23 / 27
後日談:閣下は元罪人に溺れる(前)
しおりを挟む結婚式の夜回(前編)
ディー視点
=========================================
《ロウガル公爵邸》
「まさか本当に国王陛下にご参加頂けるとは思っていませんでした…」
「くくっ、まぁ腐ってもこの国の公爵家当主の婚姻だからな。
更に面倒なことに将軍なんぞと軍の要職に就いている為、陛下も顔を出さざるを得んのだろう。
…例えそのどれも当てはまらなかったとしても顔を出しただろうが……」
「“あいつ”…、え?」
「いや、とにかく気苦労をかけてすまないな、ディー」
お疲れさん、と口角を上げて男臭く笑うジル様にドキドキと鼓動が跳ねる。
現在主寝室ーーこれからジル様と二人で使用する寝室内に設置されたサイドテーブルを挟んで椅子に座り、互いの労を労いながらホットワインを飲んでいる。
少しでも私の緊張が解れるようにとジル様がララ様に用意して貰った甘口のそれをちびちびと口に含みつつも、たわいのない会話に花を咲かせる。
公爵家当主であるジル様の招待された方々が高貴な身分の人間ばかりであることは勿論覚悟していたことだけど。
(まさかお義父様とお義母様に
当日初めて顔を合わせることになるとは思いませんでした…)
陛下が参加されたこと以上に緊張したのがそれだ。
さしもの自分もそれにはかなり驚いたし、式の直後すぐにご夫婦揃って旅に出て行かれたのは想定外だったと苦笑が込み上げる。
高位貴族にはかなり珍しい程に明るく破天荒な方々だった。
(また旅からお戻りの際には改めてしっかり挨拶させていただこう)
にこにこと笑顔で握手を求められ、風のように立ち去っていった二人の後ろ姿を思い出して思わずクスリと笑いが漏れる。
「……何やら楽しそうだな…」
「ふふっ…あ、いえ。
今日のお義母様達のご様子を思い出してしまってつい」
すみませんと笑い混じりに返すと、
少しばかり憮然とした面持ちとなったジル様は。
「…今は俺のことで頭を一杯にしてもらいたいな…、ディー?」
もう我慢できないと言っただろう?
「ぁ……」
身を乗り出して私に顔を寄せて囁き、目を細めてニヤリと笑った。
きっと顔は真っ赤になっているだろう。
落ち着いたはずの鼓動も破れんばかりに激しく鳴っている。
室内の天井に輝く照明魔道具の明かりが暗くなったような気がする。
「ディー…」
突然訪れた初夜の空気に硬直している私をあっという間に抱き上げて、
ジル様は私をベッドへと攫った。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる