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第一章 出会い編
第7話. 祝(?)森脱出
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「……お、おいルードさんよ」
「…ああ」
「こりゃあなんか、、その、おかしかないか?」
「………ああ」
「どうしたんですかお二人とも?」
森で果たした出会いから、どうやら迷子らしいカリス帝国よりの旅人達(?)を森脱出から街までの道案内をする約束をしたシェイラは、迷う素振りなく軽い足取りで道無き道をサクサクと進む。
迷いのないその様子に何やら背後の二人は戸惑った様子。
(どうされたのでしょうか?私何か知らぬ内おかしなことでもしでかしたのかしら?)
疑問に思っていると、背後から自身の隣りに足を進めて並んだルードが効いてきた。
「…いやな。シェイラ嬢、その、随分と迷いなく進まれるのだな、と」
「え?」
「此処は『迷いの森』なのだろう?」
「…嗚呼!そのことですか」
(そういえばお二人とも迷子なのでしたね。うっかり失念してましたわ)
カリス帝国の視察団は(ミラベル達情報によれば)今日の午後学園を訪問する、といっていたし、おそらくそれは昼過ぎ辺りのことの筈。で、現在すでに昼はとっくに過ぎ、3時前頃。先乗りで入る予定だったと言うからにはそもそも昨日の夜か、
今日の夜が明けるかといった早朝に森に入ったと見るのが妥当。であるならば。
きっと散々迷って苦労したのだろう。
お疲れ様です、と心中で労いの声をかけながらも、まもなく森を抜けるので、その後の行動について説明せねばと思い隣りのルードに顔を向ける。
「迷いの森の中を迷いなく歩くにはコツがあるんです」
「コツ?」
「はい。………っと、それよりもお二人とも。間も無く森を抜けますよ」
「「おおっっ」」
苦労した森をやっと抜けられるとあって大きな声を上げた二人にシッ!慌てて嗜める。
「どうか此処よりお静かに。先程、ご案内することの条件を覚えていらっしゃいますね?ルード様、ガド様」
「?…ああもちろんだ。一つ、森から出たらシェイラ嬢に従うこと。二つ視察団に合流後、この国の貴族達との交流の場でシェイラ嬢と会ったことを話題に出さない、だったな」
「……ええ。絶対に順守してくださいね」
そう話すうちに徐々に気の合間から見え始めた大きな屋敷にルードとガドが怪訝な面持ちとなる。
「…あの屋敷は?」
「誰ん家だ、ありゃ?」
「私の家です」
「「は??」」
「…ですから、レイランドルフ伯爵邸。私の、家、ですわ」
「「……。」」
唖然とする二人にさもありなん、当然おかしく思いますよね、と苦く笑う。通常、領主館とは領地の中心部に建てられるものだからだ。国境に接している森を背にして屋敷を建てるなど、正直他国や他領から見れば攻めて落としてくださいと言ってるようなものだ。
詳しく説明することもできるが、今はそれほど重要なことではないので捨て置いてもらう。
森と屋敷庭の境界をつけるように生え揃えている生垣にしゃがみ込むと二人もそれに習う。
何分此処からは時間との勝負なのだ。長くなり過ぎた休憩で最悪『詰んでる』場合もある。小声でしかし知らず、早口で話す。
「…いいですかルード様、ガド様。私は今から一度屋敷へ戻ります、その際此処で気配を消していてください。森が存在する関係上裏門は当家にありません。が、間違ってもお二人だけで我が屋敷の正門を越えようとなさいませんよう特にガド様」
「うっ………なんで俺だけ…‥、了解」
「それから、」
出る方法ですが、とそこまで言いかけてシェイラはハッとした。またもや重要なことを失念していたことに気づいたからだ。
いつも自身が屋敷を抜け出す時には魔法を使っているのだ。
他国の、それも皇帝に近しい人間に知られることの不味さは十分理解できる。しかし。
シェイラは二人を。特に自身に隔てなく接してくれたルードを信じてみることにした。
「…どうした?」
「いえ、問題ありません。兎に角すぐに戻って参りますのでそれまでどうかご辛抱を」
「いやそれはいいが、何処からどうやって出るつもりだ」
「どうやっても何も、正面から堂々と出ますわよ?」
「「…え。」」
ささやかなお楽しみです。そういってシェイラは悪戯を思いついた子供のようにふふっと小さく笑った。
「…ああ」
「こりゃあなんか、、その、おかしかないか?」
「………ああ」
「どうしたんですかお二人とも?」
森で果たした出会いから、どうやら迷子らしいカリス帝国よりの旅人達(?)を森脱出から街までの道案内をする約束をしたシェイラは、迷う素振りなく軽い足取りで道無き道をサクサクと進む。
迷いのないその様子に何やら背後の二人は戸惑った様子。
(どうされたのでしょうか?私何か知らぬ内おかしなことでもしでかしたのかしら?)
疑問に思っていると、背後から自身の隣りに足を進めて並んだルードが効いてきた。
「…いやな。シェイラ嬢、その、随分と迷いなく進まれるのだな、と」
「え?」
「此処は『迷いの森』なのだろう?」
「…嗚呼!そのことですか」
(そういえばお二人とも迷子なのでしたね。うっかり失念してましたわ)
カリス帝国の視察団は(ミラベル達情報によれば)今日の午後学園を訪問する、といっていたし、おそらくそれは昼過ぎ辺りのことの筈。で、現在すでに昼はとっくに過ぎ、3時前頃。先乗りで入る予定だったと言うからにはそもそも昨日の夜か、
今日の夜が明けるかといった早朝に森に入ったと見るのが妥当。であるならば。
きっと散々迷って苦労したのだろう。
お疲れ様です、と心中で労いの声をかけながらも、まもなく森を抜けるので、その後の行動について説明せねばと思い隣りのルードに顔を向ける。
「迷いの森の中を迷いなく歩くにはコツがあるんです」
「コツ?」
「はい。………っと、それよりもお二人とも。間も無く森を抜けますよ」
「「おおっっ」」
苦労した森をやっと抜けられるとあって大きな声を上げた二人にシッ!慌てて嗜める。
「どうか此処よりお静かに。先程、ご案内することの条件を覚えていらっしゃいますね?ルード様、ガド様」
「?…ああもちろんだ。一つ、森から出たらシェイラ嬢に従うこと。二つ視察団に合流後、この国の貴族達との交流の場でシェイラ嬢と会ったことを話題に出さない、だったな」
「……ええ。絶対に順守してくださいね」
そう話すうちに徐々に気の合間から見え始めた大きな屋敷にルードとガドが怪訝な面持ちとなる。
「…あの屋敷は?」
「誰ん家だ、ありゃ?」
「私の家です」
「「は??」」
「…ですから、レイランドルフ伯爵邸。私の、家、ですわ」
「「……。」」
唖然とする二人にさもありなん、当然おかしく思いますよね、と苦く笑う。通常、領主館とは領地の中心部に建てられるものだからだ。国境に接している森を背にして屋敷を建てるなど、正直他国や他領から見れば攻めて落としてくださいと言ってるようなものだ。
詳しく説明することもできるが、今はそれほど重要なことではないので捨て置いてもらう。
森と屋敷庭の境界をつけるように生え揃えている生垣にしゃがみ込むと二人もそれに習う。
何分此処からは時間との勝負なのだ。長くなり過ぎた休憩で最悪『詰んでる』場合もある。小声でしかし知らず、早口で話す。
「…いいですかルード様、ガド様。私は今から一度屋敷へ戻ります、その際此処で気配を消していてください。森が存在する関係上裏門は当家にありません。が、間違ってもお二人だけで我が屋敷の正門を越えようとなさいませんよう特にガド様」
「うっ………なんで俺だけ…‥、了解」
「それから、」
出る方法ですが、とそこまで言いかけてシェイラはハッとした。またもや重要なことを失念していたことに気づいたからだ。
いつも自身が屋敷を抜け出す時には魔法を使っているのだ。
他国の、それも皇帝に近しい人間に知られることの不味さは十分理解できる。しかし。
シェイラは二人を。特に自身に隔てなく接してくれたルードを信じてみることにした。
「…どうした?」
「いえ、問題ありません。兎に角すぐに戻って参りますのでそれまでどうかご辛抱を」
「いやそれはいいが、何処からどうやって出るつもりだ」
「どうやっても何も、正面から堂々と出ますわよ?」
「「…え。」」
ささやかなお楽しみです。そういってシェイラは悪戯を思いついた子供のようにふふっと小さく笑った。
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