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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第32話 勇者式トレーニング
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食事を終えてひと段落した後、練兵場に来た俺たち。
目的は皆の実践トレー二ングである。
「では、まずは戦士ちゃん!武器を構えてくれ!私が君たちと戦いながら君たちのスキルトリガーを発動させる!」
「スキルトリガー?ってのはなんだ?」
魔女さんが水晶の板のようなものを見せてくる。
「これは?」
「スキルボードと言うものさ。ギルド内でのみ閲覧権限を許される特殊な水晶板でね。
これに触れたものの魂と肉体に刻まれた様々な性質を読み取り、その者が習得可能なスキルとそのスキルの発現条件を見ることができる。
その発現条件がスキルトリガーと言うものだ。
無論、ここに表示されないスキルも数多く存在しているよ。少し触れてみてくれるかい?」
俺は水晶版に触れてみる。
するとこの世界の文字で色々と表示されてきた。
「例えば、君の場合だと装備品でスキルが変わるようだし、そもそも装備品がなければスキル自体が殆ど無い。
君の固有スキルである【創造主】も発現に至った経緯不明のS級スキルのようだね。
トリガーまで提示されてるスキルは…。うーん…、今のところはないね。
一方、これが2人のものだ。」
そこには大量の文字が並ぶ。
「ここに出ているのは、要はスキル自体は入手しているのに、まだそれを使う条件が達成されてないから発現していなかったものたちだね。
そしてスキルには熟練度もある。
同じスキルを何度も使うことで上位スキルに成長したり、より少ない負担で使えるようになったりだ。
例えば、君の雷帝形態とかね。
初めて使った時より馴染んだり、複数の石の力を同時に使えるようになったろう?
あれは君のスキルレベルが上がった為だ。」
「なるほど…。戦士ちゃんと妹ちゃんは実戦経験が圧倒的に足りていなかっただけ…って言ってたっけ?」
「その通りだ。魔法使いちゃんは特にだね…。
実際に魔法を限界まで使わせる事で、私の魔法やスキルを簡単に習得していった。
要は限界まで力を使える相手がいなかったからだ。
例えば、戦士ちゃんが数日前にベヒーモスさんと戦って発現させた不動倶利伽羅剣は、怒りが最大限に高まった時に発現すると言うトリガーがあった。
獲得は君から剣を継承した時だね。
君のアイテムにはそう言う力もある。」
トリガー条件には結構な数で、【~~を~~回発動する。】とかもある。
中には一度瀕死に陥るなんてのもあった。
戦士ちゃんのスキルにはそれで発現したものもあった。
効果の程は知らないがやっぱ強いのだろう。
「2人とも全力で最強スキルを行使しながら立ち向かっておいで!勇者の名の元に受け止めてあげよう!」
自慢の剣をすらっと抜いて構える勇者ちゃん。
剣を持つ姿だけでもサマになっている。
「だったら…これで!」
戦士ちゃんは全身にオーラを纏うと、オーラから巨大な不動明王を顕現させる。
しばらく見ないうちに自在に出せるようになったらしい。
アレでオラオララッシュ出来そうだ。
「はぁあぁぁあぁあっ!」
不動明王と共に放たれる2人の剣が生み出す衝撃波が勇者ちゃんを襲う。
「無駄ぁっ!」
そしてその剣撃を軽くその剣で弾き飛ばす勇者ちゃん。
「良いよ!戦士ちゃん!連続で一気に!高速で!なんども打ち込んできたまえ!!」
戦士ちゃんがスゥーーッと息を吸いオーラの力をさらに高める。
「神速…絶刀!!」
一瞬で振り抜かれた剣が放つ無数の衝撃波が勇者ちゃんを襲う。
が、勇者ちゃんはそれを剣を振るうでもなく、縦に構えるだけで見事に全て受け切った。
「動くことなく…本当に受け止めた…?」
「うむ!受け止めたぞ!これが並みの冒険者やモンスターなら受け止めきれずに身体は細切れになっているだろうな!
だが!私には通じないぞ!スキル・絶対切断があるからな!」
戦士ちゃんは負けず嫌いなんだろうな…。
何度も何度も剣撃を打ち込んでいる。
そして、妹ちゃんはそれをニコニコワクワクと楽しそうに見ている。
「はぁ…はぁ…くそ…。届かない…。今の私の剣じゃ…まだ貴女には…届かないっていうの…?」
「当然だ。私は強い。君は弱い。
理由はそれだけだ。だから、君は強くなれ!
大切な人を守るための刃となるために、君はもっと強くなれ!
それと、どうせデカイ剣を振るならカッコよく振るのも良いぞ!このようにな!」
勇者ちゃんが剣を天に掲げると、剣は光り輝き身の丈以上のオーラを纏う。
そして、勇者ちゃんはその巨大なオーラを纏った剣を構えてそのまま戦士ちゃんめがけて突進して行く。
「恐れるな!恐れれば君の力はそのまま消えるぞ!恐れず私の剣を受け止めろ!己は強いと信じろ!大切な人を守りたいと常に心に誓え!それが君を強くする!君に今足りていないものだ!」
「そんな…根性論で…強くなれるなら苦労しないっつぅぅぅのぉぉぉおっ!!」
戦士ちゃんがまるでホームランバッターのような勢いで剣を振りかぶる。
「おっと……!?」
そしてそのままホームランボールのように勇者ちゃんを斬り…いや、剣の腹で天高く殴り飛ばした。
「ええっ!?当たった!?」
勇者ちゃんはそのまま空中で受け身を取り地上に降りてきた。
「そう!その感覚だ。君はどうやら怒りで強くなるタイプなのかもしれないな!では…、もう一度だ!」
勇者ちゃんは再び剣を天高く掲げて、オーラを纏った大剣を振り下ろしてくる。
「しつっこい!!」
その剣をまたも不動明王の剣で受け止める戦士ちゃん。
「気づいてないようだから教えてあげよう!
私のこの剣には当然ながらスキル 絶対切断を発動している。
その剣を君が受け止められている理由がわかるかい?
それは君が、神の力を持って!私のスキルに抗っているからだぁぁぁああっ!!」
勇者ちゃんの剣と戦士ちゃんの不動明王のオーラが放つ剣がなんどもぶつかり合う。
巨大な剣がぶつかり合うたびに辺りに相当な衝撃波が発生しているが、妹ちゃんはそれすらも我動じずのような感じで傍観している。
と言うかウズウズしている。
「うううぅうっ!!ここまで弾き返されると本気でイライラするわね…。なんかこう、私も賢者みたいにド派手な一撃で叩きのめしてやりたくなってくるわ…。
こう、私も空高く飛び上がって馬鹿でっかい剣投げ飛ばして羽虫のようにアンタをぶっ潰したい気分よ!」
とか言って、本当に空高く飛び上がると、ヴァリアブルソードを城の柱のようなサイズの巨大な剣に変形させて、不動明王のオーラに持たせる。
「なぁんだ…。できるじゃん!私いぃぃいっ!!」
そしてそれを不動明王のオーラと共に地面に全力で投げ飛ばしてくる。
「おっと…これはまずいな…!全員!防御体制をとってしゃがんでおいたほうがいいぞ!」
そして勇者ちゃんはもろに戦士ちゃんのありえない大きさの大剣に練兵場ごと潰された。
かに見えた。
「いやぁ!危ない危ない!これは当たってたら死んでたよ!衝撃波で鎧が吹っ飛んでしまったけどね!
全裸にされてしまったが、こう言う時のための光魔法だ!見られて困るところは全部隠してるから安心していいぞ大賢者!!」
「突っ込みを事前に回避されただと!?」
だがそれはそれでエロい。
ブルーレイでは外されそうな謎の光は現実ではこうもエロいのか…。
「だが、さすがの私も全裸で試合続行は恥ずかしいのでな!一度着替えに戻らせてくれ!」
「もちろんだとも…。私は戦士ちゃんが大穴開けたこの練兵場をその間に修復しておくよ…。
魔法使いちゃん、手を貸してもらえるかな?」
「はい!魔女様!」
妹ちゃんは嬉しそうに魔女さんと一緒に、魔法で練兵場の修復を始めた。
「す、すみません魔女様…。やりすぎました…。」
戦士ちゃんがそう言うと、魔女さんは戦士ちゃんの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「いいよいいよ。君のこの力は君の愛の強さの証でもあるんだから。
それに、子どもは元気なくらいがちょうど良いものさ。」
2人は大穴の空いた練兵場を、周りに立ち込める砂埃や吹き飛ばされた瓦礫を魔法で集めて再構築していく。
魔女さんは言うまでもなく早いが、妹ちゃんもわりと効率よく練兵場を修復していく。
「複数の魔法を操るにはそれに見合った並列思考ができるだけの頭の良さが必要なのさ。
彼女はその素質を十二分に持っている。
その上、これだけの魔法をこの幼さで的確に操っている。
なかなかの逸材だよ、彼女は…。
私に娘や孫が本当にいたとしたらこんな感じで魔法を教えたりしたのかな…。」
「どしたのさ?急にナイーブなこと言って。
いつも俺の子どもが欲しい~とか言ってるのに…。」
「何でもないよ。少し…。ほんの少し考えてしまっただけさ。今まで魔法を教えるような部下はいても、こうやって本気で育てようと考えた弟子なんか居なかったんだよ。
君のためならば…と思って最初は教えていたんだけども、今は純粋にこの子のために教えたいって気分に変わってきてるんだよ。」
魔女さんはそれはもう優しさと慈愛に満ちた表情で妹ちゃんを見ていた。
「さて、これで練兵場は元通りだ。次は…、魔法使いちゃんが勇者ちゃんと戦う番かな?」
と言ってると遠くから全速力でダッシュしてくる勇者ちゃん。
「待たせたね!では、次は魔法使いちゃんが私と戦ってくれ!」
「はい!わかりました!私の全力全開…頑張ってみます!」
そう言えば、戦士ちゃんのスキルは何か新しく発現したのかな?
「魔女さん。戦士ちゃんのスキルは何か増えたりしたものはあるの?」
「あぁ、あるよ。
いくつか剣技スキルが解放されてる。
あとは目標の1つであるS級スキルの目覚めの兆しが見えているね。
彼女の使うあの神の力を持つオーラはもうすぐ完成するだろう。そして、魔族とも戦える強力な力となる。
一方、魔法使いちゃんはすでに特殊なスキルをいくつも開眼させている。
ただ、そのどれもがA級止まりだ。
いやまぁ、これだけの数のA級魔術スキルを発現させているのはあの年齢では異常値なんだけどね…。
才能があるとかそう言う次元じゃないよ。
案外…君に関わったことで何かしらの力がより強く目覚めたのかもしれないけどね…。」
俺に関わることで…か。
本当にそう言うことがあるのだろうか…。
「行きますよー!勇者さんっ!」
「うむ!どんと来い!」
お、始まった。
妹ちゃんは昼間に俺が魔女さんに使われた、熱線を打ち込んでくるビットを早くも習得したようだ。
「ほう…。驚いたね。
しかしやはり強力だな。
相手の力や魔法を見ただけで理解、考察、そして習得までしてしまうあのスキルは…。
しかもだったの数日で以前よりもスキルレベルが大幅に上がっている…。
いくら年齢が若いとは言っても彼女の成長は異常値を叩き出している。
スキルは新たに【理リヲ解ク者】へと進化を遂げている。
これは…私と同じS級の中でも究極スキルと言われている【智慧之王】を手に入れるのも時間の問題かもだね。
そもそもが、普通の魔導師ですら習得が難しいと言われている全属性魔法の習得に加えて、【並列思考】【高速演算】【無詠唱魔法】のスキルを保有しているのも驚きだ。
彼女の母親についても調べたが、彼女の母親は所謂ヒーラー兼、物理で殴る系魔法使いだ。
この子にこれだけの才能を授けるだけの優れた魔法使いではなかった…。
なのに…アレは一体…?」
妹ちゃんは自分の周りにビットを展開しながら、高速で飛び回り勇者ちゃんをビットで攻撃していく。
魔法攻撃ではなく科学的な物理現象であるビット攻撃はなかなかに強力らしく、勇者ちゃんも高速で動き回りかわし続けている感じだ。
「ほほ…?あの子…。ビットで適当に攻撃してるのかと思ってみていたら…。
子どもの発想というのは恐ろしいね。」
ある程度ビット攻撃を仕掛けたのち、妹ちゃんは杖を地面に突き立てる。
「!?なに…!身体が動かない…!それに私のスキルが全て無効化されている!?」
「トラップ魔法です!魔女さんのお城にあった本で知りました!」
ぶふぉっと魔女さんが吹き出している。
「馬鹿な!あの本を読解した上に、それをビットで地面に打ち込んで発動させたと言うのかい!?
スキル無効化の魔法は大型のスキル持ちモンスターを討伐するために、100人規模の魔術師が決まった配置について発動させる大魔法だぞ!?
それを彼女は理解し、自分流にアレンジし、そして…1人で発動したというのか…!
なるほど…、さっき練兵場を修復した際に仕込んでいたのか…。
そして、魔術師一人分の魔力をビットに溜め込み地面に100人分撃ち込んで、最後はそれを自らの魔力で起爆させたのか…。
恐ろしいね…。彼女は実に…恐ろしい!そして…天才だ!その思考能力は私を超えていると言っても過言ではないよ!」
魔女さんのもつ水晶版が光り輝き、文字が書き込まれていく。
「ここまで天才なら、世界も認めざるを得ないね…。見事だよ。冒険者になってたった数日。
彼女はS級に至る資格を得た。
【智慧之王】…。私に次ぎ手に入れる者が現れるとはね…。」
つまり妹ちゃんはわずか数日の戦いで、東の魔女と同列の存在となったのだった。
目的は皆の実践トレー二ングである。
「では、まずは戦士ちゃん!武器を構えてくれ!私が君たちと戦いながら君たちのスキルトリガーを発動させる!」
「スキルトリガー?ってのはなんだ?」
魔女さんが水晶の板のようなものを見せてくる。
「これは?」
「スキルボードと言うものさ。ギルド内でのみ閲覧権限を許される特殊な水晶板でね。
これに触れたものの魂と肉体に刻まれた様々な性質を読み取り、その者が習得可能なスキルとそのスキルの発現条件を見ることができる。
その発現条件がスキルトリガーと言うものだ。
無論、ここに表示されないスキルも数多く存在しているよ。少し触れてみてくれるかい?」
俺は水晶版に触れてみる。
するとこの世界の文字で色々と表示されてきた。
「例えば、君の場合だと装備品でスキルが変わるようだし、そもそも装備品がなければスキル自体が殆ど無い。
君の固有スキルである【創造主】も発現に至った経緯不明のS級スキルのようだね。
トリガーまで提示されてるスキルは…。うーん…、今のところはないね。
一方、これが2人のものだ。」
そこには大量の文字が並ぶ。
「ここに出ているのは、要はスキル自体は入手しているのに、まだそれを使う条件が達成されてないから発現していなかったものたちだね。
そしてスキルには熟練度もある。
同じスキルを何度も使うことで上位スキルに成長したり、より少ない負担で使えるようになったりだ。
例えば、君の雷帝形態とかね。
初めて使った時より馴染んだり、複数の石の力を同時に使えるようになったろう?
あれは君のスキルレベルが上がった為だ。」
「なるほど…。戦士ちゃんと妹ちゃんは実戦経験が圧倒的に足りていなかっただけ…って言ってたっけ?」
「その通りだ。魔法使いちゃんは特にだね…。
実際に魔法を限界まで使わせる事で、私の魔法やスキルを簡単に習得していった。
要は限界まで力を使える相手がいなかったからだ。
例えば、戦士ちゃんが数日前にベヒーモスさんと戦って発現させた不動倶利伽羅剣は、怒りが最大限に高まった時に発現すると言うトリガーがあった。
獲得は君から剣を継承した時だね。
君のアイテムにはそう言う力もある。」
トリガー条件には結構な数で、【~~を~~回発動する。】とかもある。
中には一度瀕死に陥るなんてのもあった。
戦士ちゃんのスキルにはそれで発現したものもあった。
効果の程は知らないがやっぱ強いのだろう。
「2人とも全力で最強スキルを行使しながら立ち向かっておいで!勇者の名の元に受け止めてあげよう!」
自慢の剣をすらっと抜いて構える勇者ちゃん。
剣を持つ姿だけでもサマになっている。
「だったら…これで!」
戦士ちゃんは全身にオーラを纏うと、オーラから巨大な不動明王を顕現させる。
しばらく見ないうちに自在に出せるようになったらしい。
アレでオラオララッシュ出来そうだ。
「はぁあぁぁあぁあっ!」
不動明王と共に放たれる2人の剣が生み出す衝撃波が勇者ちゃんを襲う。
「無駄ぁっ!」
そしてその剣撃を軽くその剣で弾き飛ばす勇者ちゃん。
「良いよ!戦士ちゃん!連続で一気に!高速で!なんども打ち込んできたまえ!!」
戦士ちゃんがスゥーーッと息を吸いオーラの力をさらに高める。
「神速…絶刀!!」
一瞬で振り抜かれた剣が放つ無数の衝撃波が勇者ちゃんを襲う。
が、勇者ちゃんはそれを剣を振るうでもなく、縦に構えるだけで見事に全て受け切った。
「動くことなく…本当に受け止めた…?」
「うむ!受け止めたぞ!これが並みの冒険者やモンスターなら受け止めきれずに身体は細切れになっているだろうな!
だが!私には通じないぞ!スキル・絶対切断があるからな!」
戦士ちゃんは負けず嫌いなんだろうな…。
何度も何度も剣撃を打ち込んでいる。
そして、妹ちゃんはそれをニコニコワクワクと楽しそうに見ている。
「はぁ…はぁ…くそ…。届かない…。今の私の剣じゃ…まだ貴女には…届かないっていうの…?」
「当然だ。私は強い。君は弱い。
理由はそれだけだ。だから、君は強くなれ!
大切な人を守るための刃となるために、君はもっと強くなれ!
それと、どうせデカイ剣を振るならカッコよく振るのも良いぞ!このようにな!」
勇者ちゃんが剣を天に掲げると、剣は光り輝き身の丈以上のオーラを纏う。
そして、勇者ちゃんはその巨大なオーラを纏った剣を構えてそのまま戦士ちゃんめがけて突進して行く。
「恐れるな!恐れれば君の力はそのまま消えるぞ!恐れず私の剣を受け止めろ!己は強いと信じろ!大切な人を守りたいと常に心に誓え!それが君を強くする!君に今足りていないものだ!」
「そんな…根性論で…強くなれるなら苦労しないっつぅぅぅのぉぉぉおっ!!」
戦士ちゃんがまるでホームランバッターのような勢いで剣を振りかぶる。
「おっと……!?」
そしてそのままホームランボールのように勇者ちゃんを斬り…いや、剣の腹で天高く殴り飛ばした。
「ええっ!?当たった!?」
勇者ちゃんはそのまま空中で受け身を取り地上に降りてきた。
「そう!その感覚だ。君はどうやら怒りで強くなるタイプなのかもしれないな!では…、もう一度だ!」
勇者ちゃんは再び剣を天高く掲げて、オーラを纏った大剣を振り下ろしてくる。
「しつっこい!!」
その剣をまたも不動明王の剣で受け止める戦士ちゃん。
「気づいてないようだから教えてあげよう!
私のこの剣には当然ながらスキル 絶対切断を発動している。
その剣を君が受け止められている理由がわかるかい?
それは君が、神の力を持って!私のスキルに抗っているからだぁぁぁああっ!!」
勇者ちゃんの剣と戦士ちゃんの不動明王のオーラが放つ剣がなんどもぶつかり合う。
巨大な剣がぶつかり合うたびに辺りに相当な衝撃波が発生しているが、妹ちゃんはそれすらも我動じずのような感じで傍観している。
と言うかウズウズしている。
「うううぅうっ!!ここまで弾き返されると本気でイライラするわね…。なんかこう、私も賢者みたいにド派手な一撃で叩きのめしてやりたくなってくるわ…。
こう、私も空高く飛び上がって馬鹿でっかい剣投げ飛ばして羽虫のようにアンタをぶっ潰したい気分よ!」
とか言って、本当に空高く飛び上がると、ヴァリアブルソードを城の柱のようなサイズの巨大な剣に変形させて、不動明王のオーラに持たせる。
「なぁんだ…。できるじゃん!私いぃぃいっ!!」
そしてそれを不動明王のオーラと共に地面に全力で投げ飛ばしてくる。
「おっと…これはまずいな…!全員!防御体制をとってしゃがんでおいたほうがいいぞ!」
そして勇者ちゃんはもろに戦士ちゃんのありえない大きさの大剣に練兵場ごと潰された。
かに見えた。
「いやぁ!危ない危ない!これは当たってたら死んでたよ!衝撃波で鎧が吹っ飛んでしまったけどね!
全裸にされてしまったが、こう言う時のための光魔法だ!見られて困るところは全部隠してるから安心していいぞ大賢者!!」
「突っ込みを事前に回避されただと!?」
だがそれはそれでエロい。
ブルーレイでは外されそうな謎の光は現実ではこうもエロいのか…。
「だが、さすがの私も全裸で試合続行は恥ずかしいのでな!一度着替えに戻らせてくれ!」
「もちろんだとも…。私は戦士ちゃんが大穴開けたこの練兵場をその間に修復しておくよ…。
魔法使いちゃん、手を貸してもらえるかな?」
「はい!魔女様!」
妹ちゃんは嬉しそうに魔女さんと一緒に、魔法で練兵場の修復を始めた。
「す、すみません魔女様…。やりすぎました…。」
戦士ちゃんがそう言うと、魔女さんは戦士ちゃんの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「いいよいいよ。君のこの力は君の愛の強さの証でもあるんだから。
それに、子どもは元気なくらいがちょうど良いものさ。」
2人は大穴の空いた練兵場を、周りに立ち込める砂埃や吹き飛ばされた瓦礫を魔法で集めて再構築していく。
魔女さんは言うまでもなく早いが、妹ちゃんもわりと効率よく練兵場を修復していく。
「複数の魔法を操るにはそれに見合った並列思考ができるだけの頭の良さが必要なのさ。
彼女はその素質を十二分に持っている。
その上、これだけの魔法をこの幼さで的確に操っている。
なかなかの逸材だよ、彼女は…。
私に娘や孫が本当にいたとしたらこんな感じで魔法を教えたりしたのかな…。」
「どしたのさ?急にナイーブなこと言って。
いつも俺の子どもが欲しい~とか言ってるのに…。」
「何でもないよ。少し…。ほんの少し考えてしまっただけさ。今まで魔法を教えるような部下はいても、こうやって本気で育てようと考えた弟子なんか居なかったんだよ。
君のためならば…と思って最初は教えていたんだけども、今は純粋にこの子のために教えたいって気分に変わってきてるんだよ。」
魔女さんはそれはもう優しさと慈愛に満ちた表情で妹ちゃんを見ていた。
「さて、これで練兵場は元通りだ。次は…、魔法使いちゃんが勇者ちゃんと戦う番かな?」
と言ってると遠くから全速力でダッシュしてくる勇者ちゃん。
「待たせたね!では、次は魔法使いちゃんが私と戦ってくれ!」
「はい!わかりました!私の全力全開…頑張ってみます!」
そう言えば、戦士ちゃんのスキルは何か新しく発現したのかな?
「魔女さん。戦士ちゃんのスキルは何か増えたりしたものはあるの?」
「あぁ、あるよ。
いくつか剣技スキルが解放されてる。
あとは目標の1つであるS級スキルの目覚めの兆しが見えているね。
彼女の使うあの神の力を持つオーラはもうすぐ完成するだろう。そして、魔族とも戦える強力な力となる。
一方、魔法使いちゃんはすでに特殊なスキルをいくつも開眼させている。
ただ、そのどれもがA級止まりだ。
いやまぁ、これだけの数のA級魔術スキルを発現させているのはあの年齢では異常値なんだけどね…。
才能があるとかそう言う次元じゃないよ。
案外…君に関わったことで何かしらの力がより強く目覚めたのかもしれないけどね…。」
俺に関わることで…か。
本当にそう言うことがあるのだろうか…。
「行きますよー!勇者さんっ!」
「うむ!どんと来い!」
お、始まった。
妹ちゃんは昼間に俺が魔女さんに使われた、熱線を打ち込んでくるビットを早くも習得したようだ。
「ほう…。驚いたね。
しかしやはり強力だな。
相手の力や魔法を見ただけで理解、考察、そして習得までしてしまうあのスキルは…。
しかもだったの数日で以前よりもスキルレベルが大幅に上がっている…。
いくら年齢が若いとは言っても彼女の成長は異常値を叩き出している。
スキルは新たに【理リヲ解ク者】へと進化を遂げている。
これは…私と同じS級の中でも究極スキルと言われている【智慧之王】を手に入れるのも時間の問題かもだね。
そもそもが、普通の魔導師ですら習得が難しいと言われている全属性魔法の習得に加えて、【並列思考】【高速演算】【無詠唱魔法】のスキルを保有しているのも驚きだ。
彼女の母親についても調べたが、彼女の母親は所謂ヒーラー兼、物理で殴る系魔法使いだ。
この子にこれだけの才能を授けるだけの優れた魔法使いではなかった…。
なのに…アレは一体…?」
妹ちゃんは自分の周りにビットを展開しながら、高速で飛び回り勇者ちゃんをビットで攻撃していく。
魔法攻撃ではなく科学的な物理現象であるビット攻撃はなかなかに強力らしく、勇者ちゃんも高速で動き回りかわし続けている感じだ。
「ほほ…?あの子…。ビットで適当に攻撃してるのかと思ってみていたら…。
子どもの発想というのは恐ろしいね。」
ある程度ビット攻撃を仕掛けたのち、妹ちゃんは杖を地面に突き立てる。
「!?なに…!身体が動かない…!それに私のスキルが全て無効化されている!?」
「トラップ魔法です!魔女さんのお城にあった本で知りました!」
ぶふぉっと魔女さんが吹き出している。
「馬鹿な!あの本を読解した上に、それをビットで地面に打ち込んで発動させたと言うのかい!?
スキル無効化の魔法は大型のスキル持ちモンスターを討伐するために、100人規模の魔術師が決まった配置について発動させる大魔法だぞ!?
それを彼女は理解し、自分流にアレンジし、そして…1人で発動したというのか…!
なるほど…、さっき練兵場を修復した際に仕込んでいたのか…。
そして、魔術師一人分の魔力をビットに溜め込み地面に100人分撃ち込んで、最後はそれを自らの魔力で起爆させたのか…。
恐ろしいね…。彼女は実に…恐ろしい!そして…天才だ!その思考能力は私を超えていると言っても過言ではないよ!」
魔女さんのもつ水晶版が光り輝き、文字が書き込まれていく。
「ここまで天才なら、世界も認めざるを得ないね…。見事だよ。冒険者になってたった数日。
彼女はS級に至る資格を得た。
【智慧之王】…。私に次ぎ手に入れる者が現れるとはね…。」
つまり妹ちゃんはわずか数日の戦いで、東の魔女と同列の存在となったのだった。
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