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 とりあえず、リーンは、このピンクの部屋を拠点として、王都を歩き回り、何か記憶に繋がる断片をさがすことにした。

王子はそれなりに執務があるので、今晩は隣の部屋に泊まるらしいが、明日は王宮へ帰るとのこと。なので、ついでに王都へ連れていってもらう。


歩いて行けなくもないが、王家の森から出ると守護効果が切れるらしく、いま、全く魔法とかなにも使えないリーン1人では危ないからとの事。

王子が帰ったら、護衛の騎士を選抜してつけるのでそれまではデニールさんが、ついてきてくれることになった。

「デニールさんすみませんね、僕のお守りなんて」

「いえ、とんでもない、大賢者の護衛なんて、誉れでございますが、なにぶん、私は王家の守護が一番の仕事でして」

「そういえば、あの日、一番に駆けつけてくれたね」

「はい、王子より早急にリーン様を連れてこいとの命が下り、本来なら王子が誰よりも早く駆けつけたかったと思われるのですが……リーン様に部屋に魔法で鍵をかけられておりまして、出られなかったのです、あの時の王子の嘆きようといったら、私まで胃腸がネジ切れそうでした」

「あぁ……なんか、すみません」

魔法の鍵で王子を、閉じ込めるって、法的に訴えられたりしないんだろうか。余程王子は、聞き分けがなかったか、意地でもついて来ようとしたんだなと、安易に想像ができてしまう。

王子が王宮を丸ごと破壊しなくて良かった。やりかねないんだよ、あの人の言動きいてると。

デニールさんも、苦労するな。優しげで、優秀そうなデニールさんは、リーンに地図を渡した。

「明日から、王都を探索されるとの事ですが、何処へ行きたいたかなど、ご要望があれば」


「わぁ、ありがとう、ちょっと見ていいかな」

「勿論です」

地図は、かなり詳細に書かれていて、王宮の周りぐるりと、王都が広がっている、メイン道路が王宮の門からドーーンとあって、そこから、細やかに脇道がある。

かなりの大都市だ。書店やら、食べ物屋の他に、協会、薬屋、宿屋、武器屋、道具屋、鍛冶屋、冒険者ギルドもある、これは、ワクワク案件だ。


「冒険者って、職業があるんですか?」
「ええ、王都の護りは、我ら王宮騎士団のしごとですが、辺境の地や、王都の細やかな仕事に至るまで、冒険者は何でも屋ですね」


「へぇ、かっこいいな、僕も登録できるのかな」
「エッ、大賢者様がですか、登録は可能かと思いますが……大賢者様に物を頼むなんて畏れ多いことを民ができるかどうか」

「あーー、そういう弊害が」


確かに、賢者って、教会の牧師みたいな感じなんだろうか?僕の他に見習い賢者が20人いたと言ってたけど、その人達はどこにいるのかな。

「賢者って、どこにいるものなんです?」
「賢者の皆様は、こちらの王宮の横の大神殿でと、賢者の塔などを管轄しています」

「あぁ、賢者の塔にも行ってみたいんだった」

賢者の塔は、ちょうど王宮とこの森との反対側にある。

「賢者の塔は、今は封鎖されていて、入れないかもしれませんが、賢者協会に打診してみますね、リーン様なら許可が降りると思います」

「おお、特権!!やった」

「こうして、地図をみていると、色んなところを見てみたくなりますね、とりあえず、明日は、王宮で挨拶をした後、賢者協会?大神殿へいってまようかな」

「かしこまりました、では、私はこれで退室させていただきますが、御用ありましたら、いつでもお呼び下さい」

「ありがとう」

デニールさんは、リーンに敬礼すると、速やかに部屋を出ていった。隣の部屋からは、シャワーの音がする、どうやら王子はシャワーに入っているようだ。

「そうだよ、僕もお風呂に入りたい」

ピンクの部屋のドアは、なぜか、隣の王の部谷にしか出口がなく、気まずく思いながら、リーンは、扉を開けた。



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