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 リーンは、そわそわとしながら、王宮にいるであろう、アルケルトに、通信魔法をつかった。

《あの、アルケルト王子、きこえますか?》

「リーン?そなた、魔法が使えるようになったのか?どうした」

《今から、会えますか?》

「あぁ、いま、私は王宮の自室にいるが、そちらへ向かおう」

「えっと、来なくていいよ、移動魔法使えるようになったから……来ちゃった」

アルケルトの部屋に、ひょっこりと入ってきたリーンは、なんだかソワソワと、アルケルトに近づいた。

「リーン、もしかして、記憶が戻ったのか?」
「うん」

そうかと、王子は、破顔した後、瞳を伏せた。

「記憶がもどったなら、返事を聞かせてくれるか?いや、聞かない方が良いか……そなたは、私の事など、忘れてしまいたかったのかもしれぬ」

「アル?」

「記憶がないなら、無くてもよかった、そなたがそばにいてくれるなら」

アルケルトは、リーンの右手をとって、跪いた。

「リーンもう一度いう、どうか私の伴侶になって欲しい、そなたが嫌ならもう、口にはしない、最後にする、だがどうか、我が伴侶になってくれないか」

右手に振れているアルケルトの手は、微かに震えていた。

「アル、待たせてごめんね、本当は塔からでてすぐに言うつもりだったよ」

リーンは、アルケルトの手をぎゅっとにぎった。

「あなたが好き、僕はどうやら、あなたの運命の番だったみたい、離れてから解ったんだ、こころの中にいつも、あなたがいた、アルケルト王子、僕をあなたの伴侶にしてください」

リーンは、王子の手を引っ張って、アルケルトを立たせると、その胸に飛び込んだ。アルケルトは、恐る恐る、リーンを胸に抱き締めた。

「リーン、本当に?」
「待たせてごめんね」

「かまわぬ、待った甲斐があったというものだ」

アルケルトは、腕のなかのリーンが今度こそ何処へもいってしまわないように。ぎゅっと抱き締めた。



◇◇◇◇

かくして、記憶を無くした僕は、実は大賢者で、最初はヘンテコ王子だと思った、アルケルトは、僕の最愛の人となった。

事件を起こした公爵令嬢の話は、アルケルトだけに話して、罪を問うことはしなかった。

だって、僕が婚約者を奪ってしまったのだし。彼女の気持ちも解らなくもない。僕だって、アルケルトが急に他の人と番になるなんて言い出したら、国ごと滅ぼしちゃうかも?だしね。

「アル、約束覚えてる?」

王族の、結婚装束を着た、凛々しいアルケルトに、リーンは、聞いた。

アルケルトは、自分の横にすました顔で立ってる、可愛らしい伴侶に、耳を傾ける。

「勿論あとで連れてってやる、式が終わったらな、好きなだけ読むといい」



今日は、ダリアン王国、第一王子の結婚式。その盛大な
式は、各国の王や王妃を招き、連日連夜、の国を上げてのお祭り。

だって、王子様のお相手は、この世でたった1人の大賢者様。王子様の長い片思いは実って、求婚は、受け入れられた。

大賢者様は、ダリアン王国に大きな図書館を建て、国民が自由に閲覧できるようにしてくれた。そんな、大賢者様は、王宮の奥深くで、禁書を毎日読むらしい。その隣には、幸せそうに、微笑む、王子様の姿があるんだとか。


国を救った大賢者様と、国を守り育む王子様の、結婚は、国民達の憧れとなり、ずっとずっと、語り継がれる。







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