出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

文字の大きさ
上 下
4 / 161
第一章  出会い編

閑話  side:ロイド〜父の焦りと葛藤①〜

しおりを挟む

最愛の妻が、死んだ。

前日まで自分に手ずから紅茶を淹れてくれたり、王都の城と領地を忙しなく行き来する日々を送っていた私に『お身体、大事に、ね?』と愛らしく微笑んで労わってくれた妻が、翌日自室のベットの中で冷たくなっていた。



何故…

何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!!

 何故彼女が死ななければならなかったのか、何が原因だ病気か?それとも暗殺…いや、我が家の使用人は父の代から仕えているものがほとんどだ。そうでないものも徹底的に調査をした上での雇用であるし、侍女達は皆妻の事を好いてくれていたはず。あり得ない、断じて。

翌日に行われた葬儀の際も、参列者の貴族達からの労りの言葉も耳から耳へと抜けていく。ポッカリと心の臓ふに穴が空いた感覚がいつまでもさらず………、おまけに。



『お父様…』

『っつ!!』

か細くも高く響いたその声に。
そして髪こそ私に似て赤く、しかし顔立ちは亡き妻の幼少時に瓜二つな一人娘のシェイラの顔、潤んだ眼差しを視界に捉えた時、何故か恐ろしいくらいに動揺した。
動揺して、わけもなく苛立ち、そして

最愛の妻の残した最愛の娘に、決して、人として決して言ってはならない事を、言った。



『…お父様、あ、の。私………伝え』

『何故お前が生きている』

『……………え』

『何故エリーシェが死んだ。死ななければならなかったんだ…何故……何故何故!何故お前が生きている!!っ何故っつっお!!!』
何故俺が生きている、そう感情のままに叫ぼうとした瞬間、急に我に帰った。




『………ご、めん、な、さい………お父、様……っ』

『!!!!!』

他ならぬ、娘のシェイラの言葉と、絶望した顔を耳に、目にして。





人として。それ以前に、他ならぬこの子の父親として。

取り消すことのできない、取り返しのつかない言葉浴びせ、罵ってしまったのだったー……
しおりを挟む
感想 608

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...