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12:騒がしい訪問者
しおりを挟む(おそらく少し調べれば。
私が罪人として処刑されたのだという事実に、ジル様はすぐにでもたどり着く)
そうなればーー、いくら獣人にとって大切な番といっても、
彼は私を選ばない。
「ジル様のことだから、もう渡した冊子は読んだでしょうね……」
昨夜渡した自身のことを綴った冊子。
日が昇り、既に翌日の昼を回った。
彼が私のことを職務の合間に調べたとして、私の前に顔を出すのはおそらく本日の夜以降。
(お別れの手紙を書いておいた方がいいかしら…)
そんなことをベッドの上でぼんやりと考えていると。
「お待ち下さい!ソリュー様!!」
「許可なく屋敷内へとお入りにならないで下さいませ!」
「っうるっさいわねぇ!この先にいるんでしょう!?」
(何やら屋敷の使用人方と揉めているお人がいるみたい?)
わいわいガヤガヤ 段々その言い争う声は近付いてきて……
バァン!!
ドアが勢いよく、開いた。
「貴女ね?
閣下の屋敷に転がり込んで居座っている寄生虫は…!」
眩しい金色の髪を靡かせた獣人美女が、
腕を組んでベッド上の私を睥睨していた。
===
「なに?ただのガリ痩せな小娘じゃない!
しかも人間!!
閣下がご執心だとか自ら連れ帰ったとかって噂されてるからどんな手練手管に長けた女かと思ったら…」
「………」
登場早々、ジロジロと不躾に値踏みしての発言に
口が聞けないことを横に置いても唖然。
金髪碧眼の美女、しかし気が相当に強いらしい。
加えて露出が高く、同じ女ながら少々目のやり場に困る。
なお、豹柄の丸い耳からして豹獣人だと思われる。
(獣人女性にとってはこれが普通の格好なのかしら?)
未だ私に対しての文句を言い続けている女性をぼんやりと眺めながらそんなことを考えていると、彼女の背後にララ様の姿を認めた。
彼女の隣で息を切らしている他のメイドさんとララ様の服装が外行き用なことを考えると、急ぎ彼女を呼び戻してくれたのだろう。
日頃ほんわかと柔らかな笑みを浮かべて砕けた口調で気安く私に接してくれるのが嘘かのように、鋭く冷たい色を宿した目を鋭く眇めている。
次第に細まり鋭さを増していくのに口元だけは変わらず笑んだままなのが非常~に怖い。
取り敢えず、話を聞くにしても場所を移した方が良さそうだ。
『どなたかは存じませんが、一先ず応接室にてお待ちいただけませんか』
「はぁ?」
私が冊子を掲げて文面を見せると、なにやってんのこの娘?という顔をしたけれど、
取り敢えず話を切ることに成功したようだ。
素早くララ様に視線を送ると、
心得たと一瞬満足そうな顔をした彼女がにっこりと笑んだまま
「ご案内致します。さぁさ、こちらでございます」
と女性を促した。
「何よ!私はこの図々しい居座り女と話があるのだから引っ込んで」
「ご案内致します。こちらに」
「だからぁ!この女と話が」
「こ ち ら に ど う ぞ(四の五の言ってんじゃねぇイワすぞゴラ)」
ララ様怖い。
一瞬怯んだ金髪美女の襟首を引っ掴むとズルズルと引き摺っていくララ様。
首元を掴まれると大人しくなってしまうのは猫科共通なのだろうか…。
ともあれ、せっかく着替える時間をもらえたのだ。
幸い、ありがたいことにこのひと月の間に服も何着か用意してもらっている。
部屋着ではなく最低限人前でも失礼のないものに着替えましょう…
立ち上がり、クローゼットへと足を向けると。
入り口から
「お嬢様、お仕度…お手伝いさせていただきます!」
ララ様の代わりに時々私の世話をしてくれる兎獣人のサマンサさんが、
ブラシやドレスを手ににっこりと笑っていた。
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