブラブ具合見るの好きだもの。』
龍ちゃんが実体化して俺の隣に座ってくる。
「まぁ、私もようやくあなたに触れられる肉体を得たんだからもっとあなたに触れたり話したりしても良いんだろうけどね。
本当は私もあなたとラブラブしたいわよ…。ただ、神として人を愛する貴方の邪魔は流石にしたくないの。
逆に、貴方が天命を全うすれば私は嫌でも貴方の側に居れるしね。」
「そっか…寿命…。そう言えば、ご主人様の世界の人間は一般的に何歳まで生きるもんなんだ?」
「平均して80歳かな。早くても60までは生きると思うけども…。」
この世界の人間は成人年齢が早い。
そういうところから考えると、案外短いのかもだな…。
「そっか…。こっちの人間は今までなら長くても60歳だな。一般的には50歳も生きてればもう立派な年寄りだ。
ただ、それは歯科治療の技術や食料的な問題が大きかったっていうのが最近わかってきて、今は80歳くらいまで生きれるようになりつつあるって結果にはなってる。」
「こっちも数百年前までは似たような感じだな。
歯を削ったり引っこ抜いたり、穴を埋めるための技術と、麻酔に関する技術が発展して行ったのと、食材を調理する道具の進化によって様々な栄養価のある食事ができるようになったことから、人の寿命は伸びたと言われてるな。
あとは筋肉を鍛えるためのトレーニング施設や器具が増えたりした事で、肉体を衰えさせなければそれだけ長生きできるようになったって感じかな?」
と言うか80まで生きるようになったなら成人年齢を引き上げ始めても良いんじゃないのかな…。しかし、ついつい色々と考えてはしまうな…。
この子にとってはやっぱり俺はおじさんな年齢だろうし、結局俺の方が早く死ぬかもしれないって言う恐怖は埋められないだろう。
もしかしたら同じタイミングで死ねるなら…なんて一瞬考えたのかもしれない。
そうだな…。結婚とか考えると、無駄にそう言うことまで考えてしまうものだな…。
好きな人と少しでも長く一緒に…。
それが叶えばどれだけ幸せなことか…。
「もう一つ、貴方の愛しい人は気になってる事があるんじゃない?
死んだら、この人はどこへ行ってしまうのだろう…って。
この世界の人たちは、死後は天上界へと至る。
その後何かしらのタイミングで記憶をリセットされ再び地上へ転生する。
だけど、この世界の住人ではない彼はどうなのか?
異世界からこの世界に転生した人間もいるけど、その魂は結局どこに居てどこからやってきたのか…。
そう言う事考えたら不安になっちゃったんだよね?」
「あぁ…。前のボスに会えた時は正直安心した。
死んでも会える可能性があるんだって思ったらさ…。だけど…ご主人様は…この世界の人間じゃない。
もしも、ご主人様が先に死んで…、そのあとオレが死んで…、天上界をいくら探しても会えなかったらって考えたら…!」
ブワッと大粒の涙を流して泣き出す盗賊ちゃん。
こんなに愛してもらえてる事は素直に嬉しいものだけど…、俺の考えすぎるクセが移り始めてるのかもだな…。
「大丈夫。大丈夫だよ。死んだ瞬間俺の世界に引き戻されそうになっても、この世界の神様やら天使長さんにお願いすりゃまぁなんとかなるだろう。もう、自分の世界に帰る気もないしね。
大丈夫。俺はずっと君のそばにいるよ。
安心して?」
なでなでと可愛らしい頭を撫でてやる。
ほんと、こんなにも深く愛してもらえるなんてな。
とても心地良いものだな。
「それにしても、今回起こった事件。
色々と気がかりな点があるよね~。
魔物の力を込めた石で、人間を変質させる…か。
色々と恐ろしい話だね。」
「その力を配り歩いてる売人のような奴がいるってのが一番怖い話だな。
この街に潜んでるって言うなら早めに元を断たないと…。」
すると突然、雷でも落ちたようなズゥゥゥウンッ!!と言う音と衝撃が城に響いた。
「な、なんだ!?研究室あたりの方か?
まさか、俺が預けておいたライトニングクォーツが暴走したのか!?アレは俺以外には力を発現させる事すら叶わないはずだが…。」
「とりあえず急ごうご主人様!まさかとは思うけど、昨日のやつみたいなのがご主人様を狙って城に攻め込んできたのかもしれない…!
ほら、何かしらの業者に紛れて城に侵入して…てのは盗賊でもよくやる手口だし…。」
俺たちは音のした研究室の方へと急ぎ向かう。
案の定、研究室からはもうもうと煙が立ち込めていた。
先に現場に到着していた戦士ちゃん、妹ちゃん、勇者ちゃんが研究室のみんなを避難させてくれていたようだ。
「大賢者様!よくぞご無事で…。
なんとか此方だけは守り通せました。お返し致します。」
「ライトニングクォーツ…、てことはこの状況は俺のこれを使おうとして起こったやつではないと言う事か…。」
「はい…。貴方達が名付けた俗称で言うならば…オーガノイドに侵入されました…。
オーガノイドは貴方のアクセサリーに関する研究資料を盗んでついさっき逃亡を…。
いま、ドラゴスケイルの皆様がその自慢の足で追ってくれています…。」
「もしかして君…怪我してるのか?その状態でよく、守ってくれた。
あとは任せて。ゆっくり休んでいて。」
俺は盗賊ちゃんに彼女の治療をお願いし、俺たちの城に侵入したオーガノイドを勇者ちゃん達と一緒に追うことにした。
「まさか、昨日の今日で城にまで侵入されるなんてな…。敵の目的は俺自身ではなく、俺の力って事なのか…?」
「大賢者の作り出した技術や技を盗もうとする賊…か。これは結構厄介な奴が敵として現れ始めてる気がするぞ!」
\アイヨー!アイヨー!/
『テキヲジョウモンノハシデアシドメスルコトニセイコウ シキュウオウエンモトム』
「よし、でかしたぜオッサンズ!
勇者ちゃん、行くよ!敵は城門の橋だ!」
「わかった!おっさん達がやられる前に急ごう!」
だが、俺は走ると息切れしかねん。
なので、とりあえず変身しておく事にした。
「おぉ!旦那様!早くて助かったぜ!なんとか城門に設置しておいた賊用のトラップで足止めは出来たんだが…。このまま押さえつけとくのは無理そうなんでな。あとは頼むぜ!」
俺達はオッサンズを後ろに下がらせ剣を構える。
「おまたせ賢者。私たちも加勢するよ!」
「はわわっ!敵さんのあの姿…、賢者様が初めてライトニングクォーツの力を使った時にも似ています…。まさか…雷虎の力を纏った鬼人…?」
「雷虎…。なるほど、確かにあの腕とか足はどことなく虎とかの獣に近い見た目だな…。
来るぞみんな!構えて!」
敵が自分を捉えていたワイヤートラップを雷で焼き切り、こっちへ飛んでもない速度で迫ってくる。
「自分と似たような力を敵に回すと、自分の恐ろしさがよくわかるな…!なんつー速さだよ!」
「私たちみたいに心眼のスキルが開眼してなかったら…。」
「まず、この速度に対して攻撃をするのは不可能だな!!ハアァァッ!!」
俺はかわすので精一杯だった敵の動きを2人は見事に見切り、斬撃を加えていく。
勇者ちゃんは勿論だが、戦士ちゃんは確実にその戦闘センスを大幅に磨き上げつつあった。
そして、2人の背後から炎の魔法で加速させた雷を纏った拳を敵めがけて乱打で叩き込む妹ちゃん。
いつの間にそんな技を…。
皆の攻撃は結構効いているようだ。
「よし、久々にこいつ、使ってみるか!」
サソリのアクセのついた水晶を発動させ足にアンクレットを展開させる。
雷の力を一点に集中させ、強力な飛び蹴りをお見舞いしようと飛び上がる。
「喰らいな!雷蛇ァァァァアキイィィィイック!!」
だが、俺の蹴りは敵には届かなかった。
当たる直前で黒いフードを被った何者かが俺の足を受け止めた上に、蹴りの力を相殺して無効化したのだ。
俺はすぐさまその何者かから距離を取る。
「ふう…。危ない危ない。せっかく盗んだ研究資料が奪い返される所でした。
行きますよ。実験的に貴方に託した石まで破壊されては困りますからね。
大賢者様。またお会いしましょう。
次にお会いする時は私たちが作り出した最高傑作でお相手させていただきますので。
貴方の作り出した力の資料、是非とも参考にさせていただきますよ。では、御機嫌よう。」
「待て!」
オーガノイドとその何者かは俺たちの前から転移門のような魔法で姿を消した。
「くそ…逃したか…。そして敵の目的は…やはり俺の作り出した力…って事なのか…?」
「これは…まずい事になってきたかもだ。
大賢者の力は、それこそ国家防衛の要とも言えるレベルの力だし戦争に用いれば国一つ簡単に掌握できるレベルだ。
完全コピーとまでは行かないだろうが、似たようなものを作り出せたとしたら…。まずい事になりそうだな…。」
俺は変身を解除する。
しかし…、敵が雷帝のような力を手に入れてきたら…確かに色々とやばそうだな。
今ならまだ勝てる見込みはあるだろう。
だが、相手がもし俺と完全に同等なレベルの力を行使できるようになったら…?
考えただけでゾッとする…。
堕天使がかつて行ったような事が、別の人間の手で行われる恐れがあるって事だ。
そんなことは…絶対にさせるわけにはいかない!
「ひとまず、魔女さんとギルマスちゃんに報告しよう。全く…休む暇くらいくれよってんだ。」
新たな敵の足音は、一歩一歩確実に近づき始めていたのであった。
0
お気に入りに追加
196
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる