狼は野性を貪りたい

玄狼黒鉄

文字の大きさ
上 下
12 / 14

12 狼と狂犬

しおりを挟む
 夜。

「おい、御主人」
「んー?」

 背中に擦り寄って匂いを嗅ぐルプス。そんな彼に体を預けるヴァルカ。…背中に大きなルプスのそれが当たっていることに気付いて、少しだけ困っているようだった。

「…どうしてくれんだ、これ」

 ぐりぐりと押し付けられる、大きく、固く、熱を持ったそれは、布越しからでもはっきりと分かる。…発情している。

「発情するにゃ早いっての」
「誰のせいだ誰の」

 …仕方ない、どっちが上なのかはっきりさせてやろう。
 ヴァルカはルプスの首輪を甘噛みする。

 すると、ルプスの身体が力を失ったようにがくん、と座り込む。

「て、めっ」
「御主人がなんたるかを教えとかないとな。お前の体にしっかりと。もっちろん、耐えたらご褒美あげるけどな」
「はっ、負ける、かよ」

 ぎらり、と光る瞳は、互いの本能を確認するものだった。

―――――

「ぐーっ、ふーっ、んぐーっ」

 手を後ろ手に拘束され、口に棒轡を嵌められ、目は帯で隠され、足に枷をつけられ、あられもせぬ裸身を晒されたルプス。

「すげー…腹筋ばきばきだし、胸筋もあるし、つーか、全身無駄な筋肉ないし、チンポデカいし…最高」

 左胸にキスを落とされ、強い鼓動と共に跳ねるルプスの身体。しなやかな肉体にキスを落とすヴァルカ。

「俺だって分かるんだぜ?お前が半獣人だって」
「んぐっ!?」
「匂いとお前の行動で分かるんだよ。お前、俺に欲情しただろ」
「んぐぅ…」

 否定せず、ただ轡を噛むルプス。とろりと透明な雫を垂らすペニスの先から、納めるべき鞘を求めて仕方のない心情が推し量れる。

「いいんだぜ?正直になっても」

 拘束を解こうと、もがくルプス。くねらせる肉体に、ヴァルカも発情していた。

「あー…ほんとはぶち込まれたいって。万年発情期になってとことん子作りしてお前らのザーメンいっぱい飲み込んで、むしろ俺が奴隷になりたい気分だ」

 ルプスの胸に顔を埋め、匂いを嗅いでは頬擦り。ヴァルカの悪趣味な行為は、かえってルプスの欲情を昂ぶらせるばかりだった。

「ふーっ、ふーっ」
「…抱いてくれるよな?ルプス」
「ふぐっ!?」

 ヴァルカの身体がルプスの胴体に絡まる。尻尾までもがルプスの股間を覆うように、もふりと絡まる。

「俺と、子作りしようぜ?ルプス」

 しかし、ルプスは耐えていた。
 この誘惑に負ければ、ルプスはヴァルカの番となり、永遠に抜け出せなくなる。
 …だが、ルプスは悩んでいた。
 あの時の快楽。今の快楽。これが一生手に入る。ヴァルカという主人を下剋上という名目で快楽の下僕にできる。
 それだけじゃない。あの三人を自分の好きなようにできる。
 五人で、好きなように生きる。…素晴らしい。

「ルプスぅ…我慢できねぇよぉ…」
「ぐっ…」
「なぁ…しようぜ?」

 ルプスの理性の糸が、切れた。

 絡まるヴァルカの身体。その中の禁忌に、ルプスは野性の楔を打ち込んだ。

「あっ、あぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 ヴァルカの少女のような嬌声が部屋に満ちる。
 同時に、ルプスの拘束が全て解かれた。

「…繋がってんな、俺ら」
「うん、そう、だなっ、あんっ」

 ルプスはヴァルカを押し倒し、一気に奥へと侵入する。

「だめぇっ、そこぉっ…め、雌になるぅっ」
「なれ。なっちまえ。俺の雌になれ」

 床の上で抱き合い、そして一気に最奥まで進んだルプス。

「あぉぉぉんっ!」
「はっ…すげぇ、純粋な犬狼族のガキってこんなにいいんだな」
「へへ…さいこーだろ?」
「あぁ、最高の御主人だ」

 そのまま最奥の扉は抉じ開けられ、最早戻れなくなった。

「あぁぁぁんっ」
「はっ、ほんものの雌犬だなこりゃ。…まぁ、雄だろうが雌だろうが、俺はてめーと番になった、充分だろ?」
「やぁんっ、だめぇっ、そこぉっ、こどもできちゃぅぅっ」
「いいぜ、ガキ作ろうぜ、御主人」
「あぁんっ!!」

 先程の形勢は逆転され、最早主人の尊厳を失ったヴァルカ。
 …いや、寧ろ本望だったかもしれない。
 だって、最高の雄たちと交尾する日々が送れるのだ。

「あぁぁ、くぅぅんっ」
「…どうしたい?」
「…いっぱい、欲しい」
「なら、たっぷりやるよ、御主人」

 胎の奥で互いの快楽が爆発した。
 溢れる。溢れる。いっぱい溢れる。
 獣としての悦びに体が無意識に跳ねるヴァルカ。
 戯れに悦ぶ主人を見て悦ぶルプス。

「…最高だぜ、俺らの御主人は。…な?お前ら」

 ルプスは扉の向こうにそう投げかける。


 …扉からは、犬狼族の淫靡な香気に当てられた三人の雄が現れた。

「あぁ…みんなぁ」
「御主人…待てはできねぇぞ」
「申し訳ありません。…もう、限界です」
「みんなで、御主人をいっぱい、お世話したいですっ」

 ヴァルカは、甘い微笑みを浮かべた。

「じゃぁ、みんな、俺と一緒になろーなっ」

 無邪気な微笑みは、四人の狼を目覚めさせるに十分だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました

むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...