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 湖の中に建つ古城は、まさに幻想的で、気温が下がって霧なんかでたら、お伽噺のお城みたいと、思う。

 ロケーションは最高に気に入った、だがしかし、気に入らないのは王子様。

「あの、王子様はもうお帰りになられても」

とりあえず、早い退出を願ってみたが、王子様はこちらの言うことなど気にしない。そうですよね、王族なんてものは、大抵、唯我独尊ですし、庶民の言うことなど、ハエの羽音くらいの雑音でしょうし。

 どかりと、中央の応接間のソファーに座って足を組んだ王子様に、この家の管理者とかいうジィ様が挨拶にきた。

「アルケルト王子、ようこそおいで下さりました」

「うむ、今日は、私の婚約者を連れてきた、しばらくここに住むことになるから、宜しくたのむ」

「左様でございますか、なんと喜ばしい、宴の準備をしてまいります」

「いや、だから、婚約者って誰だよ」


王子様の執事様も、やはり、庶民の声は聞こえないらしい。僕の突っ込みは見事に無視をされ、執事さんは意気揚々と部屋を出ていった。

王子様と、騎士達と、僕の、トライアングルが、形成され、僕はとりあえず、騎士側へ少しよった。

「リーン、何を隅にいるんだ、こっちへきて座るがいい」

「いやあの、あっ、部屋はどうなってるか、気になって」

婚約者じゃないと言ってるのに、婚約者だと思いこんでる人とはあまり一緒にいたくない。僕は、邸宅中を見学することにした。

「ちょっとみてきます」

「まて、リーン、我らの部屋はそこだ」

「え?」

ソファーから、立ち上がった王子は、綺麗な装飾品でかざられた、キラキラしたドアをあけた。

「こちらが寝室だ」

「わーー」

天蓋つきの巨大なベットに、キャビネットやら、机は、高級なアンティーク、壁には品の良い絵画がかざってあって、いかにも高級感が溢れている、さすが、王族の避暑地だ。

キョロキョロしていると、真っ白な扉があって、そこも開けてみると、もう1つ、天蓋付きのベット。だが、こちらは、絹のカーテンじゃなくて、ピンク色のフリルのついたカーテンがかかっている。少女趣味な部屋だな。

「そちらは、后の部屋だ、そなたが使うといい」

「へーー、は?后?は?」

「王と対になっている」

「いやいや、対にならなくて良いので、普通の、使用人とかの部屋で良いので」

王子様とドアtoドアとか、ごめん被りたい。安眠妨害もいいとこである。

「何を言ってる、リーンをそんな粗末な部屋に泊めるなどできない」

「いや、ほんと、お気になさらず」

「そなたは国の英雄だぞ、そして、その身を犠牲にし、人々を守った大賢者、そして、我が婚約者」

「だからぁ、全部違うから」

「照れてるのか、照れなくてよい」

照れてるように、見えるのか、とんだ色眼鏡かけてるな。僕は、もはや、何も言う気になれず、ピンクの部屋へと移動した。なんて落ち着かない部屋なんだろう。やはり、安易に、居場所を決めたのは悪手だった。



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