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その43 コラルド帝国への道(後)
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引き続き道すがらの会話回。
今回はヒーロー・ヒロインのものです!
========================================
(スレイレーン王家紋章入り馬車内)
「殿下」
「……」
「でぇんーかぁ~~!」
「………」
「むぅ。アルフレッド殿下」
「…アルフだ」
「アルフレッド様」
「もう一声」
「………アルフ、様」
「…まぁ、ギリ合格だな」
「アルフ様は意地悪です…」
「あのなぁ、本当に慣れないな(そんなところも可愛いが)。
自分の好きな、しかもこれから正式に婚約の許しをもらおうとまでしている相手から他人行儀な呼ばれ方をされる俺の身にもなれ!
ったく(この間まで普通にアルフ様だったのに。こいつも実は緊張してるとか?)。
…ただでさえ無事スレイレーンの地を再び踏めるかもわかったものじゃないってのに(ボソッ)」
「?それはどういう意味で」
「あーなんでもない。
で?さっきから何を不貞腐れているんだ」
「……まに」
「ん?よく聞こえん、はっきり言ってくれ」
「だから!私はただいま大いに不満なのです!」
「あ?
……おい、もしやことここに至って婚約するのが嫌だとか抜かす気か」
「っ違う!全く違いますぅ!!
なんでっ!
なんでアルフ様は猫ちゃん様の姿じゃないんですか!!」
「どこの世に人間の娘との婚約許可をとりに行く猫がいると?」
「だってだって!
私は退屈な馬車移動も猫ちゃん様を愛でながらならと密かに楽しみにしていたのです!!
なのに馬車に乗ってから全く猫ちゃん様に変わってくれそうにないし!
もうすぐコラルド帝国についてしまうじゃないですかァァ!!」
「だから婚約の許しをもらいに行く旅だと言ってるだろぉが!!
はぁ……もういいそれなら」
「ふぇ?」
隣でジタバタ文句を垂れるルーシェをヒョイとと掴み、
己の膝に座らせすっぽりと腕で囲う。
ついでにギュッと抱きしめるアルフ。
顔色が真っ赤なトマト化して固まるルーシェ。
「いつもお前ばかり俺を膝に乗せて撫で回して楽しんでるんだからたまには逆でもいいだろ」
「………っ」
「……いいだろ?…それとも嫌、か?」
「~~!!むぅ……いやじゃあ、ありませんよーだ」
「くく…じゃあ帝国着くまでこのままな?」
ちゅっ(頭頂部)
「!!?」
護衛や侍従・侍女らの殺伐とした会話に比べ、
なんとも生暖かいやり取りでいちゃつき続ける2人。
しかし、ここはすでに、コラルド帝国目前。
その事実を忘れていた2人のラブタイムは。
ヒヒィィン!
“何者だ!”“陣形を整えろ!”
馬の嘶き、護衛らの張り詰めた声と急停車した馬車の振動によって、
あまりにも短く終わりを告げた。
「む?この気配、…あ。これはお」
「……ルーシェは馬車の中にいろ」
ルーシェの言葉を遮り僅かに眉を顰めたアルフが素早くドアを開けて外に飛び出し、
ドアを閉める。
護衛達が腰元の剣に手を伸ばして警戒する視線を辿ればそこには。
「随分と遅いお着きだなぁスレイレーン王国王弟殿?
もう先触れの使者が我が家に到着して既に2日も待たされているぞ。
ルーシェだけ送ってくればいいものを。
まぁ?
のうのうと足を運んだその気概は誉めてやるが。
我らの目がないことをいいことに我が家の宝に手を出した害虫が…
生 き て 祖 国 を 踏 め る と 思 う な よ 」
強烈な覇気と殺気を噴き出しながら腕を組んで仁王立ちしてこちらを睨みつける、
レイブン伯爵家当主にしてルーシェの父親、ジルバ・レイブンの姿があった。
※ ※ ※
(おまけ)
『(お楽しみの時間が向こうから)き、キタァァぁぁぁ!!!(歓喜)』
『まだ(剣)抜くなよ!?おっ始めんなよ!?
やめろっ、まだ死ぬには早すぎる(俺が)!!』
……さて、誰の心の声でしょう?
ご想像にお任せします。
===================================
次回、伯爵家当主と王弟、本格対面?
お楽しみに~~!
今回はヒーロー・ヒロインのものです!
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(スレイレーン王家紋章入り馬車内)
「殿下」
「……」
「でぇんーかぁ~~!」
「………」
「むぅ。アルフレッド殿下」
「…アルフだ」
「アルフレッド様」
「もう一声」
「………アルフ、様」
「…まぁ、ギリ合格だな」
「アルフ様は意地悪です…」
「あのなぁ、本当に慣れないな(そんなところも可愛いが)。
自分の好きな、しかもこれから正式に婚約の許しをもらおうとまでしている相手から他人行儀な呼ばれ方をされる俺の身にもなれ!
ったく(この間まで普通にアルフ様だったのに。こいつも実は緊張してるとか?)。
…ただでさえ無事スレイレーンの地を再び踏めるかもわかったものじゃないってのに(ボソッ)」
「?それはどういう意味で」
「あーなんでもない。
で?さっきから何を不貞腐れているんだ」
「……まに」
「ん?よく聞こえん、はっきり言ってくれ」
「だから!私はただいま大いに不満なのです!」
「あ?
……おい、もしやことここに至って婚約するのが嫌だとか抜かす気か」
「っ違う!全く違いますぅ!!
なんでっ!
なんでアルフ様は猫ちゃん様の姿じゃないんですか!!」
「どこの世に人間の娘との婚約許可をとりに行く猫がいると?」
「だってだって!
私は退屈な馬車移動も猫ちゃん様を愛でながらならと密かに楽しみにしていたのです!!
なのに馬車に乗ってから全く猫ちゃん様に変わってくれそうにないし!
もうすぐコラルド帝国についてしまうじゃないですかァァ!!」
「だから婚約の許しをもらいに行く旅だと言ってるだろぉが!!
はぁ……もういいそれなら」
「ふぇ?」
隣でジタバタ文句を垂れるルーシェをヒョイとと掴み、
己の膝に座らせすっぽりと腕で囲う。
ついでにギュッと抱きしめるアルフ。
顔色が真っ赤なトマト化して固まるルーシェ。
「いつもお前ばかり俺を膝に乗せて撫で回して楽しんでるんだからたまには逆でもいいだろ」
「………っ」
「……いいだろ?…それとも嫌、か?」
「~~!!むぅ……いやじゃあ、ありませんよーだ」
「くく…じゃあ帝国着くまでこのままな?」
ちゅっ(頭頂部)
「!!?」
護衛や侍従・侍女らの殺伐とした会話に比べ、
なんとも生暖かいやり取りでいちゃつき続ける2人。
しかし、ここはすでに、コラルド帝国目前。
その事実を忘れていた2人のラブタイムは。
ヒヒィィン!
“何者だ!”“陣形を整えろ!”
馬の嘶き、護衛らの張り詰めた声と急停車した馬車の振動によって、
あまりにも短く終わりを告げた。
「む?この気配、…あ。これはお」
「……ルーシェは馬車の中にいろ」
ルーシェの言葉を遮り僅かに眉を顰めたアルフが素早くドアを開けて外に飛び出し、
ドアを閉める。
護衛達が腰元の剣に手を伸ばして警戒する視線を辿ればそこには。
「随分と遅いお着きだなぁスレイレーン王国王弟殿?
もう先触れの使者が我が家に到着して既に2日も待たされているぞ。
ルーシェだけ送ってくればいいものを。
まぁ?
のうのうと足を運んだその気概は誉めてやるが。
我らの目がないことをいいことに我が家の宝に手を出した害虫が…
生 き て 祖 国 を 踏 め る と 思 う な よ 」
強烈な覇気と殺気を噴き出しながら腕を組んで仁王立ちしてこちらを睨みつける、
レイブン伯爵家当主にしてルーシェの父親、ジルバ・レイブンの姿があった。
※ ※ ※
(おまけ)
『(お楽しみの時間が向こうから)き、キタァァぁぁぁ!!!(歓喜)』
『まだ(剣)抜くなよ!?おっ始めんなよ!?
やめろっ、まだ死ぬには早すぎる(俺が)!!』
……さて、誰の心の声でしょう?
ご想像にお任せします。
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次回、伯爵家当主と王弟、本格対面?
お楽しみに~~!
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