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君、死にたもうことなかれ。
君、死にたもうことなかれ。
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聞かれるまで気付く事などなかった。
私は私。そう思っていたからだ。
確かに今の私には、他の私の記憶はない。
この世界における御劔 麗哉の記憶は一切存在しない。
周りにはどう見えていたのか以前に私は転校生として現れている。
私の過去を知り得る物すら、少なくとも今この街には居ない。
この身も所謂天涯孤独の独り身である以上、誰も以前の御劔麗哉を知らぬのだ。
この私自身ですら。
「聞かれるまで考えたことすらありませんでしたよ。
なにせ、私は私自身のままこの世界に存在していると思っていましたからね…。
つまり、ミレーヌ様が考えるにこの世界にもとより存在していた御劔 麗哉はどうなっているのか…。
私がかつて、別世界の御劔麗哉が死後に神格を得た存在であるならば、私がこの世界の御劔麗哉の身体を奪い弾き飛ばした元よりこの世界にいた御劔麗哉が、何かしらの存在になってる危険性があると…?」
「その通りです。
私とあなたは共にあちらの世界で死後長い時を経て神格を経て居ました。
貴方は時を渡り、過去の生前の自分や貴方に関わる人間の1人である麻生礼一郎を救おうとした。
この世界がどのような世界であるかはまだ不確かですが、貴方と言う存在が未来で誕生し得ない世界であるからこそ、貴方の力が失われつつある…。
そのように考える事も出来る気がしたのです。
現に貴方は力を失っているばかりではなく、この世界における貴方になり得る存在をその身に宿していない。
ならば、御劔麗哉の魂はどこへ消えてしまったのでしょう?
貴方が元いた世界なのか、はたまた肉体から弾き飛ばされこの世界を彷徨い、長い時を経て神格化していく運命にいるのか…。
それとも、魔に堕ちた存在と成り果てて居るのか…。
今はまだ確証は経て居ません。
ですが、つい先日あなた方が神同士として出会った時にあの山の麓で非常に凶悪な魔の気配を感じました。
よもやと思いこうして確かめた次第という事です。」
「それはつまり…、この世界の私が私がこの肉体から追い出してしまったことにより、魔に取り憑かれて最悪の場合、堕天してる危険があると…?」
「そう言う事も考えられますね。
なんにせよです。まだ相手は我々に明らかなコンタクトは取ってきていません。
相手側がどう出るかはまだ予測がつきませんが、出来うる限りの対策をしておく必要はあるでしょう。」
「ふむん、どう出るのじゃ?
ひとまず、もう1人のこの天使を探すのが最優先という事か?」
「そう言うことになりますね。
もう1人の御劔麗哉を探す。
その魂をこの肉体に再び戻し、レイヤードには肉体から出て頂くと言うのが先決でしょう。
ただ、霊魂として彷徨ってるだけならなんの危惧もしなくて良いのですが…。
万が一にでも、魔の手のものに見つかっていようものならとても厄介なことになり得るでしょう。
レイヤードは人間の頃より遥かに強大な神通力を持ち、神格を経た後は異界渡だけでなく時渡りの力まで会得して居ますからね。
その力を悪用されようものなら…最悪の場合はこの世界をかつて混乱に陥れた邪神すら呼び覚ます危険すらあります。」
「私1人がそのような危険な代物だと言う自覚はありませんでしたよ…。
ですが、ミレーヌ様が仰るのならそうなのでしょう…。」
「さて、果たしてどこに居るのやら…。
そして、だいたいこう言う時は最悪のシナリオが進行して居るものですよね。
物語としては盛り上がりますし。
案外、彼もまた我々の近くに潜んでいるやも知れませんね。」
「例えばこの店のどこかにとかかの?
案外、店の外で待ち構えて折ったりしてのう。」
「ふふふっ♪まさかそんな事、あっても困りますよ。私はこのように肉体の表側に出ることはできても戦う力など皆無ですよ?」
「わしもじゃ。所詮器は猫の身じゃからのっ。」
「それはつまり、万が一現れようものなら私が戦えと…?」
「まぁ、そう言うことになりますね。
はてさて、本日この3人で開示できる話はよもやここまででしょうか?」
「そうだな。では会計を…。
む…。おかしい。かれこれ2時間は話し込んでいたはずだ。
テーブルチャージの料金が伝票に加算されてないぞ?
この店の会計システムは電子会計だからそもそも間違えようなどない…はずだが…。」
「これは参りましたね…。
いつからだったのでしょう?
よもや、既に敵に囚われて居たとは…。」
くっ…!時間操作の能力…。
話して居たそばからやはり近くにいたと言うことか…!
「私が再び時を動かす!2人は店の外へ避難を!
敵は私が対峙する。元よりこれは我が罪。
私が償わねばならぬ大罪だ。」
「馬鹿な事はおやめなさい!今の貴方では…!死ぬ気ですか!」
私は2人を店の外へと逃した。
その直後…再び時を止められる。
「まずいな…。力を行使しようにも今の私は急速に人の身に移り変わって居る…。
これが意味することはすなわち…御劔麗哉は私の力のみを奪って、私に成り代わろうとして居ると言うことか…!?
えぇい…!どこにいる!」
などと口にした刹那、気づかぬうちに私の周囲を取り囲む無数のナイフとフォーク。
「ふん…、漫画の中の時を止める能力者でもあるまいに…。」
そして、大量の刃が私のこの身体を激しく貫く。
熱いほどの傷み。
流血した所から感じる冷たさ…。
この痛み、何年振りだろうか…。
過労で精神に異常を来たし、自らの身体を刻もうとしたあの時よりも酷いな…。
私は死ぬと言うのか…。
ふふ…。死ぬならせめて…女の腕の中で死んで見たかったものだ…。
などと薄れゆく意識の中で私は夢を語る。
そう、私はいつのまにか人に成り代わって居たのであった…。
死ぬ事ができる…人の身に…。
私は私。そう思っていたからだ。
確かに今の私には、他の私の記憶はない。
この世界における御劔 麗哉の記憶は一切存在しない。
周りにはどう見えていたのか以前に私は転校生として現れている。
私の過去を知り得る物すら、少なくとも今この街には居ない。
この身も所謂天涯孤独の独り身である以上、誰も以前の御劔麗哉を知らぬのだ。
この私自身ですら。
「聞かれるまで考えたことすらありませんでしたよ。
なにせ、私は私自身のままこの世界に存在していると思っていましたからね…。
つまり、ミレーヌ様が考えるにこの世界にもとより存在していた御劔 麗哉はどうなっているのか…。
私がかつて、別世界の御劔麗哉が死後に神格を得た存在であるならば、私がこの世界の御劔麗哉の身体を奪い弾き飛ばした元よりこの世界にいた御劔麗哉が、何かしらの存在になってる危険性があると…?」
「その通りです。
私とあなたは共にあちらの世界で死後長い時を経て神格を経て居ました。
貴方は時を渡り、過去の生前の自分や貴方に関わる人間の1人である麻生礼一郎を救おうとした。
この世界がどのような世界であるかはまだ不確かですが、貴方と言う存在が未来で誕生し得ない世界であるからこそ、貴方の力が失われつつある…。
そのように考える事も出来る気がしたのです。
現に貴方は力を失っているばかりではなく、この世界における貴方になり得る存在をその身に宿していない。
ならば、御劔麗哉の魂はどこへ消えてしまったのでしょう?
貴方が元いた世界なのか、はたまた肉体から弾き飛ばされこの世界を彷徨い、長い時を経て神格化していく運命にいるのか…。
それとも、魔に堕ちた存在と成り果てて居るのか…。
今はまだ確証は経て居ません。
ですが、つい先日あなた方が神同士として出会った時にあの山の麓で非常に凶悪な魔の気配を感じました。
よもやと思いこうして確かめた次第という事です。」
「それはつまり…、この世界の私が私がこの肉体から追い出してしまったことにより、魔に取り憑かれて最悪の場合、堕天してる危険があると…?」
「そう言う事も考えられますね。
なんにせよです。まだ相手は我々に明らかなコンタクトは取ってきていません。
相手側がどう出るかはまだ予測がつきませんが、出来うる限りの対策をしておく必要はあるでしょう。」
「ふむん、どう出るのじゃ?
ひとまず、もう1人のこの天使を探すのが最優先という事か?」
「そう言うことになりますね。
もう1人の御劔麗哉を探す。
その魂をこの肉体に再び戻し、レイヤードには肉体から出て頂くと言うのが先決でしょう。
ただ、霊魂として彷徨ってるだけならなんの危惧もしなくて良いのですが…。
万が一にでも、魔の手のものに見つかっていようものならとても厄介なことになり得るでしょう。
レイヤードは人間の頃より遥かに強大な神通力を持ち、神格を経た後は異界渡だけでなく時渡りの力まで会得して居ますからね。
その力を悪用されようものなら…最悪の場合はこの世界をかつて混乱に陥れた邪神すら呼び覚ます危険すらあります。」
「私1人がそのような危険な代物だと言う自覚はありませんでしたよ…。
ですが、ミレーヌ様が仰るのならそうなのでしょう…。」
「さて、果たしてどこに居るのやら…。
そして、だいたいこう言う時は最悪のシナリオが進行して居るものですよね。
物語としては盛り上がりますし。
案外、彼もまた我々の近くに潜んでいるやも知れませんね。」
「例えばこの店のどこかにとかかの?
案外、店の外で待ち構えて折ったりしてのう。」
「ふふふっ♪まさかそんな事、あっても困りますよ。私はこのように肉体の表側に出ることはできても戦う力など皆無ですよ?」
「わしもじゃ。所詮器は猫の身じゃからのっ。」
「それはつまり、万が一現れようものなら私が戦えと…?」
「まぁ、そう言うことになりますね。
はてさて、本日この3人で開示できる話はよもやここまででしょうか?」
「そうだな。では会計を…。
む…。おかしい。かれこれ2時間は話し込んでいたはずだ。
テーブルチャージの料金が伝票に加算されてないぞ?
この店の会計システムは電子会計だからそもそも間違えようなどない…はずだが…。」
「これは参りましたね…。
いつからだったのでしょう?
よもや、既に敵に囚われて居たとは…。」
くっ…!時間操作の能力…。
話して居たそばからやはり近くにいたと言うことか…!
「私が再び時を動かす!2人は店の外へ避難を!
敵は私が対峙する。元よりこれは我が罪。
私が償わねばならぬ大罪だ。」
「馬鹿な事はおやめなさい!今の貴方では…!死ぬ気ですか!」
私は2人を店の外へと逃した。
その直後…再び時を止められる。
「まずいな…。力を行使しようにも今の私は急速に人の身に移り変わって居る…。
これが意味することはすなわち…御劔麗哉は私の力のみを奪って、私に成り代わろうとして居ると言うことか…!?
えぇい…!どこにいる!」
などと口にした刹那、気づかぬうちに私の周囲を取り囲む無数のナイフとフォーク。
「ふん…、漫画の中の時を止める能力者でもあるまいに…。」
そして、大量の刃が私のこの身体を激しく貫く。
熱いほどの傷み。
流血した所から感じる冷たさ…。
この痛み、何年振りだろうか…。
過労で精神に異常を来たし、自らの身体を刻もうとしたあの時よりも酷いな…。
私は死ぬと言うのか…。
ふふ…。死ぬならせめて…女の腕の中で死んで見たかったものだ…。
などと薄れゆく意識の中で私は夢を語る。
そう、私はいつのまにか人に成り代わって居たのであった…。
死ぬ事ができる…人の身に…。
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