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第一章 出会い編
第1話 会話は副音声とともに
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「ちょっとシェイラ!何よこれこんな冷めた紅茶を私達に飲ませようだなんてどう言うつもり!?」
「申し訳ございません(ハイハイいつもの難癖でございますね)」
「ベル、朝からそう怒鳴るものではないわ。でもそうねぇ…レイランドルフ伯爵夫人たる私とその愛娘であるベルにこんな粗末な紅茶しか用意出来ないなんて。見た目と同じで本当“出涸らし”ね」
「大変申し訳ございません(一応それ、逸品で知られるザフツブルグ公国から輸入した高級茶葉を適温で淹れたものなのだけど)直ちにお口に合うものを入れ直して参ります(格安品で良いわよね)」
「もう良いわ!私今日は朝から出掛けますの。貴方がのろのろとお茶を入れているのを悠長に待ってあげる程暇じゃないのよ?ベルだってもう学園に行かねばならない時間ですし、さっさとここを片付けなさい!」
「そうよそうよ!あんたのせいで学園に遅刻したらどうしてくれるの!あんたと違ってわたしもお母様も忙しいんだから、さっさと御者に馬車を支度させておいて頂戴!!」
「はい、直ちにご用意致します(時間ギリギリなのは自分達の寝坊が原因でしょうに)」
「ちゃんと二台用意なさい」
「………かしこまりました(今日は愛人の所、ね)」
ぎゃあぎゃあと、それこそ朝から喚き立てる二人に無感情に返事をしながら、シェイラは今日も今日とて絶賛副音声実況中(頭の中)なのである。
足元荒く支度をしに部屋へと向かう二人の後ろには侍女が二人、ピタリと寄り添っているが、二人もチラと背後で片付けに追われるシェイラに視線を向けてはふん、と嘲りの鼻笑いを残していくのを忘れないというなかなかの玉だ。
(あらヤダ、“なかなかの玉だ”なんて少々はしたなかったかしら?)
二人はオルガとフィオレという名で、伯爵家にいた使用人達を追い出した後に、ロザベラの実家であるフォールン男爵家から呼び寄せられたらしいのだが。
ロザベラ達のシェイラの扱いを見てとるや、シェイラ自身の身なりのみすぼらしさもあいまってか、主人達の嘲りや見下した言動を真似るようになったのだ。まぁそれも、屋敷に来て早々にしてであるからして、ロザベラ達と類友なのだろう、とシェイラの中では区切りをつけているのだが。
今日も早朝の冷たい空気の中洗濯をし、屋敷の居間と調理場にある煮炊き用の窯、食事を行う広間に存在する暖炉にこれまた外から運び込んだ薪を入れてはひを入れ焚べる。実はこの時、この世界でもあまり使い手のいない“魔法”を使って火をつけたり、洗濯の際も洗い上げた衣服やドレス、シーツなどを魔法で一斉に脱水・乾燥をさせたりして効率良く仕事をしているのだが、勿論侍女たちやロザベラたちはそれを知らない。
というより、知られると自分達が持ち得ない力を持つシェイラを更に目の敵にするのはわかり切っているし、当主にして父のロイドが領地に戻ってこないうちにと、下手をすれば亡き者にされかねない。そう思う理由はロザベラ達の態度以外にもあるのだけれど、目下。
ぶっちゃけ面倒くさいことになるのはごめん被りたい!が本音である。
そんな訳で起きてきた料理人に調理を任せ、ロザベラ達と(何故か)侍女達を起こし、広間のテーブルを食事用にカトラリーセットし、庭の手入れをし…。そうして先程の流れに行きつきのち、急遽休暇の予定だったもう一人の若手とともに御者に声を掛けて馬車を二台用意し終えて玄関先(エントランス)にて四人(これも何故か侍女達が其々必ず同伴)がやってくるまで待機している現在に至る。
「申し訳ございません(ハイハイいつもの難癖でございますね)」
「ベル、朝からそう怒鳴るものではないわ。でもそうねぇ…レイランドルフ伯爵夫人たる私とその愛娘であるベルにこんな粗末な紅茶しか用意出来ないなんて。見た目と同じで本当“出涸らし”ね」
「大変申し訳ございません(一応それ、逸品で知られるザフツブルグ公国から輸入した高級茶葉を適温で淹れたものなのだけど)直ちにお口に合うものを入れ直して参ります(格安品で良いわよね)」
「もう良いわ!私今日は朝から出掛けますの。貴方がのろのろとお茶を入れているのを悠長に待ってあげる程暇じゃないのよ?ベルだってもう学園に行かねばならない時間ですし、さっさとここを片付けなさい!」
「そうよそうよ!あんたのせいで学園に遅刻したらどうしてくれるの!あんたと違ってわたしもお母様も忙しいんだから、さっさと御者に馬車を支度させておいて頂戴!!」
「はい、直ちにご用意致します(時間ギリギリなのは自分達の寝坊が原因でしょうに)」
「ちゃんと二台用意なさい」
「………かしこまりました(今日は愛人の所、ね)」
ぎゃあぎゃあと、それこそ朝から喚き立てる二人に無感情に返事をしながら、シェイラは今日も今日とて絶賛副音声実況中(頭の中)なのである。
足元荒く支度をしに部屋へと向かう二人の後ろには侍女が二人、ピタリと寄り添っているが、二人もチラと背後で片付けに追われるシェイラに視線を向けてはふん、と嘲りの鼻笑いを残していくのを忘れないというなかなかの玉だ。
(あらヤダ、“なかなかの玉だ”なんて少々はしたなかったかしら?)
二人はオルガとフィオレという名で、伯爵家にいた使用人達を追い出した後に、ロザベラの実家であるフォールン男爵家から呼び寄せられたらしいのだが。
ロザベラ達のシェイラの扱いを見てとるや、シェイラ自身の身なりのみすぼらしさもあいまってか、主人達の嘲りや見下した言動を真似るようになったのだ。まぁそれも、屋敷に来て早々にしてであるからして、ロザベラ達と類友なのだろう、とシェイラの中では区切りをつけているのだが。
今日も早朝の冷たい空気の中洗濯をし、屋敷の居間と調理場にある煮炊き用の窯、食事を行う広間に存在する暖炉にこれまた外から運び込んだ薪を入れてはひを入れ焚べる。実はこの時、この世界でもあまり使い手のいない“魔法”を使って火をつけたり、洗濯の際も洗い上げた衣服やドレス、シーツなどを魔法で一斉に脱水・乾燥をさせたりして効率良く仕事をしているのだが、勿論侍女たちやロザベラたちはそれを知らない。
というより、知られると自分達が持ち得ない力を持つシェイラを更に目の敵にするのはわかり切っているし、当主にして父のロイドが領地に戻ってこないうちにと、下手をすれば亡き者にされかねない。そう思う理由はロザベラ達の態度以外にもあるのだけれど、目下。
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