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番外編
※我慢は身体に毒・中
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※引き続き道鷹視点
R指定話スタート~
===================================================
部下に視線で散々揶揄されながらも別れた後ー…
いつものようにエレベーターに乗り込み、部屋へと鍵を開けて入る。
ドアを開けた瞬間に香るふわりとした花の匂いにほっと息を吐き、知らず肩の力が抜ける。
陸が洗濯で使用しているお気に入りの柔軟剤の香り
一緒に住んでいる今となっては、
スーツはともかく私服からは全てこれと同じ匂いがする。
自分には甘すぎるそれも、陸と同じだと考えれば全く気にならない。
どころか今ではこの匂いがお気に入りですらある。
いつもと同じ部屋に同じ匂い。
だがー……
「?………陸?」
いつもであれば玄関まで小走りでやってきてまで
俺にお帰りと言ってくれるはずの陸の姿がない。
よくよく見れば靴を脱ぐ玄関以外は室内全て薄暗く、
人がいるように感じられない。
眉を顰めて腕時計に目をやるも、時刻はまだ午後6時を過ぎたばかり。
眠りにつくにはまだ早い。
くまなくリビングやキッチン、浴室を素早く移動しながらチェックしつつ、
嫌な予感が募っていく。
元より褒められた生まれでもなければ、裏では表に出せない商売もしている身。
恨みなどいくらでも買っている。
もしや陸の身に何かあったのでは、と。
と、寝室から微かに声が聞こえ、止まる。
足早に、足音を殺しながら寝室のドアに近付きノブに手をかけつつ耳を澄ませる。
何者かが侵入して陸に危害を加えているのならすぐに突入できるようにと。
微かにすすり泣く声が耳に届き、殺気を帯びそうになる自身の気配を必死に押し殺し、ゆっくりと音を立てないようノブを回して僅かにドアを開ける。
そして中の様子を覗き見て
(!?)
犯人を目視次第すぐ踏み込むべく踏み出しかけていた足をビシリと止めた。
寝室内は薄暗いもののベッドサイドランプに淡く照らされ、
ベッドの上には陸1人。ベッドに身体を横たえた陸はー…自慰に耽っていた。
思わず声をかけることも忘れて凝視する。
「っあ、んん……っん!」
シャツは胸元上部まで捲り上げられ、濡れた声を上げる彼の右手が乳首を弄っている。
そして左手は、スウェットをずらして露わになっている下肢へ。
もぞもぞともどかしげに細い身体を悩ましげに揺らしながら、ん、ん、と断続的に声を上げて鳴いている。
(あの陸が、自慰、を)
清らかで、生々しい欲望の類とは無縁そうに見える陸。
その陸の繰り広げる予想だにしなかった秘事に、急速に脳が煮え上がる。
下半身にも同様の熱が孕むのを自覚する余裕すらなく、
その光景に魅入っていると。
「んぁっ……っ……、道鷹、さんっ…ぁ!」
啜り泣きながら手を動かして自分の名を呼ぶ甘い声を耳にした瞬間ー…
ブチっと理性の糸が激しく千切れた音を聞いた気がした。
※ ※ ※
バン!!
勢いに任せて開け放ったドアが思いの外大きく音を立てた。
その音にびくりと身体を跳ねさせた陸が呆然と自分を見上げる様を目視しつつ、ゆっくりと近づく。
近付くにつれてより鮮明になる彼のほんのりと艶やかに上気した白い素肌に、
喉が干上がりゴクリと唾を飲み込む。
「み、道鷹さ?いつ帰ってき……、っ!!」
その嚥下の音に状況を思い出したのか、カッと顔を赤らめてたくし上げていたシャツやスウェットを慌てて引き上げようとする陸。
だが理性の切れた獣を前に、その行動は逆効果だ。
人間、隠されれば暴きたくなるもの
ましてやそれが、長く渇望して止まなかったものであれば尚更に。
ぎしりと音を立ててベッドに乗り上げ、陸に上から覆いかぶさる。
同時に衣服を直していた手を片手で一纏めに持ち、寝そべったままの陸の頭上へ固定し身動きを止めさせる。
今の自分の視線はは酷く飢えきった獣のそれだ。
現に
「あ、あの、道鷹さんお帰りなさぃ。これはそのっ……!」
あっという間に組み敷かれて上から見下ろされる陸が、
慌てつつも羞恥の中に僅かな怯えを孕んだ声を上げたのがそのいい証拠。
だが今更見ないことも止まることも、出来そうにない。
「ただいま陸。
……随分と、楽しんでいたようだな」
にやりと口を歪め、空いた手を直しかけ中途半端にめくり上がったままのシャツの裾から中の肌へと滑り込ませる。
よく上質な肌を称賛する言葉に“吸い付くような肌”と表現するのを知ってはいたが、これは正しくそれだとするする上に向けて撫であげながら興奮の度合いを上げていく。
真っ赤に顔を染めてふぅふぅと短く息を吐いていた陸は
俺の指が胸の突起を掠めると、
「んんッッ!!」
と甘い声を上げた。
堪らず引いた手で完全にシャツをたくし上げて淡い赤みを帯びた乳首に吸い付く。
くちゅくちゅと舐めまわして左右を交互に吸い付くと、面白いくらいに跳ねる身体。
「ゃぁっ……あ、ん!んふっ……みちた……」
「ここが気持ちいいか」
「そ、んな、吸わないで…っぁあ!!」
(…堪らないな…)
すっかりと立ち上がった乳首をギリッと強めに噛むと、
髪を振り乱して一際大きな声を上げる。
身体もビクビクと痙攣し跳ね、
その強い反応にもしやと下腹部に手を伸ばしてみれば…ぐっしょりと濡れていた。
「……乳首を弄られただけで、達ったのか」
「はぁっ、は、ご、ごめんなさぃ……僕…」
「悪いとは言っていない。
寧ろもっと鳴け」
いやらしい方が俺も興奮する
そういうと、不意に陸が泣きそうに顔を歪める。
随分と痛みを含んだその表情に快感以外の色を見つけ、少しばかり理性が戻った。
「……陸?」
「ごめん、なさい。ごめんなさい、こんな、淫乱なっ身体…」
「だから悪いとは言っていない」
「でも、でもっ!僕は、汚れているんです!!
貴方に…道鷹さんに触ってもらえるような綺麗な身体じゃない…
もう、汚れきって」
腕の中でひくっひくっとしゃくり上げながら本格的に泣き出してしまった陸。
その様子に若干眉を顰めつつ、
以前陸を都合よく使っていた連中について調べた時の調査内容を脳裏に思い出す。
兄(実際には何の血縁関係もなかったのだが)に長年痛めつけられながら、
自身で決めた就職先での上司にも、その会社の取引先の担当にも身体の関係を強要されていた事実。
それらも全て、あの兄が手を回し仕組んだことだったのだが当然陸はそれを知らないし、俺が調査してその事実を把握していることも無論知らない。
勿論奴らの処分を済ませた今でも、
陸に触れて玩具にしたことは臓腑が煮えるほど許せないが…
いい歳して処女至上主義でもあるまいし、とさして気にはしていなかった。
だが陸にとっては自分が酷く汚い存在に感じるのだろう。
素直に感じていいのだと、汚くないのだと
どう告げれば分かってくれるかと言いあぐねていると、
その後の陸が発した言葉で不意に負へと傾いていた会話の色が変わった。
「こんなに汚いのに……毎日優しくしてくれるから!
だから怪我が治ってからもなんかずぅっと悶々としちゃってて……。
今日も我慢できなくて道鷹さんの事考えながらえ、エッチなことして。
しかも見つかっちゃいましたし!!
もう……もう……っ」
「っり」
「お願いです、軽蔑しないで!
僕を、僕、を……捨てないでく」
ください、と陸が言い終えるより早く、その細い身体を抱きしめる。
(自分が何を言ったのか、分かってんのかこいつ!!)
部下達からは常日頃非情だ冷酷だと言われている俺を“優しい”などと宣った挙句。
怪我が治ってから悶々としてただと?
“今日も我慢できなくて”だと!?
つまりー…
陸も自分同様に俺に対して欲情していて、日々俺が帰ってくる前に自慰に耽っていたと!
おそらく無意識にした失言。
だが、と俺の中に熱く暖かい熱が満ちていくのを感じた。
過去に面識のある陸を自分が拾ったからと強引に自身のものだと宣言し、
側にいることを強要した自覚はあった。
今は俺に対して恋愛感情を持てずとも
時間をかけて身も心も自分しか見えないようにしてしまえばいいとも。
しかし陸はとっくに……
同時に、陸が自分を卑下し、俺に相応しくないといった発言をした理由もまた
自分にあることをようやく自覚した。
側に置くだけ置いて、気持ちを明確に言葉にしたことがないことに。
「陸……」
少し身を離し、頬に手を当てる。
身を離されたことが不安なのか、すり…とその手に頬擦りする仕草が可愛い。
そんな彼にこちらを見るよう言い、そして告げた。
「陸が好きだ。愛している」
「!!」
「俺は、生まれも育ちも日陰者だったし、まともな部類の人間ではない自覚がある。
お前が何を経験して自分を汚いと卑下しているのか知らんが、それは正直どうでもいいんだ。
俺の側にいろ、離れるな。
黙って俺に愛されていろ。
一生ー……可愛がってやるから」
「な、なんでそこまで僕を」
「10年前はお前に救われ恩を感じたが、所詮は違う世界の住人だと諦めた。
8年前に一目見ただけで自分のものにしたくて、
それでもお前の日常を壊したくなくてその時も諦めた」
ヒュッと喉を鳴らして俺を凝視する陸に殊更優しく笑んでみせ、
「だがこれで3度目だ。
3度も俺は、お前を諦める気はない。
言っただろ、逃さないと。捨てる気など未来永劫ないと誓ってやる。
お前の過去に何があろうと関係ない、だから…
諦めて俺に食われろよ陸。
正直もう、限界だ」
「道鷹さん…っ」
不遜極まりない欲の滲んだ俺の告白に陸は、
うるうると瞳を潤ませて、そして破顔した。
「こんな僕で良ければ…食べてください」
でも口に合わなくてお腹を壊しても知りませんよ?
そう言って照れ笑いを浮かべた陸の艶やかな唇を、噛みつく勢いで貪った。
===================================================
次話、R18確定
R指定話スタート~
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部下に視線で散々揶揄されながらも別れた後ー…
いつものようにエレベーターに乗り込み、部屋へと鍵を開けて入る。
ドアを開けた瞬間に香るふわりとした花の匂いにほっと息を吐き、知らず肩の力が抜ける。
陸が洗濯で使用しているお気に入りの柔軟剤の香り
一緒に住んでいる今となっては、
スーツはともかく私服からは全てこれと同じ匂いがする。
自分には甘すぎるそれも、陸と同じだと考えれば全く気にならない。
どころか今ではこの匂いがお気に入りですらある。
いつもと同じ部屋に同じ匂い。
だがー……
「?………陸?」
いつもであれば玄関まで小走りでやってきてまで
俺にお帰りと言ってくれるはずの陸の姿がない。
よくよく見れば靴を脱ぐ玄関以外は室内全て薄暗く、
人がいるように感じられない。
眉を顰めて腕時計に目をやるも、時刻はまだ午後6時を過ぎたばかり。
眠りにつくにはまだ早い。
くまなくリビングやキッチン、浴室を素早く移動しながらチェックしつつ、
嫌な予感が募っていく。
元より褒められた生まれでもなければ、裏では表に出せない商売もしている身。
恨みなどいくらでも買っている。
もしや陸の身に何かあったのでは、と。
と、寝室から微かに声が聞こえ、止まる。
足早に、足音を殺しながら寝室のドアに近付きノブに手をかけつつ耳を澄ませる。
何者かが侵入して陸に危害を加えているのならすぐに突入できるようにと。
微かにすすり泣く声が耳に届き、殺気を帯びそうになる自身の気配を必死に押し殺し、ゆっくりと音を立てないようノブを回して僅かにドアを開ける。
そして中の様子を覗き見て
(!?)
犯人を目視次第すぐ踏み込むべく踏み出しかけていた足をビシリと止めた。
寝室内は薄暗いもののベッドサイドランプに淡く照らされ、
ベッドの上には陸1人。ベッドに身体を横たえた陸はー…自慰に耽っていた。
思わず声をかけることも忘れて凝視する。
「っあ、んん……っん!」
シャツは胸元上部まで捲り上げられ、濡れた声を上げる彼の右手が乳首を弄っている。
そして左手は、スウェットをずらして露わになっている下肢へ。
もぞもぞともどかしげに細い身体を悩ましげに揺らしながら、ん、ん、と断続的に声を上げて鳴いている。
(あの陸が、自慰、を)
清らかで、生々しい欲望の類とは無縁そうに見える陸。
その陸の繰り広げる予想だにしなかった秘事に、急速に脳が煮え上がる。
下半身にも同様の熱が孕むのを自覚する余裕すらなく、
その光景に魅入っていると。
「んぁっ……っ……、道鷹、さんっ…ぁ!」
啜り泣きながら手を動かして自分の名を呼ぶ甘い声を耳にした瞬間ー…
ブチっと理性の糸が激しく千切れた音を聞いた気がした。
※ ※ ※
バン!!
勢いに任せて開け放ったドアが思いの外大きく音を立てた。
その音にびくりと身体を跳ねさせた陸が呆然と自分を見上げる様を目視しつつ、ゆっくりと近づく。
近付くにつれてより鮮明になる彼のほんのりと艶やかに上気した白い素肌に、
喉が干上がりゴクリと唾を飲み込む。
「み、道鷹さ?いつ帰ってき……、っ!!」
その嚥下の音に状況を思い出したのか、カッと顔を赤らめてたくし上げていたシャツやスウェットを慌てて引き上げようとする陸。
だが理性の切れた獣を前に、その行動は逆効果だ。
人間、隠されれば暴きたくなるもの
ましてやそれが、長く渇望して止まなかったものであれば尚更に。
ぎしりと音を立ててベッドに乗り上げ、陸に上から覆いかぶさる。
同時に衣服を直していた手を片手で一纏めに持ち、寝そべったままの陸の頭上へ固定し身動きを止めさせる。
今の自分の視線はは酷く飢えきった獣のそれだ。
現に
「あ、あの、道鷹さんお帰りなさぃ。これはそのっ……!」
あっという間に組み敷かれて上から見下ろされる陸が、
慌てつつも羞恥の中に僅かな怯えを孕んだ声を上げたのがそのいい証拠。
だが今更見ないことも止まることも、出来そうにない。
「ただいま陸。
……随分と、楽しんでいたようだな」
にやりと口を歪め、空いた手を直しかけ中途半端にめくり上がったままのシャツの裾から中の肌へと滑り込ませる。
よく上質な肌を称賛する言葉に“吸い付くような肌”と表現するのを知ってはいたが、これは正しくそれだとするする上に向けて撫であげながら興奮の度合いを上げていく。
真っ赤に顔を染めてふぅふぅと短く息を吐いていた陸は
俺の指が胸の突起を掠めると、
「んんッッ!!」
と甘い声を上げた。
堪らず引いた手で完全にシャツをたくし上げて淡い赤みを帯びた乳首に吸い付く。
くちゅくちゅと舐めまわして左右を交互に吸い付くと、面白いくらいに跳ねる身体。
「ゃぁっ……あ、ん!んふっ……みちた……」
「ここが気持ちいいか」
「そ、んな、吸わないで…っぁあ!!」
(…堪らないな…)
すっかりと立ち上がった乳首をギリッと強めに噛むと、
髪を振り乱して一際大きな声を上げる。
身体もビクビクと痙攣し跳ね、
その強い反応にもしやと下腹部に手を伸ばしてみれば…ぐっしょりと濡れていた。
「……乳首を弄られただけで、達ったのか」
「はぁっ、は、ご、ごめんなさぃ……僕…」
「悪いとは言っていない。
寧ろもっと鳴け」
いやらしい方が俺も興奮する
そういうと、不意に陸が泣きそうに顔を歪める。
随分と痛みを含んだその表情に快感以外の色を見つけ、少しばかり理性が戻った。
「……陸?」
「ごめん、なさい。ごめんなさい、こんな、淫乱なっ身体…」
「だから悪いとは言っていない」
「でも、でもっ!僕は、汚れているんです!!
貴方に…道鷹さんに触ってもらえるような綺麗な身体じゃない…
もう、汚れきって」
腕の中でひくっひくっとしゃくり上げながら本格的に泣き出してしまった陸。
その様子に若干眉を顰めつつ、
以前陸を都合よく使っていた連中について調べた時の調査内容を脳裏に思い出す。
兄(実際には何の血縁関係もなかったのだが)に長年痛めつけられながら、
自身で決めた就職先での上司にも、その会社の取引先の担当にも身体の関係を強要されていた事実。
それらも全て、あの兄が手を回し仕組んだことだったのだが当然陸はそれを知らないし、俺が調査してその事実を把握していることも無論知らない。
勿論奴らの処分を済ませた今でも、
陸に触れて玩具にしたことは臓腑が煮えるほど許せないが…
いい歳して処女至上主義でもあるまいし、とさして気にはしていなかった。
だが陸にとっては自分が酷く汚い存在に感じるのだろう。
素直に感じていいのだと、汚くないのだと
どう告げれば分かってくれるかと言いあぐねていると、
その後の陸が発した言葉で不意に負へと傾いていた会話の色が変わった。
「こんなに汚いのに……毎日優しくしてくれるから!
だから怪我が治ってからもなんかずぅっと悶々としちゃってて……。
今日も我慢できなくて道鷹さんの事考えながらえ、エッチなことして。
しかも見つかっちゃいましたし!!
もう……もう……っ」
「っり」
「お願いです、軽蔑しないで!
僕を、僕、を……捨てないでく」
ください、と陸が言い終えるより早く、その細い身体を抱きしめる。
(自分が何を言ったのか、分かってんのかこいつ!!)
部下達からは常日頃非情だ冷酷だと言われている俺を“優しい”などと宣った挙句。
怪我が治ってから悶々としてただと?
“今日も我慢できなくて”だと!?
つまりー…
陸も自分同様に俺に対して欲情していて、日々俺が帰ってくる前に自慰に耽っていたと!
おそらく無意識にした失言。
だが、と俺の中に熱く暖かい熱が満ちていくのを感じた。
過去に面識のある陸を自分が拾ったからと強引に自身のものだと宣言し、
側にいることを強要した自覚はあった。
今は俺に対して恋愛感情を持てずとも
時間をかけて身も心も自分しか見えないようにしてしまえばいいとも。
しかし陸はとっくに……
同時に、陸が自分を卑下し、俺に相応しくないといった発言をした理由もまた
自分にあることをようやく自覚した。
側に置くだけ置いて、気持ちを明確に言葉にしたことがないことに。
「陸……」
少し身を離し、頬に手を当てる。
身を離されたことが不安なのか、すり…とその手に頬擦りする仕草が可愛い。
そんな彼にこちらを見るよう言い、そして告げた。
「陸が好きだ。愛している」
「!!」
「俺は、生まれも育ちも日陰者だったし、まともな部類の人間ではない自覚がある。
お前が何を経験して自分を汚いと卑下しているのか知らんが、それは正直どうでもいいんだ。
俺の側にいろ、離れるな。
黙って俺に愛されていろ。
一生ー……可愛がってやるから」
「な、なんでそこまで僕を」
「10年前はお前に救われ恩を感じたが、所詮は違う世界の住人だと諦めた。
8年前に一目見ただけで自分のものにしたくて、
それでもお前の日常を壊したくなくてその時も諦めた」
ヒュッと喉を鳴らして俺を凝視する陸に殊更優しく笑んでみせ、
「だがこれで3度目だ。
3度も俺は、お前を諦める気はない。
言っただろ、逃さないと。捨てる気など未来永劫ないと誓ってやる。
お前の過去に何があろうと関係ない、だから…
諦めて俺に食われろよ陸。
正直もう、限界だ」
「道鷹さん…っ」
不遜極まりない欲の滲んだ俺の告白に陸は、
うるうると瞳を潤ませて、そして破顔した。
「こんな僕で良ければ…食べてください」
でも口に合わなくてお腹を壊しても知りませんよ?
そう言って照れ笑いを浮かべた陸の艶やかな唇を、噛みつく勢いで貪った。
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