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出会い〜ツガイ編
18話
しおりを挟む追加登録処理を即効終わらせたジレウスは、
僕を抱えて自分のとっておきだというお店へ僕を連れて行ってくれた。
所謂アットホーム感漂う小さな一軒家。
入り口に立てられた店の看板が妙に手作り感満載なところもなんとなく落ち着く。
ドアを潜る際にチリン!と涼やかな音を立てたのは
ドア上部にかけられたあの小さなベルだろうか?
「いらっしゃーい!!」
元気のいい女の子の声が狭い店内に響き渡る。
それほど多くない、しかし皆静かで上品に食事を楽しんでいるのがわかる客達。
鼻腔を擽る美味しそうな料理の匂い。
「あれ?っお母さーん!」
てててと客を席に案内しに来たらしいポニーテール少女が、
ジレウスの顔を見てびくりと身体を跳ねさせた。
声を張り上げると同時に厨房へと飛んで帰ってしまった彼女と入れ替わりにやってきた優しげな女性が、ジレウスを見、少女の引っ込んだ先を見、あらあらと頬に手を当てて苦笑を浮かべる。
「ヴォーグ様だったのね、お久しぶり。
全く、あの子もそろそろ慣れてもいい頃なのにごめんなさいねぇ」
「いや、別に構わんさ。
俺の顔が怖いのは今に始まったことでもなし」
「そう言ってもらえるのはありがたいけれど…将来ここを継ぐって聞かない子だから。
客商売でお客様を怖がっているようじゃ、まだまだあの子には任せられないわね!」
「そう言ってやるなカネル夫人。いずれは一皮剥けるさ!
ー…んで、悪いが今日は連れがいるし腹も減っている。
“今日のオススメ”二人分よろしく」
「あらこれは失礼?お酒は?」
「今日は酒はいい」
「承りました。…ふふっ、随分と可愛らしいお連れ様だこと。
あ、もしかして何処かから拐っ」
「って来てないし余計な世話だ!
…ったく。夫人、コーキだ、俺が保護してこれから一緒に住む。
ちょくちょく顔を出すから覚えてやっててくれ」
「こんばんは」
「あらご丁寧に、こんばんは!
コーキ君というのねぇ…本当に可愛らしいわ~!
このお方ちょっと強面さんだけど遠慮なく甘えてあげてね?
きっとその方が喜ぶから」
「っ夫人!!」
「あらあらはいはい。今ご用意して来ますからお好きな席へどうぞ?」
ごゆっくり~~と告げてあっさり去っていった妙齢の夫人の後ろ姿に、
少しばかり気まずそうな顔をしたジレウスが、
まぁ座るかと奥のテーブル席の椅子へ僕を座らせた。
(余程馴染みのお店なのかな…ジレウス、子供みたい)
なんだか夫人に軽くあしらわれるジレウス、の構図に、
ムズリと口角が緩む。
自らも椅子に身を落ち着かせて他愛のない話で場を明るくしてくれる、ジレウス。
ややあっておっかなびっくり、
でも確かな足取りで料理をテーブルに運んでくれる料理屋の娘さん。
他の客らから流れるように注文を取りつつ、
そんな自分の娘の働きぶりを温かく見守る夫人。
以前の人生で自分が求めて止まなかった全てが、ここにある気がした。
働く彼女らを含め、ジレウスに似て温かな雰囲気が漂うこの店を、
料理を食べる前から既に僕は気に入ってしまっていた。
初めてのジレウスとの外食は、
料理の美味しさと相まって、僕にとって大変思い出深いものとなった。
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