出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

文字の大きさ
上 下
118 / 161
第二章  帝国編

第26話  交流会強制終了

しおりを挟む



ルードもモリーもニーナも、ヴィーダ嬢もジョルダン嬢も。
その他にホール内で待機していた侍女達までもが床に伏している様子を
暫し呆然と眺めていたが、
ルードがこの場で一番大事があってはならない存在であることを思い出し、
慌ててお越しにかかる。



『ルード!!っルード!!?』

『……ん、んん?…シェイラか、どうし…!!?』


倒れたルードに懸命に呼びかけると、呻き声を上げながら床から身体を起こした。
すぐに異常事態であることに思い至って周囲をと見渡す様子に、
ほっと安堵の息をつく。
周囲に倒れているニーナやヴィーダ嬢、ジョルダン嬢、その他の侍女達を注意深く見回した後、
ゆっくりと立ち上がる。


『………いきなり意識が…。
一体なにが起こった?』

『……兎も角皆さんを起こしましょう。
なにかしら身体に異常が残っていないとも限りませんし…』

『あ、ああ。
そうだな。しかしその二人は……』

『ええ。ヴィーダ嬢とジョルダン嬢は最後に起こしましょう。
なにか知っているやも』

『或いは、何か仕出かしたかもしれないからな』

『…………』


私の目から見ても先ほどの二人の笑みは不気味に過ぎるし、
この奇妙で異常な現象は二人が接近した途端に起こったのだ。
何かあることは間違いなさそうだが、兎にも角にも皆が皆倒れていては
調べることもままならない。


『……シェイラは大丈夫だったのか?』

『え、ええ……。それがその……』

『まぁ、無事ならひとまずそれでいい。
が……後で話を聞かせてもらうぞ?』

『わかりました』


どの道今聞かれても、
シェイラ自身なんと説明したらいいか言葉に困ってしまう。
こんなことになって混乱と動揺が自身の思考を鈍らせているようだ。


厄介な現象の原因追及は後回しと決め、
二人は手分けして周囲に倒れている人達を起こしにかかる。
私達に声をかけられ順に身を起こしていった皆は
何故床に?と戸惑いの表情を浮かべていたが、
モリーとニーナは険しい顔を件の二人に向けていた。

当の二人はといえばー…


『……ん、っう!?
何これ…頭痛っ……というか何故床に……え、ここどこ?』

頭を抱えながら起き上がり、状況がまるで飲み込めていない
……というか、交流会の会場にいることすら分かってなさそうなジョルダン嬢と。



『っうぅ……、え……。
私は一体……』

他の人達と同様、何故床に?と嘆いているヴィーダ嬢。


『厄介なことになりそうだな…』

『……ええ……』


その様子を見て苦々しく嘆くルードに賛同を示したシェイラはしかし、
その内一人から視線を外すことが出来なかった。

先ほどの翠髪の男性が最後にシェイラに向けて囁いた言葉ー…


の人間に気を付けろ】



微かに耳に残るその囁き声が、いつまでも頭から離れなかった。

この不可思議で奇妙な異常現象の為に、
交流会は強制的に終了を余儀なくされたのだった。


しおりを挟む
感想 608

あなたにおすすめの小説

出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。 次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。 労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

処理中です...