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第一章 出会い編
第58.5話 もう一人の眠り姫
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『……ェイラ、シェイラ!!』
誰かが私の名前を呼んでいる。
懐かしくも温かなその声に、ああ…これは夢なのだと理解する。
私がまだ幼く、母が生きていた頃のー……
………………………………………………………………………………
『おかあさま!!』
『ふふっ私の可愛いシェイラったら。ぼーっとしてどうしたのかしら?』
『あのね わたし こわい夢をみたのよ!
あの森の中でね 大きなおおかみさんが私を食べちゃうの。
まよいの森は ひとをまよわせて
こわいけものにおそわせる こわいところなのでしょう?』
『まぁ!誰かしら、そんな酷い事を言ったのは』
『おとうさま!!森にひとりで入ったら こわいけものにおそわれるって!!』
『全く。私の旦那様は悪い人ね!
あそこはそんな怖い所じゃないのよシェイラ。
……でもそうね、シェイラはまだ一人で入っては駄目よ?
いつか、シェイラがもう少し大きくなったらお父様とお母様と3人で森にピクニックに行きましょう!!』
『っだめよ!おかあさまが おおかみさんに食べられちゃう!!』
『あらあらまあまあ。
泣かないのよシェイラ、本当に怖くなんてないんだから。
あそこにはね、お母様のお友達が住んでるのよ?
子供が生まれたらお父様と一緒に紹介するって約束したの』
『……ほんとうに こわくない?
おかあさまの お友だちに 会えるの?』
『ええそうよ、だって約束したのだもの!!
優しい人だから絶対に約束は守ってくれるわ。お母様の自慢の友達よ!』
『そっかぁ…。
わたしも おかあさまの お友だちに 早く会いたいわ!』
『ふふふ!そうね、早く会えると良いわね。
あなたがもう少し大きくなって、
私の忙しすぎる旦那様にお休みが出来たら。
その時は一緒にー……』
………………………………………………………………………………
『………お母様、私ちゃんとお母様の言いつけ通り、
何がなんでも生き抜いてみせますわ』
また視点が切り替わる。
これは、母が死んで、
あの二人に全てを取り上げられた後の森でのー……
………………………………………………………………………………
『ふふん!
今日は楽しい楽しいマナー本です!!
【初心者でもきっと大丈夫!読み終わる頃には貴女も立派なレディ☆】
これですわ!!』
ぐぅ。
『…………。』
ぐぅぅ…。
『………………。』
『………お腹が、すきましたわ……。
やはりあの二人の食べ残しでは元気も気力も湧きません。
いっそまた街に……いいえ駄目だわ。
街に行けばあの男に見つかる…今度こそ殺されてしまうかも……。
……あーっ!空腹とはかくも精神に訴えかけてくるものなのですか!!?
こんなことではいけません!
きっと集中力が足りないのです!!
……集中……集中………………』
ぐぅぅ~~~~~っっ
『………はぁ……』
『ー…何をため息をついているのだ、小娘』
『!!?ど、どちら様ですの!!?』
『どちら様もあちら様もなかろう。
この森は我の家ぞ。
少し前から独り言ばかり話しておるなんぞ奇怪な小娘がおるでな。
煩くて敵わんからこうして注意しに来たのだ』
『……森、ここに住んでいる……ああ!
貴方様はもしかしてお母様のご友人の!!?』
『母とな……ふむ。
その顔、魂、片目の色……
小娘お主、エリーシェの娘御か?』
『た、魂?よ、よくわかりませんが
エリーシェ・レイランドルフの娘なのは間違いないことですわ!!』
『……名は?何というのだ』
『社交の場以外で人に名を聞く時は自分から名乗るものだと
本に書いてありましたわ………やはり怪しいひ』
『し、失礼なっ!!我のどこが怪しいと』
『お父様もお母様も、ご自分の事を“我”なんておっしゃいませんでしたわ』
『ぐぬぬ…』
『貴方様のお名前は?
まさか小娘に先に名乗らせるのですか?』
『……』
『お 名 前 は ? 』
『………、ちゃん』
『?“ちゃん”様?』
『!!?だからっ、……ぉーちゃんだ!
お主の母はそう呼んでおった!!』
『分かりました、“ぉーちゃん”ですね。
…変わったお名前ですわね“ぉーちゃん”様』
『~~~っっ!!
ほんに、ほんに親子揃って失礼な!
せめて“お”を大きく発音したらどうだ無礼者め!!
もう良い!お主の如き小娘など、こうだ!!』
ペシッッ!!
『っ痛ッッ!!?』
『ふんっ!!……これで約束は果たした。もう去ぬわ』
『…ぉーちゃん様?
全く、うら若き女性の額を叩いて姿を消すなんて、
紳士じゃありませんわ。
………て、あら?お腹の虫が鳴き止みましたわね……。
…また、話し相手になってくれるでしょうか…おーちゃん様…』
………………………………………………………………………………
ー…何故今になって、こんな夢を見ているのでしょう?
話していた相手の顔も覚えていないというのに。
何故か酷く懐かしいー…
『……ェイラっ、シェイラ!!』
……また先程と同じ母の夢を見るのでー
「起きろッッ、シェイラ!!」
身体を激しく揺さぶられ、怒鳴るように自分を呼ぶ声にパチリと目を開くと。
ルードが険しい形相で自分を間近で覗き込んでいた。
「ル、ルード…?ええと、……おはようございます??」
とりあえずは挨拶をとのんびりした口調で口を開くと、
部屋の中ではぁぁぁ~…と脱力したようなため息が複数。
そのまま視線だけを彷徨わせてみれば、ルードの後ろには父・ロイドや侍女達、ガドの姿が。
こんな衆人監視の中眠りこけていたのかと慌てて身を起こそうとすれば、肩を掴んだままのルードの手に力が入り、ベッドに押し付けられる。
「いきなり身を起こそうとするな馬鹿者!
……どこも痛いところは?具合の悪いところはないか?」
「え、ええ…特にありませんわ?
それよりも皆さんどうなさったのですか?この状況は一体……」
いくら寝坊したからと言ってこんな大勢に囲まれている状態は……ともじもじしていると、再度小さく嘆息するとルードが答えをくれた。
「あのな、シェイラ。
お前………5日も目を覚まさなかったんだぞ」
「へ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※予想外にも長くなったので一度切ります!
誰かが私の名前を呼んでいる。
懐かしくも温かなその声に、ああ…これは夢なのだと理解する。
私がまだ幼く、母が生きていた頃のー……
………………………………………………………………………………
『おかあさま!!』
『ふふっ私の可愛いシェイラったら。ぼーっとしてどうしたのかしら?』
『あのね わたし こわい夢をみたのよ!
あの森の中でね 大きなおおかみさんが私を食べちゃうの。
まよいの森は ひとをまよわせて
こわいけものにおそわせる こわいところなのでしょう?』
『まぁ!誰かしら、そんな酷い事を言ったのは』
『おとうさま!!森にひとりで入ったら こわいけものにおそわれるって!!』
『全く。私の旦那様は悪い人ね!
あそこはそんな怖い所じゃないのよシェイラ。
……でもそうね、シェイラはまだ一人で入っては駄目よ?
いつか、シェイラがもう少し大きくなったらお父様とお母様と3人で森にピクニックに行きましょう!!』
『っだめよ!おかあさまが おおかみさんに食べられちゃう!!』
『あらあらまあまあ。
泣かないのよシェイラ、本当に怖くなんてないんだから。
あそこにはね、お母様のお友達が住んでるのよ?
子供が生まれたらお父様と一緒に紹介するって約束したの』
『……ほんとうに こわくない?
おかあさまの お友だちに 会えるの?』
『ええそうよ、だって約束したのだもの!!
優しい人だから絶対に約束は守ってくれるわ。お母様の自慢の友達よ!』
『そっかぁ…。
わたしも おかあさまの お友だちに 早く会いたいわ!』
『ふふふ!そうね、早く会えると良いわね。
あなたがもう少し大きくなって、
私の忙しすぎる旦那様にお休みが出来たら。
その時は一緒にー……』
………………………………………………………………………………
『………お母様、私ちゃんとお母様の言いつけ通り、
何がなんでも生き抜いてみせますわ』
また視点が切り替わる。
これは、母が死んで、
あの二人に全てを取り上げられた後の森でのー……
………………………………………………………………………………
『ふふん!
今日は楽しい楽しいマナー本です!!
【初心者でもきっと大丈夫!読み終わる頃には貴女も立派なレディ☆】
これですわ!!』
ぐぅ。
『…………。』
ぐぅぅ…。
『………………。』
『………お腹が、すきましたわ……。
やはりあの二人の食べ残しでは元気も気力も湧きません。
いっそまた街に……いいえ駄目だわ。
街に行けばあの男に見つかる…今度こそ殺されてしまうかも……。
……あーっ!空腹とはかくも精神に訴えかけてくるものなのですか!!?
こんなことではいけません!
きっと集中力が足りないのです!!
……集中……集中………………』
ぐぅぅ~~~~~っっ
『………はぁ……』
『ー…何をため息をついているのだ、小娘』
『!!?ど、どちら様ですの!!?』
『どちら様もあちら様もなかろう。
この森は我の家ぞ。
少し前から独り言ばかり話しておるなんぞ奇怪な小娘がおるでな。
煩くて敵わんからこうして注意しに来たのだ』
『……森、ここに住んでいる……ああ!
貴方様はもしかしてお母様のご友人の!!?』
『母とな……ふむ。
その顔、魂、片目の色……
小娘お主、エリーシェの娘御か?』
『た、魂?よ、よくわかりませんが
エリーシェ・レイランドルフの娘なのは間違いないことですわ!!』
『……名は?何というのだ』
『社交の場以外で人に名を聞く時は自分から名乗るものだと
本に書いてありましたわ………やはり怪しいひ』
『し、失礼なっ!!我のどこが怪しいと』
『お父様もお母様も、ご自分の事を“我”なんておっしゃいませんでしたわ』
『ぐぬぬ…』
『貴方様のお名前は?
まさか小娘に先に名乗らせるのですか?』
『……』
『お 名 前 は ? 』
『………、ちゃん』
『?“ちゃん”様?』
『!!?だからっ、……ぉーちゃんだ!
お主の母はそう呼んでおった!!』
『分かりました、“ぉーちゃん”ですね。
…変わったお名前ですわね“ぉーちゃん”様』
『~~~っっ!!
ほんに、ほんに親子揃って失礼な!
せめて“お”を大きく発音したらどうだ無礼者め!!
もう良い!お主の如き小娘など、こうだ!!』
ペシッッ!!
『っ痛ッッ!!?』
『ふんっ!!……これで約束は果たした。もう去ぬわ』
『…ぉーちゃん様?
全く、うら若き女性の額を叩いて姿を消すなんて、
紳士じゃありませんわ。
………て、あら?お腹の虫が鳴き止みましたわね……。
…また、話し相手になってくれるでしょうか…おーちゃん様…』
………………………………………………………………………………
ー…何故今になって、こんな夢を見ているのでしょう?
話していた相手の顔も覚えていないというのに。
何故か酷く懐かしいー…
『……ェイラっ、シェイラ!!』
……また先程と同じ母の夢を見るのでー
「起きろッッ、シェイラ!!」
身体を激しく揺さぶられ、怒鳴るように自分を呼ぶ声にパチリと目を開くと。
ルードが険しい形相で自分を間近で覗き込んでいた。
「ル、ルード…?ええと、……おはようございます??」
とりあえずは挨拶をとのんびりした口調で口を開くと、
部屋の中ではぁぁぁ~…と脱力したようなため息が複数。
そのまま視線だけを彷徨わせてみれば、ルードの後ろには父・ロイドや侍女達、ガドの姿が。
こんな衆人監視の中眠りこけていたのかと慌てて身を起こそうとすれば、肩を掴んだままのルードの手に力が入り、ベッドに押し付けられる。
「いきなり身を起こそうとするな馬鹿者!
……どこも痛いところは?具合の悪いところはないか?」
「え、ええ…特にありませんわ?
それよりも皆さんどうなさったのですか?この状況は一体……」
いくら寝坊したからと言ってこんな大勢に囲まれている状態は……ともじもじしていると、再度小さく嘆息するとルードが答えをくれた。
「あのな、シェイラ。
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