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7 屑を通り越してしまった男

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※胸糞な会話内容が出てきます。
不快な気分になりたくない方、そもそもNGな方は回避してください。

= = =




「悪い、待たせたか」

「いえいえ全然?」

「おうおう待ったぜおせぇよ樋口」

「お前には聞いてない」


「……っくっ、ふふ」

視聴覚室へとつき、ようやく涙が引いた頃に樋口先輩が合流した。
どうやら樋口先輩も彼らと同じく俺を心配してくれているようだと嬉しく感じつつも、
なんだかデートの待ち合わせ挨拶のいい例と悪い例の漫才をされてるようなやりとりに、
ついつい堪え切れずに笑ってしまった。

「「「………笑った」」」

「っえ、あ、ご、ごめんなさいつい。
なんだかとても面白…っ、仲が良さそうで微笑ましくて」

「「「………(可愛い))」」」

「…ほんと、ごめんなさい。その、気に障ったのなら」

「ああ、いや問題ない」

「大丈夫、全然気にしてませんよ」

「寧ろ泣いてるより笑ってろ」

「…は、はい」

樋口先輩と佐伯先輩は優しい返しだったが、鬼塚先輩のニヤリとした野性味あふれる笑いと一緒に先程ビービーみっともなく泣いてたことを揶揄されかぁぁぁ…と頬に血が昇る。

「「「………(えっろ)」」」

「………もう勘弁してください…」

そんな、空気が若干グダグダと弛緩したところで、
俺は週末の件をぽつぽつと話し始めた。


===== ===== =====
Side:鬼塚、佐伯、樋口

聖が語ったことはこんな内容だった。


ー金曜日、いつものように夕方からのバイトに入り、22時に終え、帰宅をする際。
バイト先のカラオケ店内を通過していた時、部屋へと入室したばかりの団体が顔を見せた。
ドリンクバーにて飲み物を注ぎにきたのが奥山と、彼にくっついた派手な女だった。

親しげに奥山の腕に胸を押し付けている様子から、聖はその女を奥山の彼女と推察。
長年好意を抱いていた奥山に彼女がいたことにショックを受けて物陰から動けずにいると、
彼が出てきた室内から奥山の連れらしいガラの悪い連中が姿を見せた。

そしてその際、こんなやりとりがあったらしい。
連れの連中のガラがあまりにも悪かったので、万が一奥山と彼女が脅されているかもと必死に身体を隠してスマホのボイスレコーダーをオンにした結果、録れてしまったのがー




『蓮ちゃん相変わらず入れ食いだなぁ!
こっちにも少しくれよ』

『あー…ね、いいのいたらねぇ?
あれ?でもタツキさんって男専門じゃなかった?』

『だぁから蓮ちゃんにお願いしてんだろー?
男子校だし!!ギャハハ!
そうそう、例のホラ?彼、蓮ちゃんのワンコ君!
食いてぇなぁ…新しい写真、ねぇの?また言い値で買うぜ』

『ズリネタっすか。ほんと綺麗系男子好きっすね!
まぁあるっちゃありますけど。
んー…5でどう?』

『えー、前回より上がってんじゃん!
まぁワンコ君のなら払うけど。
私物ならもっと払うよ、下着とか!』

『うーわ、ドン引きっすわ。
あんなんのどこにおっ勃つ要素があるかわっかんねぇです。
でも私物調達はリスク爆上げなんで
んじゃ、はい、写真』

『はい5。ぅおぉ!今回もすげぇアングル!
どうやって撮ってんのよ、もしかして彼もノリノリで撮られてるの!?
ヤッベ高まる』

『それは企業秘密でーす。
でも案外そっちの気、あるんじゃない?たかだか昔隣人でよく遊んでやったってだけで
わんわん高校の部活まで追っかけてくんだから。
キモいわー』

『でも俺っちから金巻き上げてんじゃん?
半グレの俺らから小遣いせしめるなんて蓮ちゃんくらいなもんよ』

『毎度でーす♪だってコイツ金かかんだもん』

『ヤダもー!いいじゃん蓮お金持ちだしぃ』

『はーこれだよ。まぁでもあいつも俺の糧になってくれてるんだから
キモいけど憎めね~な。
気が向いた時に構ってやればニッコニコだし、はは!チョロ』

『なぁ蓮ちゃん……もう俺っちたまんねぇよ。
ワンコ君、遊びに連れ出してさ?こっちにくんね?
大丈夫、ちゃんと返すからさ!』

『…タツキさん、じゃん。
あと半年で卒業だし、警察沙汰は勘弁っすよ?』

『大丈夫だって!だってこのワンコ君、…俺の好みドンピシャ。
大事にぜ…?』

『気が向いたらな…』

『あ、写真は追加でよろしく!
なら尚よし!セットなら10出すし本体連れてきてくれたら80、
いや100出すかも』

『筋金入りだな!しかし100かぁ…いいね、考えとく』

『本気でよろ~~!ギャハハ……』


…………………
……………



「「「………(ぶっ殺す、クズ野郎ども)………」」」

前半の金と写真のやり取りは聖が解説してくれ、5やら10やらが金の単位であること。
その際半グレに渡された写真がたまたま廊下の姿見に反射して、
写っていたのが半裸の自分であったことをぼそぼそと語ってくれた。

盗撮写真を反社会連中に売り捌いているのも悪質だったが、
最悪だったのはその後だった。後半の会話については、
どうやら聖自身前半の写真のやり取りでショックで頭が真っ白になってしまっていたらしく、
初めてしっかりと聴いたらしい。
険しい顔で録音を聴き終えた俺達は、
蒼を通り越して真っ白に血の気をなくして震える聖に気付き、慌てた。

「…ここまで、酷かったんです、ね」

それでも気丈にそう告げる聖に愛しさを募らせつつも。
奥山が真性のクズであり、
もはや学生などではなく犯罪者であることに心底一同は吐き気を覚えた。
聖の機転で得たこの証拠音声ではあるが、同時にその際聖がその場にいることを知られなくて良かったと心底安堵した。
会話からして、もしその場にいることがばれていたら。
確実に奥山によってその場で半グレに売り払われ、
聖はここにはいなかったのだから。

「これはもう、聖だけで抱えていていいことじゃない」

「ああ…クソ、胸糞悪ぃ」

「……今すぐ。
今すぐ、興津先生のところにいって下さい、樋口。
私は父と連絡後、に相談します」

絶対にあのクズを逃すなと視線で念を押す佐伯に対して恐ろしく無表情の樋口が頷き、素早く退室していった。

「……樋口、先輩?
佐伯先輩もどうして、え、電話って…」

「ほら聖ぃ?
大丈夫、お前はそこでのほほんしてりゃあいい。
んで、今日は俺ん家直行、暫くお泊まりだ」

「え!?お、鬼塚先輩の、家??」

「……こんな会話聞いちまったらなぁ。
危なくてアパートになんぞ帰せん」

「それもそうですね、頼みますよ鬼塚。
でももし手を出したら……(ボソ)」

「へいへい了解了解!
てわけで決定な。
佐伯が話をつけ終わり次第、俺は聖連れて移動するわ。
…。…~あ、親父?今日から可愛がってる後輩連れてくわ。
そんで暫く泊めるから……ぁあ!?そんなんじゃねぇよ!……まだ(ボソ)
あーはいはい、てなわけで、ん。
迎え宜しく!」


「い、一体何がどうなって……?」


佐伯が電話する傍ら、で鬼塚も家に電話。
目まぐるしく変わる流れに目を回す聖は大変可愛らしく、
それぞれが殺伐としたやりとりを電話でしているのとは裏腹に、
ほわんと癒されて目尻を下げる某武闘派主将が主に2人ほど量産されたのだった。

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みんなの感想(2件)

Madame gray-01
2023.01.17 Madame gray-01

うわぁ…

クズっぷりが…

更新楽しみにしてます

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2021.12.26 ユーザー名の登録がありません

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