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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第45話 銀の翼に望みを乗せて
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これ以上、誰かを死なせるわけには行かない。
魔王様とやらが人を愛してるなら、少なくとも、その手を血に染めさせてはいけない。
俺たちは邪神に魅入られてしまってるかも知れない魔王様を救うためにも一目散に魔王城へと向かった。
「見えてきたぜ!あれが魔王城だ!」
「よし…。みんな、戦闘態勢は整えておいて。」
「あぁ、ご主人様もほらポーション飲んでくれ。
あんなとんでもない力を使ったら、魔力切れを起こしてもおかしくない。」
俺は盗賊ちゃんからポーションを2本受け取り一気に飲みほす。
副作用でいろんなところが元気になるのが欠点だが…。
「あら…、大賢者様…。その……そこはたくましいんですね…。」
「副作用なの…。すっごいシリアスな空気ぶち壊してるけど副作用でこうなってるの…。見ないで…。今俺も凄くいろんな意味で辛いから…。」
俺たちは魔王城の前に着くと、それぞれが最強スキルを発動し万全を整える。
俺は火雷神モードを、戦士ちゃんは不動明王をその身に纏い、妹ちゃんはオブシディアンアーマーを、盗賊ちゃんは悪魔の右手と全身を影へと変化させるファントムアーマーをそれぞれ展開した。
皆それぞれの決意を胸に城門に立つと、門はまるで来訪者を誘うように自然と開いた。
「魔王様は…どこにいるんだ?」
「いつも通りなら、間違いなく最上階の展望室兼魔王様の玉座ですね。」
「なるほどな…。高いな…。仕方ない降りてきてもらうか。
皇女殿下の居場所、だれかわかるか?」
盗賊ちゃんがファトムアーマーの影を壁に這わせる。
「オレのスキルには影を利用しての遠隔視と透視スキルがある。
最上階の玉座の横に皇女殿下はいるな。」
「そうか。それじゃあ、妹ちゃんは落ちてくる皇女殿下を重力魔法で引き寄せて受け止めてくれ。
俺は、この天井を撃ち抜く。
炎皇…雷光…波動拳!!」
俺は右手に紅の雷を、左手に白い雷を集めて天井の床めがけて巨大な雷光の波動にして一気に天井まで撃ち抜いた。
「いまだ!妹ちゃん!受け止めてくれ!」
「はい!お任せを!!」
妹ちゃんは上空を舞ってる皇女殿下を結界で保護して、重力魔法で一気に此方へと引き寄せて確保する。
「荒っぽいやり方ですみません。
ただ、この高さまで一気に登るのは骨が折れそうだったので…。」
「は、はい…おかげで助かりました…。
流石は大賢者様…頭おかしいですね!」
「よーしよしよし、またグーパンされたいみたいだな。とかいう冗談は今言ってる場合じゃないんだよ。色々とね…。」
上空から波動を纏って一気に此方めがけて魔王と思われるものが降りてくる。
俺はその衝撃を押し殺すように受け止める。
「待ちわびたぞ…そのド派手な力…!お前が大賢者か…!」
ガレキと粉塵の中から現れたのは、褐色の肌に赤目金髪ツインテの少女だった。
「貴方が…魔王様…なのか?」
「うむ!如何にも。私が現 大魔王だ。
おい、ところで勇者はどこだ?あいつも向かっているとイフリートから聞いていたぞ?
我は退屈なのだ。勇者とお前の二人掛かりでもなければ割りに合わぬ。」
「死んだよ。邪神に取り込まれ、暴走したイフリートに殺された。」
魔王が目を見開き驚愕している。
「なに…?死んだ?いや、殺されただと…?
しかも今、貴様!邪神と言うたか…?
ならば!イフリートは!我が配下は無事なのか!」
「はい。無事にございます大魔王様。
此方の異世界より来訪された大賢者様の神の力によりイフリートとしての権能は全て消失しましたが、その身も命も無事にございます。」
「であるか…。大賢者とやら、礼を申すぞ。
よく、我が配下たちを守ってくれた。
だが…勇者は。守れなかったのだな…。」
魔王はしょんぼりと言うか、悲しみにくれながらこちらに頭を下げた。
てっきり今から大乱闘!みたいなのを想像していたが拍子抜けだ。
「お姫様とはじっくりと今後について語り合ったぞ!大賢者!次はお前とじっくり話したい!
と言うかまずは城を直さねばだな。えやっ。」
魔王様は天に手をかざす。すると瓦礫すらろくに残さず吹っ飛ばした城がみるみる再生される。
えらくあっさりと…。
「えーーっと…。正直なところ私たち今から貴方と戦うことになると覚悟を決めてここに来たんですが…。」
「痴れ者め。我が親友となるはずだった勇者の訃報を聞いて戦えるものか…。
むしろ勇者とお前とが私に向かってきて、それを全力で迎え撃つのを楽しみにしていたと言うのに…。
して、勇者の亡骸は?」
「イフリートに見守ってもらいながら、イフリートの領地に。」
「腐らないかのうそれ…。
まぁ良い。ん?待て。邪神が宿っていたイフリートのそばに…置いて来たのだよな?」
魔王様が深刻な顔で俺にそう尋ねてくる。
「誰でもいい。邪神とおもしき者の姿を見たやつはおるか…?」
「そういえば…。イフリートの様子がおかしくなっていっただけで、別の意思みたいなものは…。」
「なるほど…。来て頂いて早々で悪いが、すぐにイフリートの元へ戻るぞ!ワシが扉を開く!」
そう言うとイフリートが目の前に、いつもベヒーさんが消える時に使うようなブラックホール的な天球を作り出す。
「行くぞ!ワシとみな手をつなげ!」
全員が手を繋ぎ終えるとすぐにその球体へと飛び込んでいく。
球体から出るとさっきと同じ場所に出る。
魔族のこの魔法便利だな…。
いや、魔王様のスキルなのか?
「やはりか…。イフリート。勇者の亡骸はどこじゃ?」
「わかり…ませ…ん。
急に目を覚ましたと思ったら消えてしまって…。」
「なるほどな。ご苦労であった。守ろうとした結果、返り討ちにあったかその体…。」
全身をまるで子供がバッタを弄ぶように切り裂かれていたイフリートの姿があった。
魔王様はイフリートに回復魔法をかけると、傷は綺麗に治り、もとの可愛らしい赤髪の少女の姿へと戻っていく。
「申し訳ありません…。大賢者様…。守ることが…出来ませんでした…。」
「大丈夫だよ。今の目的が俺ならすぐにまたこっちへ戻ってくるさ。」
「その前に作戦を考えるぞ大賢者とやら。
おそらく、邪神は勇者の体を乗っ取っている。
そのまま勇者の体を使わせれば、すぐに勇者の体は耐えきれずに崩壊してしまうだろう。
なので、まずはお前が勇者の身体から邪神を引き摺り出せ。
その後、邪神はワシが引き受ける。
まぁ、それからは…。多分勝てぬかもだがお前と勇者でワシごと邪神を討て。
それでハッピーエンドじゃろう。」
「えらくサラッと自分の命を投げ出すんだな…?」
にこりと魔王様が微笑む。
「そうでもせねば割りに合わぬ…。勇者のいない世界を生きてもつまらぬしの…。
だから、私を討って欲しいのじゃ…。
お姫様よ。すまぬな。親友になる約束とこの国と国交を結ぶ約束は一時保留になりそうじゃ。」
「魔王ちゃん…。私は…、そんなの嫌です!
大賢者様!命令です!その名に恥じぬ方法で、全てを救ってみなさい!」
まったく…。このわがまま姫様は…。
「わかった。やってみるよ。封印した切り札も…あるしな。」
「おい、ご主人様…。まさか時限龍の力を使うつもりか…?アレも邪神に一時魅入られた力なんだぞ?」
「それで俺の体に入ってこようものなら、そのまま俺の火雷神の力で焼き尽くすさ。」
盗賊ちゃんは納得できない顔でこっちをじっと見てくる。
「大丈夫だよ。俺を信じて?」
「おい、皇女殿下…。
ご主人様に何かあったらオレはお前を殺す。
無論、姉とは…認めないからな…?」
「結構です。この戦い、邪神が絡んでいるならばむしろそれだけの覚悟を持って挑まねば…。
かつて1000年前に、最初の異世界人が12の神々の力を借りて葬ったとされる邪神…。
いつ、どのようにして復活を遂げ潜んでいたのかはわからないですが…。
邪神は強い人への怒りを持つものを取り込もうとしてたと伝承にはあります…。
そして、どこにでも現れると…。」
そして、魔王城の方向から禍々しい気配がこっちへ向かってくる。
「来たぞ!皆!構えよ!」
全員が再び最強スキルを展開し戦闘態勢を取る。
禍々しい気配は空の上で静止する。
やはりと言うか、その姿は勇者ちゃんだった。
漆黒の鎧に身を包み、真っ黒なオーラに包まれ、そして真っ赤な目をした勇者ちゃん。
いや、勇者の身体を借りた邪神であった。
「魔王城に向かっていないと思ったらここに戻ってきていたとは…気付くのが早いではないか。
流石は聡明だな大賢者!」
「おい、邪神。早くその体を捨てた方が賢明だ。アホが移るぞ。その体はもはやアホの塊だからな。」
「え?そうなの?こいつアホなの…?
えぇ…。とか言うと思ったのか?そんなに簡単な方法で我をこの体から追い出せると思っ」
俺は紅の雷と白い雷を纏った拳を勇者ちゃん越しに邪神に叩き込む。
「人の死と身体を弄びやがって…!!
覚悟は出来てんだろうなぁ!!」
怒りの炎で俺の炎皇の鎧が蒼白い炎を経て真っ白な炎の鎧へと変質していく。
「ほう…。見事な神の力だな流石は大賢者だ!ワシも戦うのが楽しみだぞ!」
「雷神の力全てをその身に宿し、纏いたる俺の最強の姿。今が初めての変身だ。
名付けて、伊邪那美命(イザナミノミコト)モード。」
真っ白な炎と雷が俺の身体にまとわりついている。
そして、その背には日輪の光。
「行くぞ邪神とやら。魔力の貯蔵は十分か?」
俺は、再び勇者ちゃんの身体ごと掌底を打ち込み邪神を勇者ちゃんの体から吹っ飛ばす。
「がっはぁぁあっ!!何だ!この力は…!
かつての異世界人は12の神の力を持ってようやくだったと言うのに…!」
「今のこの体は8の雷神と、それをその身に宿す伊邪那美命だ。
安倍晴明が引き連れていた十二神将とはまた格が違うんだよ。当然だ。」
勇者の体から完全に引き離された邪神は、苦しみもがいていた。
「勇者ちゃん!俺の声が聞こえるなら、その勇気の炎を我が日輪の炎で再び燃やせ!共に戦うぞ!!」
俺は勇者ちゃんの亡骸に触れて彼女の命の灯火が強く燃え上がるイメージをその身に流し込む。
「今度こそ…目を覚ませぇぇえっ!お前は、勇者なんだろう!!」
勇者ちゃんの身体が白く輝きだし、その身が雷光を纏い出す。
そして、その身を守っていたアーマードフェニックスの鎧がさらに神々しい姿へと変質していく。
「させ…るかぁぁあ!!」
勇者の復活を阻もうと邪神が禍々しい闇そのものとでも言うべき波動を投げつけてくる。
「銀の翼に望みを乗せて…」
闇の波動がいともたやすく光に包まれて消滅していく。
「灯せ平和の光輪剣!!」
邪神がその強い光にたじろいでいく…。
「光の勇者、この私!定刻通りにただいま到着!!」
白く輝く美しい髪に純白の鎧を纏った神の力を得た勇者がそこに降臨していた。
「勇者使いが荒いぞ!大賢者!
あんなに美しく死んだのに、こうもたやすく生き返っては台無しではないか!!」
「ばーか、ヒーローってのは一回死んでかっこよく復活してボスキャラを圧倒的な力で叩きのめすからクソかっこいいんだろうが!」
「うむ!そうだな!それは違いない!では…、行くぞ!言っとくが私は…」
「言っとくが俺は…!」
「「最初から最後までクライマックスだぜ!!」」
魔王様や他のみんなは完全に戦闘態勢を解く。
「もうあいつら2人だけでいいだろう。
離れるぞーお前らー。
勇者!大賢者!!やぁぁぁぁあってやれぇぇぇえい!!」
魔王様が拳を振り上げ俺たちにエールを送る。
「やぁぁぁぁあってやるぜぇぇえっ!!」
「私たちは今!猛烈に!!熱血しているぅぅうっ!!」
「「光輪剣!!」」
俺の背の日輪を勇者ちゃんの剣に合体させ、巨大な光の剣を作り出す。
そして、勇者ちゃんの左手を取り俺の神力をその身に流し込む。
「行くぞ!勇者ちゃん!」
「うむ!!負ける気がしないな!!」
俺たち2人は陽光のような光を纏いながら邪神へと特攻していく。
「くっ…!おのれおのれおのれおのれぇぇえっ!!
いい気になるなよ!人間風情がぁぁぁあっ!!」
黒い塊も人の姿へと形を変え、巨大な黒い剣を携えて此方へと特攻してくる。
互いの大剣がぶつかり合い、辺りに轟音を響かせ光と闇がぶつかりあう。
が、相手の闇はまるで俺たちの光に太刀打ち出来ず当たる側から消えていく。
「邪神よ!!光に!なぁれぇえええ!!」
俺たちの剣が邪神を真っ二つに切り裂いていく。
「グォォオオオアアアア!!
また…消えるのか…!我の体がぁあああ!
だが、忘れるな…!人の心に闇がある限り、我々は完全に消えることはない…!!」
そして、光が完全に邪神を包み込み消滅させていった。
「おー。おわったようじゃな。すごいすごーい。
それと、勇者よ…。よく戻ってきたな。
一回言ってみたかったセリフがあるのじゃが言って良いか?」
「どうぞ!どんとこいだぞ魔王!」
「おお、ゆうしゃよ!しんでしまうとはなさけない!!」
「それ、魔王のセリフじゃないからぁああっ!!」
俺のツッコミが辺りに響き渡り、突如現れた邪神との戦いはひとまず終わりを迎えた。
そして勇者は復活を遂げた。
のだが…!
「お、おい!大賢者!これはどう言う冗談だ!
私の体が…。」
勇者ちゃんの身体は…。
「君好みの超絶可愛いロリ少女になったぞ!
やったな!大賢者!」
「同意求めるのやめて…。」
「あと大賢者。私のおっぱいの揉み心地はどうだった?」
「…………。すごく…おおきかったです……。」
おめでとう!
ゆうしゃはロリゆうしゃにしんかした!
魔王様とやらが人を愛してるなら、少なくとも、その手を血に染めさせてはいけない。
俺たちは邪神に魅入られてしまってるかも知れない魔王様を救うためにも一目散に魔王城へと向かった。
「見えてきたぜ!あれが魔王城だ!」
「よし…。みんな、戦闘態勢は整えておいて。」
「あぁ、ご主人様もほらポーション飲んでくれ。
あんなとんでもない力を使ったら、魔力切れを起こしてもおかしくない。」
俺は盗賊ちゃんからポーションを2本受け取り一気に飲みほす。
副作用でいろんなところが元気になるのが欠点だが…。
「あら…、大賢者様…。その……そこはたくましいんですね…。」
「副作用なの…。すっごいシリアスな空気ぶち壊してるけど副作用でこうなってるの…。見ないで…。今俺も凄くいろんな意味で辛いから…。」
俺たちは魔王城の前に着くと、それぞれが最強スキルを発動し万全を整える。
俺は火雷神モードを、戦士ちゃんは不動明王をその身に纏い、妹ちゃんはオブシディアンアーマーを、盗賊ちゃんは悪魔の右手と全身を影へと変化させるファントムアーマーをそれぞれ展開した。
皆それぞれの決意を胸に城門に立つと、門はまるで来訪者を誘うように自然と開いた。
「魔王様は…どこにいるんだ?」
「いつも通りなら、間違いなく最上階の展望室兼魔王様の玉座ですね。」
「なるほどな…。高いな…。仕方ない降りてきてもらうか。
皇女殿下の居場所、だれかわかるか?」
盗賊ちゃんがファトムアーマーの影を壁に這わせる。
「オレのスキルには影を利用しての遠隔視と透視スキルがある。
最上階の玉座の横に皇女殿下はいるな。」
「そうか。それじゃあ、妹ちゃんは落ちてくる皇女殿下を重力魔法で引き寄せて受け止めてくれ。
俺は、この天井を撃ち抜く。
炎皇…雷光…波動拳!!」
俺は右手に紅の雷を、左手に白い雷を集めて天井の床めがけて巨大な雷光の波動にして一気に天井まで撃ち抜いた。
「いまだ!妹ちゃん!受け止めてくれ!」
「はい!お任せを!!」
妹ちゃんは上空を舞ってる皇女殿下を結界で保護して、重力魔法で一気に此方へと引き寄せて確保する。
「荒っぽいやり方ですみません。
ただ、この高さまで一気に登るのは骨が折れそうだったので…。」
「は、はい…おかげで助かりました…。
流石は大賢者様…頭おかしいですね!」
「よーしよしよし、またグーパンされたいみたいだな。とかいう冗談は今言ってる場合じゃないんだよ。色々とね…。」
上空から波動を纏って一気に此方めがけて魔王と思われるものが降りてくる。
俺はその衝撃を押し殺すように受け止める。
「待ちわびたぞ…そのド派手な力…!お前が大賢者か…!」
ガレキと粉塵の中から現れたのは、褐色の肌に赤目金髪ツインテの少女だった。
「貴方が…魔王様…なのか?」
「うむ!如何にも。私が現 大魔王だ。
おい、ところで勇者はどこだ?あいつも向かっているとイフリートから聞いていたぞ?
我は退屈なのだ。勇者とお前の二人掛かりでもなければ割りに合わぬ。」
「死んだよ。邪神に取り込まれ、暴走したイフリートに殺された。」
魔王が目を見開き驚愕している。
「なに…?死んだ?いや、殺されただと…?
しかも今、貴様!邪神と言うたか…?
ならば!イフリートは!我が配下は無事なのか!」
「はい。無事にございます大魔王様。
此方の異世界より来訪された大賢者様の神の力によりイフリートとしての権能は全て消失しましたが、その身も命も無事にございます。」
「であるか…。大賢者とやら、礼を申すぞ。
よく、我が配下たちを守ってくれた。
だが…勇者は。守れなかったのだな…。」
魔王はしょんぼりと言うか、悲しみにくれながらこちらに頭を下げた。
てっきり今から大乱闘!みたいなのを想像していたが拍子抜けだ。
「お姫様とはじっくりと今後について語り合ったぞ!大賢者!次はお前とじっくり話したい!
と言うかまずは城を直さねばだな。えやっ。」
魔王様は天に手をかざす。すると瓦礫すらろくに残さず吹っ飛ばした城がみるみる再生される。
えらくあっさりと…。
「えーーっと…。正直なところ私たち今から貴方と戦うことになると覚悟を決めてここに来たんですが…。」
「痴れ者め。我が親友となるはずだった勇者の訃報を聞いて戦えるものか…。
むしろ勇者とお前とが私に向かってきて、それを全力で迎え撃つのを楽しみにしていたと言うのに…。
して、勇者の亡骸は?」
「イフリートに見守ってもらいながら、イフリートの領地に。」
「腐らないかのうそれ…。
まぁ良い。ん?待て。邪神が宿っていたイフリートのそばに…置いて来たのだよな?」
魔王様が深刻な顔で俺にそう尋ねてくる。
「誰でもいい。邪神とおもしき者の姿を見たやつはおるか…?」
「そういえば…。イフリートの様子がおかしくなっていっただけで、別の意思みたいなものは…。」
「なるほど…。来て頂いて早々で悪いが、すぐにイフリートの元へ戻るぞ!ワシが扉を開く!」
そう言うとイフリートが目の前に、いつもベヒーさんが消える時に使うようなブラックホール的な天球を作り出す。
「行くぞ!ワシとみな手をつなげ!」
全員が手を繋ぎ終えるとすぐにその球体へと飛び込んでいく。
球体から出るとさっきと同じ場所に出る。
魔族のこの魔法便利だな…。
いや、魔王様のスキルなのか?
「やはりか…。イフリート。勇者の亡骸はどこじゃ?」
「わかり…ませ…ん。
急に目を覚ましたと思ったら消えてしまって…。」
「なるほどな。ご苦労であった。守ろうとした結果、返り討ちにあったかその体…。」
全身をまるで子供がバッタを弄ぶように切り裂かれていたイフリートの姿があった。
魔王様はイフリートに回復魔法をかけると、傷は綺麗に治り、もとの可愛らしい赤髪の少女の姿へと戻っていく。
「申し訳ありません…。大賢者様…。守ることが…出来ませんでした…。」
「大丈夫だよ。今の目的が俺ならすぐにまたこっちへ戻ってくるさ。」
「その前に作戦を考えるぞ大賢者とやら。
おそらく、邪神は勇者の体を乗っ取っている。
そのまま勇者の体を使わせれば、すぐに勇者の体は耐えきれずに崩壊してしまうだろう。
なので、まずはお前が勇者の身体から邪神を引き摺り出せ。
その後、邪神はワシが引き受ける。
まぁ、それからは…。多分勝てぬかもだがお前と勇者でワシごと邪神を討て。
それでハッピーエンドじゃろう。」
「えらくサラッと自分の命を投げ出すんだな…?」
にこりと魔王様が微笑む。
「そうでもせねば割りに合わぬ…。勇者のいない世界を生きてもつまらぬしの…。
だから、私を討って欲しいのじゃ…。
お姫様よ。すまぬな。親友になる約束とこの国と国交を結ぶ約束は一時保留になりそうじゃ。」
「魔王ちゃん…。私は…、そんなの嫌です!
大賢者様!命令です!その名に恥じぬ方法で、全てを救ってみなさい!」
まったく…。このわがまま姫様は…。
「わかった。やってみるよ。封印した切り札も…あるしな。」
「おい、ご主人様…。まさか時限龍の力を使うつもりか…?アレも邪神に一時魅入られた力なんだぞ?」
「それで俺の体に入ってこようものなら、そのまま俺の火雷神の力で焼き尽くすさ。」
盗賊ちゃんは納得できない顔でこっちをじっと見てくる。
「大丈夫だよ。俺を信じて?」
「おい、皇女殿下…。
ご主人様に何かあったらオレはお前を殺す。
無論、姉とは…認めないからな…?」
「結構です。この戦い、邪神が絡んでいるならばむしろそれだけの覚悟を持って挑まねば…。
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いつ、どのようにして復活を遂げ潜んでいたのかはわからないですが…。
邪神は強い人への怒りを持つものを取り込もうとしてたと伝承にはあります…。
そして、どこにでも現れると…。」
そして、魔王城の方向から禍々しい気配がこっちへ向かってくる。
「来たぞ!皆!構えよ!」
全員が再び最強スキルを展開し戦闘態勢を取る。
禍々しい気配は空の上で静止する。
やはりと言うか、その姿は勇者ちゃんだった。
漆黒の鎧に身を包み、真っ黒なオーラに包まれ、そして真っ赤な目をした勇者ちゃん。
いや、勇者の身体を借りた邪神であった。
「魔王城に向かっていないと思ったらここに戻ってきていたとは…気付くのが早いではないか。
流石は聡明だな大賢者!」
「おい、邪神。早くその体を捨てた方が賢明だ。アホが移るぞ。その体はもはやアホの塊だからな。」
「え?そうなの?こいつアホなの…?
えぇ…。とか言うと思ったのか?そんなに簡単な方法で我をこの体から追い出せると思っ」
俺は紅の雷と白い雷を纏った拳を勇者ちゃん越しに邪神に叩き込む。
「人の死と身体を弄びやがって…!!
覚悟は出来てんだろうなぁ!!」
怒りの炎で俺の炎皇の鎧が蒼白い炎を経て真っ白な炎の鎧へと変質していく。
「ほう…。見事な神の力だな流石は大賢者だ!ワシも戦うのが楽しみだぞ!」
「雷神の力全てをその身に宿し、纏いたる俺の最強の姿。今が初めての変身だ。
名付けて、伊邪那美命(イザナミノミコト)モード。」
真っ白な炎と雷が俺の身体にまとわりついている。
そして、その背には日輪の光。
「行くぞ邪神とやら。魔力の貯蔵は十分か?」
俺は、再び勇者ちゃんの身体ごと掌底を打ち込み邪神を勇者ちゃんの体から吹っ飛ばす。
「がっはぁぁあっ!!何だ!この力は…!
かつての異世界人は12の神の力を持ってようやくだったと言うのに…!」
「今のこの体は8の雷神と、それをその身に宿す伊邪那美命だ。
安倍晴明が引き連れていた十二神将とはまた格が違うんだよ。当然だ。」
勇者の体から完全に引き離された邪神は、苦しみもがいていた。
「勇者ちゃん!俺の声が聞こえるなら、その勇気の炎を我が日輪の炎で再び燃やせ!共に戦うぞ!!」
俺は勇者ちゃんの亡骸に触れて彼女の命の灯火が強く燃え上がるイメージをその身に流し込む。
「今度こそ…目を覚ませぇぇえっ!お前は、勇者なんだろう!!」
勇者ちゃんの身体が白く輝きだし、その身が雷光を纏い出す。
そして、その身を守っていたアーマードフェニックスの鎧がさらに神々しい姿へと変質していく。
「させ…るかぁぁあ!!」
勇者の復活を阻もうと邪神が禍々しい闇そのものとでも言うべき波動を投げつけてくる。
「銀の翼に望みを乗せて…」
闇の波動がいともたやすく光に包まれて消滅していく。
「灯せ平和の光輪剣!!」
邪神がその強い光にたじろいでいく…。
「光の勇者、この私!定刻通りにただいま到着!!」
白く輝く美しい髪に純白の鎧を纏った神の力を得た勇者がそこに降臨していた。
「勇者使いが荒いぞ!大賢者!
あんなに美しく死んだのに、こうもたやすく生き返っては台無しではないか!!」
「ばーか、ヒーローってのは一回死んでかっこよく復活してボスキャラを圧倒的な力で叩きのめすからクソかっこいいんだろうが!」
「うむ!そうだな!それは違いない!では…、行くぞ!言っとくが私は…」
「言っとくが俺は…!」
「「最初から最後までクライマックスだぜ!!」」
魔王様や他のみんなは完全に戦闘態勢を解く。
「もうあいつら2人だけでいいだろう。
離れるぞーお前らー。
勇者!大賢者!!やぁぁぁぁあってやれぇぇぇえい!!」
魔王様が拳を振り上げ俺たちにエールを送る。
「やぁぁぁぁあってやるぜぇぇえっ!!」
「私たちは今!猛烈に!!熱血しているぅぅうっ!!」
「「光輪剣!!」」
俺の背の日輪を勇者ちゃんの剣に合体させ、巨大な光の剣を作り出す。
そして、勇者ちゃんの左手を取り俺の神力をその身に流し込む。
「行くぞ!勇者ちゃん!」
「うむ!!負ける気がしないな!!」
俺たち2人は陽光のような光を纏いながら邪神へと特攻していく。
「くっ…!おのれおのれおのれおのれぇぇえっ!!
いい気になるなよ!人間風情がぁぁぁあっ!!」
黒い塊も人の姿へと形を変え、巨大な黒い剣を携えて此方へと特攻してくる。
互いの大剣がぶつかり合い、辺りに轟音を響かせ光と闇がぶつかりあう。
が、相手の闇はまるで俺たちの光に太刀打ち出来ず当たる側から消えていく。
「邪神よ!!光に!なぁれぇえええ!!」
俺たちの剣が邪神を真っ二つに切り裂いていく。
「グォォオオオアアアア!!
また…消えるのか…!我の体がぁあああ!
だが、忘れるな…!人の心に闇がある限り、我々は完全に消えることはない…!!」
そして、光が完全に邪神を包み込み消滅させていった。
「おー。おわったようじゃな。すごいすごーい。
それと、勇者よ…。よく戻ってきたな。
一回言ってみたかったセリフがあるのじゃが言って良いか?」
「どうぞ!どんとこいだぞ魔王!」
「おお、ゆうしゃよ!しんでしまうとはなさけない!!」
「それ、魔王のセリフじゃないからぁああっ!!」
俺のツッコミが辺りに響き渡り、突如現れた邪神との戦いはひとまず終わりを迎えた。
そして勇者は復活を遂げた。
のだが…!
「お、おい!大賢者!これはどう言う冗談だ!
私の体が…。」
勇者ちゃんの身体は…。
「君好みの超絶可愛いロリ少女になったぞ!
やったな!大賢者!」
「同意求めるのやめて…。」
「あと大賢者。私のおっぱいの揉み心地はどうだった?」
「…………。すごく…おおきかったです……。」
おめでとう!
ゆうしゃはロリゆうしゃにしんかした!
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