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出会い〜ツガイ編
閑話 ミルド・マイスターク
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~優秀なるギルドマスター補佐、ミルド・マイスタークの不満~
(Side:ミルド)
ーーはっきり言おう。
僕、ミルド・マイスタークは優秀だ。
成人したてでギルドの門を叩き、事務方として敬愛する我らがギルドマスターに即効見出されて一足飛びに補佐へと就任。
ギルドマスターが旅に出て音信不通になってしまったのは青天の霹靂だったが、
優秀なる僕はすぐにトップランク冒険者の中から代理を捕獲した。
毎日ギルドへ入る依頼や達成状況、
王国や貴族達からの依頼や書状管理、
重要書類の選別にギルマス代理への書類振り分け。
業務は多岐に渡るが、それらをそつなくこなしてきたのだ!
しかしながらこの代理がとっても扱いにくい!!
元々冒険者であり肉体派の獅子獣人でもあるジレウス・ヴォーグは、
デスクワークを非常に面倒がる。
すぐに休憩を所望し、又は散歩と称した逃亡も日常茶飯事!
そのくせ元貴族の家柄もあってか仕上げた書類は完璧で、
各冒険者らからも兄貴!と慕われているのが厄介極まる。
(まぁその人望と強面が代理を押し付けようとした理由なんですけどね!)
優秀なる代理を選んだ自分を褒めてやりたいが、
なまじ優秀なだけに本気で奴の尻を蹴飛ばすことができない。
(こぉんな可愛らしく有能な部下に補佐してもらえるのの何が不満なのさ!!)
※ミルド補佐は自分の小姑じみた喧しさが原因だとは一切気付いていない。
それでも。
(ふふん!可愛らしく愛嬌も人気もある僕と違って
人付き合いに苦労している所は同情しますけどねッッ!!)
ギルドにやってくる依頼人の女子供、はたまた新米冒険者達に、
その強面でもって毎度泣かれ、怯えられ、逃亡されてショックを受けるのを見知り、大いに溜飲を下げていたのだが。
数日前。
いつもの如く散歩と称して姿を消した彼が、
とある少年を連れ帰ってきたことで、僕の中に大いなる衝撃が走ったのだーー
※ ※ ※
彼が連れ帰ってきた少年の名前はコーキ。
大変珍しい、美しい蒼色の髪
滑らかなミルク色の肌
幼くも端正な容姿は非常に庇護欲を刺激し、
またぞろ一度もお目にかかったことのない虹色の光彩を瞳に宿した、少年だ。
正直本気で代理がやらかしたと思った。
すぐに激しく否定されて鉄拳制裁を喰らったが。……解せん。
辿々しい口調で必死にジレウス代理の足に縋り付く彼の愛くるしさに、
さしもの僕も可愛いという一点に於いて敗北を宣言せざるを得なかった。
だって敬愛するギルマス曰く
“可愛い”はこの世の正義!!なのだから。
なお、彼がジレウス代理の足元へと駆けて行った時にふわりとマントが浮き上がり、彼がマントの下に何も身につけていないことが判明→驚愕!!
直前に鉄拳制裁を喰らっていなければ
何をおしても声を大にして代理を変態と罵っていたことだろう。
感謝するがいいジレウス・ヴォーグ!!
=== === ===
翌る日、彼の種族検査が行われた。
針に怯える様が愛くるしさ満点且つ哀れで、
慰めようとした僕は少々動揺してどもってしまった。
………物凄い怯えられた。またもや解せん。
僕とは対照的にジレウス代理に信頼してます!と気の抜けた笑みを浮かべる少年。
そしてデレデレと顔をだらしなく緩ませるジレウス代理。
キィィーーッッ!なんでそんな強面上司の方に懐くの!?
とにやけた上司に飛び蹴りをかましたくなった僕の心境、
誰か理解して?
そして明らかになった彼の種族名。
(はぁ!?し、し、神華族ぅぅぅ!!?で、伝説のあのっ!?)
度肝抜かれました。
ついでに僕の自慢のうさ耳から白毛が2、3本抜けて宙に舞った気がする。
こんな情報、興奮しない方がおかしい!
詰め寄った僕にまたもや鉄拳が…僕のデリケートな頭は無事だろうか?
だがまぁ気を取り直して彼のスキルとかを拝見!と
復活した時にはすでに二人の姿はなく。
待ってぇ~~と思わず懇願の叫びを一人虚しく上げてしまった。
悲嘆に暮れた僕、しかしなんとしても確認してやる!と
勢い込んで階下の受付員に話を聞くと…愕然。
どうやらジレウス代理は、種族名だけを職員に見せたのち、速攻で検査結果の書かれた用紙を火魔法で燃やしたらしい。
それもその場で。
(おいぃぃぃぃ!!なに?なにしてくれちゃってんの代理!?
折角の希少種族の希少スキルを知るチャンスがパァーじゃねぇですか!!
そりゃあ確かに種族名以外は報告義務もありませんけど!?
燃やすとか!!検査用紙って高いの知ってます!!?)
僕は踏んだね。
正しく地団駄ってやつをその場で!
一頻り踏んだら少し気も晴れたので、すんと冷静になる。
その場で破棄して秘匿しなければならないほどのスキルだった可能性に至ったからでもある。
(でもその場合、すぐにでもギルドで要保護の申請をしないと。
ふふん、愛らしい少年に忍び寄るであろう危険を事前に回避することもちゃんと頭に入れておいてほしいものですよ代理!!)
僕が優秀で本当に良かったですね!
担当した受付員に追加登録時に使用した用紙を要求する。
さてさてこの書類に要保護と再追加し………、は?
用紙最上部→名前:コーキ・ヴォーグ
ーー……犯罪やでギルマス代理
言語野崩壊後、
僕のうさ耳から10本近くまとめて毛が抜けた、気がした。
結論。
自分で認定した上司が幼児趣味の変態だったことに禿げしく不満が爆発している件についてーー
……誰かうさ耳に優しい助言、下さい。
==============================================
※以上、優秀なのか些か不安のある、
耳毛が禿げそうな補佐・ミルド君の回でした(笑)
(Side:ミルド)
ーーはっきり言おう。
僕、ミルド・マイスタークは優秀だ。
成人したてでギルドの門を叩き、事務方として敬愛する我らがギルドマスターに即効見出されて一足飛びに補佐へと就任。
ギルドマスターが旅に出て音信不通になってしまったのは青天の霹靂だったが、
優秀なる僕はすぐにトップランク冒険者の中から代理を捕獲した。
毎日ギルドへ入る依頼や達成状況、
王国や貴族達からの依頼や書状管理、
重要書類の選別にギルマス代理への書類振り分け。
業務は多岐に渡るが、それらをそつなくこなしてきたのだ!
しかしながらこの代理がとっても扱いにくい!!
元々冒険者であり肉体派の獅子獣人でもあるジレウス・ヴォーグは、
デスクワークを非常に面倒がる。
すぐに休憩を所望し、又は散歩と称した逃亡も日常茶飯事!
そのくせ元貴族の家柄もあってか仕上げた書類は完璧で、
各冒険者らからも兄貴!と慕われているのが厄介極まる。
(まぁその人望と強面が代理を押し付けようとした理由なんですけどね!)
優秀なる代理を選んだ自分を褒めてやりたいが、
なまじ優秀なだけに本気で奴の尻を蹴飛ばすことができない。
(こぉんな可愛らしく有能な部下に補佐してもらえるのの何が不満なのさ!!)
※ミルド補佐は自分の小姑じみた喧しさが原因だとは一切気付いていない。
それでも。
(ふふん!可愛らしく愛嬌も人気もある僕と違って
人付き合いに苦労している所は同情しますけどねッッ!!)
ギルドにやってくる依頼人の女子供、はたまた新米冒険者達に、
その強面でもって毎度泣かれ、怯えられ、逃亡されてショックを受けるのを見知り、大いに溜飲を下げていたのだが。
数日前。
いつもの如く散歩と称して姿を消した彼が、
とある少年を連れ帰ってきたことで、僕の中に大いなる衝撃が走ったのだーー
※ ※ ※
彼が連れ帰ってきた少年の名前はコーキ。
大変珍しい、美しい蒼色の髪
滑らかなミルク色の肌
幼くも端正な容姿は非常に庇護欲を刺激し、
またぞろ一度もお目にかかったことのない虹色の光彩を瞳に宿した、少年だ。
正直本気で代理がやらかしたと思った。
すぐに激しく否定されて鉄拳制裁を喰らったが。……解せん。
辿々しい口調で必死にジレウス代理の足に縋り付く彼の愛くるしさに、
さしもの僕も可愛いという一点に於いて敗北を宣言せざるを得なかった。
だって敬愛するギルマス曰く
“可愛い”はこの世の正義!!なのだから。
なお、彼がジレウス代理の足元へと駆けて行った時にふわりとマントが浮き上がり、彼がマントの下に何も身につけていないことが判明→驚愕!!
直前に鉄拳制裁を喰らっていなければ
何をおしても声を大にして代理を変態と罵っていたことだろう。
感謝するがいいジレウス・ヴォーグ!!
=== === ===
翌る日、彼の種族検査が行われた。
針に怯える様が愛くるしさ満点且つ哀れで、
慰めようとした僕は少々動揺してどもってしまった。
………物凄い怯えられた。またもや解せん。
僕とは対照的にジレウス代理に信頼してます!と気の抜けた笑みを浮かべる少年。
そしてデレデレと顔をだらしなく緩ませるジレウス代理。
キィィーーッッ!なんでそんな強面上司の方に懐くの!?
とにやけた上司に飛び蹴りをかましたくなった僕の心境、
誰か理解して?
そして明らかになった彼の種族名。
(はぁ!?し、し、神華族ぅぅぅ!!?で、伝説のあのっ!?)
度肝抜かれました。
ついでに僕の自慢のうさ耳から白毛が2、3本抜けて宙に舞った気がする。
こんな情報、興奮しない方がおかしい!
詰め寄った僕にまたもや鉄拳が…僕のデリケートな頭は無事だろうか?
だがまぁ気を取り直して彼のスキルとかを拝見!と
復活した時にはすでに二人の姿はなく。
待ってぇ~~と思わず懇願の叫びを一人虚しく上げてしまった。
悲嘆に暮れた僕、しかしなんとしても確認してやる!と
勢い込んで階下の受付員に話を聞くと…愕然。
どうやらジレウス代理は、種族名だけを職員に見せたのち、速攻で検査結果の書かれた用紙を火魔法で燃やしたらしい。
それもその場で。
(おいぃぃぃぃ!!なに?なにしてくれちゃってんの代理!?
折角の希少種族の希少スキルを知るチャンスがパァーじゃねぇですか!!
そりゃあ確かに種族名以外は報告義務もありませんけど!?
燃やすとか!!検査用紙って高いの知ってます!!?)
僕は踏んだね。
正しく地団駄ってやつをその場で!
一頻り踏んだら少し気も晴れたので、すんと冷静になる。
その場で破棄して秘匿しなければならないほどのスキルだった可能性に至ったからでもある。
(でもその場合、すぐにでもギルドで要保護の申請をしないと。
ふふん、愛らしい少年に忍び寄るであろう危険を事前に回避することもちゃんと頭に入れておいてほしいものですよ代理!!)
僕が優秀で本当に良かったですね!
担当した受付員に追加登録時に使用した用紙を要求する。
さてさてこの書類に要保護と再追加し………、は?
用紙最上部→名前:コーキ・ヴォーグ
ーー……犯罪やでギルマス代理
言語野崩壊後、
僕のうさ耳から10本近くまとめて毛が抜けた、気がした。
結論。
自分で認定した上司が幼児趣味の変態だったことに禿げしく不満が爆発している件についてーー
……誰かうさ耳に優しい助言、下さい。
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※以上、優秀なのか些か不安のある、
耳毛が禿げそうな補佐・ミルド君の回でした(笑)
応援ありがとうございます!
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