その辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

風呂桶之水源餅

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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第20話 はじめてのぼうけん。

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てな訳で盗賊ちゃんは俺の後ろの席で俺にしがみつき、残り2人はサイドカーに。

この世界の道路交通法?
そんなものはハナっからない。
精々交差点注意と街中ではスピードを出さないって言う暗黙のルールくらいだ。

「んじゃ行ってくるよ魔女さん。
山の上で綺麗な景色を堪能して、その先にあるダンジョンが今日の最終目的地の予定で。」
「気をつけて行っておいで。
あの山もその奥のダンジョンも初心者冒険者の修練施設として整備されている。
君たちレベルでも危険はほとんどないだろう。
ただ、最近急激にハザードレベルが上昇したりもしてるから用心はするんだよ。」
「にゃーは、先に西の国に帰ってるにゃ。
強くなったらまた会おうにゃ!
んー…でもさみしいにゃぁ…。早くまたみんなに会いたいにゃ…。」
「こちらに滞在してればしてるほど仕事が溜まるよ。皇国のギルマスもその辺わかってるのかな…。
今日もうちの冒険者に実戦訓練で剣を教えると言ってたけど…。
もしかしたら山の上で会うかもだね。
さて、みんな夕飯の時間までには帰るんだよ?」

お母さんか。

「んじゃ、行ってきます。」

アクセルを握りバイクを走り出させる。
速度は申し分ない。
馬力もあるし山に至るまでの悪路もなんのそのである。
なのだが…。

「ふやぁっ…んっ…これ…ちょっ…やばいっ!色々擦れるっ…ごめんご主人様っ止まってぇぇえっ…!おかしくなっちまうっ…!」

流石に俺も背中で13歳の少女に顔真っ赤にして喘がれたら色々とまずい。
お互いに奴隷紋の恐ろしさを忘れていた。

「盗賊ちゃん…。どっちかに席譲ろっか…。
俺も色々とメンタルが持たなくなる…。」
「悔しい…。でも感じちまう…っ。」

どっかで聞いたセリフを言うのはやめい。

妹ちゃんと戦士ちゃんにじゃんけんをしてもらい、今度は妹ちゃんが俺にしがみつく事になった。

「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。落ち着くぅぅっ…。
だぁめだ…。ご主人様にしがみ付くのはいろんな意味でぶっ壊れちまいそうだったぜ…。」
「あぁ…ほんとにな…。俺もいろんな意味で壊れるかと思ったよ…。」
「帰りは私がその位置ね。行きは譲るから…。
良いわよね?」

「「「文句なーしっ!」」」

初めて女子3人の意見が一致した瞬間である。

ある程度国の外の荒野や草原を走ると、ようやく山の入り口が見えてきた。
この先は人が歩ける程度の細い道しかないため、入り口周辺には大鳥と鳥車を待機させて置くための駐車場的な物がある。
車自体がロックされているため、それにより彼らは逃げられない仕組みになっている。

とは言え、この子達の様子を見てると逃げる様子はなさそうだ。
大鳥語とも言うべきいつもの鳴き声で楽しそうに話している。
\アイヨ?/
\アイヨアイヨ!/
\アイヨ~!/
\ア~イヨアイヨアイヨ!/

ほんと?
ほんとほんと
あら~!
それはたいへんねぇ!

みたいな会話してるんじゃないかってくらいにアイヨで会話が成り立ってるのが可愛い。

大鳥は俺たちに気づくと、俺のバイクを興味深げに見た後ぺこりと頭を下げてみんな一礼してきた。
この子達めっちゃかしこいやん。

「大鳥ってもしかしなくてもすごく頭良い?」
「そうよ。この子達は人の言葉もほとんど理解するわ。目的地の地図を見せて場所を告げるだけでそこに連れて行ってくれるくらいにすごい知能を持つのよ。見ての通り、飼い主がしっかりしてる大鳥は礼儀正しくお辞儀だってするわ。」
「大鳥さんはこのばいくって乗り物が気になるみたいですね。鎧を纏った馬にも見えるけど、車輪もあるしって事で…。」

まぁそりゃ見慣れてないものが現れたら…。

「あれ?この子達、恐怖よりも興味の方が勝るんだね。
普通、動物ってこう言うものを怖がるものだけど…。」
「そうよ。だから人にもすぐ懐くの。
自分たちと違うものに興味を持つのが種族的な特徴ね。
悪意がないとわかるとすぐ懐くのよ。」

そして、戦士ちゃんは大鳥ちゃんにスリスリされている。
が、盗賊ちゃんに対してはすごくビクついている…。

「あー、オレはそう言う優しさとかとは無縁だったからな。常に周りはみんな敵みたいな感じで生きてたから染み付いてんだろう。
動物ってのはそう言うのしっかり感じ取るんだな。」

俺は盗賊ちゃんの手を取り、大鳥に触れさせてみる。

「以前はどうか知らないけど今は違う。
大丈夫だよ。」

大鳥も触らせるまではビクついてたが、いざ触ると普通にスリスリしてきた。

「あったけぇ…。フワフワだし…可愛いなこいつら。」

\アイヨーっ♪/

と嬉しそうに返事をする大鳥。

「ありがとな。ご主人様。」
「どういたしまして。」

俺はバイクを魔法陣にしまい込み、みんなで山の中に入っていった。

この山は元々から冒険者向けの山で、冒険者以外は立入禁止になっている。
特殊な結界が山全体に張られており、これにより山の中のモンスターの状況や山に入った冒険者達の情報がわかるようになっているらしい。

つまり、部外者や民間人は入ろうとしても弾かれるし、また山の中のモンスターも山の外には出られない仕組みになっている。

ただ、以前のアーマードドラゴンの出現を省みるに結界に綻びが出来てしまっている可能性もあるそうだ。

それらから察するに、ここに来ている冒険者達は一部はその調査、残りは鍛錬だろうと言う所か…。

この山は元々、修練山などと言われているように上へ行けば行くほどモンスターの強さ、即ちハザードレベルが上がっていく仕組みになっていく。
下層ほど餌になる小さいモンスターが多いから自然とそうなるのであろう。

つまり、理論上は山のてっぺんにたどり着ける=そこそこの腕利きと言うことになる。

「そういやよ。お前たち2人はそもそもこの山初めてだよな?
と言うかまともな探索自体ほぼ経験ないんだよな?」
「えぇ…。悔しいけど実力含め何もかも貴方にも劣るわよ…。
つい3日前に冒険者になったばかりだし…。」
「おいおい…。ど素人どころかガチ初心者じゃねぇか…。通りで色々と知識も乏しい訳だな…。
よし!いい機会だ!ご主人様含めてオレが色々教えてやんよ!」

正直助かる…。盗賊ちゃんは年齢は幼いがこのメンツで最も修羅場をくぐって居る猛者のようだ。
先日の風呂場での動きを見ても相当な実力が伺える。
割と安心出来そうだ…。

「てかさ、よくよく考えたら俺たちの今の実力でこの山のてっぺん行けると思う?どうかな盗賊ちゃん。」
「うーん、少なくともご主人様も戦士も武器の力は申し分ない。だが問題は戦い方だ。
どんなに最強の武器を持ってても戦い方が悪けりゃダメージを追うし、いくら自動回復のスキルがあろうが、下手な戦い方をすると結局死にたくても死ねない…苦しむだけの状態が続くことになるぞ。それは逆に、死ぬより辛いことになりかねない…。
ご主人様がオレにむぐっ!」
「それ以上は言わんで良い…。
とりあえず、この山を登り切るのって元々はどのくらいの実力がいるんだ?」
「ダンジョンの外側、つまりこの山の中なら精々C級レベルだよ。
アーマードドラゴンは例外中の例外だ。あんなもん、元々この山にはもういない。
数年前は西のギルマスが、今回はご主人様が倒してるからな。
ダンジョンの中だって、元々B級以上の冒険者なら余裕でクリアできるレベルだ。
ただ、今は他のとこのダンジョン同様にハザードレベルが上がってる危険性がある。
用心に越したことはねぇだろうよ。」

ふむふむ…。
とりあえず、色々と練習には丁度良いか…。
今日1日でてっぺんまで行ける自信は無くなったが…。

「そういえば、盗賊ちゃんは冒険者登録とかもしてるの?」
「あぁ、オレはA級ライセンスは持ってるぞ?」

サッとライセンスを見せてくる。

「ほんと凄いんだな…。色々と只者じゃないとは思ってたけども…。まさかA級冒険者だったとは…。」
「そもそも、Aランクまでは…
同ランクのクエストをギルドが定めた一定回数以上こなす。
自分のランクより上のクエストを1回、クエストのクリア指定期限内かつ評価Sでクリアする。
自分のランクより上の冒険者を定期的に開催されるランクマッチで倒す。
このいずれかで上がれる。
ほとんどのやつが2番目と3番目の条件はクリアできないから、最初の条件でランクアップしていく。
んで、その上のS級に至る条件はS級冒険者として世界が認めた証たるS級スキルを得ることとS級冒険者にランクマッチで勝つ事だ。
S級スキルはS級冒険者が自ら認めた物に伝承して行くものと、元々眠ってたり獲得してきたスキルがS級へと進化成長するものとがあるらしい。
その獲得条件はいまだ謎だけどな。」

そう言う風な仕組みになってたのか…。

「オレはランクマッチでAランク冒険者を何人か叩きのめしてきた。
ちなみに、自分より低いレベルの冒険者に3回負けた奴はランクダウン処分が下される。
だってのにアイツらは無駄にプライド高いからな。
負けてもすぐ挑んできやがる。
ま、そのたびに何回も叩きのめしてやったけどな。
そもそも、オレの技能のほとんどは元A級冒険者の前ボスが仕込んでくれたもんだ。
そう簡単に負けるかって話だ。」
「その理屈だと、俺らも手っ取り早くA級になるならランクマッチか上級クエストやるのが早いわけか…。」
「とは言え、ご主人さまのS級ライセンスはかなりの特例付与だからな…。
今後、アホな冒険者がご主人さまに無謀なランクマッチを挑んでくる可能性もあるぞ…。
受ける側は断る権利がないからな。」

なにそのクソルール。

「だからこそ、上の資格を持つ奴は励むし強くなる。ま、そう言う仕組みになってんだよ。」
「そ、それってつまり…!」
「私たちが盗賊さんに勝てたらA級になれるってことですか!」
「話聞いてたか?挑戦は一個上のランクまでだ。
いきなりオレには挑めねぇよ。
とりあえずお前らは、死にたくないなら地道に同ランクのクエストやってろ。
DからCは30回。CからBは60回。BからAは120回。同ランクのクエストをこなせばクラスアップ試験が受けられる。
まぁ1日1クエストでも1年以内にゃAランクになれる計算だ。
とは言ってもCランク以上はモンスター討伐やダンジョン攻略系ばっかりだから死亡率もあがる。
まぁまだ軽い方だが、Bより上は大型モンスターの討伐依頼もあるからもっと大変だ。
だから、一攫千金狙いでAランクに至れる1年の間に死ぬ奴が多いのもまた事実。ランクアップを拒み、CからBで細々と生きる道を選ぶ奴もいるのもまた事実さ。」

その言葉に2人が意気消沈する…。

「私たちの両親は、私たちがいい学校に行けるようにって学費を稼ぐ為に、高報酬のAランク任務に何度か挑んでいたの。
一回クリアできればそこそこ高い店でディナーが食べれるレベル。それを何回も…。
その結果、最後は命を落とした。
装備は残ったけど、遺体は大型の魔物に食い散らかされてろくに骨も残ってなかったって聞いたわ…。
私たちはギルマスから回収した装備だけ受け取った。
あの時私たちに遺品を渡しに来た時のギルマスの顔は…今でも忘れられないわね…。
アレから、冒険者を親に持つ子供にはよくあることだって、自分たちに言い聞かせて居たけど、なかなか受け止めきれるもんじゃなかった。
私たちは、そのまま自分たちの家でしばらく貯金で暮らし続けて、それが尽きるってなってようやく冒険者になる決意をして旅に出た。それが3日前…。
今はもう、家族と暮らした家も失ったわ。
当然、学校も辞めた。
お父様やお母様には悪いけどね…。」
「んで、冒険者として初めてのクエストに挑んで今に至ると…。
お前らも苦労してきたんだな…。」
「貴方ほどじゃないわよ。きっとね。
いつか聞かせてね。貴方のことも。」
「ま…そのうちな…。さて…。
まぁ学生やめて冒険者として生きる道を選んだんだ。だったらちゃんと生き残れる力をつけねぇと、親に顔向けできねぇぞ?
戦闘スタイルは全然違うが、特訓は付き合ってやるよ。
さて、まずは初歩の初歩。ウサギ狩りからだ。
キラーラビットは動きも早いし、動きを読む練習になる。ちょうど気配が…3匹は居るな。
て言うかお前ら、気配感知系スキルは常時展開しておけよ~。とっさの判断ができないからな。」

俺もそう言われて、石による感覚増幅を行う。

「おーほんとだ。なんかでっかいウサギ的なものがいる気配を感じ取れる。」
「えっ、形までわかるの?
私は何かいるなーくらいしかわかんないんだけど…。」
「あーーー、スキルレベルが低いんだな…。
そのうちわかるようになる。
ま、とりあえず狩るぞ。
あいつらに噛まれると腕の一本持ってかれる時もあるから油断するなよっっとぉ…!
飛び出してきた!そっち行ったぞ魔法使い!

魔法使いちゃん目掛けてキラーラビットが飛びかかる!

「はわ、わ、えいやぁああ!」

キラーラビットはいとも容易く妹ちゃんに倒された。
杖のフルスイングにより。
物理攻撃で。

「や、やりました!!」
「魔法使えよっ!!」

流石に突っ込みが入った。

「お母様もよく振り回してたって言ってましたよ。
重力魔法で加速させた杖の表面を岩石魔法で保護して…こう、えいやぁぁあ!!」

さらに飛び出してきた2匹目&3匹目もどぐしゃぁああ!っと的確に頭を潰された。

「うわ…えっぐう…。確かに魔法攻撃だけど…。
え…これ突っ込んじゃダメなやつ…?」
「俺に聞かないでくれ盗賊ちゃん…。」

というか、重力魔法とか使えるんだ…。

「魔法って技能スキルと違って、使えば使うほどランクアップするからな…。おい…戦士…お前…。」
「それ以上言うなぁぁあ~!私も焦ってんのよぉ…。うにゅう…。」
「ま…頑張ろうぜ…。」

盗賊ちゃんが肩をポンっと叩く。

「ねぇ…盗賊…。私に戦い方おじえでぇええっ…!」
「お、同じく…。これ、俺も調子こいて大賢者とか名乗ってる場合じゃないわ…。」
「えーーーっとぉ…。はい、よろこんでぃ…。」

そして、それを聞いてた妹ちゃんがバヒュンっとこっちに一瞬で飛んで移動してくる。

「…!? 瞬歩!?今の瞬歩だよな!?
魔法使い!お前まさか、朝のあの説明だけでもう習得したってぇのかよ!?」
「できちゃいました♪」

にへらぁ…っと可愛く微笑んでいるが…、
もうやめて!戦士ちゃんのメンタルのライフゲージがゼロよ!

「あは…あはは…あたしもうだめだわ…。
ぼうけんしゃやめる…。」
「気をしっかりもてぇえ!」
「いやぁ…天才っているもんなんだなぁ…。
そういえば…こいつ…数日ほどあの東の魔女に魔法学んでたよな…?」

俺たちはゴクリ…と喉を鳴らし興味本位で聞いてみる。

「俺が今朝魔女さんにやられた魔法って…もしかして使える…?」
「はい!これですよね?」

前方に水魔法のレンズ、その後ろに小さく擬似太陽を生成し、熱線で軽く森を焼き払う妹ちゃん。

「もうこのこひとりでいいんじゃないかなぁーあはぁ…。」
「戦士ちゃぁあぁあん!気をしっかりもってぇええ!」

思わぬ逸材が現れた我々のパーティであった。

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