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第一章 転生
ep.2 些細な日常
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ティリスは次の日、朝早く家から少し離れた『枯渇の森』と呼ばれる所へと訪れていた。
「昨日はラミナが居たから、あれ以上は何も出来なかったが、先ずは今世の……この体に慣れなければな」
転生前の魔力を取り戻すのが先決と、今出来る限界までの魔力を練る事にした。
①全神経を集中し、体に巡る魔力の流れを感じ取る。
②その魔力が外に漏れ出ない様にコントロールする。
③イメージした魔力を手に集中させる。
④最後に手に集中させた魔力を解放する。
今回、イメージしたのは『風属性』の魔力だったが、解放されたのは『無属性』……いわゆる魔力をそのまま丸投げした様なものだった。
「……ん?」
魔力というのは、ほとんどの者が有する力で、人によって優劣がある。
魔力が強い者は『特化魔法』と呼ばれる攻撃系や支援系を専門としているが、逆に魔力の弱い者は『生活魔法』と呼ばれる簡易な魔法を使う事が出来た。
そんな『特化魔法』の中でも、魔法が得意な者や身体系が得意な者が存在する。
前者は『火水風地』を司る【四精霊】に魔力を渡し、その見返りに属性として変換され、譲渡する魔力が強ければ強い程に威力の高い魔法を放つ事が出来るが、【精霊】との契約が必要になる。
後者の身体系は、【精霊】と契約をしてない者が使う攻撃手段だ。
体の部位、もしくは全身に魔力を込める事で、常人以上の力を発揮する事が出来る。
他に支援系等、職業によって用途が変わる。
「そういえば……転生したと言っても今世では、この体に【精霊】との契約を宿してないから、属性魔法が使えないのか……参ったな」
頭を抱え、考えるティリス
◆◆◆◆
【精霊】との契約には条件がある。
①『英霊石』と呼ばれる非常に稀少な素材で出来た契約石が必要
②【精霊】が棲むと呼ばれる霊脈に訪れなければならない
◆◆◆◆
正直、どちらも今のティリスには、準備も力も足りない。
それを分かっているティリスは、更に頭を抱えたが、考えてもどうにか出来る訳も無く、今出来る事に集中する事にした。
———先ずは、魔力の最大値の向上と身体強化だな。
「前世の記憶を頼りに、要領の良い修行をしていこう」
その後、森の中を探索するティリス
色々と試しながら、自分の体に負荷を掛けて、魔物を討伐していく。
それからは、朝から夕焼けまでティリスは森の中で過ごしていた。
「はぁ……やっべ、狩りすぎた」
魔物を狩る事に反対する者は基本的は居ない。
しかし、ある一定量の魔物を狩る事によって、自然界のバランスが崩れてしまう事にもなるので、狩る数というのは決められている。
しかし、今のティリスに、動ける体を手に入れた人間に、それを止めるのは無理難題だった。
とはいえ、この森に危険な魔物など存在する事はない
『一角兎』に、『岩蛙』等、その辺の初心者冒険者が最初に出会うであろう、低レベルの魔物だった。
魔物の皮や角を剥ぎ取り、ティリス特製の道具袋に入れていく。
実は、昨日の夜に無属性最大の魔法として作れるマジックアイテムの『無限収納」を作っておいた。
とは、言っても簡単に出来る道具袋の作り方は簡単で、
材料はどこにでもある皮袋に、自身の無属性魔法を全力でぶち込むと……あーら簡単に出来る魔法の収納袋の出来上がりという具合だ。
いくらでも入るその袋に素材を詰め込み作業をしていると、遠くから『ブモォォォォー』っと、突進してくる魔物の姿が見える。
姿や形から『暴猪』と視認できた。
「晩飯ゲーーーット!!」
突っ込んでくるタイミングで、足に身体をかけて、ギリギリの所で姿が消えた様に右へと躱す。
暴猪は、そのまま大きな木に頭を叩きつけ脳震盪を起こしその場に倒れ込む。
ここで、活躍するのが無限収納の登場というわけだ、原理は謎のままだが、中に入れると時が止まり新鮮且つ保存に最適という良い事尽くめだった。
「これで、ラミナに腹一杯食べさせてやれる……この記憶が戻るまでは、こんな暴猪を狩れるどころか……毎日、その辺に生えているキノコや木の実しか食べさせてやれなかったからな……にぃには、やったぞラミナ!」
涙を流しながら、心の声が大きく漏れる。
太陽も沈み暗くなってきたので、森から出るティリスはラミナの元へと一目散に走りだす。
「ただいまー、ラミナ!」
ティリスが食糧調達や、少し出稼ぎで家を空ける時には、まだ小さいラミナを村長の家に預ける事になっていた。
「ティリス君、しーー」
っと、村長の奥さんが静かにっと、すぐに即してくれた。
「あちゃ~、遅くなっちゃったか」
「ついさっきまで、にぃにが迎えに来るまで起きてるって頑張ってたのよ」
「いつも、すいません」
ティリスは頭下げる。
「ティリス、玄関にいつまでも居らんと中に入りなさい」
村長の『ムトンダ』は部屋へと招き入れた。
椅子に座るティリスの横には、ラミナがスースーと寝息を吐きグッスリと寝ている。
「ティリス、いつまであの小屋で…しかも2人だけで住むつもりじゃ? 何度も言うがお主達2人ぐらいなら、ワシらでも十分養ってやれるつもりじゃ」
「ありがとうございます村長、それでも、両親2人が育ててくれた…思い出が詰まった所でラミナを守ってやりたいんです」
「そうか……そこまで、意志が固いんじゃったらワシらは止めんよ、これまで通りに支援もするしラミナもここに預けて狩りに行ったらえぇ」
「すいません村長、わがまま言ってしまって……」
「よいよい、今日はもう遅い、ラミナもグッスリと寝ておるし、今日は泊まっていきなさい」
「いつもすいません」
ドルイド村のみんなは、俺たち兄妹を良くしてもらっている。
それも、冒険者だった両親の功績というか慕われていたのだろうとおもう。
そして、次の日の朝、村長の家に王都から来たという騎士団がやって来た。
「昨日はラミナが居たから、あれ以上は何も出来なかったが、先ずは今世の……この体に慣れなければな」
転生前の魔力を取り戻すのが先決と、今出来る限界までの魔力を練る事にした。
①全神経を集中し、体に巡る魔力の流れを感じ取る。
②その魔力が外に漏れ出ない様にコントロールする。
③イメージした魔力を手に集中させる。
④最後に手に集中させた魔力を解放する。
今回、イメージしたのは『風属性』の魔力だったが、解放されたのは『無属性』……いわゆる魔力をそのまま丸投げした様なものだった。
「……ん?」
魔力というのは、ほとんどの者が有する力で、人によって優劣がある。
魔力が強い者は『特化魔法』と呼ばれる攻撃系や支援系を専門としているが、逆に魔力の弱い者は『生活魔法』と呼ばれる簡易な魔法を使う事が出来た。
そんな『特化魔法』の中でも、魔法が得意な者や身体系が得意な者が存在する。
前者は『火水風地』を司る【四精霊】に魔力を渡し、その見返りに属性として変換され、譲渡する魔力が強ければ強い程に威力の高い魔法を放つ事が出来るが、【精霊】との契約が必要になる。
後者の身体系は、【精霊】と契約をしてない者が使う攻撃手段だ。
体の部位、もしくは全身に魔力を込める事で、常人以上の力を発揮する事が出来る。
他に支援系等、職業によって用途が変わる。
「そういえば……転生したと言っても今世では、この体に【精霊】との契約を宿してないから、属性魔法が使えないのか……参ったな」
頭を抱え、考えるティリス
◆◆◆◆
【精霊】との契約には条件がある。
①『英霊石』と呼ばれる非常に稀少な素材で出来た契約石が必要
②【精霊】が棲むと呼ばれる霊脈に訪れなければならない
◆◆◆◆
正直、どちらも今のティリスには、準備も力も足りない。
それを分かっているティリスは、更に頭を抱えたが、考えてもどうにか出来る訳も無く、今出来る事に集中する事にした。
———先ずは、魔力の最大値の向上と身体強化だな。
「前世の記憶を頼りに、要領の良い修行をしていこう」
その後、森の中を探索するティリス
色々と試しながら、自分の体に負荷を掛けて、魔物を討伐していく。
それからは、朝から夕焼けまでティリスは森の中で過ごしていた。
「はぁ……やっべ、狩りすぎた」
魔物を狩る事に反対する者は基本的は居ない。
しかし、ある一定量の魔物を狩る事によって、自然界のバランスが崩れてしまう事にもなるので、狩る数というのは決められている。
しかし、今のティリスに、動ける体を手に入れた人間に、それを止めるのは無理難題だった。
とはいえ、この森に危険な魔物など存在する事はない
『一角兎』に、『岩蛙』等、その辺の初心者冒険者が最初に出会うであろう、低レベルの魔物だった。
魔物の皮や角を剥ぎ取り、ティリス特製の道具袋に入れていく。
実は、昨日の夜に無属性最大の魔法として作れるマジックアイテムの『無限収納」を作っておいた。
とは、言っても簡単に出来る道具袋の作り方は簡単で、
材料はどこにでもある皮袋に、自身の無属性魔法を全力でぶち込むと……あーら簡単に出来る魔法の収納袋の出来上がりという具合だ。
いくらでも入るその袋に素材を詰め込み作業をしていると、遠くから『ブモォォォォー』っと、突進してくる魔物の姿が見える。
姿や形から『暴猪』と視認できた。
「晩飯ゲーーーット!!」
突っ込んでくるタイミングで、足に身体をかけて、ギリギリの所で姿が消えた様に右へと躱す。
暴猪は、そのまま大きな木に頭を叩きつけ脳震盪を起こしその場に倒れ込む。
ここで、活躍するのが無限収納の登場というわけだ、原理は謎のままだが、中に入れると時が止まり新鮮且つ保存に最適という良い事尽くめだった。
「これで、ラミナに腹一杯食べさせてやれる……この記憶が戻るまでは、こんな暴猪を狩れるどころか……毎日、その辺に生えているキノコや木の実しか食べさせてやれなかったからな……にぃには、やったぞラミナ!」
涙を流しながら、心の声が大きく漏れる。
太陽も沈み暗くなってきたので、森から出るティリスはラミナの元へと一目散に走りだす。
「ただいまー、ラミナ!」
ティリスが食糧調達や、少し出稼ぎで家を空ける時には、まだ小さいラミナを村長の家に預ける事になっていた。
「ティリス君、しーー」
っと、村長の奥さんが静かにっと、すぐに即してくれた。
「あちゃ~、遅くなっちゃったか」
「ついさっきまで、にぃにが迎えに来るまで起きてるって頑張ってたのよ」
「いつも、すいません」
ティリスは頭下げる。
「ティリス、玄関にいつまでも居らんと中に入りなさい」
村長の『ムトンダ』は部屋へと招き入れた。
椅子に座るティリスの横には、ラミナがスースーと寝息を吐きグッスリと寝ている。
「ティリス、いつまであの小屋で…しかも2人だけで住むつもりじゃ? 何度も言うがお主達2人ぐらいなら、ワシらでも十分養ってやれるつもりじゃ」
「ありがとうございます村長、それでも、両親2人が育ててくれた…思い出が詰まった所でラミナを守ってやりたいんです」
「そうか……そこまで、意志が固いんじゃったらワシらは止めんよ、これまで通りに支援もするしラミナもここに預けて狩りに行ったらえぇ」
「すいません村長、わがまま言ってしまって……」
「よいよい、今日はもう遅い、ラミナもグッスリと寝ておるし、今日は泊まっていきなさい」
「いつもすいません」
ドルイド村のみんなは、俺たち兄妹を良くしてもらっている。
それも、冒険者だった両親の功績というか慕われていたのだろうとおもう。
そして、次の日の朝、村長の家に王都から来たという騎士団がやって来た。
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