出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

文字の大きさ
上 下
23 / 161
第一章  出会い編

第16話  ガドの奮闘〜その香りと輝きが齎したもの〜

しおりを挟む
「なぁロイド」

「………なんだ」

。誰にもらった?」

「……?何のこと…ああ、私の自室に飾ってあった花のことですか?あれは確か私の補佐役のケインという者からです。何でも他国にて時々発見される、大変珍しいものだとか。しかし何故今そんなことを?」


「アリスリリア」


「ガド殿は名前をご存知だったのですか。私は枯れにくい大変美しい花としか聞いていなかったものですから」


突然変わった話題にどことなく安堵を滲ませたロイドはしかし、次の俺の告げた名称に凍りついた。



「正式名称、アリスリリア。
世界的にも群生数の少ない、美しい花だ。
しかしな、この花にはもう一つ、知られていない別の呼び方がある。

ー『誘い花いざないばな という、な」

「~ッッ!!?」



誘い花・アリスリリア

主に医療の分野で精神患者に使用された希少なこの花は、かつてカリス帝国の後継争いの折に悪用され、採取・売買共に禁止令が発令された、魔性の呪い花。

採取され水につけることで通常の植物よりも遥かに長く咲き続けるこの花には特殊な香りと輝きがあり、その二つに囚われると、一時思考に靄がかかったようにはっきりしなくなる。
その思考が定まらなくなった状態時に他者から忘却や会話の誘導などを受けると、催眠にかかったように誘導内容がその人物の『現実』となってしまう。花が身近で咲き続けるだけ効果は続き、さらにはその期間が長ければ長い程、効果は加速し深まる。
つまり、虚実を現実とその人物に認識させてしまう。


「…ーて訳でな。かなり危険な花なんだよ、アレは。
ロイド。あんたアレをそのケインとかいう補佐役からいつもらった?」

「……職務のため領地から城内に移り、自室を賜った際だ…。ケインには領地の運営代理と管理の指示もしてもらっているので。
その後も領地からこちらにきた際に、私が気に入っているようだからと、度々差し替えに…」

「9年前が最初だな?」

「……ええ。しかし何故私が9年前に#王城__こちら_#に来たのを知っているのですか?」

「……。」


職務に勤しむ合間に愛でていた部下からの贈り物の正体を耳にして、呆然とするロイドは酷く哀れに映ったが、これからもっと残酷な『現実』を自覚させなければならないことを思うと、と俺は酷くやるせない気持ちになった。
しかし、やるしかないのだ。
ロイドは未だ、信じたくない、何故ケインが…何かの間違いでは、と否定の言葉を俺に求めているようだが。



(……あぁ~…鬱だ。
だがまぁ、やるとしますか)


「これからいくつか質問させてもらうぞ、ロイド。
素直に答えてくれ、な?」

「…え、ええ、分かりました」


そして今現在の彼の『現実』を確認していく ー
しおりを挟む
感想 608

あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...