出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

文字の大きさ
上 下
70 / 161
第一章  出会い編

第52話  大夜会⑧〜愚者が舞台を降りる時(前)〜

しおりを挟む
※シェイラ視点に戻ります!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ロザベラとミラベルが、私の家の者ではないー…


そう告げた時、会場は一斉に騒めいた。


そこかしこから

(え?どういうことだ)
(じゃあ何故あの二人は伯爵家の名を名乗っているの?おかしいじゃない)
(……まさか、名を語ったというのか!?)

といった声が次々と聞こえてくる。

「ほう……つまりはこの二人は
家とは縁もゆかりもない……赤の他人であるということかい、シェイラ」

「それは」

「「違うわ!!」」


続けようとした私の言葉を二人が遮った。


「陛下っ!私は伯爵家に後妻としてベルを連れて入った者ですわ!
彼女は亡くなった先妻の娘ですから…も、もうシェイラったら“実の”という言葉を抜くだなんてそそっかしいったら」

「そうですわベルナード陛下!!
母は間違いなくレイランドルフ伯爵夫人で私もお、お姉様の妹、ですわ!」

「少しは黙っていられないのか。
お前達には聞いていない」

ぎろりと鋭い眼差しでルードに睨まれ、二人はひっ!と足を竦ませた。
(麗人が凄むと本当に拍力がありますわね)
などと呑気に考えていられるのもルードがこの場を支配しているからだ。

しかし私が口を開くことはなかった。
説明を求めるルードや周囲に答えを齎らしたのは、王の元よりいつの間にか側まで身を寄せていた父・ロイドであった。


「それは私めの口より説明いたしましょう皇帝陛下」

一度ルードに深く礼をとった後、くるりと踵を返す。


「国王陛下。私事なれどこの場を今少し騒がせること、どうかお許しいただきたく」

「……ふむ。
何やら話から察するに真偽をはっきりとさせておいた方が良さそうであるな…。
許可する。
カリスよりの客人の問いに誠心誠意答えるが良い」

「はっ!」

(台本通り、というわけですわね)

普通、王族主催のこんな大催事中に騒ぎを起こせばそれだけで不敬罪に問われてもおかしくないのだが、どうやら国王陛下にも今回の件は承知済みの事らしい。
ならば自分は静かに事の成り行きを見守った方が良さそうだと、シェイラは再び静観することにした。

ルードに向き直ったお父様が口を開く。


「皇帝陛下におかれましても我が国の者が行った無礼な言動の数々について、平に謝罪致したく」

「能書きはいい。俺はただパートナーであるシェイラ嬢の言葉の真意を聞いているだけだ。
彼女が語らないとなればお前でもいい、く話せ」

「はっ。寛大なご配慮、痛み入ります。

……では。
結論から申しますと、ロザベラ、ミラベルの両名は本来レイランドルフ家に使することを許可された者達でございます。よって、伯爵夫人でもなければ伯爵令嬢ではあり得ません」


「「なっ!!?」」


『使用人だって!?』
『なんてこと……一介の使用人が伯爵夫人と令嬢を語って大夜会に出るなんて!!』
『恥を知れ!!』

「……会場の皆様、どうかご静粛に」

お父様が野次を飛ばす周囲の貴族を宥めているとロザベラとミラベルが騒ぎ出した。

「嘘よっ!!そんなはずないわ!」

「娘の言う通りよ!!9にちゃんとをロイド様と連名で記入した後役場で受理されたのよ?証拠ならあるのだからいい加減なことを言わないで頂戴!!」


9年前、王都発行の証明書と聞いて野次が止む。
一体どちらが真実なのかと戸惑う周囲に自信を取り戻したのか、ふふん!と鼻息荒くロザベラはお父様を非難し始めた。

「なんだったら領地の役場に確認してみてくださるかしら?まぁこれだけ恥をかかされたのだもの、当然タダで済むとは思わないことね!!」

「……では貴方を使用人扱いした私を罰する、と?」

「当たり前じゃない!!そもそもしゃしゃり出てこないで頂戴!!」








しおりを挟む
感想 608

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...