創煙師

帆田 久

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第1章

2.5話 苦労性ワンコ・一佐君と自称“癒し系“な小悪魔系同僚の一幕・1

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今回短いです。

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「はぁぁぁぁぁあ…。
柳隊長は一体、何を考えておられるのか」


 隊長の柳が山中より姿を消した後、彼の忠実なる副官を自負する一佐は、すぐさま隊長の言い置いた通りにその場に残っている他の隊員達を役割ごとに班分けし、迅速に事を進めてはいたものの。その胸中は呆れと困惑に溢れていた。

赤煙国警邏隊隊長付き副官・及び副隊長:一佐

隊長である柳 観世からの信厚く、生真面目だが副隊長という地位に驕ることのない姿勢や態度、仕事ぶりに、部下である隊員達からの人気は高い。つまり、“出来る男”である。
ただし。

「全く…こんな厄介な事件が目の前にあって何で……ぎ、ぎ、妓楼っ!などというははは、破廉恥な場所になど!いやいや、我ら誇りある赤狼の総隊長たる柳隊長も相応の歳の男!日々抱える仕事からくる疲れをそそ、そういった場所で癒したり発散させたいと願うのもわからんでも…」

「「「「「………。」」」」」

敢えて欠点を挙げるならば、
25の歳を数えるものにしては色事に関して純情過ぎるところと、総隊長である柳への敬愛が過ぎて時々思考が暴走しがちなところである。

「い、いやしかし!!!やはり総隊長たるもの部下に職務の模範を示すことが肝要!であるならば、やはりこの様な非常時にぎ、妓楼に向かうなど言語道断であるとお諌めすることこそ真の忠臣にして隊長付き副官たる俺の仕事!そうだ、そうに違いない!!!」

「「「「「………………。」」」」」

繰り返し云おう。
彼、一佐は生真面目だがそつのない仕事ぶりに謙虚な姿勢が周囲に好まれ、他隊員からの人気も高い、好青年であり、“出来る男”、なのだ。

………
考えている事全て口にしている事にまるで気づいていないが、夜の山にはやや響くその声を、何も聞こえていないと指示された作業を止める事なく黙殺し続ける部下達の優しさからも彼の高い人望を察して余りある。

とはいえ、松明を掲げて戻る班の隊員達はとっくに下山を開始し、例の三体の像も持参した荷車に積み込み済み。後は下山し目立たぬよう隊舎へと移動するだけとなっている今、肝心の、指示を下す副長が一人騒いでいては、迅速且つ秘密裏に、との隊長の指示を破る事になってしまう。
 上司の奇行に、部下達の間に困惑と焦燥感が流れ始めたころ。



「ああれぇ~、一ちゃん??どうしてこんな所にいるのぉ?」


さらに場にそぐわない、間延びした高い、子供の声が辺りに響いた。
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