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第一章 出会い編
第39.5話 いつの世も嫉妬と親バカは見苦しい
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「そろそろ再会の挨拶は済んだか?」
コンコン、という音とともに父共々ハッとして振り返れば開けた扉に寄りかかりこちらを憮然とした面持ちで伺うルードの姿がそこにあった。
すぐさま父が私を離すと膝をつき頭を下げる。
フン、と小さく鼻を鳴らしたルードが満足そうに頷いた事で、自分もそれに倣おうと父の横で同じく膝をついて頭を……下げようとした段になってカツカツと早足でそばにやってきたルードに腕をグイッと持ち上げられ上体を起こされた。
「……何をしている」
「え……ですから私も拝謁の礼をと」
「そんな事お前はしなくていい。宰相殿、挨拶が済んだのならさっさと退室するがいいぞ」
「ルー…っ、陛下!?」
「だからルードで構わん。お前にはそう呼んでほしいと再三告げているはずなんだがな、シェイラ?」
「………っ!!」
さり気なくするりと腰を抱き、ん?と甘い眼差しで覗き込んでくるルードにシェイラは思わず顔を赤らめる。
この場に誰がいることも忘れて。
シェイラは、仮にもこの国でやり手と評判の、宰相の娘。
そして、ようやく可愛い娘と和解できたばかりの父親の前でそんな行動に出れば、必然。
ゆらり……と幽鬼の如く立ち上がったシェイラの父ロイドが姿勢を直し胸に手を当て小さく頭を下げる。そうして顔を上げると15歳の子供のいる親にしては若々しいその顔に麗しい笑顔を浮かべた。
「この度は可愛い一人娘との久々の再会に尽力くださり誠にありがとうございます皇帝陛下(会わせてくれたことには感謝しよう)。
しかしながら、陛下の御前でございますれば、
娘も拝謁の礼を取るのが当然のことと心得ているはず、ましてや御愛称でお呼びするなど、婚約も果たしていない身で不敬なことは彼女とてできますまいことお察しいただきたく。
(人の礼を鼻で笑っておいてそんな事呼ばわりするとはな。挙句、愛称呼びだと……?婚約も許していないのに、仮にも親の前で抜け抜けと)」
「いやいや宰相殿。
彼女が淑女として弁えていることは出会ってより重々承知の上で挨拶は不要と述べているのだよ
(今の今まで放置してたあんたと違ってな)。
何せ彼女は私にとってもはやかけがえのない大切な存在、いや、寧ろすでに家族と言ってもいいのではと思っているほどでな(すでに俺のものに俺の名を呼ばせて何が悪い?今更お前如きに付き合う許可を得ろとでも?はッ、馬鹿も休み休み言え)?」
「あの……お父様?陛下?」
「おいロイド、ルー…じゃなかった、陛下もいい加減にしとけ」
交わされる内容は真っ当なはずなのに何故こうも薄ら寒く感じるのか。
笑顔でなされる二人の会話に置いてかれたシェイラとガドが口を挟むが、止まらない。
「ほう。家族同然などと仰って頂き誠に光栄ですが、他国の伯爵家の一人娘にそのような過分なお言葉はお世辞であれど感心しませんな(それはこっちの台詞だ小僧、偶々出会っただけのぽっと出のもやしが。間違っても貴様を我が家族とは認めんぞ)
他貴族達から要らぬ嫉妬を受けましょう(私の可愛い娘が虐められたらどうしてくれる)何せ陛下におかれましては素晴らしい男振りでありますし、ねぇ(お顔だけは宜しいんだからその辺の小娘で満足しとけばいいのでは)?」
「ハハッ!宰相殿もお人が悪い、そんな世辞などと。
私は本当の事を言っているにすぎんよ、そこは言葉通りに受け取ってほしいものだな(そもそも9年父親辞めてた男に取る許可なんぞねぇよ。家族てのもシェイラ限定、あんたは含まれてない)
……さて、先ほども言ったが、宰相殿もシェイラと久しぶりの再会を果たしていささか疲れている様子(さっきまで娘に縋ってボロッボロ泣いてた中年男に何言われようが痛くもないが)、彼女のことはこちらに任せて別室にてゆるりと休むがいいぞ(ただでさえシェイラとの時間を削られてるんだ、さっさと消えろ)」
「おや、私としたことが気付きませんで。
陛下も到着されたばかりでお疲れなのをすっかり失念しておりました!ささ、私は娘を部屋まで送りながら御前、失礼させていただきます(邪魔だと言いたいんだろうが、一人娘を貴様と二人きりにさせるわけなかろうが青二才)
どうぞ私どものことは気にせず、ごゆるりとお休みください(一人で寂しく寝てろ)。」
「お父様!!」
「陛下!!」
「「何だ(い)??」」((あ?))
「……はぁ…(息ピッタリですわね、お二人共)」
「本当、いい加減にしとけよ二人とも。嬢ちゃ…シェイラ嬢も呆れてんぞ?(空気読めクソ餓鬼、そして和解したての癖に親バカんなってんじゃねぇぞロイド!)」
見当違いの嫉妬を見せるルードに戸惑えばいいのか、和解してすぐ発揮された親バカに喜んでいいのか、大いに悩んだシェイラだった。
コンコン、という音とともに父共々ハッとして振り返れば開けた扉に寄りかかりこちらを憮然とした面持ちで伺うルードの姿がそこにあった。
すぐさま父が私を離すと膝をつき頭を下げる。
フン、と小さく鼻を鳴らしたルードが満足そうに頷いた事で、自分もそれに倣おうと父の横で同じく膝をついて頭を……下げようとした段になってカツカツと早足でそばにやってきたルードに腕をグイッと持ち上げられ上体を起こされた。
「……何をしている」
「え……ですから私も拝謁の礼をと」
「そんな事お前はしなくていい。宰相殿、挨拶が済んだのならさっさと退室するがいいぞ」
「ルー…っ、陛下!?」
「だからルードで構わん。お前にはそう呼んでほしいと再三告げているはずなんだがな、シェイラ?」
「………っ!!」
さり気なくするりと腰を抱き、ん?と甘い眼差しで覗き込んでくるルードにシェイラは思わず顔を赤らめる。
この場に誰がいることも忘れて。
シェイラは、仮にもこの国でやり手と評判の、宰相の娘。
そして、ようやく可愛い娘と和解できたばかりの父親の前でそんな行動に出れば、必然。
ゆらり……と幽鬼の如く立ち上がったシェイラの父ロイドが姿勢を直し胸に手を当て小さく頭を下げる。そうして顔を上げると15歳の子供のいる親にしては若々しいその顔に麗しい笑顔を浮かべた。
「この度は可愛い一人娘との久々の再会に尽力くださり誠にありがとうございます皇帝陛下(会わせてくれたことには感謝しよう)。
しかしながら、陛下の御前でございますれば、
娘も拝謁の礼を取るのが当然のことと心得ているはず、ましてや御愛称でお呼びするなど、婚約も果たしていない身で不敬なことは彼女とてできますまいことお察しいただきたく。
(人の礼を鼻で笑っておいてそんな事呼ばわりするとはな。挙句、愛称呼びだと……?婚約も許していないのに、仮にも親の前で抜け抜けと)」
「いやいや宰相殿。
彼女が淑女として弁えていることは出会ってより重々承知の上で挨拶は不要と述べているのだよ
(今の今まで放置してたあんたと違ってな)。
何せ彼女は私にとってもはやかけがえのない大切な存在、いや、寧ろすでに家族と言ってもいいのではと思っているほどでな(すでに俺のものに俺の名を呼ばせて何が悪い?今更お前如きに付き合う許可を得ろとでも?はッ、馬鹿も休み休み言え)?」
「あの……お父様?陛下?」
「おいロイド、ルー…じゃなかった、陛下もいい加減にしとけ」
交わされる内容は真っ当なはずなのに何故こうも薄ら寒く感じるのか。
笑顔でなされる二人の会話に置いてかれたシェイラとガドが口を挟むが、止まらない。
「ほう。家族同然などと仰って頂き誠に光栄ですが、他国の伯爵家の一人娘にそのような過分なお言葉はお世辞であれど感心しませんな(それはこっちの台詞だ小僧、偶々出会っただけのぽっと出のもやしが。間違っても貴様を我が家族とは認めんぞ)
他貴族達から要らぬ嫉妬を受けましょう(私の可愛い娘が虐められたらどうしてくれる)何せ陛下におかれましては素晴らしい男振りでありますし、ねぇ(お顔だけは宜しいんだからその辺の小娘で満足しとけばいいのでは)?」
「ハハッ!宰相殿もお人が悪い、そんな世辞などと。
私は本当の事を言っているにすぎんよ、そこは言葉通りに受け取ってほしいものだな(そもそも9年父親辞めてた男に取る許可なんぞねぇよ。家族てのもシェイラ限定、あんたは含まれてない)
……さて、先ほども言ったが、宰相殿もシェイラと久しぶりの再会を果たしていささか疲れている様子(さっきまで娘に縋ってボロッボロ泣いてた中年男に何言われようが痛くもないが)、彼女のことはこちらに任せて別室にてゆるりと休むがいいぞ(ただでさえシェイラとの時間を削られてるんだ、さっさと消えろ)」
「おや、私としたことが気付きませんで。
陛下も到着されたばかりでお疲れなのをすっかり失念しておりました!ささ、私は娘を部屋まで送りながら御前、失礼させていただきます(邪魔だと言いたいんだろうが、一人娘を貴様と二人きりにさせるわけなかろうが青二才)
どうぞ私どものことは気にせず、ごゆるりとお休みください(一人で寂しく寝てろ)。」
「お父様!!」
「陛下!!」
「「何だ(い)??」」((あ?))
「……はぁ…(息ピッタリですわね、お二人共)」
「本当、いい加減にしとけよ二人とも。嬢ちゃ…シェイラ嬢も呆れてんぞ?(空気読めクソ餓鬼、そして和解したての癖に親バカんなってんじゃねぇぞロイド!)」
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