出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

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第一章  出会い編

第33話  目覚めと怒り〜悔恨の吐露②〜

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※引き続きガド視点です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「しかも『
何を言っているのでしょうね、彼は。
私の妻は後にも先にも死んだ妻だけだというのに……!!」


(ああ~…。こりゃあ、相当キてんなぁ。無理もないが…。でもこれじゃ話が進まん)
淡々としていたロイドの口調が次第に激してきたのに連れ、これでは本題から逸れてしまうと、気が進まないまでも俺は軌道修正を図る。同情心はあれど、自分は任務として彼から話を聞かなければならないからだ。主に自身の主人のために。


「ロイド。あんたには同情するし、そのケインという男に対して怒りを抑えられない気持ちもわかっているつもりだ。だが、今はもう少し冷静になって俺と『話し合い』をしようや。
事はあんたの大事な娘の今後にも関わっているんだからな」

恨みを爆発させていたロイドだったが、俺の言葉にハッとして冷静になる。


「娘の今後……そういえばガド殿はシェイラと会ったと言っていましたね?今何が起きているんですか」

「昨日も言ったがな、ざっくり言うとだ。
あんたの娘さん…嬢ちゃんはこの9年間、ろくな扱いを受けていなかったらしいって事だ。
助けを求めたくてもあんたは居ないし連絡を取ることもできない。親しかった使用人達はみんな辞めさせられたらしいし、後妻とその娘とやらが家の中で好き放題。
俺たちが出会ったときな、とても令嬢には見えなかったんだよ。
ボロ布着込んで髪もボサボサ、正直どこの浮浪者だと思った位だよ本当」

「何故そんなことに……。
使用人達が解雇?後妻?なんの冗談ですか。
後妻……そうだ、確かロザベラとミラベル…」

「聞こうと思っていたんだが、さっきも自分の妻は死んだ奥さんだけ、みたいに言っていたが……何故再婚したんだ?」


そうー。
ずっと引っかかっていたこと。
何故この男が、あんな後妻を連れ子付きで家に入れたのか。
もしかすると、これは。

あまり考えたくはないが、と俺がロイドに問うと。
そこには酷く無表情の赤髪の男がいた。


「ロザベラ、ミラベル。その二人の名前には覚えがあります。
記憶がおかしくなる前、シェイラの乳母の暇乞いの手紙の中で、新たな使として推薦されて許可を出した人物の名です」

(当然、妻と娘などに迎えた覚えもない、と。成程、それがケインって男のいうというやつか。本当にやりたい放題の連中だな……その男も、自称・後妻達も)


これは本当に、なんともやりきれんなとため息をつく。


「ガド殿、それでシェイラは?シェイラは無事なのですか??」

「それがなぁ~…俺も、嬢ちゃんを気に入った陛下の命令であんたのところに話を聞きにすぐにあの領を離れたからな…今の状況とか細かいことまでは。それより今はあんたの今後の行動について………ん?」

自分はロイドから話を聞いた後にルードと合流せにゃならんし向こう(領地)の情報もない。
さてどうするか……と考えていると、天井から微かな物音。

(くく……。
相変わらずタイミングが良いんだか悪いんだか)

まぁこの場合は前者だなとうっそり笑うと、「丁度いい情報源が来たぞ?」とロイドに声をかけ、天井裏の人物に向かって降りてくるよう促す。

「!!…そちらは?」

「ああ。陛下直属の影だ。連絡係兼使いっ走りを頼んでいる。

…それで?何か彼方から新しい情報でも?」

前半はロイドに。後半は影に向かって先を促す。


「ガルディアス騎士団長にご報告申し上げる。
レイランドルフ領にて事の証言・証拠のを完了。陛下におかれては、それらを確認の後、予定を切り上げすでに王都入りへ向けて行動を開始されている。
その際、領地から伴って来られる為、合流は王都でとのこと。
なお、ガルディアス団長にはそれらの件も含めてとの伝言を賜っている」


「!!…了解。すぐに取り掛かる。お前にも動いてもらうぞ?
ったく、相変わらず皇帝の癖にフットワークの軽い……」

「……ガド殿、私の件で皇帝陛下が動かれているのですか?すでに王都へ向かわれているとは……」

「ん?ああ、勘違いしてもらっちゃ困るんだが、陛下が自ら動くのはあんたの件だからじゃない。
件だからだ。
だが良かったな?
陛下が令嬢を伴ってくる……つまりは嬢ちゃんも一緒にやってくるってこった。
たかが一領主の、それも他国の令嬢が、陛下に保護を受ける。
宰相であるあんたがこの意味を分からんとは言わないよな?」


ヒュッと息を呑むロイドがこの件に関わるルードの真意を察した様子を横目で流して、ニヤリと獰猛に笑む。


「いちいち驚いてんじゃねぇ。
これからあんたの部屋にあるの件を含めて、あんたのも交えて対処と対応を考えていかなきゃならないんでな。
さぁて……忙しくなってきやがった」




部屋にやってきていた影は、俺の言葉を最後まで聞き届けると、静かに天井裏へ消えていった。




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