追放令嬢は森で黒猫(?)を拾う

帆田 久

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その22 やっぱりもう一度!いや駄目だ(即答)

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(一体どうされてしまったのでしょうかアルフ様は?
ふむぅ、お腹の調子でも悪いのでしょうかねぇ)

よもや自分の答えに硬直し、その後頭を抱えて唸っているとは思いもしない。
本日も通常運転、ルシェルディアです!!

さてはて、本日ギルドにて偶然にも見知った顔が魔法を乱用している現場を目撃してしまった私ですが。
一応(?)この国の王族であるアルフ様が
あの魔法の影響を受けないよう城へと引き返す事を選択し、
事情も説明できたわけだがこの後はどうしたものか、と首を捻る。

(折角自由の身となったことだし、面倒なのであまり関わりたくはないのですが。
むむー…これでは念願の初依頼を受けられません!)

自身に因縁ある相手が姿を見せようとも
危険な魅了魔法の使用でギルドが危機に陥っていようとも
そこはそれ、と己の欲に正直な非常識娘・ルシェルディア。

因縁があるといっても大して親しくもなければ、
寧ろ彼女については名前しか知らないので特に気になりはしない。
また、魅了魔法はどんなに強力な使い手であっても異性にしか影響を与えられないことを知っている。

使い手のソフィア嬢は女
ルシェルディアも女
ギルドの受付員も殆ど女

であれば依頼を受けるのにさして問題はありませんね!!と実に都合よく考えてしまうくらい冒険者活動を心から渇望しているのだ!!

といって、今のところこの国の王弟兼自身の保護者でもあるアルフ様に同行してもらわないと、ギルドへ足を向けることもできない。
そして当然、アルフ様は男性。
つまり使い手にとっての異性、魔法を作用できる対象なのだ。
彼女がギルドに居座っている限り自分がギルドへと足を踏み入れることができない。

(それは非常~~っに!困ります!!)

なんでまたこの国に来たんですかソフィアさん!!
と妙な憤りまで感じ始めた段になって、はたと気付く。

(あれ、確か魅了魔法って魔法抵抗力が強い…
言ってしまえば魔力の多い人には効かないって、以前お爺様が)

隣でうんうん唸っているアルフ様をじー、と凝視する。

「あの、アルフ様?」

「……………なんだ」

「アルフ様って、魔力、多い方ですよね??」

「…まぁ他国には上がいるがこの国では断トツだな。
お前、魔窟からこっち、俺がずぅっと“あの姿”のまま。
しかも身体強化を使い続けて爆走するお前に並走し続けてたの、覚えてないのか」

身体強化も、獣化も、かなりの魔力を食うんだぞ?


間違いようもなく、
かなりの魔力持ちであると(若干不機嫌そうではあったが)断言され、ぱぁああ!と思考が急激に前向きに!


「やっぱり今からもう一度ギルドに向かいましょう!!」

それで依頼を!!とずいずい身を寄せながら迫るルシェルディアに、
珍しく引き気味に眉を顰めて何故だとアルフ様が呟く。


「それは勿論!わざわざ引き返した理由がなくなったからです!!」

「してその理由とは?」

「え、だって魅了魔法ってどんなに強力でも
魔力が多いつまりは抵抗力が高い人には通じないんですよ?
しかも異性限定の魔法ですし。
アルフ様は彼女にとっては異性だけれど魔力が多いから大丈夫!!
私は同性だから大丈夫!!
ほら何も問題ない!依頼は間違いなく障害もなく受けられます!!」

「問題だらけだ馬鹿者ッッ!!」


ゴチン!!


鉄拳がルシェルディアの頭頂に振り下ろされた!


「!?むぅ……痛、くはないですが、何故私は鉄拳制裁を受けたのでしょうか」

頭を撫でながら唇を尖らせて抗議すると、
はぁ……と疲れ切ったため息が降ってくる。

「あのな。
確かに魔力が多ければそれだけ抵抗力も高いというのは間違いではない。
だが魅了魔法の作用を防ぐ抵抗力は少々特殊なんだよ。
他の魔法と違って100%精神に作用するから、
ただの抵抗力だけでなく精神力も強くあらねばならない」

それが?と首を傾げる私に再びのため息。

「…俺は王族だからな、交渉事に出張ってくる他国の貴族や商人にも使い手はいるし多少の耐性はあることはあるが。
どんなに強力でも、だと?
そんなに強力だと抵抗力が僅かでも使い手を下回れば、
最悪完全なる洗脳が成功してしまう。
で。
ギルド長の性別は?冒険者達の大半の性別は?
彼らにどれだけ抵抗力があると思っている?
それに、依頼人の大半が、男だ」

「ええ!?」

つまり自分達は大丈夫だからとギルド内のを放置すれば、
結果…いずれ簡単な依頼でさえなくなり、ギルド自体が崩壊する。

そう告げられ、ルシェルディアは愕然とする。

「そ、そんな…!
依頼が…念願の冒険者活動がぁ~!!」

「理解できたのなら暫く大人しく城内探索で納得するんだな。
ー…俺は兄上にこの事を報告しなければならない。
魅了魔法の使い手を国に報告する義務は各国共通だからな」

そう言って踵を返そうと動き出したアルフ様に、
それでも諦めきれずでも!と縋ると。

「あのな!
あんなにあからさまに魅了魔法を悪用している巫山戯た女を!!
母国で因縁のあるお前と鉢合わせたくないんだよ
そのくらい分かれいい加減ッ!!」

「ぇ」

思いもかけぬほどの強い口調に、途端言葉が紡げなくなる。

「同性だから魅了は効かない?
は、その程度の認識か?
魅了魔法の本当に厄介なところはな、
抵抗力の低い者を洗脳してことができることだ。
つまりお前の追放に加担したあのローブ女がお前に危害を加えようとした場合に、実行に動くのは使い手である本人ではなく操られた者達なんだ。

それもあの様子ではかなりの人数をだ、まさか正面きってスレイレーン在住冒険者の男達全てと事を構えるつもりか?
いや、ルーシェの実力なら相手にもならないかもな。
だがその場合、この国で冒険者として活動することはできないだろうな。
そんな連中に囲まれる可能性も危険も高い現状で!
お前をギルドなんかに連れて行くはずないだろうがッ!
誰が好き好んで好意を抱いている女を危険に晒したいと思うんだ!!」


俺を心配して1度は引き返す判断をしてくれたというのなら、
せめてそれ位汲み取ってくれ

苦味を含んだ声で切々と諭され、両手で頬を包まれ真っ直ぐな視線に晒される。
真剣切実な色をたたえた眼差しに見つめられルシェルディアは。

(え、好意を、抱いて!?え!?)

またしても
熟れきったトマトが如く、真っ赤に顔を染めた。
正面から見つめ返すことも出来ず視線を彷徨わせるルシェルディアに
ちゃんと目を見ろと言い含めるアルフ様。

「俺が言ったこと、ちゃんと理解できたか」

「ぅえ!?は、……はぃ」

「ふ……なれば良し」

動揺しつつもなんとか返事を返すと目を細めて厳しく顰めていた顔を軟化させた。
そして頬から手を離してポン、と頭を軽く叩くと

「ちゃんと部屋にいろよルーシェ。
…夕食前にもう一度顔を出すから」

「あ、むぅ~」

そう言って今度こそ去っていった。


彼の姿が扉の向こうへと完全に消えたのを理解した途端、
身体から力が抜けてその場にヘナヘナとへたり込む。


「~~~ッッ!!ほんと、なんなんでしょうかあの人は!
猫ちゃん姿の時とは大違いですっ、
…あれがお母様が以前言っていた“ナンパ野郎”なのでしょうか…。
あ、あんな恥ずかしい台詞をあんな表情で…ずるいです……っ」

自分の非常識な発言の数々を完全に棚に上げて、
意中の女として心配された事を喜んでいいのか、それとも結局当分の間依頼を受けに行く事が出来ないことを悲しむべきかと室内に敷かれた絨毯の上で転がり回り続けたのだった。
あんな甘い事を言われて、夕食前にどんな顔で顔を合わせればいいのかとも。

※  ※  ※


なお、2人とも昼食を食べ忘れたことをすっかりと忘れていた為、
夕食を待たずに鳴り続ける腹を押さえて涙目のルシェルディアが執務室へと突撃したことで呆気なく顔を合わせたのは余談である。

結局、いくらアルフレッドが積極性を増したところで
その気持ちを受け止める側のルシェルディアが出来かけた甘い雰囲気を力尽くで吹き飛ばしてしまうのは、誰にどうしようもない事だった。



………哀れ、アルフ

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