追放令嬢は森で黒猫(?)を拾う

帆田 久

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その26 やってきました前夜祭!!(喜)

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て訳で。

やってきました収穫祭・前夜祭ッッ!!

今日も絶好ハイテンション元気印二重丸のルシェルディアです!
ぬ?いつもよりテンションが高いのでは?とな??

特別にその理由をお答えしましょう!!

何故なら本日は収穫祭とやらの“前夜祭”!
城下を出店が競うように立ち並び、様々な美味しい食材が普段より余程安価且つ気軽に提供されると聞いたからです!

(美味しい食べ物!出店ッッ!!)

ここスレイレーン王国に来てからこっち、未だに城下の店を一軒たりとも覗いたこともましてや買い物をしたこともないこの私が、出店デビューをいたします♪

“王族も参加”というのは主に城で行われる当日祭の夜会。
なんでも前夜祭で出席が強制なのは国王陛下お一人らしく、
前夜祭では比較的自由に飲み食いを楽しんで良いとのこと。

唐突にアルフ様のパートナー役に抜擢されてしまった私ではありますが、こういった楽しみがあるのなら気持ちの持ちようは全く別!
自国でも1人で自由に買い食いが許されなかった一応(?)貴族の令嬢としては、ここは思う存分に堪能しなくては!!


一応目立たぬよう衣服を一般的な平民服、髪色を茶色に魔法で変化させ、我ながらよく平民になりきれているのではないかとも思います!
そしてパートナーであり保護者役でもあるアルフ様はというと……

「お久しぶりですね、猫ちゃん様!!」

「……まさかこの姿で同行する羽目になるとは……」

くっと口惜しげに腕の中で項垂れる黒猫…いや黒豹でしたっけ?
まぁ猫ちゃんにしか見えませんから猫ちゃん様で構いませんよね?!
獣化した王弟様をしっかと抱きしめ、るんるんと城下へ繰り出したのでした。


※  ※  ※



(Side:アルフ)


(くそ……何が悲しくてパートナーとこの姿で
前夜祭の出店を回らなけりゃならんのだ!)

るん♪とはしゃいで跳ねるルシェルディアに抱えられてゆらゆらと頭を揺らす俺は、ルシェルディアとは真逆に絶賛機嫌降下中だ。

彼女を半ば強引にパートナーとして参加させることを押し通したアルフは、
実はこの前夜祭を指折り数えて楽しみにしていた。
それはもう!楽しみにしていたのだ。
何故なら国に帰ったその時はこの獣化した姿で、城でも長くこの姿。
やっと正体を告げても出かけた先は冒険者ギルドのみで、それもすぐに帰城を余儀なくされた。
要するに、だ。

(人間もとの姿で一度もデートらしいデートをしていない!!)

これに尽きる。

折角与えられたデートの機会、存分にルシェルディアを甘やかして道中口説こうと意気込んでいただけに、この姿で彼女に同行するよう直前になってよりにもよってルシェルディアに申し付けた宰相・ロキににわかに殺意を覚える。

(でもまぁ、……仕方がない、か)


残念は残念(本当、これでもかという程に)だが、
ロキの懸念や意図するところが充分理解できるだけに余計やるせないのだ。

何しろ俺の容姿は正直言って目立つ。
同じく目立つ外見のルシェルディアと並んで城下を歩けば、
否応にも注目を集め、満足に平民が出店する店巡りなど出来ないだろう。
その点この姿なら、ちょっとばかり目立つ容姿の娘がペットを連れて祭を楽しんでいるようにしか見えない。

それに明日の当日祭・夜会に予想される捕物、
その獲物たる女について今格好ならば気付かれずに確認できる。
元々子爵令嬢だと聞かされていることからこの前夜祭の平民中心の出店群に顔を出すとは思えないが、万が一ということもある。
さり気なく周囲を観察し、奴が誑かしたであろう貴族家と奴が未だ誑かしたまま正気を失っている男達について情報が得られればそれで良し。
例え何も得られずとも元より祭りを楽しんでいるだけなのだ。

今日久しぶりに全力で楽しんでいる様子のルシェルディア。
彼女以上に優先するものなど他にはない。

こっちの肉串は魅惑の香り~、あっちのサンドウィッチは彩りが~と目移りしながら右往左往する様を、今はただ腕の中から見守る。

(これも一つの有意義なる時間の使い道というものだな)

と、強引に自身を納得させて、ひたすら彼女に身を委ねる。
……俺の元の姿をすっかりと忘れているのか、無意識に押し付けられる柔らか且つ魅力的すぎる胸の感触に湧き上がる煩悩をなんとか振り払いながら。


================================================

※頑張れアルフ!
耐えるのだアルフ!(主に)己の煩悩に打ち勝つのだ!!(笑)

ギルマス・ブルゲン氏とは違った意味で哀れなるアルフに、
作者も合掌、そして敬礼!!(`_´)ゞ
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