追放令嬢は森で黒猫(?)を拾う

帆田 久

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その31 当日祭夜会・その2〜なんであの女がここに!?〜

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(Side:ソフィア)



会場入りしてこっち、実に清々しい思いだ。
自分に群がり称賛する男達とこちらを睨みつける彼らのパートナー達。
女達から嫉妬と憎悪にまみれた視線が刺さる度
男達が自分を称え媚びる時
言い知れぬ快感が自身の身体を駆け抜けるのを感じた。

(ふんっ、ブス達が群れたところで何も怖くないわ!
自分に魅力がないからパートナーが目移りしているとは思わないのかしら?
所詮は凡婦、若く美しい私に冴えないパートナーを取られたことを寧ろ感謝してもらいたいくらいだわ!!)

王弟様や国王様が登場するまでの場つなぎ的な意味しか為さない男達ではあるが、それでも他ならぬ自分の“退屈しのぎ”として役立っているのだ。
光栄に思われこそすれ、非難される謂れなどない。

一頻り優越に浸ったところで、会場内が騒ついた。

(!!いよいよご登場、かしらね。
私の王子様?)


続けて上がった入場コールが予想通りに待ち人の登場を知らせ、
気持ちが酷く昂る。
これでようやく、自分に相応しい極上の男をモノに出来る!

「僕の天使?どうしたの……?」
パートナーのカールが声をかけてくるが、そんな凡人などどうでもいい。
そんな確信と近い未来に王族の一員としてこの国の貴族連中を見下ろす場面を思い浮かべて、うっとりとしながら知らず自分に侍る男達を掻き分けて上段ー…王族達の席が用意されている場所がよく見えるところまで前に出る。

彼らからも自分がよく見えるよう、出来るだけ自分で。

(ふふふ!さぁ国王様、王弟様。私を
そうすれば…)

貴方達は私の

モノに、と考えようとして。

「……え、何?」

歓声と共に先程とは違った意味で入り口付近で騒めきが起きたのに、違和感を覚える。
入場してきた人物達を余さず凝視する。

まず入ってきたのは国王様
中々お金のかかった豪華な装飾品やドレスを身に纏ったパートナーを連れている。
おそらくは噂の婚約者とやらだろう。
背が高く顔立ちも非常に整っていて、あれぞ正しく王族、それも頂点なのだと納得できる存在感があることに満足する。

(あれが国王様…
少し想像より線が細いのが不満と言えば不満だけどまぁいいわ。
パートナーも一級品で着飾らなければ人前に立てない程度の女だし)

他人が聞いたなら不敬だ!と詰られそうな評価を
極めて傲慢に下していく。

そして続いて姿を現した人物にうっとりと見惚れる。

王弟、アルフレッド・スレイレーン
前回チラッとしか見ることの出来なかった彼は、
今日は夜会の為に冒険者姿とは打って変わった軍服に似た見事な正装に身を包んでいた。

高い上背、鍛え抜かれていると服の上からでもわかる厚い胸板
国王と似た、それでいてより野性味と色気を含む漢らしい整った顔立ちも相まって、圧倒的な存在感を放っている。
自身が魅了の使い手であることを束の間忘れてふらふらと彼の姿に引き寄せられかけ…続いて姿を現した人物を視界に入れて、硬直した。

「…んで」

(なんで……あの女がここに…っ!!?)

少し遅れて彼に近寄り、腕に手を絡めて笑う女。
それは自分がよく知る人物でもあり、
また最もこの場にいてはならない女だった!

白い絹に空色が所々に混じった美しいAラインドレス
耳や髪、首元を飾る華美な装飾品の数々
忌々しい、本当に存在自体が忌々しい女が。
よりにもよって自分の獲物のパートナーとして彼の隣に並び立った。



「っルシェルディア・レイブンッッ……!!」

ギリッと自身の奥歯が軋む音を耳奥で聴きながら、
ソフィアは醜悪に顔を歪め、手に持つ扇子を強く握り込んだ。

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