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私はその日からディルにべったりくっついた。そりゃもう、トイレ以外片時もディルから離れない。鬱陶しいと思ってるかなと、見上げると、ん?て微笑んでくれるから、大丈夫だよね。
キースは、やれやれと言う感じで、私がディルにくっついてても、何も言わない。
キースのことも好きだけど、ディルとは違う、ディルのはもう、何をしても可愛がってくれる快感がたまらない。
あぁ、私、こんなに人に甘えたことなかった。お父さんもお母さんも優しかったけれど、甘えちゃいけないような気がずっとしてた。只でさえ迷惑かけてるのに、甘えたらもっと迷惑かもって、嫌われたら、私の狭い世界が壊れちゃいそうで、すごくいい子を一生懸命やってた。上っ面の、取り繕った笑顔で正解を探して、もしかしたら、自分には感情なんかないのかなって、思うくらい、ふりをしてた。
喜ぶふり、楽しむふり、悲しむふり。なんでそんなことしてたのか、自分でも不思議だけど、本当の思いを知られるのが怖かった。
言い出したらきりがない、不満、なんで私だけ寝てなきゃならないのって本当は叫んでみたかった。
でも、言えなかった。先にごめんね、つらいねって、私なんかよりずっとずっとつらそうな顔をしてる親に、言えるわけない。
私が言えたのは、大丈夫だよ、平気だよ、って、何でもないふりを、ずっとしてた。
怖かったの、嫌だったの、寂しかったの、夜の病院はいろんな所から悲鳴が聞こえるの。
みんな、我慢して、大丈夫って言うの。
身体も心も限界だったね、ぎりぎりだった。囚われた空間のなか、逃げ場なんかなかったし、ただ、窓から空をよく見てた。
真っ青な青空みてると、怖い気持ちがすぅっと、消えて、秋の匂いが、金木犀の匂いが風にのって、病室まで届いて。いい匂いで、気持ちが弾んで、なんでもできるんじゃないかって、急に思えて、幸せだって、感謝して、あぁそうだ。
恐いばっかりじゃなかった。確かに感じる幸福感もあった。わたし、感情あった。
嬉しいも、恐いも、あまり言葉にできなかったけど、ちゃんと心にあった。
「ねぇ、ディル、心ってさ、誰にも解らないけど、自分でも解らないときない?」
「あるよ、急に、あ、俺、ライカのこと好きなんだなって気付く時とかあるある、可愛いのはずっと変わんないけど、急に突然ぶわっと来るときとか、知らない感情だな、いつも考えてる訳じゃないことが突然心に沸く」
頭をなぜなぜとなぜられながら、私はディルの言葉を聞いてる。なんて落ち着く声なんだろ。ディルがまた好きっていってくれた、嬉しいって、思いながら。
そんなこんなで、一週間程、私はディルにすっかり依存しきって生きていたが急に、くっついていなくても、不安にならないことに気づいた。
毎日ディルの布団に潜り込んで、ベッタリくっついて、寝てたのに、急にそれが恥ずかしいことに気づいた。
抱きついていた身体を、そっと離して、寝てるディルの顔をじーーっと見つめて、あれ?ディルってこんな顔だったかしらと、まるで、初めてディルをちゃんと見たみたいに、不思議と、細部までディルの顔が見えた。
今まで、整った顔してるくらいにしか思ってなかった顔が、よくみれば、目尻に皺があったり、日に焼けた肌に、おでことか、頬に傷痕があったり、睫が長いこと、唇が薄くて、歯が綺麗な歯並びで、鼻の穴には鼻毛があって、癖っ毛の髪はいつも同じと思ってたけど、今日は分け目が違う。
なんで、急にこんなにはっきりとディルが見えるようになったのか、不思議におもって、隣のベットへいって、寝てるキースの顔も見てみた。
優しげな顔だった、印象の、その顔はやっぱり鮮明に見えた。金髪の髪は耳にかからない程度に綺麗に切り揃えられてて、眉毛も金色だし、睫毛も金色だった。鼻毛は細くてよく解らないけどたぶん金色、ディルと全然違う。高い鼻は形よく、ディルよりも更に薄い品のいい唇、少しだけ出る吐息、薄い色素の肌、頬は薔薇色で、透けるような透明感がある。
キースって、綺麗なんだな、顔が良いくらいにしかおもってなかったけど、美少年ってやつじゃん。長い金髪の睫毛が、揺れて、碧い目だと思ってた、瞳は、水色で、そこに黒い黒点みたいな瞳孔があって……。
「わぁっ!!ライカ、な、なに」
「キース、ごめん、起して」
「いや、良いけど、びっくりした、急に横に顔があったから」
「キースの顔みてたの、キースって、美人だね、美少年だったんだね」
「美少年!?僕がですか、はぁ、そうでしょうか、そこまでではないかと」
「ううん、すごい綺麗な顔だって今気づいたの」
「いや、君に言われてもな……自分の顔の方が綺麗だろ?僕はごく一般的な顔だよ」
「そうね、私の顔も綺麗だけど、キースの顔一般的ではないよ」
ぼそぼそと、顔について話していると、隣のベットがギシッと軋んで、ディルがのそっと起きて、私を掴んで、抱っこした。
「なんだライカ浮気はだめだぞ」
「ディル、あのね、キースって凄い美人だねって話をしてたの」
「あん?キース?あぁ、まぁ、悪い顔じゃないけど、なんだよ、俺は?俺の顔は?」
「ディルもハンサムだよ、かっこいいと思うけど、美人じゃないの、それは種類が違うの」
「かっこいいのと、美人なのとどっちが良いんだ?」
「どっちも好きだよ」
「だめ、どっちか選びなさい」
「じゃぁ、ディルだよ、ディルの顔が一番好きだもの」
「そーか、そーか、よし、もうちょっと寝ような」
ディルは、そう言うと、満足度したみたいに、私を抱っこして、目を瞑った。
キースは、また。やれやれと吐息を吐いて、反対方向に身体を向けて寝てしまった。
キースは、やれやれと言う感じで、私がディルにくっついてても、何も言わない。
キースのことも好きだけど、ディルとは違う、ディルのはもう、何をしても可愛がってくれる快感がたまらない。
あぁ、私、こんなに人に甘えたことなかった。お父さんもお母さんも優しかったけれど、甘えちゃいけないような気がずっとしてた。只でさえ迷惑かけてるのに、甘えたらもっと迷惑かもって、嫌われたら、私の狭い世界が壊れちゃいそうで、すごくいい子を一生懸命やってた。上っ面の、取り繕った笑顔で正解を探して、もしかしたら、自分には感情なんかないのかなって、思うくらい、ふりをしてた。
喜ぶふり、楽しむふり、悲しむふり。なんでそんなことしてたのか、自分でも不思議だけど、本当の思いを知られるのが怖かった。
言い出したらきりがない、不満、なんで私だけ寝てなきゃならないのって本当は叫んでみたかった。
でも、言えなかった。先にごめんね、つらいねって、私なんかよりずっとずっとつらそうな顔をしてる親に、言えるわけない。
私が言えたのは、大丈夫だよ、平気だよ、って、何でもないふりを、ずっとしてた。
怖かったの、嫌だったの、寂しかったの、夜の病院はいろんな所から悲鳴が聞こえるの。
みんな、我慢して、大丈夫って言うの。
身体も心も限界だったね、ぎりぎりだった。囚われた空間のなか、逃げ場なんかなかったし、ただ、窓から空をよく見てた。
真っ青な青空みてると、怖い気持ちがすぅっと、消えて、秋の匂いが、金木犀の匂いが風にのって、病室まで届いて。いい匂いで、気持ちが弾んで、なんでもできるんじゃないかって、急に思えて、幸せだって、感謝して、あぁそうだ。
恐いばっかりじゃなかった。確かに感じる幸福感もあった。わたし、感情あった。
嬉しいも、恐いも、あまり言葉にできなかったけど、ちゃんと心にあった。
「ねぇ、ディル、心ってさ、誰にも解らないけど、自分でも解らないときない?」
「あるよ、急に、あ、俺、ライカのこと好きなんだなって気付く時とかあるある、可愛いのはずっと変わんないけど、急に突然ぶわっと来るときとか、知らない感情だな、いつも考えてる訳じゃないことが突然心に沸く」
頭をなぜなぜとなぜられながら、私はディルの言葉を聞いてる。なんて落ち着く声なんだろ。ディルがまた好きっていってくれた、嬉しいって、思いながら。
そんなこんなで、一週間程、私はディルにすっかり依存しきって生きていたが急に、くっついていなくても、不安にならないことに気づいた。
毎日ディルの布団に潜り込んで、ベッタリくっついて、寝てたのに、急にそれが恥ずかしいことに気づいた。
抱きついていた身体を、そっと離して、寝てるディルの顔をじーーっと見つめて、あれ?ディルってこんな顔だったかしらと、まるで、初めてディルをちゃんと見たみたいに、不思議と、細部までディルの顔が見えた。
今まで、整った顔してるくらいにしか思ってなかった顔が、よくみれば、目尻に皺があったり、日に焼けた肌に、おでことか、頬に傷痕があったり、睫が長いこと、唇が薄くて、歯が綺麗な歯並びで、鼻の穴には鼻毛があって、癖っ毛の髪はいつも同じと思ってたけど、今日は分け目が違う。
なんで、急にこんなにはっきりとディルが見えるようになったのか、不思議におもって、隣のベットへいって、寝てるキースの顔も見てみた。
優しげな顔だった、印象の、その顔はやっぱり鮮明に見えた。金髪の髪は耳にかからない程度に綺麗に切り揃えられてて、眉毛も金色だし、睫毛も金色だった。鼻毛は細くてよく解らないけどたぶん金色、ディルと全然違う。高い鼻は形よく、ディルよりも更に薄い品のいい唇、少しだけ出る吐息、薄い色素の肌、頬は薔薇色で、透けるような透明感がある。
キースって、綺麗なんだな、顔が良いくらいにしかおもってなかったけど、美少年ってやつじゃん。長い金髪の睫毛が、揺れて、碧い目だと思ってた、瞳は、水色で、そこに黒い黒点みたいな瞳孔があって……。
「わぁっ!!ライカ、な、なに」
「キース、ごめん、起して」
「いや、良いけど、びっくりした、急に横に顔があったから」
「キースの顔みてたの、キースって、美人だね、美少年だったんだね」
「美少年!?僕がですか、はぁ、そうでしょうか、そこまでではないかと」
「ううん、すごい綺麗な顔だって今気づいたの」
「いや、君に言われてもな……自分の顔の方が綺麗だろ?僕はごく一般的な顔だよ」
「そうね、私の顔も綺麗だけど、キースの顔一般的ではないよ」
ぼそぼそと、顔について話していると、隣のベットがギシッと軋んで、ディルがのそっと起きて、私を掴んで、抱っこした。
「なんだライカ浮気はだめだぞ」
「ディル、あのね、キースって凄い美人だねって話をしてたの」
「あん?キース?あぁ、まぁ、悪い顔じゃないけど、なんだよ、俺は?俺の顔は?」
「ディルもハンサムだよ、かっこいいと思うけど、美人じゃないの、それは種類が違うの」
「かっこいいのと、美人なのとどっちが良いんだ?」
「どっちも好きだよ」
「だめ、どっちか選びなさい」
「じゃぁ、ディルだよ、ディルの顔が一番好きだもの」
「そーか、そーか、よし、もうちょっと寝ような」
ディルは、そう言うと、満足度したみたいに、私を抱っこして、目を瞑った。
キースは、また。やれやれと吐息を吐いて、反対方向に身体を向けて寝てしまった。
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