その辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

風呂桶之水源餅

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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第25話 届かない想い

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誰が童貞だこのやろう。

「俺は童貞じゃねぇ!」
「そんなこと言ってないけど!?」
「オタクの間じゃそう言う意味なんだよ!失礼なJCだなこの野郎!」
「知らないわよそんなの!私この世界始めてきたんだから!」

帰国子女がいきなり詐欺に利用されたのか…。

「ほんと大丈夫?警察行く…?」
「警察が何か知らないけど…。本当に何も覚えてないの…?思い出せないの?
そのネックレスも一緒にみんなに見られながら作ってたじゃない?」

ほんとこの子は何言ってんだ。
いったいどこの腕利きの詐欺師に仕込まれたんだこの子は…。

「はぁ…。コレは俺が家でせこせこ木を削ったり磨いたりして作った奴だよ。
みられるも何も自宅で……。
え?みんなに見られながらって何それこわぁあっ!
わかった!君は幽霊的なあれか!」
「もう一回ぶん殴ってあげよっか♪」

オーラを纏い拳を握り出すJC。
コレはいかん。

「まぁいいや。とりあえず俺はもう家に帰るよ…。君もへんな人達とは縁切ってお家に帰りなよ~?」
「だ、だからちょっと待ってってば!
あ~もう…どうすりゃいいのよぉ!
魔女さんは簡単に君が行けばなんとかなる!とか言ってたけど…。
コレやっぱ私なんかより盗賊ちゃんかうちの妹のが適任だったんじゃ…
あの子らのが私よりよっぽど頭いいし…。
はぁ…自分で言ってて嫌になってきた…。」

ほんとさっきからこの子はなんなんだ…。

魔女とか盗賊とか物騒なワードを…。

「何…?君窃盗団とか飲み屋の魔女的な人とも知り合いなの?もう色々まずいってそれ…。
でっかい犯罪に巻き込まれる前に逃げなよ…。」
「何言ってんのよ…。アンタも一緒に旅してたし、盗賊ちゃんに至ってはアンタにひっついて寝てるくらいに懐いてたじゃないの…。
ほんと、何も覚えてないのね…。」
「えぇ…、俺窃盗やってるような子と寝た記憶なんかないんだけど…。」
「少なくとも数回は目撃したわよ…。
ていうか、そもそもひっついて寝てた筈なのに起きたら何も残さず初めからいなかったかのように消えてたってどういう事なのよ!
みんなもアンタのこと少しづつ忘れていくし…。
なんの冗談よ…ほんと…。勘弁してよ…。」

また少女が泣き出す。
うーん…気まずい…。

というか演技にしても上手すぎだろ…。
こんな地方に派遣されたどぎつい修行させられてる地下アイドル的なアレだろうか…。
かわいそうに…。

「そうだ…。ねぇ!あなたここの近くで石を拾ってたりしない?
元々は薄黄緑色で…多分…今は赤くなってる石!
持ってるはずよ!あなたはそれで私達の世界に来たんだから!」

この近くで拾った石…。たしかに俺はこの辺りでそんなもんを何日か前に拾ったな。
んで、それを使って異世界に行けそうな扉を開く鍵をイメージしたアクセを作った。

「コイツか?ってあれ…。
おかしいな…。これにはめた石はリビアングラスのような薄黄緑色だったはずだが…。」
「これ!この石をそれにはめて!
そんで、この扉の前にかざしてみて!」

そう言って少女は俺に同じような石を渡してくる。

「扉の前って…。これ、ただのウォールアートだぞ?
わかった。お嬢ちゃん、演劇部か何かかな?こんな時間に通行人捕まえて練習とか…なかなかのスパルタな部活環境だね…。おじさん同情するよ…。」
「いいからかざして!早く!!」

俺は少女のその迫真の演技に渋々乗ってやり、扉の前に鍵を開くイメージでネックレスをかざす。

すると、ネックレスにはめた石が光り輝き、レジンの先から不思議な光線が出てきて扉の絵が本物の扉へ変わっていく。

「何この仕掛け…。プロジェクションマッピング?
いや、でもプロジェクターは見当たらないし…。」
「良いから!帰るわよ!みんなが忘れちゃう前に!私だって…アンタのことたとえ1秒たりとも忘れたくないんだから!」

俺は少女にグイッと手を引かれてそのまま壁の絵めがけて突っ込まされる。

壁にぶつかったであろう瞬間。

俺は気を失った…。


「おい…!ご主人様!そろそろ目を覚ませよ!
いつまでノビてんだ!おい!!」
「そうよ…賢者!せっかく帰ってきたのに…。」
「賢者さん…。」

聞き覚えのあるような声ではある…。
が、なんかよく思い出せない。

俺はうっすらと目を開ける。

目を開けると何か洞窟の中的な場所で少女たちが3人、俺を取り囲んでいた。

「ちょ、まってなにこれぇっ!?
もうなんなのさっきから…どう言うやつ…いい加減ネタバラシしてくれよそこの女子中学生ちゃん…。」
「女子ちゅーがくせい?よくわからないけど、私の職業は戦士よ。あなたもよく私のこと、戦士ちゃんって言ってたでしょ?
うー…帰ってきたら思い出すかと思ったのに…。」
「本当にオレたちと過ごした記憶が…なくなってるのか…?
たしかにオレたちも、ご主人様が消えた後、ゆっくりと記憶を失っていく感覚はあったけど…。
今は全部取り戻してる。なのに肝心のご主人様は…。本当に何が起こったんだ…?」

とりあえず察するに俺は記憶をなくしたかわいそうなおじさん役のようだ。

「なぁ君達…。ここはどこなんだ…?
おじさんは流石にそろそろ家に帰って寝たいんだが。」
「だよな…。早く帰ろうぜ…。いっぱい抱きしめてやるからな…?ご主人様…。」

俺は3人の少女に手を引かれて暗闇を奥へ奥へと促されて歩いていく。

暗闇を抜けるとそこにあったのは大草原だった。

「覚えてない?私たちが初めて出会った洞窟と、あなたが言葉の通じない私たちに必死に何かを伝えようとしてくれたこの場所…。」
「もうそういう設定いいから…。
人が気絶してる間になんてところ連れてきてるの…。俺明日仕事なのに…。
はぁ…。携帯は圏外だしどこの田舎だよここ…。」

俺は少女3人に気絶させられた挙句誘拐までされたようだ…。

「なんか、本当数日前の賢者みたい…。
この世界を夢と言って疑わないあの時の…。
あぁ…もう…!こういう時はショック療法だ!
とりあえず!もう…揉めっ!!」

少女のうちの1人が俺の手を取り自分の胸を揉ませようとしてくる。
だめだ!それはいけない!!
振りほどこうとするも力が意外と強くて無理だった…。

「わぁぁぁっ!ダメッ!だめだって!!」

遠慮なしに少女は自分の胸を鷲掴みにさせる。
俺はなるべく触れないようにするがガッツリと揉まされる。

「ぐぅ…、これでもダメか…。」
「ほんと君達なんなの…。おじさんを家に帰してくれ…。」

そんな会話をしてると背後からまたさらに謎の気配を感じた。

その気配は俺に飛びついてくる。

「賢者ぁぁぁあっ!心配したにゃ!大丈夫にゃ?何があったのにゃ?元気かにゃ!?」

なんだこの鬱陶しいロリ巨乳は…。この子達の保護者的なあれか?

「だぁぁぁああっ!!鬱陶しい!離れろい!!」

俺はそのロリ巨乳を引き離す。

「随分とクオリティの高い猫耳だな…。
君ら本当ガチモンの演劇部なのか…?
いやそれにしたって無関係の人巻き込んじゃダメでしょう…。」
「おい、お前にゃ…。本当に賢者は何も覚えてないのにゃ…?」
「はい…見ての通り…。何も…。」

全員がしょんぼりと涙目にな理そしてまた俺をみてくる。
何というガチの演技にその入り込み…。
どちにせよ俺を巻き込まんでいただきたかった…。

「とりあえず、うちのギルドに連れて行くにゃ…。魔女もそこで待機してもらってるし…。」
「そうですね…。」

俺はまた少女たちに手を引かれて草原を歩かされた。
暫く歩くとなんかこう、映画で見るような中世的な街に案内される。
街に着くとさらにそこから歩かされて、俺はなんかこう偉い人が居そうな部屋に通された。
もしかして俺…海外マフィアにでも売られたのか…?

部屋に入ると妖艶な黒髪のお姉さんがいた。
女ボスか…。
もう何なんだよこれは…。

「お帰り…賢者くん…。
身体におかしいところはないかい?」
「体はおかしくないがお前らの頭がおかしいとは思うよ…。
一体何なの…。俺なんで日本からわけわかんない海外に誘拐されてんの…。俺なんかしたっけ…。」
「おい…おいおいおい…まさか…君達…?」

少女たちがお姉さんに向かって残念そうに次々と頷く。

「そうか…。私たち同様に関わった記憶をなくしてしまっているのか…。
魔力欠乏症の副作用で脳に記憶障害が出ることは実際多々あるが…。それにしたって、私たちと関わった記憶がごっそり消えるなんて…。
あんまりだ…。こんな悲しいことはないよ…。」

お姉さんまで俺の目の前で泣き崩れて行く始末…。
相当な演技力には脱帽するが叶うなら俺を日本に帰してくれ…。

「今回の件…。原因はよくわからないが…、ひとまずこの世界に彼がいたという痕跡ごと彼がこの世界から居なくなっていったというのは事実だ。
最初に彼が消えて、次に彼の持ち物のカバン…。そして君達が貰ったアクセサリー類…。
最後に戦士ちゃんが貰ったネックレスが消える前に、なんとかベヒーモスがくれた転移宝珠を基にした異世界へ渡る方法を考案し試してはみたが…。
世界を渡ることには無事成功したけども、彼の記憶が消えたままなのは…なぜなのだろう…?」
「さっきから人の記憶が消えたって言ってるけど、何も消えてないよ。
俺は君らなんて知らないし、この国がどこかも知らない。
ほんと…なんなんだよ…。」
「そうか…。私と甘い口づけをした事も…覚えていないか…。」

どんな冗談だ恐ろしいな!
俺がこんな妖艶な美魔女とキスなんて…。

「なら、物は試しだ。もう一度私とキス…してみないかい?」
「色々と怖いんでお断りします。」

と言い切るや否や抱きしめられて思いっきりキスされた。
長い時間ゆっくりと…。
抱きしめられながら頭を撫でられながら何度も…。

体の中に何かが流れ込んでくる変な感覚がある…。
は…!まさか…、ドラッグか!?

でも…なんだろう、なんかこの優しい感じ…覚えがあるような…。

「君が倒れた時、君を救うために初めての口づけを君に捧げたんだ。覚えていないかい?」
「わからない…。ただ、この優しい感じには覚えがあるような…そんな気がする…。」

というと今度はさっきの猫耳少女がぴょこんと俺に飛びついてくる。

「じゃあ今度はにゃーをもふもふするにゃ、頭なでなでして抱きしめるのにゃ!」

………。

「……。これで…良いのか?
しかし…よくできてるな…この耳…。」

なんとなく…この撫で心地も知ってる気がする。

「わ、私たちもギュってしてください。
初めての夜にしてくれたみたいに…。」

俺は何となく…2人を抱き寄せて抱きしめた。
これも…なぜか覚えがある感触だ…。

「最後はオレだな…。
ご主人様…なでなで…してくれよ…?」

俺は際どい格好した少女の頭を撫でる…。
この撫で心地にも覚えがある…。

「ん…。やっぱご主人様の手は…気持ちいいな…。」

少女が俺にぎゅっと抱きついてくる。
この感触には、なぜかすごい覚えがある…。気がする…。

「なんだこれ…。そんなバカなことはないと思うが…。俺は本当に何か忘れてるのか…?
確かにこのみんなの感触…いろいろと覚えがあるような…。」
「そうだよ。みんな君のことを好きになって、そして君に愛されたもの達だ。
たった3日だが…君はこの世界に居たんだよ。
写真もたくさん収めた。そのスマホでね…。」

そう言われて、お姉さんが俺のスマホを指差す。
俺はそう言うならばとスマホのカメラロールを見てみる。
そこには、さっきまで真っ黒な何かわからない画像だったものにはっきりくっきりと今ここにいる少女やお姉さん達が写っていた。

そして、この子達と一緒に写真に写る俺も…。

「なんだ…これ…?全然…思い出せないのに…。
知ってる気がする…。俺は本当に君達と…?」
「そうだよ。そこに収められている通りだ。」

途端、後頭部を鈍器で殴られたかのような激しい痛みが俺の頭を襲う。
強烈な吐き気と激しい頭痛に動悸…。
俺はそのまま気持ち悪くなり地面に倒れそうになる。

「ご主人様!」

そんな俺を際どい格好の女の子が受け止める。

「賢者…!大丈夫…?」

だから俺は童貞じゃねぇっての…。
そのあだ名やめろって…。

「…。魔法使いさん…。そういえば、最初はそう呼んでたんですよね。」

再び脳みそを激しく殴られたようながつんっとした感覚が走る。
めちゃくちゃ頭がいたい。
焼けるように喉が渇き、脳みそも焼けそうなほどに発熱してるような時の感覚に陥って行く。

気持ち悪い…。

「……?
この感じ…なぜだ?魔力欠乏症が発生しているのか?
~~~!盗賊ちゃん!私はさっきありったけの魔力を彼に注ぎ込んだ。次は君が、君の愛の口づけで魔力を注ぎたまえ!」

そう言われて背中をドンっと押された際どい格好の少女が、俺に覆いかぶさるような形になり唇を重ねてしまう。

ただ、唇を重ねた少女は嫌がるそぶりもなく俺に何度も唇を重ねてくる…。
幼いのに艶っぽい顔が相変わらずエロい…。

「そういや、前もこんなことあったな…。あれ…?いつだっけ…、てか…一昨日ぐらい…か?
あれ…?」
「ご主人…様?」
「くそ…超頭いてぇ…気持ち悪…。」

俺はそのまま少女に馬乗りされたまま気を失いそうになっていく…。

「まて!ご主人様!寝ちゃだめだ!寝たら多分死ぬぞ!」

そう言って俺の上からどいて、俺をゆっくりと起こし、少女は俺にぎゅっと抱きついてくる。

「頼むよ…。思い出してくれよ…。
オレがこうやって抱きつくたびにキュンキュンしてたのも知ってるんだからな…。」
「ほんと…厄介だな…。お前の奴隷紋とやらは…。」

というと少女の腹が光り輝き、薄い本で見るような模様が腹に浮かび上がってくる。

「これ…、ご主人様とのつながりの証の…奴隷紋…。おい…!思い出したのか…?」

奴隷紋…。俺なんか今凄いワード口走らなかったか…?

そしてまた頭を殴られるような痛みが襲ってくる。

「いでぇ…。くっそ…めちゃくちゃ頭いてぇ…。」

俺は立ち上がろうとしたものの、またフラッと来て5人の女の子たちに支えられる。
実に情けない…。

「無茶しないでよ賢者…。ね…?
思い出せないなら無理しなくても良いから…。
ゆっくり思い出していこう…?」

だめだ…。でも思い出さなきゃいけない気がする…。
俺たちはこの子達を知っている…。
知っている…はずなんだ…きっと…。
教えてくれ…俺のこの子達との思い出を…全部…!

そう考えていると、左手にはめたブレスレットが光りだす。

「賢者のブレスが…。彼の力も戻り始めたということかな…?」

ブレスが光り輝いたと思うと頭の中に走馬灯のように夢なのか現実なのかわからないようなたくさんの記憶と情報が頭の中に大量に流れ込んでくる。

「うぅ…ぁああぁあぁぁあっ!」

俺はそれに耐えられず頭を抱えてその場にうずくまる。

「はぁ…はぁ…。やっと…全部思い出せた…。
気持ち悪…。
ごめんね、戦士ちゃん…妹ちゃん…ギルマスちゃん…魔女さん…盗賊ちゃん…。」

俺はなんとか振り絞った言葉でそう告げると、勢いよく鼻血を噴き出し、その場にぶっ倒れた。
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