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その7 街中を素通りして王城に行くのです??(困惑)

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やっと(というほど時間も日にちも経過していないが)王都入りを果たしたルーシェことルシェルディアであったが。
現在黒猫アルフこと猫ちゃん様に半ば強引に先導されて、
活気に溢れる街中をズンズンと突っ切っていた。
美味しそうな匂いを漂わせる屋台、帝国では高価だった魔鉱石を気軽に使った魔道具を売る店々、同じく自国より余程軽やかな布地で作られているだろう衣服を売る服飾店などなど。

そして帝国在住時より、学園を卒業したら絶対に登録しようと考えていた冒険者ギルドまでをも素通りさせられ、街中ではあるが堪らず前方を歩くアルフに待ったをかけるが……。


「あ、あのぉ、ね、猫ちゃん様?
折角王都に来たのでこの機に店巡り……冒険者登録…したいなぁと思ってみたりもしなくもないのです」

「却下」

「……何で?」

「何でか、だと…?」


ピタリと足を止め、チラッと周囲に聞き耳を立てている人物の有無を確認すると、店と店の間、所謂脇道へとトコトコ進んでいった。
慌てて後に続いていくと、程よく進んだところでくるりと身体の向きを変えたアルフがじっとりとルシェルディアを見つめる。


「金はあるのか」

「…え?」

「だから、金はあるのかと聞いている。
店巡りをするにしても、宿を取るにしても金はいる。
食事を取るのにも、だ」

「いや、ですから冒険者登録をして森で解体した動物の毛皮を売ろうと」

「馬鹿者ッッ!!」


突然怒られてぴゃ!!と身体が跳ねる。


「冒険者登録をするにも金がかかるんだよ!!
それに金だけじゃあないぞ?
登録を済ませるには住民証明書或いは……王都へと入る際に普通に発行される“入都証明書”が必要!!
ルーシェお前……王都にどうやって入ったのかもう忘れたのか!?」

「むむ……」


そうだった。
王都の門に並ぶ長蛇の列を目にして面倒になったルシェルディアは、
側面の城壁、それも見張りの立っていない場所を探知魔法で探し当て、
身体強化を足に重点的にかけたのちにアルフを腕に抱いたまま驚異的な跳躍力で城壁を飛び越えてしまったのだ。
であるから当然、本来普通に門から入都した際に手に出来る証明書はなく、また追放された為に国の住民証明書すら持ち合わせてもいない。

一度ひとたびそんな状態で冒険者登録を試みようものなら衛兵を呼ばれ、騎士団へと連行、そして不正入国・入都者として牢に直行。
それがお前の末路だぞ、と厳しい顔(猫だから可愛いだけだが)でアルフに告げられ、
しょんぼりと肩を落とすルシェルディア。


「…仕方ありません。
もう一度外に出てあの列に並ぶしかありませんね」

そう言って元来た道を引き返そうとしたルシェルディアを引き止めたのもまた、説教をした当人(当猫?)であるアルフだった。


「まぁ待て」

「ふぁい?」

「…だからそうしょげるな。(罪悪感半端ない)
だから、なんだその。
他に手がないわけではない」

「え?」

「門に並ばずとも許可書を貰えて、今夜以降暫くの寝床もタダで確保でき、尚且つ金も手に入る。
三拍子揃った、美味しい方法だ」

どうだ?と人を喰った笑み(これも猫の為、可愛いだけ)を浮かべた胡散臭さ満点の黒猫アルフの提案にしかし。
全く疑うそぶりすら見せず、ルシェルディアは飛びついた。

話はまとまったとばかりに歩き出したアルフに続いてその後歩き続け、
たどり着いたのは……


「え、………お城?」

「ああ。

ー…ようこそ、へ」



(……ぇぇえええええええ!!?)

そう告げた黒猫を、ただただ呆然とルシェルディアは見つめ続けた。


※  ※  ※


王城への道すがらー…


「そういえば猫ちゃん様?」

「ん、何だよ?」

「何だか魔窟にいた時と話し方が違いません?
もうちょっとこう……お年を召された人というか、お爺様みたいだったというか?」

「それどっちも同じだろが!!
別に、気にする必要がないことだからお前も気にするな」

そんなものですかぁ~とふむふむ納得しているルシェルディアの様子に、
密かにホッと息を吐くアルフ。

(…くそ……のっけから言い出すタイミングを逃しただけにどう話すべきか。
俺が本当は人間の男で、随分と年上で、
尚且つお前のことが気に入ったから
舐められないようにしていた威厳ある年寄り口調をやめて案内する予定もなかった王城まで連れ込もうとしているだなんて!

……いや、成人してるし?か、可愛いし??
俺今独身だし、恋人いないし!?何だよ問題ない……わけあるかぁぁッッ!!

いつ言う?どういえば良いんだよ!?
こんな若い令嬢口説くなんてしたこと、じゃなくて!
まずは自分がちゃんと人間であることをどういえば…。
…うん。
ロキ(スレイレーン宰相)とダンテ(国王兼実兄)に相談しよう!
まずは早いとこ王城へ!!)


と、見た目全くの平常心で彼女の前を歩きながら、
ヘタレ全開で黒猫の脳が(煩悩一杯に)爆発していたことなど。
揺れる尻尾可愛い♪と上機嫌で後に続く翠色の髪と瞳を持つ愛らしい少女は知る由もない。


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