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第一章 出会い編
第32話 目覚めと怒り〜悔恨の吐露①〜
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ー王都城下街・宿屋『ガラクの宿』ー
side:ガド
「ぐ、うう……。……ここ、は?」
ロイドが目を覚ましたのは、昏睡してから実に丸一日経過した頃だった。
まだ鈍く痛むのか、片手で頭を押さえながら呻くロイドに気づき、声をかける。
「おう、起きたかロイド。どこって、変わらず『ガラクの宿』の部屋ん中だ。全く、こっちは待ちくたびれたぞ!」
「す、すまない。しかし私は一体どうしたという………」
「…おいおい。ここまできて何も覚えてませんってこたぁねぇよな!?」
冗談じゃない!!と目を剥く俺の剣幕に慌てて否定の言葉を続けるロイド。
「いや、ちゃんと覚えている!というより思い出しました!!
……しかしそれは頭がおかしくなる直前までのことを、であって、おかしくなっている最中の事柄についてはその…。よく思い出せないんですが」
「ああ~…そうゆう。
取り敢えず今は『現実』が戻ってきたことを素直に喜んでれば良いんじゃねぇか?でもなぁ…具体的に何が引っかかってんだ?」
「そうですね……思い込んでいた内容は覚えているのに、その際領地や家のことでどんな差配をしていたのかとか。とにかく自身の領地・家族関連の事柄と付随する感情面が靄がかかったようにピントが合わないといいますか。……すみません、なんかうまく説明できません」
「成程な。ま、アレはそういうもんだしあんたの場合、ちとアレを使われた期間が長すぎる。使った奴は余程あんたに領地や家族について思い出させたくない理由があったんだろう。
ん?……ちょっと待て。あんたさっき、“頭がおかしくなる直前”を思い出したと言っていたな?
そいつがあんたに思考誘導をかける直前の会話も思い出したってことか!?」
おいおいそれが分かればそいつ、本当の意味で犯人に確定出来んじゃん!と喜色をうかべる俺に対し、物凄く苦い何かを口に含んだように顔を歪ませたロイドが言った。
「………ええ、ええ、思い出しましたとも。それも一言一句。
ケインはあの時花を押し付けられて意識が混濁して無くなる直前、私に言いましたよ。
『嗚呼、御可哀想な旦那様…いや、もうロイドでいいか。
貴様が悪いんだよ、俺が憧れ恋焦がれて止まなかったエリーシェ様を妻にし、あまつさえ貴様と同じ赤髪を持つ、忌々しい娘を彼女に産ませた!
ずっと…ずっとずっとずっと殺してやりたかったよ、ロイド?でも殺してやらない。
やっと彼女は貴様達から解放されたのだから!!
領地も屋敷も娘のことも、全て優秀なこの俺が適切に管理してやるから心配するな?
貴様は彼女のことも、娘のことも忘れ、ここで大人しく職務に励んでいればいい。大丈夫、忘れた寂しさなど感じないさ…もうすでにちゃあんと代わりを用意しておいたからな!!』
とね」
「お、おいロイド?」
語るうちにどんどん険しくなる顔を気にも留めず淡々と話すロイドに先ほど浮かべてしまった喜色は萎み、ロイドに話しかけるが、止まらない。
「俺の妻…エリーシェが。彼女が私と娘から解放されたとあの男は言ったんですよ。
病気もなく、突然死んだ人間に対して到底言うべき言葉ではない。まるでそうなることがわかっていたかのように。
挙句、私の妻と娘の記憶を長年奪い続け、今ものうのうと日常を送っていることでしょう。
『優秀な俺』?ああ、認めましょう彼は優秀だ。誰にも知られずあのような花を持ち込み、私と私の持つ全てを彼の都合で管理し続けてきたその手腕は驚嘆に値しますよ、ええ。
……褒美に、今すぐ、縊り殺してあげたいほどにね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※長いので一度切ります。
次回も続きです!
side:ガド
「ぐ、うう……。……ここ、は?」
ロイドが目を覚ましたのは、昏睡してから実に丸一日経過した頃だった。
まだ鈍く痛むのか、片手で頭を押さえながら呻くロイドに気づき、声をかける。
「おう、起きたかロイド。どこって、変わらず『ガラクの宿』の部屋ん中だ。全く、こっちは待ちくたびれたぞ!」
「す、すまない。しかし私は一体どうしたという………」
「…おいおい。ここまできて何も覚えてませんってこたぁねぇよな!?」
冗談じゃない!!と目を剥く俺の剣幕に慌てて否定の言葉を続けるロイド。
「いや、ちゃんと覚えている!というより思い出しました!!
……しかしそれは頭がおかしくなる直前までのことを、であって、おかしくなっている最中の事柄についてはその…。よく思い出せないんですが」
「ああ~…そうゆう。
取り敢えず今は『現実』が戻ってきたことを素直に喜んでれば良いんじゃねぇか?でもなぁ…具体的に何が引っかかってんだ?」
「そうですね……思い込んでいた内容は覚えているのに、その際領地や家のことでどんな差配をしていたのかとか。とにかく自身の領地・家族関連の事柄と付随する感情面が靄がかかったようにピントが合わないといいますか。……すみません、なんかうまく説明できません」
「成程な。ま、アレはそういうもんだしあんたの場合、ちとアレを使われた期間が長すぎる。使った奴は余程あんたに領地や家族について思い出させたくない理由があったんだろう。
ん?……ちょっと待て。あんたさっき、“頭がおかしくなる直前”を思い出したと言っていたな?
そいつがあんたに思考誘導をかける直前の会話も思い出したってことか!?」
おいおいそれが分かればそいつ、本当の意味で犯人に確定出来んじゃん!と喜色をうかべる俺に対し、物凄く苦い何かを口に含んだように顔を歪ませたロイドが言った。
「………ええ、ええ、思い出しましたとも。それも一言一句。
ケインはあの時花を押し付けられて意識が混濁して無くなる直前、私に言いましたよ。
『嗚呼、御可哀想な旦那様…いや、もうロイドでいいか。
貴様が悪いんだよ、俺が憧れ恋焦がれて止まなかったエリーシェ様を妻にし、あまつさえ貴様と同じ赤髪を持つ、忌々しい娘を彼女に産ませた!
ずっと…ずっとずっとずっと殺してやりたかったよ、ロイド?でも殺してやらない。
やっと彼女は貴様達から解放されたのだから!!
領地も屋敷も娘のことも、全て優秀なこの俺が適切に管理してやるから心配するな?
貴様は彼女のことも、娘のことも忘れ、ここで大人しく職務に励んでいればいい。大丈夫、忘れた寂しさなど感じないさ…もうすでにちゃあんと代わりを用意しておいたからな!!』
とね」
「お、おいロイド?」
語るうちにどんどん険しくなる顔を気にも留めず淡々と話すロイドに先ほど浮かべてしまった喜色は萎み、ロイドに話しかけるが、止まらない。
「俺の妻…エリーシェが。彼女が私と娘から解放されたとあの男は言ったんですよ。
病気もなく、突然死んだ人間に対して到底言うべき言葉ではない。まるでそうなることがわかっていたかのように。
挙句、私の妻と娘の記憶を長年奪い続け、今ものうのうと日常を送っていることでしょう。
『優秀な俺』?ああ、認めましょう彼は優秀だ。誰にも知られずあのような花を持ち込み、私と私の持つ全てを彼の都合で管理し続けてきたその手腕は驚嘆に値しますよ、ええ。
……褒美に、今すぐ、縊り殺してあげたいほどにね」
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※長いので一度切ります。
次回も続きです!
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