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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第39話 拗れた愛
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選択を誤っただろうか…。
盗賊ちゃんはあの後口を全く聞いてくれなくなり、「一人で先に帰ってくれ。オレは今、貴方の顔をまともに見れる自信がない。」と言われた。
とりあえず、盗賊ちゃんのお母さんを俺の城下町の空き家(家具付き)にご案内することにした。
「あんたもバカなやつだねぇ…。
あの子に嫌われるより私を捨てる事を選べば良いものを…。
考えなくてもわかるだろう?あの子に嫌われる事くらい…。」
「それでも…それでも困ってる人を放っておくのは…。」
「それはお人好しとも優しいとも言えないよ。
はぁ…。あんたもの捨てるの苦手だろう?
ちょっとしたものでもまたいつか役に経つかもってとっとくタイプと見た!」
うむ…。確かにアクセ作りで余ったものも割と取っておくタイプだ。
「捨てる勇気!!
大事だよ。ま、捨てられる側の私が言うのもあれだけどね。
ただ、捨てない勇気を選ぶあんたのことは嫌いじゃないよ。
言ってもあの子だってまだまだガキなんだ。
自分の気持ちを汲み取って選んでもらえなかったことが何より悔しくて悲しかったのさ。
あんたが好きだから尚更だね。
微笑ましくて羨ましいくらいだよ。」
……。
「私はどうするのが正解だったのでしょう…。」
「私に、この子の前に二度と顔を見せるなって言って手切れ金でも渡すのが正解だったんじゃないかい?あの子的にはね…。」
そういうのは…嫌だ。
俺も父親の不倫(しかも大学生とで、親は離婚していたが…どんなに最低のクズやろうでも親は親だ。
やっぱ、父親と一緒に暮らしたいとは思ったこともあったし、会えるのは嬉しかった…。
「なんにせよ、アンタはアンタにとって納得の行く選択をしたんだろう?」
「俺には、貴方が本気で娘を道具として見てるようにも邪魔に思うようにも見えなかったから…。
娘の幸福を願う、一人の親にしか…。」
「そう言ってもらえると救われるね…。
娘を売ろうともした最低な親だよ?私はさ…。
でも、今はすごく後悔してる…。
あの子が生まれた時はそりゃやっぱなんだかんだで嬉しくて、幸せにしてやろう、アタシみたいにしちゃいけないって思っていたのに…。
いつのまにか、あいつに構えないうちにアタシは最低な親に成り下がっていた。
許されるとも思っちゃいないさ。
でも、娘の幸福くらいは願っていたよ。
家出されて3年…。私だって…、寂しかったしたくさん後悔したよ…。
だから、アンタみたいな奴に居てくれて本当に嬉しかったんだ。
なのに、あんなへらず口をさ。どんな顔してどんなこと言えばいいかわからなくってさ…。
ゴメンね。
アンタにはいっぱい迷惑かけたね…。」
「私は私のしたいようにしただけです。
私も父親と離ればなれの生活を送っていくうちに、少し公開してる母親も見てきましたから…。
でも、ひさびさに会った父親はたしかにお互いにどう接していいかわからなくて、他人行儀にはなってましたね…。」
10数年振りに祖母の葬儀で再会した父親は、俺が憧れたかっこよさはほとんどなくなっていた。
ビシッとスーツを着こなし、かっこいいビジネスマンだった父親も、普通の爺さんになっていた。
そして、俺の父親だった父さんは大人になった俺への接し方が他人になってて…。
それがとても寂しかったのを、よく覚えている。
「君は君の父親とはどうなったんだい?」
「今でも疎遠なままですね…。
時々会ったり話したいとは思いますが…、その勇気すら出ません…。」
「そうか…。やっぱそうなっちまうもんなんだろうね…。
あの子は私の元へ帰りたいとか思ってくれたりはしたんだろうか…。」
「その話に触れたことはなかったけど、少なくとも彼女の帰る場所は、数日前まではドラゴスケイルで今は…。」
「言いたくなくても言えばいいんだよ。
アンタの所…だろ?」
今はそれを言えるほどの自信はない。
いまはただ…、彼女に嫌われてしまったことが辛い。
「私も正直、どう話せばいいかわかんないだけどさ。一緒に謝りに行こうか。」
「賛成です…。ところで…。」
俺の腰を掴んでる少女の手が一つ。
「皇女殿下…。何で乗ってるんです…?」
「あら?湿っぽいお話は終わられましたか?
いえ、せっかくですので皇女として貴方の城を見ておきたいなと。拒否権はありませんよ?」
顔は見えてないがニコニコしながらサラッと怖いことを言ってるのが眼に浮かぶ。
「私も正直どう接すればいいかわからなかったですが…、こうやって喧嘩の一つでもすれば少しは近づけるかなとも今は思っています。
甘いですかね?」
「同意を求められても…。お母さんはどう思います?」
「少なくとも皇女殿下のことを娘のようにみるには無理でしょ?どう転ぼうが、自分の腹を痛めてない以上は他人の子だよ。
まぁ、うちの娘を妹として見て娘の母親としてちゃんと見てくれることは悪くはないけどね。」
城下に到着し盗賊マザー(仮称)を小さな空き家へと案内し、好きに使ってもらうように話す。
明日以降は俺の城でうちのオッサンズと清掃と洗濯メインでという話になった。
「この城下町も少しづつ人を呼ばねばですね。
基本は貴方の元で働いてる方や研究者の住まいですが、もともとこの国にはほとんど居ませんでした。
今居る方たちは、もともとが魔女さん配下の異世界人が大好きな、貴方の元で異世界についてや貴方の作るアクセサリーについて研究したい人たちですし。」
「つまりみんな私のファンだと…。」
「そういうことになりますね?
残り湯を回収されても許してあげてくださいね?」
「貴方そういうサラッととんでもないこというのは趣味ですか…?」
「逆らえない相手の反応を見るのは時々たのしいですね♪」
【悲報】皇女殿下はドS
とりあえず城に到着したので中を案内することにした。
「おかえりなさっせぇえええ!おやかたさまぁああ!」
「おい、どこで覚えたその言い回し。」
「研究職員の人が教えてくれやしたぜ?」
一応、研究者としての仕事はしているようだ…。
偏ってるけど…。
「こちらがあなたの城になった西の城…。
魔女さまが研究成果を惜しみなく発揮し少しづつ貴方の世界の城に近づけてると聞き及んでいましたが…、これはなかなか面白いですね~。」
「いっそ一般人入場自由のエリア作って入場料取ってちょっとした異世界人研究の発表の場とかにしても面白いかもだな…。」
「!!いいですね!さすが大賢者様!
二つ名に違わぬ賢さです!普段の雰囲気からはわからない素晴らしさですね!」
「もしかしなくても俺馬鹿にされてる?」
「そこに気付くとは流石大賢者様です!」
……。
「いいんですよぉ~?小突いたりしても~?不敬罪で始末するだけなので~?」
殴りたいこの笑顔。
「よし。殴るか。」
ライトニングクォーツを右手にだけ起動し、雷を纏った拳を構える。
「あ、あ、あああの!洒落になってませんよ大賢者様!?」
「大人をからかうとどうなるのかを身体に教えてやろうと思ってな…。
おら、歯ぁくいしばれ小娘。顔は可哀想だからボディで勘弁してやる。」
「ちょちょちょ!お気を鎮めください!私が悪かったです!悪かったですからぁ!」
拳を思いっきり振りかぶり、当たる直前で解除しデコピンしてやった。
「ぴきゅっ!顔はしないって言ったじゃないですか!嘘つき!」
「やかましい。五体満足で助かってることを幸運に思いなさい。」
「貴方こそ不敬罪で今すぐ始末してもらいますよ!ぴきゃっ!」
今度は背後から杖で小突かれている。
「ま、魔女ぉおお~!痛いじゃない!」
「まったく君という子は…。その悪い癖やめなさい。いつか命を落とすよ…。
君のご両親といいそうやって人をからかうの好きなんだから…。やぁ大賢者くん。猫からも報告は受けているが一悶着やらかしてしまったらしいね?
まぁあっちは猫が彼女の話を聞いてるから心配は要らないだろう。」
魔女さんはまだ皇女殿下の頭を杖でウリウリといじっている。
「ぴきゃああっ!もうそれやめなさいよ!」
「少しは思い知ったかい?
あと、大賢者君を不敬罪で始末するのは無理だよ。
私と同じように彼にも君とこの国を作るための権限を与えているからね。
つまり立場的には猫よりも上という事だ。」
「え、俺、いつのまにそんなことに。
と言うか、城にいるってことは俺や皇女殿下に何か用事があったんじゃ?」
魔女さんは思い出したようにそうだそうだと手を叩くと、皇女殿下に新しい転移石を渡した。
「ようやく完成したんだよ。新しい転移石。
使用回数に制限もないし、一度訪れた場所の姿見のある場所なら自由に移動できる。
これで、私たちそれぞれの城を結んである。
勿論、使えるのはギルマス以上の権限を持つもののみにしてあるけどね。
ベヒーモスさんのおかげでとても研究が進んだ。
やはり、魔族の持つ知識は深い…。
出来うるなら早めに国交を結びたい所だね。」
「そうですね…。わたしとしても世代交代された前魔王の娘様とお話をしたいところではあるのですが…。
どうすれば話せるものでしょうか…。」
魔王様ねぇ…。
「そう言えば勇者ちゃんは?」
「彼女なら、まだ私が彼女用に用意させた部屋で寝ていたよ。
昨日アレだけ派手に暴れたから疲れたんじゃないのかい?」
なるほど…。たしかに俺の部屋に現れた後リベンジしてくるような気配もなかったし。
「そういえばあの子、一応魔王に招待されてることになるのかな…?
君を退けた事で再度挑戦する権利を得たはずだし。」
「恐らくは…?ベヒーさんはそこのところ何か言ってないの?」
「いや、特に何もだね。
まぁ魔王様は古来より戦神とも言われてるくらいだから、本当に自分を倒せるくらいの相手と戦いたいんだろうね…。
その為に犠牲になった命もあったことは許しがたいけども…冒険者はそう言うのも覚悟して冒険者やってるからそこは何も言えないね…。
君はどうするんだい?国交を結ぶ為の親善大使として魔王様の元に行ってもらうつもりだったんだが…。戦力は十分だが、盗賊ちゃんの件があるしね…。」
はぁ…。心が重い…。
本当にどうやって仲直りすれば良いんだ…。
「とりあえず…明日にでも誤りに行く…。
このまま仲違いとかしたくない…。」
「大好きだから…かい?」
「…。うん…。」
そう言うと背中をぱんっと押された。
「好きな子に嫌われるってつらいだろう?
でも、だからこそ自分の気持ちを確かめるきっかけにもなる。
本当に好きじゃなければ、そんなに悩むことも苦しむこともないんだ。その気持ちこそ君の好きの大きさだよ。」
初めて失恋した時よりも胸が痛いし苦しい。
好きの大きさ…か。
「正直なところ、歳下の子供ってより一人の異性として見てたろう?
可愛いから好きなんじゃなくて、好きだから可愛かった。違うかい?」
「そうだな…。うん、間違いなくそうだ。」
「なら、はやくごめんなさいして仲を戻さないとね。」
うん、明日には謝りに行こう…。
「魔女さんもそういう経験ってあるの?」
「……。私が好きになった男は君が初めてだけど…。振った男や元々は友達だったのに恋愛が原因で仲違いして恨みを買ったことはあるよ…。
こればっかしはどうしようもないけどね…。」
「その人とは…?」
「今も…絶賛仲違い中かな。どこに居るかも知らないね…。」
「魔女さん…。その人って…?」
魔女さんが唇に人差し指を当てる。
「それ以上はこの人に聞かせたくないから、言わないでくれるかな?」
「…。わかったわ…。でも、いつかは話した方がいい内容でしょう?」
「それはその時がきたら話すさ。
少なくとも、今話すべき内容ではないよ。」
「そう…ね。ごめんなさい。
では、私はそろそろお城へ帰らせて頂きますね。
大賢者様、此度は私もご迷惑をおかけしました…。
その…、私の事も嫌いにはならないでくださいね?」
「大丈夫。これ以上嫌えないくらい嫌いになってるから。」
「むぅぅ!冗談でも言って良いこととダメなことがありましてよ?私、泣いてしまいますわよ?」
「おーいいねぇ。お姫様の涙とか見てみたいよ。」
これでもかってくらいにからかい返してやる。
「ほう…。ならばこのお姫様の首を魔王様に献上でもしちまおうか?」
!?
「動くなよ?俺はベヒーモスみたいな温故派じゃねぇんだよ。この女の首、ここで落とすぞ?
人間どもと国交を結ぶだぁ?馬鹿馬鹿しい。
やれるものならやってみな。止めれるもんなら止めてみな。
ベヒーモスにも言っとけ!イフリートが人間に宣戦布告するってな!嫌なら取り返しに来いよ大賢者。
こいつの首が落ちるときは宣戦布告の合図だぜ?」
そういうと炎に包まれて消えた。
「いつのまに侵入されたと言うんだい…?この城には侵入者よけの魔力結界もあるというのに…。
いや、それよりもだ。どうこう言ってる場合じゃない!盗賊ちゃんも連れて急いで北の国へ向かうよ賢者くん!」
「とりあえず、ベヒーさんにも連絡しないと…!」
俺はベヒーさんの元へ、魔女さんはギルドへと急ぎ駆け出した。
盗賊ちゃんはあの後口を全く聞いてくれなくなり、「一人で先に帰ってくれ。オレは今、貴方の顔をまともに見れる自信がない。」と言われた。
とりあえず、盗賊ちゃんのお母さんを俺の城下町の空き家(家具付き)にご案内することにした。
「あんたもバカなやつだねぇ…。
あの子に嫌われるより私を捨てる事を選べば良いものを…。
考えなくてもわかるだろう?あの子に嫌われる事くらい…。」
「それでも…それでも困ってる人を放っておくのは…。」
「それはお人好しとも優しいとも言えないよ。
はぁ…。あんたもの捨てるの苦手だろう?
ちょっとしたものでもまたいつか役に経つかもってとっとくタイプと見た!」
うむ…。確かにアクセ作りで余ったものも割と取っておくタイプだ。
「捨てる勇気!!
大事だよ。ま、捨てられる側の私が言うのもあれだけどね。
ただ、捨てない勇気を選ぶあんたのことは嫌いじゃないよ。
言ってもあの子だってまだまだガキなんだ。
自分の気持ちを汲み取って選んでもらえなかったことが何より悔しくて悲しかったのさ。
あんたが好きだから尚更だね。
微笑ましくて羨ましいくらいだよ。」
……。
「私はどうするのが正解だったのでしょう…。」
「私に、この子の前に二度と顔を見せるなって言って手切れ金でも渡すのが正解だったんじゃないかい?あの子的にはね…。」
そういうのは…嫌だ。
俺も父親の不倫(しかも大学生とで、親は離婚していたが…どんなに最低のクズやろうでも親は親だ。
やっぱ、父親と一緒に暮らしたいとは思ったこともあったし、会えるのは嬉しかった…。
「なんにせよ、アンタはアンタにとって納得の行く選択をしたんだろう?」
「俺には、貴方が本気で娘を道具として見てるようにも邪魔に思うようにも見えなかったから…。
娘の幸福を願う、一人の親にしか…。」
「そう言ってもらえると救われるね…。
娘を売ろうともした最低な親だよ?私はさ…。
でも、今はすごく後悔してる…。
あの子が生まれた時はそりゃやっぱなんだかんだで嬉しくて、幸せにしてやろう、アタシみたいにしちゃいけないって思っていたのに…。
いつのまにか、あいつに構えないうちにアタシは最低な親に成り下がっていた。
許されるとも思っちゃいないさ。
でも、娘の幸福くらいは願っていたよ。
家出されて3年…。私だって…、寂しかったしたくさん後悔したよ…。
だから、アンタみたいな奴に居てくれて本当に嬉しかったんだ。
なのに、あんなへらず口をさ。どんな顔してどんなこと言えばいいかわからなくってさ…。
ゴメンね。
アンタにはいっぱい迷惑かけたね…。」
「私は私のしたいようにしただけです。
私も父親と離ればなれの生活を送っていくうちに、少し公開してる母親も見てきましたから…。
でも、ひさびさに会った父親はたしかにお互いにどう接していいかわからなくて、他人行儀にはなってましたね…。」
10数年振りに祖母の葬儀で再会した父親は、俺が憧れたかっこよさはほとんどなくなっていた。
ビシッとスーツを着こなし、かっこいいビジネスマンだった父親も、普通の爺さんになっていた。
そして、俺の父親だった父さんは大人になった俺への接し方が他人になってて…。
それがとても寂しかったのを、よく覚えている。
「君は君の父親とはどうなったんだい?」
「今でも疎遠なままですね…。
時々会ったり話したいとは思いますが…、その勇気すら出ません…。」
「そうか…。やっぱそうなっちまうもんなんだろうね…。
あの子は私の元へ帰りたいとか思ってくれたりはしたんだろうか…。」
「その話に触れたことはなかったけど、少なくとも彼女の帰る場所は、数日前まではドラゴスケイルで今は…。」
「言いたくなくても言えばいいんだよ。
アンタの所…だろ?」
今はそれを言えるほどの自信はない。
いまはただ…、彼女に嫌われてしまったことが辛い。
「私も正直、どう話せばいいかわかんないだけどさ。一緒に謝りに行こうか。」
「賛成です…。ところで…。」
俺の腰を掴んでる少女の手が一つ。
「皇女殿下…。何で乗ってるんです…?」
「あら?湿っぽいお話は終わられましたか?
いえ、せっかくですので皇女として貴方の城を見ておきたいなと。拒否権はありませんよ?」
顔は見えてないがニコニコしながらサラッと怖いことを言ってるのが眼に浮かぶ。
「私も正直どう接すればいいかわからなかったですが…、こうやって喧嘩の一つでもすれば少しは近づけるかなとも今は思っています。
甘いですかね?」
「同意を求められても…。お母さんはどう思います?」
「少なくとも皇女殿下のことを娘のようにみるには無理でしょ?どう転ぼうが、自分の腹を痛めてない以上は他人の子だよ。
まぁ、うちの娘を妹として見て娘の母親としてちゃんと見てくれることは悪くはないけどね。」
城下に到着し盗賊マザー(仮称)を小さな空き家へと案内し、好きに使ってもらうように話す。
明日以降は俺の城でうちのオッサンズと清掃と洗濯メインでという話になった。
「この城下町も少しづつ人を呼ばねばですね。
基本は貴方の元で働いてる方や研究者の住まいですが、もともとこの国にはほとんど居ませんでした。
今居る方たちは、もともとが魔女さん配下の異世界人が大好きな、貴方の元で異世界についてや貴方の作るアクセサリーについて研究したい人たちですし。」
「つまりみんな私のファンだと…。」
「そういうことになりますね?
残り湯を回収されても許してあげてくださいね?」
「貴方そういうサラッととんでもないこというのは趣味ですか…?」
「逆らえない相手の反応を見るのは時々たのしいですね♪」
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「おかえりなさっせぇえええ!おやかたさまぁああ!」
「おい、どこで覚えたその言い回し。」
「研究職員の人が教えてくれやしたぜ?」
一応、研究者としての仕事はしているようだ…。
偏ってるけど…。
「こちらがあなたの城になった西の城…。
魔女さまが研究成果を惜しみなく発揮し少しづつ貴方の世界の城に近づけてると聞き及んでいましたが…、これはなかなか面白いですね~。」
「いっそ一般人入場自由のエリア作って入場料取ってちょっとした異世界人研究の発表の場とかにしても面白いかもだな…。」
「!!いいですね!さすが大賢者様!
二つ名に違わぬ賢さです!普段の雰囲気からはわからない素晴らしさですね!」
「もしかしなくても俺馬鹿にされてる?」
「そこに気付くとは流石大賢者様です!」
……。
「いいんですよぉ~?小突いたりしても~?不敬罪で始末するだけなので~?」
殴りたいこの笑顔。
「よし。殴るか。」
ライトニングクォーツを右手にだけ起動し、雷を纏った拳を構える。
「あ、あ、あああの!洒落になってませんよ大賢者様!?」
「大人をからかうとどうなるのかを身体に教えてやろうと思ってな…。
おら、歯ぁくいしばれ小娘。顔は可哀想だからボディで勘弁してやる。」
「ちょちょちょ!お気を鎮めください!私が悪かったです!悪かったですからぁ!」
拳を思いっきり振りかぶり、当たる直前で解除しデコピンしてやった。
「ぴきゅっ!顔はしないって言ったじゃないですか!嘘つき!」
「やかましい。五体満足で助かってることを幸運に思いなさい。」
「貴方こそ不敬罪で今すぐ始末してもらいますよ!ぴきゃっ!」
今度は背後から杖で小突かれている。
「ま、魔女ぉおお~!痛いじゃない!」
「まったく君という子は…。その悪い癖やめなさい。いつか命を落とすよ…。
君のご両親といいそうやって人をからかうの好きなんだから…。やぁ大賢者くん。猫からも報告は受けているが一悶着やらかしてしまったらしいね?
まぁあっちは猫が彼女の話を聞いてるから心配は要らないだろう。」
魔女さんはまだ皇女殿下の頭を杖でウリウリといじっている。
「ぴきゃああっ!もうそれやめなさいよ!」
「少しは思い知ったかい?
あと、大賢者君を不敬罪で始末するのは無理だよ。
私と同じように彼にも君とこの国を作るための権限を与えているからね。
つまり立場的には猫よりも上という事だ。」
「え、俺、いつのまにそんなことに。
と言うか、城にいるってことは俺や皇女殿下に何か用事があったんじゃ?」
魔女さんは思い出したようにそうだそうだと手を叩くと、皇女殿下に新しい転移石を渡した。
「ようやく完成したんだよ。新しい転移石。
使用回数に制限もないし、一度訪れた場所の姿見のある場所なら自由に移動できる。
これで、私たちそれぞれの城を結んである。
勿論、使えるのはギルマス以上の権限を持つもののみにしてあるけどね。
ベヒーモスさんのおかげでとても研究が進んだ。
やはり、魔族の持つ知識は深い…。
出来うるなら早めに国交を結びたい所だね。」
「そうですね…。わたしとしても世代交代された前魔王の娘様とお話をしたいところではあるのですが…。
どうすれば話せるものでしょうか…。」
魔王様ねぇ…。
「そう言えば勇者ちゃんは?」
「彼女なら、まだ私が彼女用に用意させた部屋で寝ていたよ。
昨日アレだけ派手に暴れたから疲れたんじゃないのかい?」
なるほど…。たしかに俺の部屋に現れた後リベンジしてくるような気配もなかったし。
「そういえばあの子、一応魔王に招待されてることになるのかな…?
君を退けた事で再度挑戦する権利を得たはずだし。」
「恐らくは…?ベヒーさんはそこのところ何か言ってないの?」
「いや、特に何もだね。
まぁ魔王様は古来より戦神とも言われてるくらいだから、本当に自分を倒せるくらいの相手と戦いたいんだろうね…。
その為に犠牲になった命もあったことは許しがたいけども…冒険者はそう言うのも覚悟して冒険者やってるからそこは何も言えないね…。
君はどうするんだい?国交を結ぶ為の親善大使として魔王様の元に行ってもらうつもりだったんだが…。戦力は十分だが、盗賊ちゃんの件があるしね…。」
はぁ…。心が重い…。
本当にどうやって仲直りすれば良いんだ…。
「とりあえず…明日にでも誤りに行く…。
このまま仲違いとかしたくない…。」
「大好きだから…かい?」
「…。うん…。」
そう言うと背中をぱんっと押された。
「好きな子に嫌われるってつらいだろう?
でも、だからこそ自分の気持ちを確かめるきっかけにもなる。
本当に好きじゃなければ、そんなに悩むことも苦しむこともないんだ。その気持ちこそ君の好きの大きさだよ。」
初めて失恋した時よりも胸が痛いし苦しい。
好きの大きさ…か。
「正直なところ、歳下の子供ってより一人の異性として見てたろう?
可愛いから好きなんじゃなくて、好きだから可愛かった。違うかい?」
「そうだな…。うん、間違いなくそうだ。」
「なら、はやくごめんなさいして仲を戻さないとね。」
うん、明日には謝りに行こう…。
「魔女さんもそういう経験ってあるの?」
「……。私が好きになった男は君が初めてだけど…。振った男や元々は友達だったのに恋愛が原因で仲違いして恨みを買ったことはあるよ…。
こればっかしはどうしようもないけどね…。」
「その人とは…?」
「今も…絶賛仲違い中かな。どこに居るかも知らないね…。」
「魔女さん…。その人って…?」
魔女さんが唇に人差し指を当てる。
「それ以上はこの人に聞かせたくないから、言わないでくれるかな?」
「…。わかったわ…。でも、いつかは話した方がいい内容でしょう?」
「それはその時がきたら話すさ。
少なくとも、今話すべき内容ではないよ。」
「そう…ね。ごめんなさい。
では、私はそろそろお城へ帰らせて頂きますね。
大賢者様、此度は私もご迷惑をおかけしました…。
その…、私の事も嫌いにはならないでくださいね?」
「大丈夫。これ以上嫌えないくらい嫌いになってるから。」
「むぅぅ!冗談でも言って良いこととダメなことがありましてよ?私、泣いてしまいますわよ?」
「おーいいねぇ。お姫様の涙とか見てみたいよ。」
これでもかってくらいにからかい返してやる。
「ほう…。ならばこのお姫様の首を魔王様に献上でもしちまおうか?」
!?
「動くなよ?俺はベヒーモスみたいな温故派じゃねぇんだよ。この女の首、ここで落とすぞ?
人間どもと国交を結ぶだぁ?馬鹿馬鹿しい。
やれるものならやってみな。止めれるもんなら止めてみな。
ベヒーモスにも言っとけ!イフリートが人間に宣戦布告するってな!嫌なら取り返しに来いよ大賢者。
こいつの首が落ちるときは宣戦布告の合図だぜ?」
そういうと炎に包まれて消えた。
「いつのまに侵入されたと言うんだい…?この城には侵入者よけの魔力結界もあるというのに…。
いや、それよりもだ。どうこう言ってる場合じゃない!盗賊ちゃんも連れて急いで北の国へ向かうよ賢者くん!」
「とりあえず、ベヒーさんにも連絡しないと…!」
俺はベヒーさんの元へ、魔女さんはギルドへと急ぎ駆け出した。
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三話完結です。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
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