上 下
3 / 6

3

しおりを挟む

進めども進めども、森から出られない。

なかなかに、ディルの住む村は遠そうだった。結構な田舎じゃないか。車もない、自転車もない、歩きのみって……長距離移動のときは、馬とかせめて乗らないのか、まぁ、森の中じゃ無理か、つらい。足が痛い。


「ねぇ、ディル、まだ着かないの?」

「あぁ、あと半分くらいかな、どうした、疲れたか?」

「うん、、あのね、実は、足が痛くて」

「え?あーーーおまえ、裸足だったな、すまん」

ディルが、しゃがんで足を見てくれた。服をもらった上に靴までくれというのはさすがに図々しいだろうが、エルフの足は意外とやわだったみたい。泥々に汚れた足は、寒さでジンジンするし、悲しくなってきた。

ディルは、うーんと困った顔をした。

「俺の靴じゃ、でかいしな、キース」

「はいはい、では、こちらの布を巻きましょう、でも、その前に泉の水で清めて」

「おう、ほら、ライカ、ちょっとそこの石に座って、足かしてみ」

「すみません、ありがとう」

「どれどれ、あーこりゃ痛かったな、赤くなっちまって、、ほら水をかけるぞ」



ジョボジョボと冷たい水をかけられ、ぶるりと震える。ディルの堅い手のひらが、足を擦る。くすぐったいけど、一生懸命世話してくれて嬉しい。ありがとうディル。このままずっと優しくしてね。


「よし、これで綺麗になったな、キース布かして」

「どうぞ、あ、これを巻き込んで、靴底の代わりにしましょうか」

大きな葉っぱを底にしいて、それごと包んでしっかりと足に布をまき、そ固定してくれた。立ち上がると確かにさっきより全然楽で、足も痛くない。その場で、ぴょんぴょん跳ねてみる。

「痛くない!!ありがとう」

「おう、もう痛いとこないか?我慢するなよ」

「うん、大丈夫」

「よし、ならもう少し歩くぞ、狩人が休む家があるんだ、今夜はそこで休む予定なんだ」

なるほど、こんな山のなかで、ディルもキースもやけに軽装だと思ったら、所々に拠点があるんだね、よかった、休める所があって。あ、でも、いっぱい人がいるなかな?

「他の狩人も泊まるんですか?」

「あーーどうだろな、今の時期はあんまりいないかもしれんが、まぁ、居たとしても爺さんばっかさ、心配するな、俺が連れてるヤツに誰も何もしないさ」

「狩人は、お爺さんばっかりなんです?」

「ここらの若いものは皆、川を下った港町の都会へ出稼ぎにいってるから、村に残ったじい様達が、狩りをするんだよ」

「ドーナツ化現象ですか……どこの世界も同じですね」

「ドーナツ?」

「いえ、なんでもありません、では、ディルとキースさんは村では貴重な若者なのね」

「まぁ、そうだな、俺らも村に一月ばかり居るが食うにはこまらんさ」

「ひとつき?ずっと住んでるんじゃないんですか」

私のささやかな疑問に、キースさんが丁寧に答えてくれる。

「私たちは、由えあって、旅をして各地を回ってるんです、だからエルフにも何度か会ったことがあるんですよ」

「へーー、冒険者だ!?」

「いえ、仕事です」

「じゃ、狩人は本職じゃないんだ?」

少し興奮気味に聞くと、ディルは得意そうにちょっとだけ胸を反らした。

「ははっ、なかなか鋭いな、そうさ、狩人は世を忍ぶ姿ってやつさ」

「かっこいい!!」

「まったく、ディル、もう黙ってくださいよ、一応極秘任務中なんですよ」



真面目なキースに叱られ、悪ガキみたいな顔で、ニヤッと笑うディル。おそらく、この人達は、何処かの王国とか、組織に属してて、秘密の任務を承ってるんだと思うと、なんだかドキドキした。只の顔のいいオジサンだと思ってたけど、そういや、短剣の使い方が様になってるし、筋肉もついてて、かっこいいもんね。

キースも品が良いし、金髪碧眼の、メガネだし、只の使用人とは思えない。育ちが良さそうな気配がする。学校にいる、優等生みたいな人だ、何らかの特殊技術を隠し持ってるに違いない。


「色んな所に行くの?じゃぁ、もしかして竜とかみたこたある?」

各地を回ってるなら色んなことを知っているに違いないと思って、つい王道ファンタジーに欠かせない竜の存在を確かめたくなった。エルフがいるくらいだ、もしかしたらなんでも居るかも。竜や妖精、精霊に神様、魔族や天使!!

ディルが、もちろんさと腕を組む。



「竜?見たことあるさ、王都には、竜にのって戦う竜騎士団てのがあるくらいだ」

「竜騎士団!?めちゃかっこいい、えっ、え、じゃぁ、魔法使いとかも居たりするの?」

「もちろんいる、数はそれ程多くないけどな、偽物も多いが、まじほんの魔法使いはすげーぞ」

「竜と魔法使い!!凄いファンタジーの醍醐味が揃ってる」

まるでゲームの世界に突然迷い込んだみたいだ。ここは広大なファンタジーの世界だったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

乙女ゲームの強制力を舐めていました。このまま立派な悪役令息になってしまいそうです。

棚から現ナマ
BL
俺はティオリ。乙女ゲームの世界に転生しました。それもアルアルの悪役令息への転生です! もちろん断罪なんて、されたくないからヒロインを虐めたりなんかしません! って、思っていたのに……。初っばなからヒロインちゃんを思いっきり罵っちゃったよ。どうする俺! このまま乙女ゲームの強制力に負けてしまうのか!? でも、なんだかストーリーとは違うところもあるようで、嫌われているはずの婚約者のアルバンからチュッチュッさせているんですけど?  ただイチャイチャしているだけのお話です。

平凡でモブな僕が鬼将軍の番になるまで

月影美空
BL
平凡で人より出来が悪い僕、アリアは病弱で薬代や治療費がかかるため 奴隷商に売られてしまった。奴隷商の檻の中で衰弱していた時御伽噺の中だけだと思っていた、 伝説の存在『精霊』を見ることができるようになる。 精霊の助けを借りて何とか脱出できたアリアは森でスローライフを送り始める。 のはずが、気が付いたら「ガーザスリアン帝国」の鬼将軍と恐れられている ルーカス・リアンティスの番になっていた話。

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

俺は、嫌われるために悪役になります

拍羅
BL
前世では好かれようと頑張のに嫌われたので、今世では始めから嫌われようと思います。 「俺はあなた達が大嫌いです。」 新たに生を受けたのはアルフ・クラークソンという伯爵の息子だった。前世とは違い裕福な家庭へと生まれたが、周りの人々の距離は相変わらずだった。 「そんなに俺のことが嫌いなら、話しかけなけばいいのに…。」 「今日も、アルフ様は天使のように美しくて眩しいわ。」 そうアルフが思っていることも、それと反対のことを周りが考えていることも当の本人は知らなかった。

溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、

ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。 そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。 元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。 兄からの卒業。 レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、 全4話で1日1話更新します。 R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。

処理中です...