出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

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第一章  出会い編

第13話  ガルディアス 入城① ロイド・レイランドルフとの対面

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※ガドandロイド回。
ここから徐々に状況が変わっていきます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ー トリアドル王国 王城正門前 ー


「何者だ!!」



「カリス帝国近衛騎士団“金獅子団”団長、ガルディアス・デル・ゴードンだ。カリス帝国皇帝、ベルナード・イグニス・カロル・カリスティリア陛下の入城の先触れのご挨拶に参った!開門の上、入城の許可を願いたい!!」

「「!!!少々お待ち頂きたい!」」


カリス帝国、近衛騎士団団長と聞くや城に向けて数人の門番役が駆けて行ったのを見送った俺、ガドことガルディアス・デル・ゴードン(長くて面倒だからガドな)は、馬上で待機しながら静かにふぅ、と息をついた。




(やれやれ。
どこの国も門番役というのはどうしてこうも仰々しくてかったるいんだか。あんな戦時中の『やぁやぁ我こそは!』に似た大声での自己紹介をしないと入城出来ないだなんて……。
全く、羞恥プレイも良いところだぞ)


内心げんなりしながらも表面上は、その『我こそは~』な感じを維持してるのは、ま、社交辞令みたいなもんだ。


そんな悪態を心中で吐き続けること30分ほど(ケツいてぇ)。


正面から先程の門番役が他二人を連れ、かけ戻ってくる。


一人は筋骨隆々(うへ。多分『トリアドルの鬼』とか呼ばれてるヤツ)の壮年の男と。
もう一人は、………んん??

長く伸びておそらく背中で結んであるのだろう、燃えるような赤い髪。
スラリと背筋の伸びた長身にピシリと隙なく着込んだ文官服。顔立ちは繊細で整っているが女性のそれでなく。眼鏡の下、アメジストの澄んだ瞳が印象的…。て、やっぱそうだろ。


(こいつだよこいつ!!俺の目的はぁ!!)
なぁ~んて思いつつも初対面だからご挨拶しゃこうじれいをば。


「お待たせして申し訳ない、カリス帝国・ゴードン卿。
私はこの王城の宰相職に就いております、ロイド・レイランドルフと申します。
ロイドとお呼びください。…こちら…」

「デルガー・ロッテン!!黒龍騎士団団長だ!!噂の皇帝とやらが見られるとかって聞いたから見にきたぞ!ガハハハ!!早よ紹介せぃッッ!!」


「ァァあ?」


「…………………この、大馬鹿者が。」


バチコンッッ!!!!

「あだァァッッ!!?」



テッッテテー☆

【赤髪眼鏡が筋肉馬鹿に100のダメージを与えた!】


(‥…なんだこの副音声)


何の茶番だこれはと呆れていると、筋肉馬…もといデルガーの尻を
抱えている書類の束(硬い紙留め金具付き)で容赦無く張り殴ったロイドが深々と腰を折り、謝罪した。

「重ねて失礼したゴードン卿!
我が国の失態、どうかお許しを。」


「……謝罪を受け入れよう(ぶっちゃけどうでも良い)。
ロッテン卿はともかく貴方とは話ができそうだ(正直あんた以外の人間と話したくない)。
…貴方のことをロイド殿と呼ぶなら、そうだな…。
私のことはガドとでも呼んでくれ(ガルディアスって長いから、な、な?)」


「!それは些か…。いや、それでは失礼ついでにガド殿、と呼ばせてもらいます。
謝罪を受け入れていただき、有難うございます。
此度は先触れのご挨拶、とか?」


手振りで門番役を持ち場に戻し、馬番へ俺の愛馬を丁重に扱う様指示し、悶絶している筋肉馬鹿を放ったまま城の入り口に俺を誘導する手際は堂に入って大したものだ。それだけに、

(何故こんな頭の切れそうな男が)
あの状態に娘を放置しているのだろうか


「……ガド殿?」

「!!あ、ああすまん。いや何我らが皇帝陛下は心配性でな。
二週間後に入城するのは周知とはいえ、領地の友好視察をさせてもらった上に夜会まで開いていただけるとなれば、直前での先触れでは失礼に当たる、と。
そのようなわけで私が挨拶に参った次第なのだ」


なので謁見は叶わずとも誰か役職付きの方に挨拶をさせてもらい、叶うならば二週間後に皇帝の泊まる部屋が城のどの辺りなのか案内してもらえると助かる。


そう付け加えれば、ほんの僅かだがホッとした様子を見せ、

「左様でしたか。いや実はこちらも何分突然のご来訪の為本日中の謁見は少々難しいことを告げなければと心苦しかったので。そう言っていただけると幸いです
(アポ無しとは迷惑極まる。スケジュール調整するこっちの身になってくれ)。」

ー(おおぅ。娘そっくりの副音声だな!)



「こちらこそ、突然の訪問、大変失礼した。が、失礼ついでにやはり城内の案内を貴殿にお願いしても良いだろうか?…本音を言えば、命令されてきた手前、余りにとんぼ返りでは本当に挨拶してきたのか疑われるのでな…」


心中では娘そっくりの会話の癖に感嘆していたが、そんなことより早く本題に入りたい訳よ!と駄目押ししてみると。


「はは!お互い主人を持つ身なれば、心中でお察し致します。
私のようなものの案内で宜しければ、是非今からでも」

「(イエッス!!)おお!それは有難い!!!
ロイド殿、細やかな気遣い、痛み入る。」


「いえそんな。どうぞご遠慮なきよう」

仕方がないと苦笑気味ではあるものの、
こうして俺はロイド・レイランドルフ伯爵に付きっきりで城内案内をしてもらうべく、彼の背に続いたのだった。
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