閣下は罪人と結ばれる

帆田 久

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後日談:閣下は元罪人に溺れる(前)

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結婚式の夜回(前編)
ディー視点
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《ロウガル公爵邸》



「まさか本当に国王陛下にご参加頂けるとは思っていませんでした…」

「くくっ、まぁ腐ってもこの国の公爵家当主の婚姻だからな。
更に面倒なことに将軍なんぞと軍の要職に就いている為、陛下あいつも顔を出さざるを得んのだろう。
…例えそのどれも当てはまらなかったとしても顔を出しただろうが……」

「“あいつ”…、え?」

「いや、とにかく気苦労をかけてすまないな、ディー」

お疲れさん、と口角を上げて男臭く笑うジル様にドキドキと鼓動が跳ねる。

現在主寝室ーーこれからジル様と二人で使用する寝室内に設置されたサイドテーブルを挟んで椅子に座り、互いの労を労いながらホットワインを飲んでいる。
少しでも私の緊張が解れるようにとジル様がララ様に用意して貰った甘口のそれをちびちびと口に含みつつも、たわいのない会話に花を咲かせる。
公爵家当主であるジル様の招待された方々が高貴な身分の人間ばかりであることは勿論覚悟していたことだけど。

(まさかお義父様とお義母様に
当日初めて顔を合わせることになるとは思いませんでした…)

陛下が参加されたこと以上に緊張したのがそれだ。
さしもの自分もそれにはかなり驚いたし、式の直後すぐにご夫婦揃って旅に出て行かれたのは想定外だったと苦笑が込み上げる。
高位貴族にはかなり珍しい程に明るく破天荒な方々だった。

(また旅からお戻りの際には改めてしっかり挨拶させていただこう)

にこにこと笑顔で握手を求められ、風のように立ち去っていった二人の後ろ姿を思い出して思わずクスリと笑いが漏れる。

「……何やら楽しそうだな…」

「ふふっ…あ、いえ。
今日のお義母様達のご様子を思い出してしまってつい」

すみませんと笑い混じりに返すと、
少しばかり憮然とした面持ちとなったジル様は。

「…今は俺のことで頭を一杯にしてもらいたいな…、ディー?」

もう我慢できないと言っただろう?

「ぁ……」

身を乗り出して私に顔を寄せて囁き、目を細めてニヤリと笑った。

きっと顔は真っ赤になっているだろう。
落ち着いたはずの鼓動も破れんばかりに激しく鳴っている。
室内の天井に輝く照明魔道具の明かりが暗くなったような気がする。


「ディー…」


突然訪れた初夜の空気に硬直している私をあっという間に抱き上げて、
ジル様は私をベッドへと攫った。


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