華から生まれ落ちた少年は獅子の温もりに溺れる

帆田 久

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出会い〜ツガイ編

22話

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ジレウスにある日、
僕には色々と特別なスキルや称号がついていることを知らされた。
実は例の検査用紙にその名称が記載されていたことを知って驚いた僕だったが、
正直それを知らされたところでそれがどういったものなのか、
どうやって行使するのか全く分からず、戸惑うことしか出来ない。

それらを知るにはどうしたら…とジレウスを仰ぎ見ると、
心の内を覗くように念じるのだと答えが返ってきたので実行してみた。

すると、ヴヴン……と機械が起動するような音が頭の中に鳴り響き、ビクッと肩を跳ねさせる。
恐る恐る目を開けると、目前に半透明のパネルのようなものが宙に浮いており、ジレウスが言っていたスキルや称号といった文字とその名称が書かれていた。

(ふぇ~、ファンタジーっていうんだっけこういうの…!!)

前世ーーまだ学校に通えていた中学1年の頃に同級生が楽しげに語り合っていたゲームに出てくるものにかなり類似したそれを興味津々に眺める。

彼に名称がちゃんと載っているかと問われて頷き、
詳細はわかるかと問われて首を傾げる。
どうやらジレウスの話ではこの宙に浮いてるパネルは本人にしか見えず、
詳細を知りたい場合は改めて知りたいと念じる、らしい。

(えと、パネルさん!詳細を教えて!!)

強く念じて明らかになった、その詳細。


………………………………………………………………………………

癒しの手→魔力を消費して病魔に侵された動植物を
     手で触れることにより快癒させる

甘露→体液を甘く変化させる(常時発動)
   した人間には生命力や魔力を回復・増大効果あり

自己犠牲→自身の生命力を代償にして
     他者の身体・精神的ダメージを肩代わりする


称号:無念なる転生人→不幸な死を迎えた魂に与えられる
          効果:前世と異なる種族への転生
            肉体年齢は前世の死亡時に準じる

称号:慈母神の加護→慈母神より加護を賜りし命に与えられる
         身体に害を与えるあらゆる病魔の無効化

………………………………………………………………………………



………。

……………。

(………なんだかよくわからないけど凄いことが書いてある、気がする)

元々名称を見た時からなんか凄そう、とは思っていたけどこれは。

取り敢えず知り得た情報をジレウスに読み上げる。
ジレウスはーー…、かなり眉を顰めていた。

口元を手で覆って黙ってしまった彼は、
どうやら今僕が読み上げた説明について思考していることが理解できる、が。
険しさ満点な表情の下、一人放置された僕は、不安になる。

「よくわからないけど、あんまり……良くない、の?」

聞かずともわかり切っていることながらつい聞いてしまうのは、見放される恐怖からだろうか。
(何だよぉ…甘露?自己犠牲?
体液が甘くなるとか摂取した人間に効果を齎らすとか!
自分の生命力を代償に?他人を回復、じゃなくてダメージ肩代わり!?
び、病気にならないのは良いことだけど神様の加護??
……意味わかんない。
………。
怖い怖い怖いッッ!ふ、不安しかない!!)

表情を曇らせたまま黙ってしまったジレウスの腹あたりの服を握りしめて必死に見上げる。
裾を握られているのに全く気付く素振りすら見せずに長考するジレウスに、
思わず瞳に涙が込み上げてくる。
しかしここで泣くのはあまりに情けなくまた狡い。
優しい彼のこと、きっと自分が泣けば心配して優しい言葉で宥めてくれるのに違いない。
そしてその慰めの言葉の中には自身の能力が危険ではないという、
真実とはかけ離れた言葉が含まれるであろうことも容易く予想できた。

(ホント僕って、嫌な子供、だなぁ)

卑屈なまでの自嘲を含んだ感想と同時、
泣くなと必死で目に力を入れて堪え、上を見上げ続けていれば。

ぽふっ

頭に温かくて大きな手がそっと添えられた。
そしてしばらく優しく髪をかき混ぜると、

「コーキ」


徐に膝をついたジレウスが、ぎゅう……と僕を抱きしめた!
はぁ、と小さくないため息をついたことに一瞬びくりと肩を竦ませるが、
直後ゆっくりと背中を撫でられて落ち着きを取り戻す。

「コーキ、悪かった。
……何も知らず、理解もできていないお前が不安になるのは当たり前だというのに、な。

確かに、正直言ってお前の能力は規格外だ。
種族からして希少だし、スキルにしたって貴族や国の上層部なんかに知れた日には拐われいいように使われて一生を終える危険性があるほどだ、そこを今更誤魔化したりしない」

「そんなに危険…なの?」

「危険、といっても攻撃的な意味じゃあないぞ?
そうだなぁ…。
コーキは、この国に治癒のスキル持ちがどれほどいるかわかるか?」

「え、んー…分かんない」

うんうんと唸る僕の背をもう一度ゆっくりと一撫でしてジレウスが苦笑する。


「答えはな、、だ」
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