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第二章 帝国編
第27話 翠髪の男①
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※複数視点でお送りします。
ルード→シェイラ視点
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
side:ルード
『おいルー…陛下、何をそんなに』
『頼む、少し黙っていてくれないか』
参加していた者達全員から粗方聴取を終えたルードは、
騎士団の訓練場から連れてきたガドを伴い
シェイラの待つ自身の居室へと足早に向かう。
かなり急いたその歩調にガドが怪訝な顔をしているのが分かるものの、
ルードとしては如何ともしがたい。
あれだけ有事に警戒していたにも関わらず、なす術無く正気を失い倒れるなど、
失態もいいところだ。
何があっても守ろうと誓っていたシェイラ本人に助け起こされたのも
焦る理由の一つである事は間違いないが。
話を聞いたところで原因も、
その現象を引き起こした犯人も明確に特定する事も出来ず、
忸怩たる思いが募る。
しかし交流会と銘打った以上
入場前に参加者へ大っぴらに所持品などの検査をする訳にもいかず、
また聴取時にも誰からもなにも出る事は無かったのだ。
一番疑わしい二人の令嬢にしても
疑心は抱けど確証はなく、酷く困惑した様子に結局部屋へと帰すしか無かった。
後はもう、唯一事の終始を見ていた可能性のあるシェイラに話を聞く他ない。
あの時彼女は自分が目を覚ました事にほっとしていたが、
困惑した様子ですぐに語る事は無かった。
おそらく彼女自身にも説明のし難いなにかを見たか聞いたか……
兎に角、少しでも情報が欲しい。
そう思い部屋の扉を開いた俺の視界にー……
室内でモリーが茶を振る舞う横で椅子に腰掛けシェイラの頭を撫でて微笑する、
長い翠髪の美男の姿が飛び込んできたことにビキリと額に太い青筋を立てた。
..................................................................................................................................
side:シェイラ
少し遡り、シェイラが交流会会場から居室へと帰ってきたばかりの時ー。
疲れからため息をそっと吐いたシェイラに、
一緒に部屋へと入ったモリーが深々と頭を下げた。
『…モリー?』
『申し訳ございませんシェイラ様!!
本日は御身を守るべき私とした事が、とんだ失態を……』
『……頭を上げて頂戴、モリー。
今日のことは誰のせいでも失態を責められるべき事でもありませんよ』
『っしかし!!』
『もし失態を責めなければならないとしたら
私も陛下を、
そしてモリーや他の方々が倒れるのを阻止出来なかった事を
責められてしかるべきです』
『…それは』
『ね、言い出せばきりの無い責任の追及はやめましょう?
私にモリーを責めるつもりは全くありませんし、
何より少し、疲れました...。
ここはモリーの淹れた美味しい紅茶を飲んで
気を休めるところだと思うのですが、
……淹れて頂ける?』
『はい!』
シェイラの言葉に元気を取り戻して明るく返事をしたモリーが部屋を一旦辞した後、
もう一度深くため息をついて椅子に座る。
場合によっては何かが起きるかも知れないと
覚悟を決めて臨んだ今日の交流会。
二人の貴族令嬢が早々醜態を晒して退場、
新たな友人が出来たと思えば皇帝以下会場内にいた者全員が昏倒。
波乱も波乱、大波乱である。
モリーにああ言ったものの、
本来なら皇帝が倒れる惨事を引き起こしたとして
あの場にいた全員が理由如何に問わず罰せられてもおかしくはない事態が起こったのだ。
ため息の一つや二つ、つきたくもなろうというものだ。
この後ー…おそらく夜になるとは思うが、
この部屋でルードに自分の知る事を説明しなければならない。
しかしそうなるとあの翠髪の男性のことを語らずにはいられないが、
さてどう説明したものか……とモリーの紅茶を待つ間思い悩んでいると。
【なにを一人で唸り声を上げているのだ小娘】
『ピャッッ!!?』
またしても唐突に間近で響いたその低い声に、
奇声を上げて肩を跳ね上げ立ち上がる。
【うぉっ!?いきなり立ち上がるでないわ、吃驚するではないか!!】
ゆっくりと横に顔を向けると、
そこには先ほど会場で見た翠髪の男性が片眉を上げて自分を覗き込んでいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※長くなったのでページを分けます。
この続きは夜更新します!!
ルード→シェイラ視点
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side:ルード
『おいルー…陛下、何をそんなに』
『頼む、少し黙っていてくれないか』
参加していた者達全員から粗方聴取を終えたルードは、
騎士団の訓練場から連れてきたガドを伴い
シェイラの待つ自身の居室へと足早に向かう。
かなり急いたその歩調にガドが怪訝な顔をしているのが分かるものの、
ルードとしては如何ともしがたい。
あれだけ有事に警戒していたにも関わらず、なす術無く正気を失い倒れるなど、
失態もいいところだ。
何があっても守ろうと誓っていたシェイラ本人に助け起こされたのも
焦る理由の一つである事は間違いないが。
話を聞いたところで原因も、
その現象を引き起こした犯人も明確に特定する事も出来ず、
忸怩たる思いが募る。
しかし交流会と銘打った以上
入場前に参加者へ大っぴらに所持品などの検査をする訳にもいかず、
また聴取時にも誰からもなにも出る事は無かったのだ。
一番疑わしい二人の令嬢にしても
疑心は抱けど確証はなく、酷く困惑した様子に結局部屋へと帰すしか無かった。
後はもう、唯一事の終始を見ていた可能性のあるシェイラに話を聞く他ない。
あの時彼女は自分が目を覚ました事にほっとしていたが、
困惑した様子ですぐに語る事は無かった。
おそらく彼女自身にも説明のし難いなにかを見たか聞いたか……
兎に角、少しでも情報が欲しい。
そう思い部屋の扉を開いた俺の視界にー……
室内でモリーが茶を振る舞う横で椅子に腰掛けシェイラの頭を撫でて微笑する、
長い翠髪の美男の姿が飛び込んできたことにビキリと額に太い青筋を立てた。
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side:シェイラ
少し遡り、シェイラが交流会会場から居室へと帰ってきたばかりの時ー。
疲れからため息をそっと吐いたシェイラに、
一緒に部屋へと入ったモリーが深々と頭を下げた。
『…モリー?』
『申し訳ございませんシェイラ様!!
本日は御身を守るべき私とした事が、とんだ失態を……』
『……頭を上げて頂戴、モリー。
今日のことは誰のせいでも失態を責められるべき事でもありませんよ』
『っしかし!!』
『もし失態を責めなければならないとしたら
私も陛下を、
そしてモリーや他の方々が倒れるのを阻止出来なかった事を
責められてしかるべきです』
『…それは』
『ね、言い出せばきりの無い責任の追及はやめましょう?
私にモリーを責めるつもりは全くありませんし、
何より少し、疲れました...。
ここはモリーの淹れた美味しい紅茶を飲んで
気を休めるところだと思うのですが、
……淹れて頂ける?』
『はい!』
シェイラの言葉に元気を取り戻して明るく返事をしたモリーが部屋を一旦辞した後、
もう一度深くため息をついて椅子に座る。
場合によっては何かが起きるかも知れないと
覚悟を決めて臨んだ今日の交流会。
二人の貴族令嬢が早々醜態を晒して退場、
新たな友人が出来たと思えば皇帝以下会場内にいた者全員が昏倒。
波乱も波乱、大波乱である。
モリーにああ言ったものの、
本来なら皇帝が倒れる惨事を引き起こしたとして
あの場にいた全員が理由如何に問わず罰せられてもおかしくはない事態が起こったのだ。
ため息の一つや二つ、つきたくもなろうというものだ。
この後ー…おそらく夜になるとは思うが、
この部屋でルードに自分の知る事を説明しなければならない。
しかしそうなるとあの翠髪の男性のことを語らずにはいられないが、
さてどう説明したものか……とモリーの紅茶を待つ間思い悩んでいると。
【なにを一人で唸り声を上げているのだ小娘】
『ピャッッ!!?』
またしても唐突に間近で響いたその低い声に、
奇声を上げて肩を跳ね上げ立ち上がる。
【うぉっ!?いきなり立ち上がるでないわ、吃驚するではないか!!】
ゆっくりと横に顔を向けると、
そこには先ほど会場で見た翠髪の男性が片眉を上げて自分を覗き込んでいた。
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