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 王子の悔しそうな顔をみて、初めて、あれ?っと思った。この人もしかして、本当に僕を心配してくれてるのか?

 僕はちょっと自分の今までの行いを後悔した。へんてこな王子だと思っててごめん。

「王子……僕は」
「リーン、呪いを解ける者を捜そう、この国でそなたは1番の物知りであったが、他の国に行けばもっと呪いに詳しい人がいるかもしれない」

「他の国ですか」

「あぁ、記憶を失ったお前を、このままにはしておけぬ、今のお前は迷子の子供だ、自信たっぷりの以前のそなたとはまるで違うが、どちらも愛しく思う、リーン記憶を取り戻す旅に共にでて、思い出すんだ」

ほ、本物だ……、僕は王子様の善意を、というか、慈愛?いや、好意?とにかく、本当にこの人は、人を心配して、人をというか、僕を心配していることにようやく、気づいた。


「王子って、いい人だったんですね」
「なんだ、今頃気づいたのか」

「だって、急に結婚とかいうから、もっと変な人かと思ってました」
「それに関しては、確かに時を誤った、だが、何もかも失ったそなたに、せめて、身分くらいは保証してやりたかった、私が持っているのはそれくらいだからな」

「ちょっとマジでいい人!!」

今まで本当にごめんなさい、だ。この国の人達も、僕が記憶を失ったと、皆が悲しんで泣いてくれた、王さまも、お妃様も、なんて優しい世界。

僕は、この人達を救えるなら、記憶なんかなくなってもきっと後悔しないと思ったのかも。

有り得る。だって、今、僕は実際にそう思ってる。国に害を及ぼす程の化物がでたとして、戦う術が、僕の記憶を失う程度のことなら、僕はやるわ。

「僕はリーンなんですね」
「あぁ、そなたはリーンだ、間違いなく、私の大切なリーンだ」

「王子は、僕のことをよく知っているみたいですが、王子と僕はどうやって出会ったんですか?」

「この国には、賢者の塔という古い建物があってな、高い塔だ、何階まで有るのか未だに誰にも解らない古い古い古の塔だ、私は15歳の誕生日に、皇太子になるための儀式の一つとして、その塔の十階にある、賢者の証を持ち帰らなくてはならなくてな」

王子は、長い話しになるぞと、横たわる僕に布団をかけなおしてくれた。ちょっと本当にだんだんこの王子のこと好きになりかけてる自分がこわい。

「従者を一人賢者候補の中から選び、連れていくことになっていて、そこで出会ったのが最初だった、そなたは、二十人の賢者候補の中の一人だった」

「なぜ、僕を選んだんですか?」
「可愛かったから」

「は?え?」
「一目惚れだ、そなたは、めちゃくちゃ、可愛かったから」

「……」

まてよ、この王子、さっきまで凄い良い感じに好きになりかけてたけど、まてよ、うん、早とちりだったか?まさかの顔で選ばれただと?

「賢者の塔へ登るのは危険とかはないんです?」
「一階上がるのでさえ、難しい、魔物と戦いながら謎解きを延々にしていかないといけないからな」

「魔物と謎解き……え?それは、従者はもしかして凄く重要なのでは」

顔で選んでる場合ではないだろ、僕、顔で選ばれてよく、この王子と塔の十階まで行けたな、天才過ぎないか。

「何を隠そう、私は剣武の才があって、魔物に関しては大丈夫だったが、謎解きと魔法がな、からっきしで」

「よくそれで、たった一人しか連れてけない従者を適当を適当に選びましたね、聞いていてもゾッとします」

僕の軽蔑の眼差しに屈することなく、王子は、なお、話を続けた。

「なに、長い時を共にするのだ、フィーリングは大事だ、私の直感がそなただと、訴えておったのでな」

「う~~ん」

「まぁ、そんなこんなで、そなたと、塔に入って、1ヶ月程した頃に、ようやく、十階へ到達したのだ」

「よく行けたな」

「なに、かなり快適な道中であったぞ、そなたは、何でもできたし、ただ風呂に入りたいとよく言っていたが」

「アーーー言いそう」

今も、風呂に入りたいもんな。

「無事に十階へ到達したから、私は、賢者の証を手にして、帰ろうとしたのだが、そなたは、しばらくまだこの塔へ残ると云うてな、十階から先は、深い知の探求となるため、魔物は出ないが、格段に問題は難しくなる、だから、私は無理だと反対したんだ」

「成る程、ぼくは、あなたを振り切って登りましたな」

「その通り、そなたは、あっさり私を置いて、扉に鍵をかけて十一階へ上がって行ったんだ」

私は少し怒ったんだぞと、僕の頭を軽くコツンとした。軽くでよかった、僕が王子の立場だったら、もっとめちゃくちゃ、怒ってたと思う、でも、もしまた同じ状況になったら、間違いなく十一階へ登るのは確か。

だって、前人未踏の階層が目の前にあって、それを踏まないなんて出来る!?出来るわけない。

そんなのワクワクが止められないじゃん、むしろ今からまたその塔へ登りに行きたいとさえ思う。






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