上 下
1 / 23

1

しおりを挟む
 ぼんやりと空を見上げていた。ここは大草原の真ん中で、目の前にはでっかい穴、空には青空と雲が何処までも広がっていて、つまり、何もない所に、僕はポツンと立っている訳。

何で立ってるかって?それは僕が今、一番聞きたいこと。

「え?何この穴、でかすぎ、てか、ここ何処、てか何でこんな所にいるんだよ」

つまり、何がなにやら、わからないからとりあえず空を見ていたと言うわけ。空は良いよね、流れる雲がゆっくりと形を変えて、くっついたり、離れたり早い風に流されて少しづつ変わっていく。


「おーーい!!おーーーい!!」

人の声がしたので、振り向くと、馬に乗った、騎士さんが、数名こちらに近づいてきた。

あ、よかった、人がいたわ。助けて貰おう。そう思って振り向いたののに、騎士達は、馬から降りると、ずさぁっと、その場に膝を着いた。まぁ、戸惑うよね。

「あの……は?」
「大賢者リーン·ケラー様とお見受けいたします、この度は我らダリアンの民を救っていただきありがとうございました」

「いや、あの」
「リーン様のお陰で、ダリアンは無事です!!」
「リーン様、お怪我はありませんか?御一人であのような化物と戦うなんて流石です」

「リーン様は我が國の英雄です」
「まじで、やっつけちゃうとか、流石リーン様です」

口々に、リーンという人を絶賛してるけど、何で僕は巻き込まれているんでしょ?ここは空気を読んで僕もそのリーン様とやらを絶賛した方が良いでしょうか?いや、誰か解らんし、てか、何したの?化物を一人でやっつけたって、どゆこと。

キョロキョロと、その偉大なるリーン様を探したが、ここには騎士と僕しか居ない。困ったな。心が綺麗じゃないと見えないタイプの人とか?

「リーン様、お疲れでしょう、王宮にお戻り下さい」

さ、どうぞと、手を引かれ、僕はやもえず、言った方が良いかな~と思って、とりあえず言った。

「あの、すみません、人違いでは?」
「はい?」

「僕はリーンでは無いのでは」
「………リーン様?」

「だから、僕は……誰ですか………え?あれ?僕は誰でしたっけ?んんんっ!?」

「「「「ぎゃぁ!!何てことだっ!!」」」」」

騎士達は、悲鳴を上げて、ぎゃぁぎゃぁと騒ぎだした。いやさ、悲鳴を上げたいのはこっちなのよ、だって僕、世に言う記憶喪失なんだよ、僕は誰なの。村人一般人Aでしょ?何でも良いから、英雄とかワケわからない人と勘違いしないで、むしろ僕を今すぐ助けてくれ。

「と、とにかく、王宮にお戻りに」

そうだ、そうだと、騎士達は混乱しながら、とりあえず問題を先送りにしやがった。

「でも、僕、ただの人かもしれないのに」

「いや、貴方はリーン·ケラー様で全く間違いはないです!!」

泣きながら騎士がそう叫んできたので、ええっと、ドン引き。てか、え?なんであんた達は泣いてるの?だから、泣きたいのはこっちなんよ。


「おそらくあの化物を倒す為に、巨大魔法を使われて…記憶が」
「何て事だ、人類の叡智がこんな」

しくしくと、泣きながら馬に乗る騎士達に連れられ、僕は仕方なく、おとなしく馬に乗った。というか、騎士の後ろにちょこんと乗せてもらって、王宮に向かう事にした。

だってこのままここで、リーンだ、リーンじゃないってやってても収集つかないし、なんかもう皆さん、泣きじゃくるし、ワケわかんないんだよ、早く解放してほしいんよ。

「はぁ、風呂入りたい」
「王宮に報告に行った後に、御自宅へ送りますね、それまで、どうか……我慢してくださ……あぁこれ以上あなた様に我慢を強いるなんて、ううっ」

俺を乗せてる騎士が、半泣きで、答えてくれたが、途中から嗚咽になったので、もう、風呂の話しはできなかった。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!

時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」 すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。 王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。 発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。 国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。 後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。 ――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか? 容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。 怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手? 今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。 急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…? 過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。 ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!? 負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。 ------------------------------------------------------------------- 主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

処理中です...