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その35 当日祭夜会・その6〜罠にかかった獲物〜
しおりを挟むこんばんは!
ご存知の通り、ルシェルディアです!
私は現在、絶賛混乱中であります。
混乱の原因は勿論、傍に立つパートナー様の態度でありまして……
※ ※ ※
(っえっ!?)
色気たっぷりにソフィアへ微笑むアルフ様に、私は何で!?と驚愕する。
自分とも渡り合える程、魔力の強いアルフ様。
彼が以前、自身で宣言していた通り、
魔法抵抗力もその強力・強大な魔力に準じて強いはず、
故に魅了など効かないはずで……。
現に先ほどまでは笑顔ながら酷く酷薄な色を瞳に宿していたはず。
それなのにソフィアが目の前にやってきて言葉を発した瞬間、
態度が明らかに変わった。
まるで魅了にまんまとかかり、ソフィアに好意を抱いたかのように。
ー…夜会前、何が起ころうとも笑みを崩すなとのアルフ様より厳命されていなければきっともっと慌てていたことでしょう。
しかしやはり、元より腹芸が苦手な私。
動揺というものは完全には隠せない様で…
軽く目を瞠ったその様子を目敏く見てとったソフィアが、
(え、うわっ!うむぅ…なんか、魔物のなり損ないみたいに歪んでる。
笑顔気持ち悪っ!!)
かーなーり、嫌な笑みを浮かべたのにはうんざりとしてしまった。
一抹の不安を感じつつそれでも成り行きを見守る他ない私は、
極上の笑顔を浮かべる隣の美丈夫殿を只々見つめた。
※ ※ ※
(Side:ソフィア)
普通なら不敬だと咎め立てられる態度で臨んだ国王への挨拶を何事もなく終えた私は、確信と自信を持って本命の王弟殿下へと向き直った。
(ああ…やはり。
見れば見るほど野生的で美しい!
彼こそ私のモノとなるべき極上の男よ……!)
自分を見返す王弟、アルフレッド・スレイレーンを半ばうっとりと見つめ、
同時に図々しくも傍らに佇む忌々しい女を敢えて視界から外して集中する。
(いくらこの女が隣にいるとはいえ、私が本気を出せばちゃんと効く筈!)
慎重に魔力を増し、同時に周囲の人間に気付かれてはいないかを視線の端で確認する。
(…これだけの出力で使うのなんて滅多にないことだけれど…さて)
ちゃんと効果を発揮しているのかと
先ほどまでやや冷たい眼差しでこちらを見ていた王弟の様子を窺う。
するとーー。
「ーーソフィア嬢、ですか。
何と麗しい、まるで咲き誇り香り立つ薔薇のようだ」
先ほどまでとは打って変わって熱を帯びて私を見つめて称賛する目前の男。
(!!よし…かかった!!)
思わず手を握り込んで歓喜する。
これでこの男は自分のモノだ、と。
ちらりと彼の隣に目をやると、忌々しい女ー…ルシェルディアがガラリと変わった王弟の様子に目を瞠っているのが見て取れ、うっそりとほくそ笑む。
以前婚約者を取り上げた時は全く動じなかったこの女が、
これほど動揺を露わにしていることがおかしくて仕方がない。
これほど強力に行使した魅了魔法が効果を発揮した以上、
最早この極上の男がルシェルディアを瞳に映すことすらないだろうに。
この上まだ縋ろうというのか浅ましい!と眉を跳ね上げる。
(……勝った!!)
これで自分はこの女にも、そして人生における勝負にも勝ったのだと。
心の底から高らかに叫びたい気分だった。
あとはもう、このまま放っておけば王弟は自分の言いなり、
この挨拶の後きっと自分をファーストダンスへと誘い、そして私の願い通りその場で求婚することだろう。
そのまま軽く頭を下げて一先ず壇上を辞そうとしー、
しかしあることに気付き思いとどまる。
この場まで漕ぎ着けるために堕とした煩わしい男が、
予想以上の険しさでもって自分を背後から凝視していることに気づいたから。
おそらくパートナーなのに放置されたばかりか、
目の前で他の男に目移りしたと憤っているのだろう。
カールもまた、王弟同様にかなり強力な魅了でもって堕としたのだから。
(…本命を前に一々相手にしてられないっての、面倒くさい。
でも、そうね……)
お古を捨てるついでに、ルシェルディアもまとめて絶望感に突き落としてやってまとめて捨ててやろう。
目の前でこれだけ分かりやすく王弟に情があることを認めているのだ、
慕う本人から激しい拒絶を受ければ、今度こそみっともなく取り乱すに違いない。
にんまりと笑い、頭をゆっくりと起こす。
そしてーー、
「アルフレッド様ぁ、私とファーストダンスを踊って下さいましな!」
目前の王弟の腕を引き寄せ絡みつき、殊更甘い声音でもって懇願した。
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