出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

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第一章  出会い編

閑話  影達の東奔西走②

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ートリアドス王国 王都・城下街ー



『おいオール。陛下が王都入りしたのは承知だが、キールの奴、陛下の側付きの癖に何処行きやがったんだ?』

『……ああウールか、お前こそ今まで何処ほっつき歩いてた?お前だけだぞ、何も情報上げてないのは』

『うっ……ま、まぁあれだ。
酒場での調査が難航してな!』

『(こいつ…女と遊んでやがったな…)まぁいい。
それとキールは陛下直々の命を受けてを尾行中だ』

『例の男……って、あのケインとかって奴の事か?
あいつ王都こっち来てんのか!?』

『…お前本当に仕事してたのかよ…はぁ、あと声でかいから静かに話せ馬鹿。
例の令嬢が面通ししたみたいだからまず本人で間違いないらしい。エールは現在城で陛下とアール、イール達との情報の繋ぎ役を請け負ってもらっている』

『お前は何やってるんだよ?』

『俺か?俺はキールとエール達との中継役とお前ら王都調査組の取りまとめだ。
それで…お前の役割は果たして何だろうな?』

『!?
それはその……!な、なんか振ってくれよ仕事っ!頼むぜ~オール~!!』

『全くお前という奴は…。
じゃあ俺は今から城入りした陛下達の方に向かってエールから新しい指示が出ていないか聞いてくるから、お前はキールから奴の情報を引っ張ってこい』

『了解!!へっ、大船に乗ったつもりで待ってろよぉ~!!』

『くれぐれもヘマをするなよ(………不安しかない)』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ー城下街裏通り 酒場『裸婦亭らふてい』ー




『(え~と、確か繋ぎの場所はここで合ってるはず。奥の席の……お!)
お~いキール!こっちだ!!』

『(!?あの馬鹿っ、何ででかい声で呼んでくんだよ!!…無視するに限る)……。』

『(あれ、っかしーな…聞こえなかったのかな)
お~い!おいってばキール、こっちだぞ~!』

『………。』

『おいってば~』

『…………。』

『キール~!!』

「『うるせーんだよ!!デケェ声出してんじゃねぇッッ!!』」((酒場店主+キール))

『ヒィッ!?』

「おい兄ちゃん、悪ぃことは言わんからさっさとあの阿呆どっか連れてっちゃくれねぇか?
営業妨害もいいところだし、うちの客は皆あんま素行がよろしくねぇんだ(痛い目に遭いたくなきゃさっさと出てけ)」

「……すまんな、迷惑かけた。……『ほら行くぞ馬鹿が』」

『……ほ~い』


………………………………………………………………………………

『……んの、馬鹿野郎っ!
あんなところででかい声でネーム叫ぶ奴があるか!?』

『あ痛ッッ!!?
(痛っー…何も殴らなくても。短気だなぁキールは)…すみません』

『(全然反省してないぞこいつ…)
そもそもここはトリアドス王国、帝国じゃあない。アルギス語で声をかけてくるんならまだいい(本当は良くない)が、ルキア語でベラベラと……。目標ターゲットがあの場にいたらどうする!?警戒されるだけだろうが?!』

『うー…。でも居なかったっしょ?だったらそんな気にしなくても』

『本当に考えが足らない奴だな…あのな、相手は色々後ろ暗い事満載な奴だ。そんな奴が悪事に一人で勤しむわけがない。で、協力者になる奴ってのはどんな奴だ?』

『あっ』

『(あっ、じゃねぇよこの野郎)はぁぁぁ。
まぁそういう訳でな、お前が何の考えもなしに騒いでくれたおかげで、あの酒場はもう使えなくなった。余計な事をしてくれてどうもありがとう』

『ど、……どういたしまして?』

『~~ッッ!!(…もう知るか)』

『え、ちょっ……どこ行くんだよぉ~』


足音荒く立ち去っていく影とそれを慌てて追いかけていく影。

二人の姿とその様子を始終監視していた男達と、その男達の様子を更に後ろから伺う二人の影の存在に、二人はついぞ気付くことはなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『(不安的中、だな。ウールあいつに任せた俺が馬鹿だった)
……城からイールを連れて早々に引き返してきて正解だったな』

『オール……あいつらは馬鹿なのか?馬鹿なんだよな??』

『ああ、救いようもないほどにな(これは陛下の側付き人員から見直しが必要かもしれんな…。)
イール、ついてきてもらった早々悪いが目標ターゲットに感づかれた可能性がある事をエールに伝えに走ってくれ。俺はあの男達をそのまま尾行する。と接触する可能性が高いんでな』

『わかったくれぐれも気を付けろよ。
……あとあいつらはどうする?』

『(キール達か)いい、放っておけ。警戒されている以上、今あいつらに接触するのは避けろ。それこそこちらの動きを今度こそ完全に掴まれる』

『了解。……二人のヘマに関してもしっかり伝えておく』

『……よろしく頼む。』


音もなく姿を消した一人の影。
残った影は、動き出した男達を視界に捉えつつ、己も動き出す。


『さて、出来れば早めに奴の動きを掴めればいいが……(とりあえずウールの奴帰ったら必ずシメる)』


いつの世も出来の悪い部下を抱える上司(?)は気苦労が絶えない。
ハゲないといいが、と自身の頭髪の心配をしつつも今日も今日とて職務に励む影、オールなのであった。


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