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第1章
第7話 楼主の閉楼宣言
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※久々の更新っす!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雫がデレた!と意味不明の声を上げてバシバシと畳を叩いて悶える銀髪の胡散臭い優男に、そこはかとなく羞恥心を刺激されて顔を赤らめる雫。
同時にじとっと目を据わらせて紫円を睨んでいると、
向かい側に座った部屋の主、鹿火がああ、やめだやめ!!と折角整えられた髪をガシガシとかき乱しながらカァン!と灰を落とした煙管を乱雑に帯へと突っ込む。
「これ以上ここでしけた話ばっかりしてても仕方がねぇ…。
おい紫円、雫!!」
「なんでしょう?」
「…はい?」
すっくと立ち上がり再び天狗下駄を履いた楼主は、
「今日は店仕舞いだ。
そんでもってー…
酒だ、女だ、宴の続きだ!!」
ニヤリと口角を上げて告げたのだった。
…………………………………………………………………………………
ーその後はもう、てんやわんやの大騒ぎ。
なんといったって赤煙国一忙しく、値も張り、客足の途切れない楼閣が、すでに営業を開始しているにも関わらず急に本日の営業を中止、閉楼すると達しが出たのだから。
当然、下階では大騒ぎ、ただでさえ太夫達のお出ましが遅く、夜はこれから!!と意気込んでいた客らは激しく抗議を始めた。
既に部屋入りをしている客達からも抗議の嵐が絶え間なくあがり、混乱の極致といった状況。
楼の働き手や女達も客を宥めようと必死で、中には居座ろうと二階まで上がってこようとする強引な客もいて、腕っぷしの強い者達が脅しを利かせる事態にまで発展しつつあった。
やれ金返せだの、やれ詫びに今までここで遊んだ金をタダにしろだの。
ここまで騒ぎが大きくなってしまうと、街の治安維持部隊でもある“赤狼”の見回りが来てしまうし、本当に来てしまえばややこしいことこの上ない。
帳場へと詰めかける客、暴動を起こす寸前の客らをなんとか押し戻す帳場衆、戸惑いを隠せずオロオロと視線を彷徨わせる華達。
混沌の極みと化そうとしていたその場は、
「皆の衆、粛に!!」
階上より響いた一声で静まり返った。
『おい、あれ』
『楼主だ!!』
『鹿火様じゃね?』
階上で声を張り上げ喧騒を鎮めた楼閣・火車の楼主、鹿火の登場に、一瞬黙った客らが騒つきだす。
その特徴的な幼い容姿、天狗下駄、不遜な態度、間違いなく本人だと口々に囁く中、それに構うことなく楼主の言葉は続く。
「まずは今宵も足繁く当楼閣へ足を運ばれた方々には感謝と共に謝罪しよう。
当楼閣・火車は今宵今、この時より臨時休業と相成った」
「そりゃああんまりだぜ楼主!!」
「こちとらずぅっと太夫達が来るのを待っててやっとお目見えしたかと思えば閉楼!?
ふざけんなッッ!!」
「そうだそうだ!!俺だってお楽しみの真っ最中に部屋から追い出されたんだ!!
納得できる理由があるんだろぉなぁ!!」
やいのやいのと再び抗議し始めた客の男達をゆっくりと眺めると、
楼主はすうぅ…と深く息を吸い込んだ。
そして
「喧しいッッ!!大の男が雁首揃えて女々しく囀ってんじゃねぇ!!」
「「「「「!!!!?」」」」」
あの小さな形のどこからそんな声が?というほどの鋭い恫喝が辺りに反響し、抗議していた者達は一同皆言葉を失った。
中にはその恫喝に込められた得体の知れぬ覇気に当てられて尻餅をつく者も。
じろぉ~っと階下を一通り睨み付けると、再度口を開く。
「今日、赤霧山中にて私の楼の者が命を救われた。
救った恩人に恩を返す為、本日はこの楼閣を貸し切りとするとこの私が決めたんだ。
この楼閣は私の城。
私の決めたことはここでは絶対だ、という訳で紳士なお客様方には悪いが後日出直してくれな」
「そ、そうはいっても……!」
「なぁに。誰もタダとはいっておらん。
今日のお代は結構、買った時札代は払い戻し。
加えて」
芯も凍る恫喝にも負けず尚も抗議を募ろうとした客の呟きを手で制すると、懐に手を入れ一枚の木札を取り出してニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。
そうしてそれを階下に一頻り見せびらかすと、告げる。
「“華札”一枚。それも上限無しだ」
「「「「「!!!!!」」」」」
ゴクリ×(多)
「今日のところはといち早く身を引く決断をしてくれた話の分かる紳士なお客様先着十名に上限無し。
それ以外にも、上限ありだが一晩有効の華札を一枚ずつ!
これで、どうだい?」
しー……ん
静寂が、楼内を支配した。
人の悪い笑みを更に深めた楼主は、残り9枚も懐から取り出して階下の帳場衆の一人に放る。
そいつがあわあわと慌ててバラバラと落ちてくるそれを全て受け止めたのを見届けると、
「もう一度言う、上限無しは十名のみ。
ー……早い者勝ちだぞ?」
そう言い放ち、カラコロと下駄音を鳴らしながら去っていく。
やがてその音が聞こえなくなった、その瞬間。
『『『『『ぅぉおおおおおおおおおおッッ!!!!!』』』』』
狂気を孕む歓喜の声が爆発し、客達は帳場へと殺到した。
……………………………………………………………………………………………
※やっと復旧した執筆作業!!
意図した訳ではないものの、有言不実行が続いてしまい読者様方には申し訳ない限りっす…。
こちらの『創煙師』は基本『出涸らし』の方が完結するまでは不定期更新となってしまいますが、今日はもう1話公開します!
首を長~~くして待っていてくださった読者様方も、たまたま目について閲覧して下さった方々も。
この休業を余儀なくされている中、少しでも気晴らしができればと思う作者なのです!!
お楽しみに~♪
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雫がデレた!と意味不明の声を上げてバシバシと畳を叩いて悶える銀髪の胡散臭い優男に、そこはかとなく羞恥心を刺激されて顔を赤らめる雫。
同時にじとっと目を据わらせて紫円を睨んでいると、
向かい側に座った部屋の主、鹿火がああ、やめだやめ!!と折角整えられた髪をガシガシとかき乱しながらカァン!と灰を落とした煙管を乱雑に帯へと突っ込む。
「これ以上ここでしけた話ばっかりしてても仕方がねぇ…。
おい紫円、雫!!」
「なんでしょう?」
「…はい?」
すっくと立ち上がり再び天狗下駄を履いた楼主は、
「今日は店仕舞いだ。
そんでもってー…
酒だ、女だ、宴の続きだ!!」
ニヤリと口角を上げて告げたのだった。
…………………………………………………………………………………
ーその後はもう、てんやわんやの大騒ぎ。
なんといったって赤煙国一忙しく、値も張り、客足の途切れない楼閣が、すでに営業を開始しているにも関わらず急に本日の営業を中止、閉楼すると達しが出たのだから。
当然、下階では大騒ぎ、ただでさえ太夫達のお出ましが遅く、夜はこれから!!と意気込んでいた客らは激しく抗議を始めた。
既に部屋入りをしている客達からも抗議の嵐が絶え間なくあがり、混乱の極致といった状況。
楼の働き手や女達も客を宥めようと必死で、中には居座ろうと二階まで上がってこようとする強引な客もいて、腕っぷしの強い者達が脅しを利かせる事態にまで発展しつつあった。
やれ金返せだの、やれ詫びに今までここで遊んだ金をタダにしろだの。
ここまで騒ぎが大きくなってしまうと、街の治安維持部隊でもある“赤狼”の見回りが来てしまうし、本当に来てしまえばややこしいことこの上ない。
帳場へと詰めかける客、暴動を起こす寸前の客らをなんとか押し戻す帳場衆、戸惑いを隠せずオロオロと視線を彷徨わせる華達。
混沌の極みと化そうとしていたその場は、
「皆の衆、粛に!!」
階上より響いた一声で静まり返った。
『おい、あれ』
『楼主だ!!』
『鹿火様じゃね?』
階上で声を張り上げ喧騒を鎮めた楼閣・火車の楼主、鹿火の登場に、一瞬黙った客らが騒つきだす。
その特徴的な幼い容姿、天狗下駄、不遜な態度、間違いなく本人だと口々に囁く中、それに構うことなく楼主の言葉は続く。
「まずは今宵も足繁く当楼閣へ足を運ばれた方々には感謝と共に謝罪しよう。
当楼閣・火車は今宵今、この時より臨時休業と相成った」
「そりゃああんまりだぜ楼主!!」
「こちとらずぅっと太夫達が来るのを待っててやっとお目見えしたかと思えば閉楼!?
ふざけんなッッ!!」
「そうだそうだ!!俺だってお楽しみの真っ最中に部屋から追い出されたんだ!!
納得できる理由があるんだろぉなぁ!!」
やいのやいのと再び抗議し始めた客の男達をゆっくりと眺めると、
楼主はすうぅ…と深く息を吸い込んだ。
そして
「喧しいッッ!!大の男が雁首揃えて女々しく囀ってんじゃねぇ!!」
「「「「「!!!!?」」」」」
あの小さな形のどこからそんな声が?というほどの鋭い恫喝が辺りに反響し、抗議していた者達は一同皆言葉を失った。
中にはその恫喝に込められた得体の知れぬ覇気に当てられて尻餅をつく者も。
じろぉ~っと階下を一通り睨み付けると、再度口を開く。
「今日、赤霧山中にて私の楼の者が命を救われた。
救った恩人に恩を返す為、本日はこの楼閣を貸し切りとするとこの私が決めたんだ。
この楼閣は私の城。
私の決めたことはここでは絶対だ、という訳で紳士なお客様方には悪いが後日出直してくれな」
「そ、そうはいっても……!」
「なぁに。誰もタダとはいっておらん。
今日のお代は結構、買った時札代は払い戻し。
加えて」
芯も凍る恫喝にも負けず尚も抗議を募ろうとした客の呟きを手で制すると、懐に手を入れ一枚の木札を取り出してニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。
そうしてそれを階下に一頻り見せびらかすと、告げる。
「“華札”一枚。それも上限無しだ」
「「「「「!!!!!」」」」」
ゴクリ×(多)
「今日のところはといち早く身を引く決断をしてくれた話の分かる紳士なお客様先着十名に上限無し。
それ以外にも、上限ありだが一晩有効の華札を一枚ずつ!
これで、どうだい?」
しー……ん
静寂が、楼内を支配した。
人の悪い笑みを更に深めた楼主は、残り9枚も懐から取り出して階下の帳場衆の一人に放る。
そいつがあわあわと慌ててバラバラと落ちてくるそれを全て受け止めたのを見届けると、
「もう一度言う、上限無しは十名のみ。
ー……早い者勝ちだぞ?」
そう言い放ち、カラコロと下駄音を鳴らしながら去っていく。
やがてその音が聞こえなくなった、その瞬間。
『『『『『ぅぉおおおおおおおおおおッッ!!!!!』』』』』
狂気を孕む歓喜の声が爆発し、客達は帳場へと殺到した。
……………………………………………………………………………………………
※やっと復旧した執筆作業!!
意図した訳ではないものの、有言不実行が続いてしまい読者様方には申し訳ない限りっす…。
こちらの『創煙師』は基本『出涸らし』の方が完結するまでは不定期更新となってしまいますが、今日はもう1話公開します!
首を長~~くして待っていてくださった読者様方も、たまたま目について閲覧して下さった方々も。
この休業を余儀なくされている中、少しでも気晴らしができればと思う作者なのです!!
お楽しみに~♪
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