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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第2話 幼女魔法使いと少女女戦士
しおりを挟むさっきのデカブツを倒してダンジョンを出ようとなって小一時間。
流石にスマホのライトだけでは心許ないので、俺は自転車用の充電式ライトで洞窟を照らし2人の女の子を連れて歩いていた。
道に迷って同じところを通ってる感じはないが、それにしたって長い。
このまま俺たちは出口にたどり着けるのだろうか…。
いやそれ以前に俺は本当にいつになったら夢から覚めるんだ…?
もしや、夢の外の俺の身体は熱中症でぶっ倒れたまま重傷になってるのではあるまいか…?
などと言う不安にかられている。
だが、不思議なことに持ち物はまんま倒れる前に持っていたものばかりだ。
唯一、自転車が手元にないのが割と悲しいが、まぁあったところでこんな悪路の洞窟では役に立つまい…。
そんなことを考えながら延々と奥へ奥へ(?)いや、出口へ?向かっていた。
最初は俺を先導するように手を引いてくれていた幼女だが、次第にその顔には涙が滲んでいた。
俺が肩を貸している少女も、傷は癒えたものの体力はまだ戻ってないのだろう。
割とぐったりともたれかかっているままだ。
その上意識も朦朧としているのかあーうーと言っている感じだ。
脳みそやられてないと良いんだが…。
そんなこんなことを考えていたらようやく出口にたどり着けたようだ。
外へ出てみると、すっかり日も暮れている。
少し肌寒さもある。
流石に歩き疲れた。
俺は、そのまま肩を貸していた少女を寝かせて、傍に座って小休憩する。
もう1人の幼女も少女に寄り添うようにして座りだした。
幼女は背中に背負っていたバッグらしきものから飲料水と思わしきものを取り出し、少女に飲ませている。
それを微笑ましく見ていたら、少女はまた驚いたような顔をして慌てだし、地面に手をついてひれ伏した。
いわゆる土下座だ。
流石に俺もこれには焦る。
「いきなりどうされましたか?お嬢様、顔をあげてください。」
と言うも、やはり言葉は通じない。
というか俺もようやく冷静になったのか自然といつもの年齢関係なしでへりくだって喋るクセが出てきた。
言葉…か。
仕事してても思うが、外人と意思疎通ができないというのはお互いにイライラくるものであろうと思う。
とりあえず、俺はこの子の頭を撫でてみた。
国によっては頭を撫でるって不敬行為なんだっけ?
いやまぁ夢の中の世界の子だしどうか知らんけど、とりあえず敵意がないことだけでも伝われば…。
と思ったのだが、また目に涙を溜めてこっちをみている。
やはり、いけないことをしてしまったのだろうか…。
ものすごい罪悪感的なものを感じる…。
居た堪れないというかなんというか…。
幼女は俺の胸ぐらをわしっと掴みわんわん泣き始めた。
よくわからないが、やはりもう1人の少女の方は体の傷は癒えたものの手遅れだったとかなのだろうか…。
などと思って寝顔を見ていたが、だいぶ顔色が良くなってきている様子が伺えてきた。
ひとまず、俺は幼女を落ち着かせたい一心で頭を撫で、背中をポンポンと叩きあやしてあげていた。
言葉は通じなくても、この気持ちくらい伝わってくれれば今はそれで十分だ。
そして目を先程から眠っている少女に再び向けて見る。
向けてみたのだが…あれ?少女が視界に居ない。
どこへ行った…?
などと思案していたら、目の前の幼女がまたも叫び出す。
後ろを振り向くと、すごい形相で少女が剣を今まさに振り下ろさんとする瞬間であった。
それに気づいた幼女が俺を突き飛ばし、少女に向かって何やら叫んで、いや怒っている…のか?
なんとなくだが、「命の恩人に剣を向けるとは何事だ!」みたいなことを言っているのだろう。
そうであってくれ。頼むから。
しばらくして少女が慌てた様子で剣を収めこちらに向き直り、幼女同様に深々と土下座をする。
いやもう良いから顔をあげてくれ…。
流石に心が痛む…。
流石に少女の頭を撫でるのは気が引けたので、肩をポンポンと叩き、顔を上げるように促す。
ようやく少女は顔をあげてくれた。
が、何をトチ狂った勘違いをしたのか急に服を脱ぎ出した。
口より先に手が動く。
頼むから脱ぐなと手が動く。
こんな暗がりで幼女と20も後半のおっさんの前で少女が服を脱いだりしたりなんだりしたら流石に色々とマズイとかそういう状況ではなくなる。
「ああああ…もう、ほんと言葉が通じないってのは困ったもんだな…。
今まで見てきた夢の中でも、住人に言葉が通じないってのは初めてだ…。
なんとかならないものか…。」
などとブツブツ独り言を言ってみるが、やはり目の前の女の子2人には言葉の意味がわからないのだろう。
さっきから延々とワタワタしている。
なるべく彼女たちが視線をくれた時には笑顔を絶やさないようにニコッと笑いかけていたが、流石に疲れてきた。
恐らく、表情も崩れたであろうその姿を理解したのか少女は恐る恐る俺に近付き、手を握ってくる。
小さく、暖かく柔らかな手。
「あの…どうでしょう?こうしたら私の声や言葉がわかりますか…?」
こいつ…直接脳内に!?
「はい、わかります。
ようやく私にもあなたの言葉がわかりました。」
お互い安堵の息を漏らす。
とは言えど会話するのに手を握りっぱなしというのはいささかこっぱずかしい。
何かならないものか…。
そうだ…。
さっきみたく、魔法的なイメージでどうにかできないものか?
俺の持ち物の持つ意味がそのままイメージを強く具現化する事でさっきの洞窟内での力は発現していたようだ。
今、身につけていたのは剣をイメージしたネックレスに、ジャケットにつけたラリマーや蝶を模した飾りをつけた【癒しのピンブローチ】
たぶん、このピンブローチがこの少女に癒しの力による傷の治癒を施してくれたんだろう。
となれば、俺が今身につけているこのもう一つのブレスレットはもっと半端ない力を与えるのではないのだろうか?
このブレスレットには隕石系の石であるギベオンとモルダバイトが入っている。
こいつがもたらす宇宙の知恵的なもので、彼女の言葉がわかるようにならないものか…。
などなど考えながら思案に耽っていると
「あ、あの…!もしかして何か気を悪くさせましたか?手を握るのは不敬かと思いましたがこのまま言葉が通じないままでは礼も言えないと思い…。」
まずいな…。また不安にさせてしまったようだ。
俺はブレスに自分の手をかざし、「彼女たちの言葉がわかるように宇宙の知恵を貸して欲しい」と念じてみる。
すると、そのとたんに頭に膨大な知識が流れ込んでくる感覚がした。
だが、なんとなくわかる。
恐らくこれで彼女たちと意思疎通ができるようになったはずだと。
「いえ、こちらこそあなた方を不用意に怯えさせてしまったようで…。どうでしょう?私の今話している言葉は、あなた方の言語として通じていますか?」
ひとまず、話しかけてみる。
これで大丈夫なら良いが…。
「~!!はい!わかります!
貴方の口から発せられた言葉が、私たちの使う言葉になったのがわかります!
私の声も貴方のわかる言葉になっているのでしょうか?」
「えぇ。わかりますよ。」
彼女が安堵したのがよくわかった。
「では、改めてお礼を申し上げます。
どちらの偉大なる魔法使い様かは存じあげませんが、私と私の妹の2人の命をお救い頂いた事、いくら感謝を申し上げましても足りません…。
それに、ダンジョンの外へ出る手助けまでしていただき誠に感謝いたします。」
少女は幼女と共に再び俺に土下座をする。
「あの、そこまでかしこまらなくても結構ですよ?私もその無我夢中で、お二人を助けたいと思っていたら何か不思議な力が働いた。
そのようなものですから…。
ですから、顔をあげてください。」
2人は顔をあげ、こちらを尊敬のような眼差しで見ている。
ただ、なんとなく感じるのは、話しかけたいけど話しかけづらい。そんな感じの雰囲気だ。
「あ、あの…!あちらで何をされていたのかは存知あげませんが、私たちを救出したせいで、貴重なミノタウロスの素材を持ち帰れなかったのでは…。身につけているものを見る限り、大変貴重な素材で作られたものばかりとお見受けしますし…。お召し物もここら辺では見ない良質な素材で作られたものばかり…。
さぞ名のあるお方なのでしょうが、何分私たちはまだ冒険者を始めたばかりで何も知らず…。
無知な私たちをどうかお許しください…。」
「なるほど…。それで先程から畏まっていたり、怯えた様子だったわけですね。
残念ながら、私はきっと貴方が思うような偉大な魔法使いとかではないですよ。
まぁ確かにこのアクセの数々に使われてる素材はそこそこ貴重な石や木材、レザーを使ってはいますが…。
と言うかやはりさっきのあれミノタウロスだったのか…。
爪とかツノとかなんかこうやっぱすごそうだな…。」
「申し訳ありません…。私がもっと強ければ取りに戻る事も叶うのですが…。
恐縮ですが、私はこのまま街のギルドに戻りたいと思っています…。
初心者向けのダンジョンだからとこちらのダンジョンをほかの冒険者の方に紹介されたのですが、奥にあのようなレベルのミノタウロスが潜んでいたなんて…。
私たちを先導してくれていた先輩冒険者の方達は殺されてしまいました。
このことを私は冒険者の皆様の遺品と共に報告しなければなりません…。
彼らのためにも早い方が良いのです…。
盗掘者に荒らされる前に安らかに眠らせてあげたいので…。」
「わかりました。
しかし、歩けるほどの体力は回復したのですか?」
「いえ、まだ少し…ふらつきます…。ですが、急がなければ、私たちを命がけで守ってくれた先輩冒険者の方に申し訳無いので…。」
俺はジャケットに付けていたピンブローチを外し、少女戦士の耳につけてやる。
元々これはピアスとして作ったものだ。
幸い、この子の耳にはピアスホールが開いていたのでつけてあげた。
「こちらは…?」
「お守りですよ。貴方の傷を癒してくれた物ですね。2つありますからどうぞおひとつ差し上げますよ。」
少女戦士はキョトンとしているが、ハッと我に帰り
「いえいえいえ!こんな強大な力をもつアーティファクトを駆け出し冒険者の私が頂くなど恐れ多いです!
これ1つで一体どれほどの価値があるかもわからないものを…。
恐れ多くて身につけられません!」
などと言って外して返して来ようとするので
「せっかくあげたものを返されるのって…一番悲しいんですよね…。」
とシュンっとしてみせる。
「も、申し訳ありません…。そうですよね…。
せっかく頂いたものを返すなど、それこそ不敬ですよね…。大変失礼致しました。
喜んで頂戴致します。」
なんとなくこの子達の扱い方がわかってきた気がする。
そういえば先程からもう1人の幼女魔法使いちゃんをスルーしたままだったな…。
もう1つは彼女にもあげよう。
この子には羽織ってるローブにつけてあげた。
「ふふっ、大変よくお似合いですね。
貴方にも差し上げます。どうか大切になさってくださいね?」
「はわっ!その、魔法使いさんっ!ありがとうございますっ!」
ぺこりっと頭を下げてお礼を言ってくる幼女。
うむ。実に可愛らしく愛らしい。
「さて、ではそのギルドのある街に案内して頂けますか?」
と一言。
「え?魔法使い様は街の場所をご存知ないのですか?
西の大国はここから最も近い大きな都ですからてっきりそちらに向かう道中だったのかと…。」
「いや、そもそもどこにも向かっては居なかったんですよ。
気がついたらあのダンジョンの中にいて貴方達に出会ったと言う流れですから…。」
などと言うと姉妹がヒソヒソと内緒話を始める。
「ひとまず、西の大国のギルド。そこが私の所属してるギルドの本元でここから一番近いギルドになります。
歩いて30分ほどの距離にはなります。
魔法使い様は体力は大丈夫そうですか?
私は先程飲んだポーションで回復していますが…。」
なるほど…さっきの水はポーションだったのか。
「あー、そういえば元々熱中症で倒れて、気がついたらあのダンジョンの中だったんですよね。
思い出したら喉が渇いてきました…。」
「弱りました…。飲み水も切れてしまっていまして…。
命の恩人でもある魔法使い様に飲んで頂く水となると…。
私の体液くらいしか…。」
顔を赤らめる少女戦士。
「あの…、自分の身体や貞操は大切にしてくださいね?」
この子の考えていることがイマイチわからないが、とりあえず俺たちはギルドへ向かうことにした。
流石にスマホのライトだけでは心許ないので、俺は自転車用の充電式ライトで洞窟を照らし2人の女の子を連れて歩いていた。
道に迷って同じところを通ってる感じはないが、それにしたって長い。
このまま俺たちは出口にたどり着けるのだろうか…。
いやそれ以前に俺は本当にいつになったら夢から覚めるんだ…?
もしや、夢の外の俺の身体は熱中症でぶっ倒れたまま重傷になってるのではあるまいか…?
などと言う不安にかられている。
だが、不思議なことに持ち物はまんま倒れる前に持っていたものばかりだ。
唯一、自転車が手元にないのが割と悲しいが、まぁあったところでこんな悪路の洞窟では役に立つまい…。
そんなことを考えながら延々と奥へ奥へ(?)いや、出口へ?向かっていた。
最初は俺を先導するように手を引いてくれていた幼女だが、次第にその顔には涙が滲んでいた。
俺が肩を貸している少女も、傷は癒えたものの体力はまだ戻ってないのだろう。
割とぐったりともたれかかっているままだ。
その上意識も朦朧としているのかあーうーと言っている感じだ。
脳みそやられてないと良いんだが…。
そんなこんなことを考えていたらようやく出口にたどり着けたようだ。
外へ出てみると、すっかり日も暮れている。
少し肌寒さもある。
流石に歩き疲れた。
俺は、そのまま肩を貸していた少女を寝かせて、傍に座って小休憩する。
もう1人の幼女も少女に寄り添うようにして座りだした。
幼女は背中に背負っていたバッグらしきものから飲料水と思わしきものを取り出し、少女に飲ませている。
それを微笑ましく見ていたら、少女はまた驚いたような顔をして慌てだし、地面に手をついてひれ伏した。
いわゆる土下座だ。
流石に俺もこれには焦る。
「いきなりどうされましたか?お嬢様、顔をあげてください。」
と言うも、やはり言葉は通じない。
というか俺もようやく冷静になったのか自然といつもの年齢関係なしでへりくだって喋るクセが出てきた。
言葉…か。
仕事してても思うが、外人と意思疎通ができないというのはお互いにイライラくるものであろうと思う。
とりあえず、俺はこの子の頭を撫でてみた。
国によっては頭を撫でるって不敬行為なんだっけ?
いやまぁ夢の中の世界の子だしどうか知らんけど、とりあえず敵意がないことだけでも伝われば…。
と思ったのだが、また目に涙を溜めてこっちをみている。
やはり、いけないことをしてしまったのだろうか…。
ものすごい罪悪感的なものを感じる…。
居た堪れないというかなんというか…。
幼女は俺の胸ぐらをわしっと掴みわんわん泣き始めた。
よくわからないが、やはりもう1人の少女の方は体の傷は癒えたものの手遅れだったとかなのだろうか…。
などと思って寝顔を見ていたが、だいぶ顔色が良くなってきている様子が伺えてきた。
ひとまず、俺は幼女を落ち着かせたい一心で頭を撫で、背中をポンポンと叩きあやしてあげていた。
言葉は通じなくても、この気持ちくらい伝わってくれれば今はそれで十分だ。
そして目を先程から眠っている少女に再び向けて見る。
向けてみたのだが…あれ?少女が視界に居ない。
どこへ行った…?
などと思案していたら、目の前の幼女がまたも叫び出す。
後ろを振り向くと、すごい形相で少女が剣を今まさに振り下ろさんとする瞬間であった。
それに気づいた幼女が俺を突き飛ばし、少女に向かって何やら叫んで、いや怒っている…のか?
なんとなくだが、「命の恩人に剣を向けるとは何事だ!」みたいなことを言っているのだろう。
そうであってくれ。頼むから。
しばらくして少女が慌てた様子で剣を収めこちらに向き直り、幼女同様に深々と土下座をする。
いやもう良いから顔をあげてくれ…。
流石に心が痛む…。
流石に少女の頭を撫でるのは気が引けたので、肩をポンポンと叩き、顔を上げるように促す。
ようやく少女は顔をあげてくれた。
が、何をトチ狂った勘違いをしたのか急に服を脱ぎ出した。
口より先に手が動く。
頼むから脱ぐなと手が動く。
こんな暗がりで幼女と20も後半のおっさんの前で少女が服を脱いだりしたりなんだりしたら流石に色々とマズイとかそういう状況ではなくなる。
「ああああ…もう、ほんと言葉が通じないってのは困ったもんだな…。
今まで見てきた夢の中でも、住人に言葉が通じないってのは初めてだ…。
なんとかならないものか…。」
などとブツブツ独り言を言ってみるが、やはり目の前の女の子2人には言葉の意味がわからないのだろう。
さっきから延々とワタワタしている。
なるべく彼女たちが視線をくれた時には笑顔を絶やさないようにニコッと笑いかけていたが、流石に疲れてきた。
恐らく、表情も崩れたであろうその姿を理解したのか少女は恐る恐る俺に近付き、手を握ってくる。
小さく、暖かく柔らかな手。
「あの…どうでしょう?こうしたら私の声や言葉がわかりますか…?」
こいつ…直接脳内に!?
「はい、わかります。
ようやく私にもあなたの言葉がわかりました。」
お互い安堵の息を漏らす。
とは言えど会話するのに手を握りっぱなしというのはいささかこっぱずかしい。
何かならないものか…。
そうだ…。
さっきみたく、魔法的なイメージでどうにかできないものか?
俺の持ち物の持つ意味がそのままイメージを強く具現化する事でさっきの洞窟内での力は発現していたようだ。
今、身につけていたのは剣をイメージしたネックレスに、ジャケットにつけたラリマーや蝶を模した飾りをつけた【癒しのピンブローチ】
たぶん、このピンブローチがこの少女に癒しの力による傷の治癒を施してくれたんだろう。
となれば、俺が今身につけているこのもう一つのブレスレットはもっと半端ない力を与えるのではないのだろうか?
このブレスレットには隕石系の石であるギベオンとモルダバイトが入っている。
こいつがもたらす宇宙の知恵的なもので、彼女の言葉がわかるようにならないものか…。
などなど考えながら思案に耽っていると
「あ、あの…!もしかして何か気を悪くさせましたか?手を握るのは不敬かと思いましたがこのまま言葉が通じないままでは礼も言えないと思い…。」
まずいな…。また不安にさせてしまったようだ。
俺はブレスに自分の手をかざし、「彼女たちの言葉がわかるように宇宙の知恵を貸して欲しい」と念じてみる。
すると、そのとたんに頭に膨大な知識が流れ込んでくる感覚がした。
だが、なんとなくわかる。
恐らくこれで彼女たちと意思疎通ができるようになったはずだと。
「いえ、こちらこそあなた方を不用意に怯えさせてしまったようで…。どうでしょう?私の今話している言葉は、あなた方の言語として通じていますか?」
ひとまず、話しかけてみる。
これで大丈夫なら良いが…。
「~!!はい!わかります!
貴方の口から発せられた言葉が、私たちの使う言葉になったのがわかります!
私の声も貴方のわかる言葉になっているのでしょうか?」
「えぇ。わかりますよ。」
彼女が安堵したのがよくわかった。
「では、改めてお礼を申し上げます。
どちらの偉大なる魔法使い様かは存じあげませんが、私と私の妹の2人の命をお救い頂いた事、いくら感謝を申し上げましても足りません…。
それに、ダンジョンの外へ出る手助けまでしていただき誠に感謝いたします。」
少女は幼女と共に再び俺に土下座をする。
「あの、そこまでかしこまらなくても結構ですよ?私もその無我夢中で、お二人を助けたいと思っていたら何か不思議な力が働いた。
そのようなものですから…。
ですから、顔をあげてください。」
2人は顔をあげ、こちらを尊敬のような眼差しで見ている。
ただ、なんとなく感じるのは、話しかけたいけど話しかけづらい。そんな感じの雰囲気だ。
「あ、あの…!あちらで何をされていたのかは存知あげませんが、私たちを救出したせいで、貴重なミノタウロスの素材を持ち帰れなかったのでは…。身につけているものを見る限り、大変貴重な素材で作られたものばかりとお見受けしますし…。お召し物もここら辺では見ない良質な素材で作られたものばかり…。
さぞ名のあるお方なのでしょうが、何分私たちはまだ冒険者を始めたばかりで何も知らず…。
無知な私たちをどうかお許しください…。」
「なるほど…。それで先程から畏まっていたり、怯えた様子だったわけですね。
残念ながら、私はきっと貴方が思うような偉大な魔法使いとかではないですよ。
まぁ確かにこのアクセの数々に使われてる素材はそこそこ貴重な石や木材、レザーを使ってはいますが…。
と言うかやはりさっきのあれミノタウロスだったのか…。
爪とかツノとかなんかこうやっぱすごそうだな…。」
「申し訳ありません…。私がもっと強ければ取りに戻る事も叶うのですが…。
恐縮ですが、私はこのまま街のギルドに戻りたいと思っています…。
初心者向けのダンジョンだからとこちらのダンジョンをほかの冒険者の方に紹介されたのですが、奥にあのようなレベルのミノタウロスが潜んでいたなんて…。
私たちを先導してくれていた先輩冒険者の方達は殺されてしまいました。
このことを私は冒険者の皆様の遺品と共に報告しなければなりません…。
彼らのためにも早い方が良いのです…。
盗掘者に荒らされる前に安らかに眠らせてあげたいので…。」
「わかりました。
しかし、歩けるほどの体力は回復したのですか?」
「いえ、まだ少し…ふらつきます…。ですが、急がなければ、私たちを命がけで守ってくれた先輩冒険者の方に申し訳無いので…。」
俺はジャケットに付けていたピンブローチを外し、少女戦士の耳につけてやる。
元々これはピアスとして作ったものだ。
幸い、この子の耳にはピアスホールが開いていたのでつけてあげた。
「こちらは…?」
「お守りですよ。貴方の傷を癒してくれた物ですね。2つありますからどうぞおひとつ差し上げますよ。」
少女戦士はキョトンとしているが、ハッと我に帰り
「いえいえいえ!こんな強大な力をもつアーティファクトを駆け出し冒険者の私が頂くなど恐れ多いです!
これ1つで一体どれほどの価値があるかもわからないものを…。
恐れ多くて身につけられません!」
などと言って外して返して来ようとするので
「せっかくあげたものを返されるのって…一番悲しいんですよね…。」
とシュンっとしてみせる。
「も、申し訳ありません…。そうですよね…。
せっかく頂いたものを返すなど、それこそ不敬ですよね…。大変失礼致しました。
喜んで頂戴致します。」
なんとなくこの子達の扱い方がわかってきた気がする。
そういえば先程からもう1人の幼女魔法使いちゃんをスルーしたままだったな…。
もう1つは彼女にもあげよう。
この子には羽織ってるローブにつけてあげた。
「ふふっ、大変よくお似合いですね。
貴方にも差し上げます。どうか大切になさってくださいね?」
「はわっ!その、魔法使いさんっ!ありがとうございますっ!」
ぺこりっと頭を下げてお礼を言ってくる幼女。
うむ。実に可愛らしく愛らしい。
「さて、ではそのギルドのある街に案内して頂けますか?」
と一言。
「え?魔法使い様は街の場所をご存知ないのですか?
西の大国はここから最も近い大きな都ですからてっきりそちらに向かう道中だったのかと…。」
「いや、そもそもどこにも向かっては居なかったんですよ。
気がついたらあのダンジョンの中にいて貴方達に出会ったと言う流れですから…。」
などと言うと姉妹がヒソヒソと内緒話を始める。
「ひとまず、西の大国のギルド。そこが私の所属してるギルドの本元でここから一番近いギルドになります。
歩いて30分ほどの距離にはなります。
魔法使い様は体力は大丈夫そうですか?
私は先程飲んだポーションで回復していますが…。」
なるほど…さっきの水はポーションだったのか。
「あー、そういえば元々熱中症で倒れて、気がついたらあのダンジョンの中だったんですよね。
思い出したら喉が渇いてきました…。」
「弱りました…。飲み水も切れてしまっていまして…。
命の恩人でもある魔法使い様に飲んで頂く水となると…。
私の体液くらいしか…。」
顔を赤らめる少女戦士。
「あの…、自分の身体や貞操は大切にしてくださいね?」
この子の考えていることがイマイチわからないが、とりあえず俺たちはギルドへ向かうことにした。
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